感激!佐藤真海さんの笑顔

わたしはその人の笑顔をいまも鮮烈に覚えている。
大学の学部時代、野球を観戦するのが趣味だった私は神宮球場に通い、六大学野球を熱心に観戦した。六大学野球の学生席ではリーダー・チアリーダー・吹奏楽団から成る応援部が陣取り、学生の応援を指揮する。
わたしは野球も好きだけれど、学生の観客・応援部が一体となって選手を応援する空気がとても好きだった。心地よかったし、元気をたくさんもらえるような気がした。
2001年の5月に入ってからだろうか(時期に関する記憶は曖昧なのだが)、新人のリーダー・チアリーダーが神宮デビューした。神宮デビューとは応援部の一員として一年生が応援に加わることを指す。リーダーはまだかわいげの残るごつい声をあげ学生席を盛り上げ、チアリーダーは応援曲メドレーにあわせて愛らしくしかし力強いダンスを披露し選手を応援する。
頭のところまで足を上げるハイキックをするとき、一年生はまだ体が十分に柔らかくなっていないせいか、足がお腹のところぐらいまでしかあがらないチアもいる。少しテンポが遅れることもあり、しかし、そういう入り立ての初々しさが眩しく微笑ましかった。
わたしはいつだったか一年生の一人のチアリーダーに目がとまった。
そのチアは周りの誰よりも笑顔がひらけていてまぶしかった。
ただ、愛らしいというのではない。まわりに光を放つような明るさと、人の心を和ませるようなやわらかさをもった笑顔だった。
彼女の笑顔を見ていると、きっと素晴らしいチアリーダーになり、応援部をひっぱっていくのだろうナ……と思われた。
その女性、佐藤真海さんのことで覚えているシーンはもう一つある。
六大学(東大・法政・明治・慶応・早大・立教)の応援部が一同に介して、応援歌・応援曲・勝利の拍手・校歌(塾歌)を披露する六旗の下にというイベントが毎年6月開催されている。どの年だったか覚えていないのだけれど、そのステージで真海さんを見たような気がする。四年生のチアリーダーが応援曲の演奏にあわせてダンスをするのだけれど、たしか真海さんは、「W・S・A・D・A」と一字ずつ書かれたプラカードをもって途中登場し、それを左右に振り去っていたのではなかったか(だいぶ前の過去なのでわたしの記憶違いかも知れない。事実と違ったら御指摘ください)。
いつからだったろうか、神宮に行っても彼女の姿が見受けられなくなった。
リーダーやチアリーダーが途中からいなくなる……ということは残念ながら時折ある。理由は様々だろう。厳しい部活動についていけなくなった、思っていた部活動と違った、自由の利く時間がほとんどない………などが考えられる。彼女もきっと何らかの事情があり応援部を去ったのだろうな……と思った。わたしはそれ以降、彼女のことを思い出すことがなかった。
ところが、ある日、手に取った早稲田大学の広報誌「ワセダ・ウィークリー」(http://www.waseda.jp/student/weekly/contents/2003b/007c.html)の表紙で、忘れることのできない真海さんの写真を見た。彼女のインタビュー記事だった。記事を読んで驚きを禁じ得なかった。記事にはこうあった。
 真海さんは大学二年の夏、突然、右足首に激痛が走ったという。テーピングで凌ぎ、シーズンオフを待って病院へ行った。「悪くても疲労骨折か!?」と思い、念のためレントゲンを撮った。結果を見た医者の顔色が変わったという。病気は骨肉腫であり、三カ月の入院治療後、右ひざ下から切断し義足の生活になった。
 しかし、話はそれだけでは終わらない。
 彼女はその後、障害者スポーツに出会いスポーツ選手になる。
 2004年にはアテネパラリンピックの陸上競技・走り幅跳びに出場し、九位につける(3m95)。
2005年にはパラリンピックワールドカップの走り幅跳びに出場し4位(4m14)になり、2006年パラリンピックワールドカップでは走り幅跳びで3位(4m11)につける。
 スポーツ選手として世界的に活躍しているのだ。
 実は「ワセダ・ウィークリー」の記事に感銘を受けた私は編集部に彼女にメッセージを送りたいのでメールを転送してもらえないかと尋ねた。編集部から返ってきた回答は、彼女も忙しい身ですからそっと見守ってください……というものだった。
 本当ならば話はここで終わるはずだった。
 しかし、話はまだ続く。
 わたしはmixiを知人から誘われ、昨年九月からやっている。日記もまめに更新しているわけではないけれど、検索機能が充実しているので色々気になるワードを入れ検索し、面白そうな人を捜す……という作業は頻繁に行っている。
 二ヶ月ほど前、早稲田大学の応援部に興味があったので、「早稲田」「応援」というキーワードを入れて、検索した。すると、何十件かのリストの中に佐藤真海さんの名前があった。彼女の素敵な横顔がうつった写真がプロフィールに掲げられていた。
 そして、真海さんのブログのアドレス(http://blog.livedoor.jp/mami_sato/)もかかれてあった。早速ブログを見た。
 トップには彼女の愛らしく眩いばかりの笑顔が載っている。
 わたしが五年前にはじめて見た真海さんの笑顔より、もっとキレイだしステキだ。
 私は真海さんの活躍をこれから見守っていきたいとおもう。

カテゴリー: 及川健二のパリ修行日記 | 投稿日: | 投稿者:

及川 健二 について

ジャーナリスト/研究者。 それまで一分もフランス語を学んだことがなかったのに、 フランス留学を決断。2002年UCLAエクステンションセンター・ 夏期英会話講座・修了、グランゼコールの一つ、2004年 リール政治学院・夏期特別セミナー修了(European Summer University Program at Institut d’Etudes Politiques de Lille)。 フランス国立パリ第九大学・Dauphine修士課程に2004-05年に在学。 多国籍企業の経営戦略が研究テーマ。大学では”英語”で講義を 受け、語学学校でフランス語を勉強するというチョット変わった留学生活をおくる。2004年7月3日から2006年3月25日までフランスに滞在。リール、トゥール、パリにて生活する。数々の政治家にインタビューする。 共著『オカマは差別か』(ポット出版)、2002年1月。 編集・共著『常識を超えて』(ポット出版)、2002年6月。 単著『ゲイ@パリ 現代フランス同性愛事情』(長崎出版)、2006年10月。 単著『沸騰するフランス 暴動・極右・学生デモ・ジダンの頭突き』(花伝社)、2006年10月。 単著『フランスは最高!』(花伝社)、2007年6月。