原作は読んでなかったのですが、映画業界のみならず、出版、テレビ、旅行業界まで巻き込んだ大騒ぎだけに、大いに期待して観に行ったら……。たしかに全世界一斉公開にするしかないでしょ、てな作品だった。あれじゃ、初動で儲けるしかないよねえ。暗殺者くんの、一人マゾ・プレーが面白いくらいで(笑)。
やはり伏見の、人生で感動した映画ベスト3は、1位『ブロークバック・マウンテン』、2位『エクソシスト』、3位『サウンド・オブ・ミュージック』のまま! 2位を出すとみんな笑うんですが、ナニカ?
投稿者「伏見 憲明」のアーカイブ
建前をバカにできんぞ
『男子のための恋愛検定』を書いた動機の一つのは、大人が建前を語るのは結構大事なことなのではないか、という問題意識です。やっぱ世の中、建前がなかったら成り立たないわけで、それが他人とのクッションになっている面は無視できない。なんでも本音、つまり欲望そのものをぶつけあっていたら、関係も社会も成り立たなくなってしまう。
伏見の人生にとって何より大切なのは自由です。もう絶対的に自由が重要(子供の頃からそのプライオリティはまったく変わらない)。だけど、自由は「本来ならばそこにあるもの」ではなく、「他者や社会との緊張の中でどうにか確保するもの」だと考えています。
●伏見憲明『男子のための恋愛検定』(理論社) 1200円+税
書店に行くのが面倒だという方はアマゾンでご注文ください。←なぜか命令調
中国人にグリグリ
今朝も新宿から朝帰り。
深夜二丁目で仕事を終え(店子ではない)始発まで時間があったので、新宿駅近くのマッサージ店で鉛のようになった肩をもみほぐしてもらう。この店、何度か行っているのだけど、店構えの怪しさのわりにマッサージ師にハズレがない(ハズレまくりなのは二丁目の○○よ!)。ニキビ面の中国人青年、チン君(勝手に命名)に激しくグリグリやられて、至福の時。チン君、玄界灘みたい!
それにしても、いったい何のためにこんな肩が凝るようなことをしてしまうのか。中年オカマの業の深さゆえ? でも人様の見せ物になった上に、自腹で高いマッサージ料を払うのはなあ……
アイデンティティ懐疑はもうよろし
岩波書店が最後の(思想的な)力を振り絞って?プッシュしている柄谷行人著『世界共和国へ』を読んだ。非常に刺激的な内容で考えさせられるものがあったのだが、そこに以前、上野千鶴子編『脱アイデンティティ』を読んだときに伏見が素朴に思った疑問が、思想的な文脈で主張されていた。いや、もちろん柄谷氏はあの本に向けて反論しているわけではないのだけど。
「カントによれば、統整的理念は仮像(像)である。しかし、それは、このような仮像がなければひとが生きていけないという意味で、「超越論的な仮像」です。カントが『純粋理性批判』で述べたのは、そのような仮像の批判です。その一つとして「自己」があります。同一であるような自己とは仮像です。ヒュームがいうように、同一の自己は存在しない。たとえば、昨日の私は、今の私ではない。それらが同じ一つの私であるかのようにみなすことは仮像である。しかし、そのような仮像は生きていくために必要です。今の私は昨日の私と関係がないということでは、他人との関係が成り立たないだけでなく、自分自身も崩壊してしまう。だから、同一の自己が仮像であるとしても、それは取りのぞくことができないような仮像なのです」
これって、野口勝三氏のクィア理論批判に通じる論旨ですね。大学でジェンダースタディーズとかを学ぶとみんな、アイデンティティ懐疑みたいな方向に(制度的に?政治的に?)導引されてしまうのだけど、いつまであんなことやってるのかねえ……。バトラー祭り?(笑) どうせなら、もっと論理的に野口批判とか柄谷批判とかを展開すればいいのに。まあ、そんな勇気もないのだろうけど。
朝帰りの興奮
昨晩は取材の流れで、どうしたわけかエイズ対策をやっている行政関係の皆さんと二丁目で飲むことになった。そこでこれまで官僚に対して偏見を持っていた自分を深く恥じた。皆さん、優秀なばかりでなく、思考も柔軟で、驚くほど仕事に情熱を持った人たちだった! エイズ問題に関して、本音では半ば諦めかけていた自分を反省した。いまこれだけ行政の人たちがやる気になっていてくれるんだから、ゲイの自分が努力しなくてどうする、と。
そして改めて、社会運動にある観念的な対抗主義が無意味であることを痛感した。建設的な批判や抗議はあって然るべきだが、コンセンサスの政治こそ重要だ。左翼的な情緒を満足させようとするムーブメントは百害あって一利無し。
深夜までみなさんとごいっしょしていたのだが、始発で帰るときも興奮覚めやらず。目から鱗の夜であった(酒席のことなんで、詳しくは書きませんが)。
半年で100万カウント
伏見憲明・公式サイトに新装開店(2005.11)して半年が経ちました。オペレーターの日高先生に、デザインもプチ改装してもらいました。わかりました? 以下はカウントについて。
死に体だったメイキング・オブ・QJrのサイトは、それでも毎日500カウントくらいあったのですが、伏見サイトにリニューアルして更新をはじめると、すぐに3000/日くらいになり、横ばいに。12月末、『同性愛入門』のネット公開でゲイメディアを中心にパブをしていただいた結果、一気に17000/日カウントに上昇。しかし、当然のことながら流入した人の多くはすぐに立ち去り、どこで底になるのかと見守っていると、先月くらいに4500/日あたりで減少が止まりました。そしてそこからまた上がってきて、先週は6527/日まで回復、という流れになります。
