米国のセックス革命を描いた映画『Inside Deep Throat』

アメリカ性革命・性解放の先駆けになったといわれることもある「ディープ・スロート」(Deep Throat)というポルノ映画はアメリカでたいへんな話題になった。政治・警察の標的にあい、制作者・関係者は逮捕・裁判されるまでに至った。
なぜか。同映画では不感症を悩む女性が医者の診察を受けたら、クリトリスが喉にあることが判明、深く男性器を吸うことによって感じることができる……という、今から見たら何ともトホホな内容(といっても、同作品を見たことがないのだが)。アメリカではblow job・fellationと呼ばれる、つまり男性器を女性なり男性なりが口で愛撫する行為はタブーであった。たとえば、州法でそのような行為を禁じているところがいくつもあった(現在でも残っているところがあるのではないかな)。アメリカという国は、成人間のベッドの営みにたいしても口を挟む、きわめて特殊な国なのである。
同映画の監督・俳優・女優・スポンサー、弁護人・検察官などに対するインタビューを基につくられたドキュメンタリー映画が『Inside Deep Throat』だ。2002年に自動車事故で死んだ主演女優のリンダさんがフェミニズム旋風の中で反ポルノの急先鋒になったことは日本でも知られている。しかし、その彼女が後にはフェミニズム運動からも離れ、一男・一女をもうけ、慎ましい家庭生活を楽しんだことはあまり知られていない。彼女は同ドキュメンタリーの中で、フェミニズムから利用されたことを認めていた。
ポルノ女優として一世を風靡した女性がフェミニストの闘士になり、最後は家庭に落ち着く……というのが何とも興味深かった。そして、エロ映画を目の敵にして徹底的に弾圧する、フランスでは「ピューリタニズムで基づく純潔主義」と呼ばれ忌み嫌われている、アメリカ的文化・社会の有り様が可笑しかった。
証言を切り張りしただけの退屈なつくりではあったが、性と表現の問題を考える上では貴重な作品であろう。

カテゴリー: 及川健二のパリ修行日記 | 投稿日: | 投稿者:

及川 健二 について

ジャーナリスト/研究者。 それまで一分もフランス語を学んだことがなかったのに、 フランス留学を決断。2002年UCLAエクステンションセンター・ 夏期英会話講座・修了、グランゼコールの一つ、2004年 リール政治学院・夏期特別セミナー修了(European Summer University Program at Institut d’Etudes Politiques de Lille)。 フランス国立パリ第九大学・Dauphine修士課程に2004-05年に在学。 多国籍企業の経営戦略が研究テーマ。大学では”英語”で講義を 受け、語学学校でフランス語を勉強するというチョット変わった留学生活をおくる。2004年7月3日から2006年3月25日までフランスに滞在。リール、トゥール、パリにて生活する。数々の政治家にインタビューする。 共著『オカマは差別か』(ポット出版)、2002年1月。 編集・共著『常識を超えて』(ポット出版)、2002年6月。 単著『ゲイ@パリ 現代フランス同性愛事情』(長崎出版)、2006年10月。 単著『沸騰するフランス 暴動・極右・学生デモ・ジダンの頭突き』(花伝社)、2006年10月。 単著『フランスは最高!』(花伝社)、2007年6月。