コンドームような話(1) ……トイレもシャワーも男女共用の学生寮……

 パリの生活に慣れてしまうとさして気にならないのだが、日本から来たばかりの人ならばコンドームの自販機が地下鉄構内に設置してあるのを見て、奇妙に思うのではないか。パリの大きな駅には、コンドームの自動販売機が設置してあり、よく眺めてみると世界的なブランド「Durex」の製品であることが分かる。
 そういえば、国際大学都市(※1)の学生食堂近くにある男性用トイレにも、洗面台の隣にコンドームの自販機が設置してある。女性に確認してもらったところ、女性用トイレにも自販機が設置されているそうだ。私が現在、パリで住まう10階建ての学生寮にもコンドームの自動販売機が共用洗濯機の近くに設けられている。
 その数がどれほどかは分からないが、「女人禁制」の男子寮や「男子禁止」の女子寮が日本では未だに残っているそうだが、フランスにおいてはカトリック系をのぞけばたいていの学生寮では、異性の出入りは自由である。それどころか、トイレ・シャワーが男女共用で、同じフロアに男女が共に住み生活する。
 フランスに来て最初の三週間を別の学生寮で過ごしたが、トイレで小をしているときに女子学生が入ってきたり、風呂上がりの女子学生がタオルを体に巻いただけの状態で、廊下を歩いているところに出くわす度に、私は戸惑いを覚えたものだ。ショッピングをして寮の入り口に入ろうとしたとき、上階から呼び止められたことがある。上を見たら、タオルを巻いた女性が窓から上半身を出し、
「これから入るの?」
と、私に英語で話しかけた。
「そうだよ。なんで?」
と問い返したら、
「服を着ていないのよ」
 という答えが返ってきた。彼女の部屋から、多数の女性のケラケラ笑う声が聞こえてきた。想像するに、暑かったからおそらく服を着ない状態で、女同士で集まり、時には廊下に出たりしていたのだろう。
 パリ第九大学のキャンパスでも、一部、男女共用トイレが存在する。入るなり、女性が鏡の前で手を洗っているところに出くわすと、間違えて女性トイレに入ったかと思い、慌てて外に出て標識を確認する……ということが、通学した当初はしばしば、あった。
 パリの学生寮もトイレ、シャワー、キッチンが男女共用で、男女がそれぞれの階でともに生活する。各部屋にベランダがあるのだが、ベランダに敷居が着いていないため、何のことなく端から端へ歩けてしまう。私の部屋に遊びにきた友人が、
「これじゃあ、隣の部屋を覗けちゃうじゃん」
と、驚いていた。
寮を出ていく人が何人かいるので月によって異なるのだが、私を含めた14人が住む9階は、女性の数がたいてい男子より数人、上回っている。週末ともなると、恋人が部屋に泊まりに来る。彼/彼女らの恋人たちとも廊下やキッチンで何度も顔をあわせるものだから、すっかり顔見知りになってくる。コンドームの自動販売機が寮内に設置される理由も分かる。いつだったか、深夜、トイレにいったところ、シャワー室から男女が求愛している声が聞こえてきた。何とも賑やかである。
 少なからぬ日本人女性がフランスの学生寮に入ると、すぐに根をあげてしまうという話を聞いたことがある。男女共同のトイレやシャワーが耐え難いそうだ。ジェンダー・フリー教育が日本で進められれば、将来において事態は変わるのかも知れないが。
※1:国際大学都市については、機会を改めて紹介したい。

カテゴリー: 及川健二のパリ修行日記 | 投稿日: | 投稿者:

及川 健二 について

ジャーナリスト/研究者。 それまで一分もフランス語を学んだことがなかったのに、 フランス留学を決断。2002年UCLAエクステンションセンター・ 夏期英会話講座・修了、グランゼコールの一つ、2004年 リール政治学院・夏期特別セミナー修了(European Summer University Program at Institut d’Etudes Politiques de Lille)。 フランス国立パリ第九大学・Dauphine修士課程に2004-05年に在学。 多国籍企業の経営戦略が研究テーマ。大学では”英語”で講義を 受け、語学学校でフランス語を勉強するというチョット変わった留学生活をおくる。2004年7月3日から2006年3月25日までフランスに滞在。リール、トゥール、パリにて生活する。数々の政治家にインタビューする。 共著『オカマは差別か』(ポット出版)、2002年1月。 編集・共著『常識を超えて』(ポット出版)、2002年6月。 単著『ゲイ@パリ 現代フランス同性愛事情』(長崎出版)、2006年10月。 単著『沸騰するフランス 暴動・極右・学生デモ・ジダンの頭突き』(花伝社)、2006年10月。 単著『フランスは最高!』(花伝社)、2007年6月。