Shall We dance?


20以上のスクリーンを持つ映画都市レアール(Cine Cite Les Halles)で、今週からフランスで公開されている『シンデレラマン』を見終わったころ、日は沈み時計の針はもうすぐ一〇時(夜)を指すところだった。レ・アールは地下街に服飾店・雑貨店・飲食店が並ぶショッピングモールで、日本でいえば東京の新宿プロムナードといったところだ。
映画館の出口を出たところに三〇名は越えるであろう高校生ぐらいの男女がたむろしている。閉店したお店のガラスを鏡にして、ダンスに興じている。いわゆる、シャドウイングというやつだ。黒人・白人の若い人たちがいつも、どうやったらそんなに体を器用に動かせるのだろうと感心させられるくらい、上手に踊っている。
そういえば、沖縄県石垣島にいったときも夜中、波音にまじってダンス・ミュージックが微かに外から聞こえてくるので何事かと思い、ホテルの窓から見渡したら、オレンジ色の街灯に照らし出され、公立図書館のガラスを鏡にして若い人たちが踊っているのが見えた。興味を覚え、サンダルのまま、Tシャツに短パンという格好で彼らの近くまで寄り、そして通り過ぎた。高校生ぐらいの、肌が小麦色に焼けた男の子が五・六人、目したまま音楽をとめては踊り、とめてはおどりを繰り返していた。
心地よいクッションの座席がある映画都市レアールでわたしは毎日といっていいぐらい映画を観る……という生活が続いているから、彼・彼女らとは頻繁に顔をあわせる。
男の警察官が二人、女の警察官が一人(いずれも白人だった)が私の前を小走りして通り過ぎた。踊りに興じている男の子・女の子に文句をいうのかな……と思ったら、立ち止まることなく、去っていった。レ・アール付近では警察官が徘徊しているところを頻繁に見かける。その三警官は小走りをしていたから、どこか事件現場にかけつけようとしていたのだろう。
六月の中頃、スペイン人学生の集まりにさそわれて、セーヌ川沿いの河岸の地べたにすわり、みんなでお酒を飲み踊った。私以外はみなスペイン人。セーヌ川の岸には、他にも多くの団体が集まって酒を飲んだり菓子を頬張り騒いでいた。パトロールカーが何度も来ては、ゆっくりと私たちの横を通り過ぎていった。
フランスは日本に比べてはるかに警察国家である。しかしながら、公共の場で市民が騒ぎ楽しんでいたとしても、それを排除しようとすることはあまりないようだ。
先々月日本に帰ったとき、夜の下北沢駅前でギターを持って歌っていた男女の若者が警察官三人に囲まれて、直ちに退去するよう命じられているところに遭遇した。「こんなとこで歌っちゃダメだろう」と彼らは怒鳴っていた。フランスとはずいぶんと異なる光景だなと思った。

カテゴリー: 及川健二のパリ修行日記 | 投稿日: | 投稿者:

及川 健二 について

ジャーナリスト/研究者。 それまで一分もフランス語を学んだことがなかったのに、 フランス留学を決断。2002年UCLAエクステンションセンター・ 夏期英会話講座・修了、グランゼコールの一つ、2004年 リール政治学院・夏期特別セミナー修了(European Summer University Program at Institut d’Etudes Politiques de Lille)。 フランス国立パリ第九大学・Dauphine修士課程に2004-05年に在学。 多国籍企業の経営戦略が研究テーマ。大学では”英語”で講義を 受け、語学学校でフランス語を勉強するというチョット変わった留学生活をおくる。2004年7月3日から2006年3月25日までフランスに滞在。リール、トゥール、パリにて生活する。数々の政治家にインタビューする。 共著『オカマは差別か』(ポット出版)、2002年1月。 編集・共著『常識を超えて』(ポット出版)、2002年6月。 単著『ゲイ@パリ 現代フランス同性愛事情』(長崎出版)、2006年10月。 単著『沸騰するフランス 暴動・極右・学生デモ・ジダンの頭突き』(花伝社)、2006年10月。 単著『フランスは最高!』(花伝社)、2007年6月。