新年おめでとうございます
昨年中はご支援、ご声援ありがとうございました。
本年もよろしくお願い申し上げます。
07年はしょっぱなから、『欲望問題』(ポット出版)で一石を投じます。近くこのサイトでも「欲望問題プロジェクト」が始動しますので、チェックしてみてください。伏見としては、腹をくくって、パワー全開で、自分のメッセージを発信していくつもりです。
テーマは「王様は裸だ!!」
その後も、第二小説やエッセイ集を出す予定です。またネットで新しい企画もスタートするかもしれません。07年の伏見憲明に乞うご期待!
みなさん、ごいっしょに一年間歩んでいきましょう。
元旦
伏見憲明
投稿者「伏見 憲明」のアーカイブ
いただいたご本『よろしく青空』
年も押し詰まり、中野翠さんから単行本が送られてきました。サンデー毎日で二十年以上も続いている連載コラムの06年分が収録された一冊です。
伏見は毎年この時期、中野さんのコラムをたどりながら一年を振り返ります。いつもながらいろいろな出来事があり、それに自分の歩みを重ねながら、その年の反省と来年の抱負を考えます。
「この世はわけがわからないけれど、いや、わけがわからないからこそ、やっぱり面白い。生きるに値する」。いつもながら中野さんの瑞々しい感性にうっとりとします。軽やかにあり続ける彼女は、伏見の目標ですね。
● 中野翠『よろしく青空』(毎日新聞社)1238円
養子を迎えました。
といっても猫ちゃんですが。里親募集のサイトにアクセスして新しい家族を得ることにしたのです。
我が家は余命いくばくもない老婆と、更年期障害の中年男の二人暮らしなので、最近どうも死臭が漂っていて(笑)このままじゃあヤバいということになり、禁欲していた猫との暮らしをはじめることにしました。おととしにブーニーを亡くして以来、もう猫はやめようと母と言っていたのですが、背に腹は代えられず。
しかし、子猫ってすごく元気! なんか目が回ってしまいます。生後3ヶ月って生命力がスパークしていて、圧倒されますね。黒白の雑種で、祖母の名前をとって「フクちゃん」と名付けました。雌猫で相当気が強そうなので春日局っぽいし、シニカルな表情をするところは『ハッピーマニア』のフクちゃんに似ていないこともないし……。
伏見はこのところ単行本を二冊書き上げて(『欲望問題』の刊行は2月頭)、もうすっかり仕事をする意欲をなくしていたのですが、そうだ、この子を育てるためにがんばらねば、とがぜん奮起。お父さん(というかお母さん)ガンガン稼ぐわ。来年は書評だってインタビューだって取材だってなんでもやるつもりなので、編集者のみなさん、どーんどん仕事持ってきてちょーだい。はすっぱな仕事大歓迎よ。よろしくです!
いただいたご本『高齢化社会と日本人の生き方』
以前にもこのサイトで紹介したことがある社会学者の小倉康嗣さんの博士論文が単行本として出版された。
「〈生き方としての学問へ〉ーー。老いの季節を迎えんとする『団塊の世代前後の現代中年と、30代でゲイでもある研究者が、それぞれに社会と対峙した経験をたずさえ、出会って生成される新たな人間存在の地平。それを、両者のライフストーリーの螺旋のなかから渾身の力で描き出す、人間生成のとエイジングの社会学』。
上記の帯のコピーの通り、この大著は著者とインタビューイの人生が織り込まれたタペストリーである。ぼくはあとがきを読んでいてどうにも切なく、涙をこぼしそうになった。それは書き手を直接知っているからではなく、人が生きるということの切実さが行間にほとばしっていたからだ。自分の生き様をもって学問する。そんな気概に深く打たれた。最近バトラーとセジウィックを使って社会を分析してみました、みたいな安直な論文を読んだ後だっただけに、よけいこの本の圧倒的な力に気圧された。
「自分に刺さった『棘』にフタをせず、その『棘』を一生懸命に生きると、社会を相対化する目が見開かれてくる。みずからの人生、そしてみずからが生きる社会は、わが身でつくっていくのだという深い了解が生まれる。そこから新たな生き方づくり・社会づくりへの模索が始まる」。これから社会学や他の学問をはじめる学徒たちにぜひとも読んでもらいたい。学問をするということが、誰かの理論をなぞることだったり、自分の情緒を満足させることではなく、自分の実存とそこに映し出されるものとの闘いと共生の営みであることがわかるだろう。
● 小倉康嗣『高齢化社会と日本人の生き方ーー岐路に立つ現代中年のライフストーリー』(慶應義塾大学出版会) 5600円+税
岸田今日子さん、ありがとうございました
女優の岸田今日子さんがお亡くなりになった。突然の訃報だったのでとても驚いている。
伏見は「クィア・ジャパン VOL.5ーー夢見る老後!」(勁草書房)の表紙を岸田さんにお願いしたことがあって、撮影と打ち合わせのときの2度ばかりお目にかかった。そばにいるだけでやわらかい光に包まれているような気分になって、なんとも言えず心地よかったことを覚えている。とても澄んだ空気をまとった方だった。
QJみたいな雑誌の表紙も、大女優なのにボランティアみたいなギャランティで引き受けてくださり、こちらの不躾な要望にも応えてくれた。反戦ばかりでなく、差別問題にもセンシティブな意識があったのだ。本当の意味で美しい女性だったのだと思う。
心からご冥福をお祈りいたします。
いただいたご本『ものしり英語塾』
作家の松本侑子さんがNHKのラジオ講座で講師をされるとのことで、テキストを送ってくれました。『赤毛のアン』の翻訳者、研究者として評価の高いユウコ・マツモトですから、当然と言えば当然でもありますが、さすが才女ですね。怠け者の伏見としては、しっかり仕事しているなあと尊敬するばかりです。
