虹色の街(Gay @ Paris)

 「ゲイの市長」Bertrand DELANOEさんが働くパリ市庁舎から歩いて二分ほどのところにあるマレ地区はいろいろな顔を持っている。
 アロマグッズを売った雑貨店やそれぞれ個性ある店づくりをしている服飾店、異国情緒漂う商品を扱うインテリアショップ、独創的なブティックが並ぶファッションタウンとしての顔。
 店にはダビデの星のマークが掲げられており、店内には黒い服をきて顎髭と口ひげを長く伸ばしたラビの写真や絵画が貼ってあるレストランや、ファーストフード店が並ぶユダヤ人街としての顔。
 そして、レインボーフラッグを店頭に掲げたカフェやバーが並ぶゲイ・タウンとしての顔。行く曜日、行く時間帯によって、街の雰囲気はずいぶんと異なる。
 はじめてマレを私が訪れたのは、二〇〇四年九月中頃、日曜日の昼であった。フランスでは日曜日になると、大きなショッピングモールから街のスーパー、小さなブティックまで、ほとんどの店が閉められる。日本人にとってみれば、日曜日はショッピングを楽しめる休日なので繁華街は人であふれるが、フランスの場合、むしろ人気がなくなる。開いているのは一部レストランや映画館、テーマパーク、移民の店主が営む小さな商店ぐらいだ。ユダヤ教では金曜日が安息日にあたるため、日曜日は開店しているところが多い。ならばと思い、ユダヤ料理を食べるためにマレ地区にいった。
 ここの地区ではユダヤ教の料理店のみならず服飾や雑貨を扱うブティックを含めた多くの店が日曜日も開いており、道は行き交う人であふれ賑やかだった。道は極端に狭いので、歩行者を気遣って車はほとんど徐行状態で進んでいく。手をつないで歩く男性カップル、女性カップルも目にするが、夫婦や男女のカップル、ノンケ(異性性愛者)と思われる人々のほうが多い。ユダヤ教の正装に身をつつんだ男性もしばし、目にする。レインボーフラッグが掲げられたカフェの店内を除いてみると、男女のカップルのほうが多く、まるでゲイ向けの店には見えない。
 私はユダヤ人料理店に入り、ひよこ豆のコロッケに揚げたナスや野菜を厚いパンで挟んだファラフェル(Fallafel)を注文した。酸味のきいた白色のソースとコロッケ、野菜が調和していてボリュームがある割に、さっぱりした味だった。
 そのあと、何度か夜にマレ地区に足を運んだが、昼間はノンケばかりだったカフェも、男性カップルがほとんどだった。昼間とは違った陽気さで、まるでお祭りのような雰囲気だ。路上で見かける洗練されたファッションに身を包んだ男性のカップルや女性カップルの数も、昼に比べて断然多く感じられた。
 お気に入りの地区なので、週に一度は足を運ぶが、東京のゲイ・タウン、新宿二丁目に比べると、ずいぶん趣が異なる。新宿二丁目に足を踏み入れれば、知らない人でもそこがゲイ・タウンであろうということは察しがつく。しかし、マレはゲイ・タウンの臭いがそれほど露骨でなく、いわれなければゲイ・タウンと気づかない人もいるぐらいだ。
 まるで、ゲイ&レズビアンをはじめとする性的少数者のシンボルカラー・虹色を体現しているかのような街だ。各々の店・人が個性的な色を持っており、ゲイの世界とノンケの世界の境界が不透明だけれど、全体として調和を保っている。
 フランスの一つの側面を象徴する街だから、パリを訪れるときはぜひ、立ち寄るといいだろう。

カテゴリー: 及川健二のパリ修行日記 | 投稿日: | 投稿者:

及川 健二 について

ジャーナリスト/研究者。 それまで一分もフランス語を学んだことがなかったのに、 フランス留学を決断。2002年UCLAエクステンションセンター・ 夏期英会話講座・修了、グランゼコールの一つ、2004年 リール政治学院・夏期特別セミナー修了(European Summer University Program at Institut d’Etudes Politiques de Lille)。 フランス国立パリ第九大学・Dauphine修士課程に2004-05年に在学。 多国籍企業の経営戦略が研究テーマ。大学では”英語”で講義を 受け、語学学校でフランス語を勉強するというチョット変わった留学生活をおくる。2004年7月3日から2006年3月25日までフランスに滞在。リール、トゥール、パリにて生活する。数々の政治家にインタビューする。 共著『オカマは差別か』(ポット出版)、2002年1月。 編集・共著『常識を超えて』(ポット出版)、2002年6月。 単著『ゲイ@パリ 現代フランス同性愛事情』(長崎出版)、2006年10月。 単著『沸騰するフランス 暴動・極右・学生デモ・ジダンの頭突き』(花伝社)、2006年10月。 単著『フランスは最高!』(花伝社)、2007年6月。