カウントは更新の頻度が高ければそれなりに上がるし、記事としては日記的なもののほうが受けがいいようです。すでに媒体に発表した原稿をアップロード(無料公開)しても、それほどのありがたみがないようで(まあそうだよな)、かえってカウントが落ちる。ネットでは内容よりもリアルタイムな感覚を共有することが大事なんだと、朧げながらわかりました。客筋的にはどうなんでしょう。ゲイの方が多いとは思いますが、それに加えて、伏見本の一般読者、出版関係者……という感じでしょうか。カウントがこれだけあると(月にすると15万カウント、ちゃんと計算していないけど、半年で100万カウントくらいになっている)、有料メルマガ化して閉じるより、その影響力がどうなっていくのかを見てみたくなり、まだこのままでいこうと思っています。
ただ、あんまり暖簾に腕押しだと更新のモチベーションが下がるので、みなさん感想など送ってくださいね。冷ややかに見ている来訪者ばかりではない、と信じたいのですー(笑)。感想メールはこちらまで。
Act Against Homophobia
というキャンペーンを大阪府議の尾辻かな子さんたちがはじめた。伏見も応援メッセージを寄せさせていただいている。キャンペーンの内容等については以下のブログをご覧ください。
http://actagainsthomophobia.txt-nifty.com/blog/
尾辻さん、やる気もアイディアもあっていいですねえ。自戒を込めて言えば、どうも活動家って、何かに文句をつけて情緒的な満足を得る、とか、自己実現のアイテムとして運動を利用する、とか、自分の人生の不全感を反差別で解消しようとしている、といったタイプが少なくないけど(偏見?)、彼女は違う。ちゃんと身のある成果を得ようとしている。さすが政治家だけあって、理念と現実を足して2で割って行動できるところが、これまでの女性活動家にはない点ではないだろうか。伏見も微力ながら応援していきたい。
ちなみに、尾辻さんには、次号のQJrに「レインボートーク2006」を終えたところでのビジョンをご寄稿いただいている。
映画『セキ★ララ』
職業柄、いろんな配給会社から毎日、試写状が送られてくるのだが、なかなか会場に伺うことができない。とくに映画ファンじゃないので情熱がないこともあるが、何分、荒川の向こうに住んでいるがゆえ、試写を観ようとすると半日がかりになって、タイミングが難しいのだ。この『セキ★ララ』もお誘いいただいていたにもかかわらず、上映日を逃してしまった。だけど、監督の松江哲明さんのご配慮で、今回特別にビデオを拝見することができた(←偉い映画評論家みたいでいやらしい)。
松江さんとは「クィア・ジャパン」の旧シリーズの座談会に登場していただいてご縁がある。キムチが食べられない在日3世として、自身のアイデンティティを探った『あんにょんキムチ』を監督された頃で、ゲイの伏見と、部落の角岡伸彦さんらと差別とアイデンティティをテーマに議論をしたことがある。
今度の作品も在日や中国からの留学生などが主人公で、アイデンティティをめぐるドキュメンタリーになっている。それもAVの撮影がらみで。そこがいい。伏見の持論は、人は上半身ではなかなかつながれないけど、下半身だったらすぐに仲良くなれる、というもの。伏見のふだんの会話がチンコケツマンコに終始しているのも、何かと対立しがちな価値観や政治的な立場に触れないように気を配っているからである(ホントか)。
この作品を観ていると、やっぱ性愛って人と人を結びつける媒介としてすばらしい、と実感する。セックスシーンもなかなかエロくてよろしい(とくにAV男優の花岡じった氏の中年の腰つかい)。人はその瞬間においては、国境やアイデンティティを溶解させることができる。それは可能性だ。日韓両国の関係も今、上半身(竹島)から解決しようとすると益々こんがらがってくるけど、下半身(ヨン様)から付き合おうとすれば濡れ濡れなんだよね。セックスまんせー!
*『セキ★ララ』の上映は、6/3からレイトショーでシネマアートン下北沢で。5/27〜6/3には松江監督の『あんにょんキムチ』『カレーライスの女たち』もリバイバルレイトショー上映されるとのこと。
日本一美味しいちゃんぽん屋
前にエッセイにも書いたことがあるのだが、伏見が二丁目でいちばん通い詰めているお店は、どのゲイバーでもなく、長崎亭さんになる(写真)。もう四半世紀もこちらのちゃんぽんのお世話になっているのだ。あの美輪明宏さんも故郷の味を求めていらっしゃるようで、伏見も以前お姿をお見かけしたことがある。長崎にももうなくなってしまった伝統の味を引き継いでいる店だ。
最近、店主のおばさんの都合で店を開けていないこともままあるで、しばらくタイミングが合わなくて食べ逃していた。先日、数ヶ月ぶりに暖簾をくぐることができたのだが、そのときにおばさんに聞いた話しによると、このお店、なんとテレビドラマの「夜王」のロケに使われていたそうな。伏見はそのドラマをすっかり見逃していたので、DVDになるのがいまから楽しみ。
二丁目にお越しの際には、ぜひ一度は食べてもらいたいお店だ。安くて美味しい名物ちゃんぽんをご賞味ください。
ゲイマーケットの認知?
日経新聞にLGBTマーケットについての大きな記事が出たのも驚いたが、アゲハのゲイナイトで松田聖子がシークレットライブを催したというニュースにも感慨深いものがあった。ついに日本でもゲイマーケットが意識されはじめてきた? ユーミンナイトに降臨した松任谷由実といい、アゲハの聖子といい、斜陽のディーバが最後の杖に頼む程度には、この国にもゲイマーケットは存在しているのかもしれない。