山田昌弘『希望格差社会』


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● 山田昌弘『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く (ちくま文庫 や 32-1)

★★★★ 読みたかないが読まずにはいられない現実

大学の講師をしていたときに、女子大生の楽観的な未来予想図にいらだちを抱いたものだ。「卒業したら一応就職して、いい条件の相手と結婚して、専業主婦になります」。若い世代は意外と保守的な考え方を持っていた。「いい条件の相手って、絶対数が少ないんだから、つかまえるのは難しいよ」などと意地悪なつっこみを入れても、若い女性というのは妙な自信を持っているのである。「大丈夫」。

しかし現実は、社会に出て数年で彼女たちからその余裕を奪うことになるだろう。学歴エリートでもなく、女優のような美貌を兼ね備えているわけでもなく、(これはその場で質問したことだが)とりたててお金持ちでもない女子に、顔がよくて、お笑いのセンスがあって、高学歴で、稼ぎがいい男が回ってくる確率はかなり低い。

けれども今思えば、女子大生たちに(それが妄想に近いものであっても)希望が存在することはまだマシな状態なのかもしれない。希望がなくなったときにこそ、本当の悲劇が生じるのだから。そんな深い絶望を教えてくれる本が『希望格差社会』である。著者は『パラサイト・シングルの時代』『パラサイト社会のゆくえ』などで現代日本の家族のありように、鋭い分析を加えてきた社会学者である。

山田昌弘氏は本書で「リスク化」と「二極化」という二つのキーワードから日本社会をとらえようとしている。「リスク化」とは「いままで安全、安心と思われていた日常生活が、リスクを伴ったものになる傾向を意味する」。「二極化」は「戦後縮小に向かっていた様々な格差が、拡大に向かうこと」。

それを家族問題にフォーカスしてみると、「リスク化」のほうは、結婚したいのにできない確率の上昇として現れている。その要因として、結婚後に生活水準を下げたくないという未婚者の傾向が挙げられ、その結果、低収入の男性と、親が高所得の女性の未婚率が高くなっている。結婚相手を獲得する自由競争が激化していることもその理由だと言う。

また配偶者に対する期待水準が高まったことで、その要求が満たされないストレスが離婚率を押し上げている。右肩上がりが望めない夫の収入の不安定化、介護の負担も、結婚生活に悪影響を与えてることは間違いない。

「二極化」は、俗っぽく言えば、家族生活が「勝ち組/負け組」に分かれ始めているということを言う。経済的な強者は強者と連合する傾向にあり、そこからあぶれた弱者は弱者と組まざるを得なくなる。あるいは、孤立したまま社会に存在することになる。中流社会と呼ばれた日本に階層が生まれつつあるのだ。また、そうした状況が少子化の背景にもなっている。

本書は、日本がすでに、それぞれが抱く希望ですら格差がある社会になってしまったことに警鐘を鳴らす。希望がなくなれば人々は益々活気を失い、国も先行きが不透明になるばかりだ。目先景気などよりも、希望の喪失ほど重篤な問題はない。

読み通すと暗くなるばかりの一冊だが、我々が希望というものを取り戻すことができる可能性は、もはや、冷徹なまでに現実を見据えた先にしかないのだろう。

*初出/現代性教育研究月報(2005.10)