DVD『二重被爆』 ~川流れ来る 人間筏~

ピカドンに 身体(からだ)焼かれし 傷の跡 老いて薄れて 今日広島忌
くろぐろと 数かぎりなき 佛たち 真夜立ち上がる 原爆図より

慟哭しながらこう詠んだ山口彊さんが亡くなられた、2010年1月4日に。93歳だった。

山口さんはヒロシマ&ナガサキで被爆した“二重被爆者”として知られ、山口さんの語りが中心に展開される記録映画『二重被爆』(2006年)のDVDがリリースされた。TSUTAYAなどで借りられる。また、山口彊さんの生涯を追った記録映画も今年、公開された(http://www.hibaku2.com/)。

1991年に広島原爆式典に参加したことがあるジェームズ=キャメロン監督は病床のみにあった山口さんと長崎で邂逅した。監督は原爆についての映画を製作する構想を山口さんに語った。

「あなたは選ばれたのだと思います。二度と核兵器を使ってはならないというメッセージを伝えるために」

と語りかけた監督に山口さんは

「I think so.」と応じて、
「わたしは責務を果たしました。」と声を振り絞ると、監督は山口さんの手を両手で強く握りしめた、しばらくの間。

山口さんは自費出版の歌集『人間筏』で

大広島 炎え轟きし 朝明けて 川流れ来る 人間筏
うち重なり 灼けて死にたる 人間の 脂滲みたる 土は乾かず

と詠んだ。

大きな声ではなく、静かにゆっくりと、詩心(うたごころ)を以て語り続けた山口さんの

「そのために生かされている感じがします。しかし、もういうことはいえたし、することはしたし、思い残すことはありません」

という言葉が、映画『二重被爆』の最後のメッセージである。

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及川 健二 について

ジャーナリスト/研究者。 それまで一分もフランス語を学んだことがなかったのに、 フランス留学を決断。2002年UCLAエクステンションセンター・ 夏期英会話講座・修了、グランゼコールの一つ、2004年 リール政治学院・夏期特別セミナー修了(European Summer University Program at Institut d’Etudes Politiques de Lille)。 フランス国立パリ第九大学・Dauphine修士課程に2004-05年に在学。 多国籍企業の経営戦略が研究テーマ。大学では”英語”で講義を 受け、語学学校でフランス語を勉強するというチョット変わった留学生活をおくる。2004年7月3日から2006年3月25日までフランスに滞在。リール、トゥール、パリにて生活する。数々の政治家にインタビューする。 共著『オカマは差別か』(ポット出版)、2002年1月。 編集・共著『常識を超えて』(ポット出版)、2002年6月。 単著『ゲイ@パリ 現代フランス同性愛事情』(長崎出版)、2006年10月。 単著『沸騰するフランス 暴動・極右・学生デモ・ジダンの頭突き』(花伝社)、2006年10月。 単著『フランスは最高!』(花伝社)、2007年6月。