セミナーレポート


●過去のセミナーレポート(1998/11/3)

第12回セミナー「『新しい読書』をめぐって…」当日レポート
日時:1998.12.6(日) 会場:シニアワーク東京
(報告者:太田温乃)

 私たちは、コンピュータの画面上で、そしてWeb上でテキストを読んでいる。今回、講師にきてくださったのは、この方式に関わる環境を整備し、実践と普及に励んでいる方たちである。
  紙の本でテキストを読むことは趣味の問題となり、この方式がいずれ標準になる時代が来るだろうと考え、仲間たちとWeb上の本棚「青空文庫」を開設している富田倫生氏。
  Webパブリッシングで、誰でもが小額課金と集金ができるようにと「投げ銭システム」を模索・試験運用中の松本功氏。
  「オンライン・テキストの長所は即時性。これは魅力的」と話してくれた、テキスト・ビューワーである「T-Time」の開発元:ボイジャーの萩野正昭氏。
  いずれも熱意に溢れたかたばかりで、時間が短く感じられた。
  このほか、著作権は放棄しないが、転載自由で読者が好きなだけ印税を払うドネーション小説「スレイブ」の発行人:沢辺均氏による、オンライン出版活動への反論と応援があった。
  質疑応答の時間には、「採算はとれているのか」「文字と組版といういわゆる敵陣みたいな所に富田さんがのりこんできたのは、また世話人が招聘したのはなぜ」などという鋭い質問が飛んだ。富田氏の組版オプション論に対して、鈴木一誌氏が疑問を呈するシーンもあった。
  休み時間には富田氏によるT-Timeのデモンストレーションがあり、たくさんの人が見ていた。富田氏のT-Timeの2大使途は、Webブラウジングとテキスト校正作業だそうである。早速私も試してみたいと思った。
  個人的にはモニタを眺めるより美しい本を眺めているほうが好きな性質だが、実際仕事上では否応なく画面上でのテキスト読みを強いられているという人は少なくないだろう。でも、だからこそ、休みのときは美しい本を眺めていたいのではないか。モニタでの作業は目が疲れる。
  だがしかし、即時性・Webでの共有性などを考えると、オンライン出版もひとつの方法だと思う。テキスト・データも紙の本も、本質は同じ情報の伝達である。いずれもコピー(複写)を重ねるにつれ、取捨選択や劣化(磁気も劣化するし、ハードディスクは劣化する)が起こるのも同じだ。
  ひとつ手段が増える。そしてそのためのインフラが整備されることは、今後の社会にとって必要なことなのだろうと実感できた会であった。

富田倫生氏

松本功氏

萩野正昭氏

沢辺均氏

質疑応答の模様


会場の模様


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