すべての人に愛を!もっと、もっと愛を

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わたしのフランス滞在第一期もあと五ヶ月で終わる。
大学院にもどって修士論文を書き上げなければならないからだ。修士課程を終えたらまたフランスに帰還したいと思っている。しかし、それがはたして実現するかは分からない。名残惜しいけど、残された時間を大切にしたいとおもう。
ピントの少し外れた写真を載せた。写真の女性と会ったのは、今月初めの土曜日にパリ市内で行われたトランスジェンダーのデモでのことだ。デモが始まる前、セーヌ川近くの広場に参加者は集まり、おしゃべりをしていた。人混みの中を行ったり来たりして、自分の目にかなった人がいれば声をかけ、話したり写真をとったりした。
私が声をかけたのは、デモ参加者の中でもとりわけて彼女が若く見えたことと、派手派手しい衣装に身を包んだ人が多い中で清楚で可愛らしい格好をした彼女が逆に目立った……ということによる。
「写真を撮らせていただいてもよろしいですか?」と近づく私に、「もちろん」と応えた彼女は撮影が終わると、「写真をおくっていただけますか」という。「このアドレスに送ってくだされば、写真を貼付してメールします」といい、私のメールアドレスが書かれた名刺を渡した。
写真を撮らせてもらったとき、私は彼女がトランスジェンダーだとは思っていなかった。このデモにはトランのみならず、ゲイもレズビアンも差別に反対するノンケ(異性愛)の人々も参加していたからだ。
デモが始まり彼女の掌に書かれた「XY」という文字を見てはじめて彼女がトランスであることに気がついた。
ここでは御紹介できないけど、何枚も撮った彼女の写真はよく撮れていたと思う。御礼として送りたいなーと思って彼女から連絡が来ることを待っていた。でも、けっきょくメールは来なかった。こんなことならば連絡先を聞いておくべきだったと後悔した。
『Rainbow Attitude』の三日目・日曜日に会場を歩いていたら、トランスジェンダーの団体が出しているブースに彼女が座っている。公民館の会議室にあるような机を前にしてパイプ椅子にすわっている。バンドをして髪を整えている。Rainbow Attitudeを訪れている人々に声をかけ一所懸命説明をしている姿はどこか神々しさが漂い愛らしく見えた。
「覚えていますか、ほら、トランスのデモのときに写真を撮った……」
「あぁ〜」
「写真をお送りしますから連絡先を教えていただけますか」
「ありがとう。とても親切ですね」
といって、彼女のメアドが書かれたメモ用紙を渡された。
話しかける前に実は、どうやって話しかけたらいいか……いろいろ考えて、彼女のブース近くを行ったり来たりした。なんでそんなに緊張したのか自分でも分からない。忘れられているのでは……とおもったからかな。

カテゴリー: 及川健二のパリ修行日記 | 投稿日: | 投稿者:

及川 健二 について

ジャーナリスト/研究者。 それまで一分もフランス語を学んだことがなかったのに、 フランス留学を決断。2002年UCLAエクステンションセンター・ 夏期英会話講座・修了、グランゼコールの一つ、2004年 リール政治学院・夏期特別セミナー修了(European Summer University Program at Institut d’Etudes Politiques de Lille)。 フランス国立パリ第九大学・Dauphine修士課程に2004-05年に在学。 多国籍企業の経営戦略が研究テーマ。大学では”英語”で講義を 受け、語学学校でフランス語を勉強するというチョット変わった留学生活をおくる。2004年7月3日から2006年3月25日までフランスに滞在。リール、トゥール、パリにて生活する。数々の政治家にインタビューする。 共著『オカマは差別か』(ポット出版)、2002年1月。 編集・共著『常識を超えて』(ポット出版)、2002年6月。 単著『ゲイ@パリ 現代フランス同性愛事情』(長崎出版)、2006年10月。 単著『沸騰するフランス 暴動・極右・学生デモ・ジダンの頭突き』(花伝社)、2006年10月。 単著『フランスは最高!』(花伝社)、2007年6月。