よく大学が作家を招聘しますが、彼女のような人こそ、正式な教授として文学部に迎えられるべきでしょうね。講義として教えるべき言葉を持った数少ない作家だと思います。
何度挑戦してもワンシーズンとまともに聴講できなかったラジオ講座に、伏見もまた再チャレンジしてみようかしらん。でも根気がないとなあ……。
●NHKラジオ/松本侑子「ものしり英語塾」350円
いただいたご本『世界を信じるためのメソッド』
最近、やたら耳にする「メディア・リテラシー」。本書によると「メディアを批判的に読み解く」とか「メディアを主体的に受け取る」という意味だ。テレビメディアが圧倒的な影響力を持ち、ネットが玉石混合の情報を垂れ流すこの時代、これほど重要なテーマはないだろう。「よりみちパン!セ」の中に「メディア・リテラシー」を語った一冊が入ることは、子供たちの将来のために有益だと思った。著者は、この問題を論じるにあたってこれほど適した人物はいないであろう森達也氏。テレビディレクターであり、作家である彼の言葉は、非常にリアリティがあって重い。わかりやすい文章でありながら現代の本質を突く一冊である。
● 森達也『世界を信じるためのメソッドーーぼくらの時代のメディア・リテラシー』(理論社/よりみちパン!セ) 1200円+税
いただいたご本『死にたくないが、生きたくもない』
幻冬舎もいよいよ新書を創刊ということです。もはや有名出版社で新書をもたないところはないといって過言ではない時代です。きっと書店での書棚争いは熾烈をきわめているのでしょうね。
さて、その幻冬舎新書の第一弾に含まれている小浜逸郎氏の本をお送りいただきました。タイトルは「死にたくないが、生きたくもない」。この頃、自分でも心の中でよくつぶやいていた言葉だったので、ちょっと驚きました。ホント、いまやこんな気分。自殺を急ぐ子供たちに、「この世はやはり生きるに値する価値がある場所なんだ」と胸を張って言うことにためらいがある伏見としては、この辺りが最終防衛ラインですね。はあ。
まだ熟読しておりませんが、小浜さんらしい、夢希望もないけれど、現実と生活に即して「老い」を考えていこうという一冊のようです。アンチ・エイジングという標語に惑わされたくないあなたにお薦めでしょう。
● 小浜逸郎『死にたくないが、生きたくもない』(幻冬舎新書) 720円+税
田亀源五郎、村上隆、そしてポット出版

先日(11/23)にアップリンクで行われた『日本のゲイ・エロティック・アートvol.2』の刊行イベント「原画展+トークショー+フィルム上映」に行ってきました。本当は、仕事が片付かない上に体調が悪くて、ギリギリまで布団の中で悩んだのだけど、田亀源五郎氏と村上隆氏(!)が対談するなんて、どう考えても見逃せない。
そして、やはり、行って大正解! 対談はめちゃくちゃ興味深く、アート音痴の伏見でさえ時間を忘れて聞き入るようなスケールの大きな話しでした。村上氏はアーティストというよりマーケッター+評論家という口ぶりの方で、とてもシャープな分析眼を持っているようにお見受けしました。対する田亀氏のほうも独特の世界観を機関銃のように言葉にしながら、時代の寵児と四つに渡り合っておりました。
いまや現代アートの頂点に君臨しているように見える村上氏と、アンダーグラウンドながら高い評価を得て来た田亀氏の邂逅から、何かクリエーションが生まれるような火花を感じました。今回、村上氏がゲイアートを面白がり、作品の購入にまで意欲を見せたことによって、アートシーンでもゲイアートが評価される可能性もあると思います。なにせ、「目利き」である村上氏の保証が得られたわけですから。会場にはテレビやラジオなども取材に入っていて、もしかしたらこれが今後思いもよらない流れを作っていくのではないか、と「歴史的瞬間」に立ち会った気がしている伏見であります。
それにしても、村上隆氏を引っ張り出すことに成功したポット出版も、本当にすごい。もちろん田亀氏のアーティストとしての魅力がそれを可能にしたわけですが、こんな奇想天外なイベトを実現してしまうフットワークの軽さは、あっぱれとしか言いようがありません。身びいきに聞こえるかもしれませんが、こういう発想ができる出版社がいま他にあるでしょうか? メジャーとマイナーの境界をゲリラ的に侵犯していくポットは、やはり大したエネルギーだと拍手を贈りたくなりました。
菅沼勝彦さんの論文
メルボルンの大学の博士課程で学んでいる菅沼勝彦さんが、ウェブジャーナル「Intersection」で、伏見の『プライベート・ゲイ・ライフ』(1991)と掛札悠子さんの『「レズビアン」である、ということ』(1992)についての論文を書かれたとのことで、ご連絡をくれました。
英語力に難のある伏見は、まだどんな内容なのかをちゃんと把握していませんが(笑)、そんな古い仕事に光を当ててくださっただけでも嬉しく思う次第です。それが批判的な内容であっても、悪名は無名に勝る? ありがたいことです。来年1月刊行予定の『欲望問題』は、ある意味で『プライベート・ゲイ・ライフ』を根幹から否定する内容ですが、どの本もそのときの自分の精一杯の思考の結晶で、それがなければ今日には至らなかった過程です。自分の過去のいちページを他人がどう読むのか、興味深くも気恥ずかしくもありますね。
http://wwwsshe.murdoch.edu.au/intersections/issue14/suganuma.htm