投稿者「伏見 憲明」のアーカイブ

伏見 憲明 について

作家。 1963年生まれ。 著書に『魔女の息子』(第40回文藝賞受賞/河出書房新社)、『さびしさの授業』(理論社)、『ゲイという[経験]増補版』(ポット出版)ほか多数。 編集長として『クィア・ジャパン vol.1〜5』(勁草書房)、『クィア・ジャパン・リターンズ』(ポット出版)を刊行。 詳細なプロフィールへ→

いただいたご本『あのころ、先生がいた。』

hiromi.jpg師走も押し詰まってからさまざま本が届きますが、今回は最近小説も絶好調の伊藤比呂美さんがパン!セに書き下ろしたエッセイ。ご自身の学生時代の「先生体験」があたたかい文章で綴られています。

伊藤比呂美さんには田中美津さんがらみで何度かお目にかかったことがあるのですが、その毒々しいキャラに当時鮮烈な印象を持ちました(笑)。彼女の自作の詩の朗読はもう「芸」の域に達していて、初めて目の当たりにしたときには口があんぐり。すンごいんです!

あれから十数年が経ちますが、どうやら伊藤さんは最近はアメリカで暮らしていて、かの国と日本を行ったり来たりしているようですね(なんか豪華な人生)。この本を読んでいたら、久しぶりにまた彼女の朗読を聴きたくなりました。

● 伊藤比呂美『あのころ、先生がいた。 (よりみちパン!セ 31) (よりみちパン!セ 31)』(理論社/よりみちパン!セ) 1200円+税

いただいた論文「明治期における学生男色イメージの変容」

danshoku.jpg先日のクィア学会で知り合った、京都大学大学院の博士課程で学ぶ前川直哉さんから論文をお送りいただいた。「教育社会学研究第81集」(2007)からの抜刷で、タイトルは「明治期における学生男色のイメージの変容」。

こうしたテーマでは古川誠さんの先行業績があるが、前川さんの論文はさらに埋もれていたテキストを掘り起こし、分析したものになっている。前近代から近代の転換にあたって、日本の「男色」がいかにして「同性愛」にパラダイム・シフトしていったのかは、まさにブラックボックスのなかで、前川さんが新たに付け加えた解釈は実に興味深い。それほど単純でない変容の内実を明らかにしている。

伏見も戦後の同性愛について論文としてまとめようかと考えているので、おおいに参考になった。前川さんのような有意義な仕事をされる研究者が増えることは、歓迎すべきことだ。お送りいただいたことに感謝!

● 前川直哉「明治期における学生男色イメージの変容」

いただいたコミック『君を知るや南の獄』上下

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田亀源五郎さんが雑誌「ジーメン」に連載していた『君を知るや南の獄』が単行本(上下刊)にまとめられた。装丁も凝っていて、ポット出版と田亀さんとのコラボレーションは非常に上手くいっている。

舞台設定は終戦後の米捕虜収容所内、米軍士官と日本人捕虜とのSMの物語。ホモソーシャルとホモセクシュアルの関係が交叉し、隠された愛の秘密が明らかになる……。

描画の緻密さにうなりながら、複雑なエロス感情の機微を堪能できる傑作だ。

セジウィックに読ませたいコミックですかね?(笑)

● 田亀源五郎『君よ知るや南の獄 上』上下 各2500円+税(ポット出版)

いただいたご本『本日、東京ロマンチカ』

nakano.jpg今年も中野翠さんから、一年間のコラムをまとめたご著書をお送りいただきました。

サンデー毎日などの彼女のコラムを時系列にたどりながら、一年を振り返るのが年中行事になりましたが、振り返ると、本当にいろんなことを忘却しています。あの事件って今年だったっけ!?みたいなことが多く、どんなに陰惨で、猟奇的な事件でも、それをあっという間に忘れ去っている自分と、そういう時代が怖くなりますね。

しかし、相変わらず、怒ったり喜んだり、喜怒哀楽をまっとうしている中野さんはすごいなあ。ぼくなんて、そういう情感すら忘却している気がするのだ、最近。←単に衰えたってこと?!

● 中野翠『本日、東京ロマンチカ』(毎日新聞社)

いただいたご本『テメレア戦記』

teresenn.jpg友人の翻訳家、那波かおりさんから新刊をお送りいただいた。小説からノンフィクションまでさまざまなジャンルを訳している彼女だが、今回は歴史ファンタジーということで、金のにおいがプンプンしまっせ〜(笑)。←下品

なんといってもあの「ロード・オブ・ザ・リング」の監督、ピーター・ジャクソンが映画化することが決定しているというのだ! これはもう大ヒット間違いないでしょう。

物語もすごく面白そうで、こんな感じ。

「テレメアーーーそれは誉れ高きドラゴン。漆黒の翼はためかせ、この世に舞い降りた。清廉なる海軍将校ローレンスと深き絆を結びしその竜は、高貴なる血がため、苛烈な戦いへと赴く宿命にあった……」

「ハリーポッター」とか「ロード・オブ・ザ・リング」の系統が大好きな伏見には(実はファンタジーな性格なの)、たまらないものがあります。このお正月にじっくり読ませていただきましょう。

●ナオミ・ノヴァク著/那波かおり訳『[テメレア戦記] I 気高き王家の翼』(ヴィレッジブックス) 1600円+税

いただいた雑誌「サイゾー」

saizo.jpg「サイゾー」でオネェ特集?が組まれています。TV番組「おネエ★MANSに賛否/カルーセル麻紀も吠えた!/オカマと呼べない理由」という記事。

これまで雑誌のゲイ特集というのはたくさんあったが、オネェ特集というのは記憶がないので、けっこう面白かった。オネエタレントの歴史とか年表になっていて(ちょっと足りない感じもしたけど)。カルーセルねえさんのインタビューがいいね!

伏見もちょっとインタビューに応じましたが、まあ、それは例の「オカマ論争」についてですが。←運動へのおさえってやつね(笑

● 「サイゾー」08.1 690円

いただいたご本『カミングアウト・レターズ』

coming_out.jpgいまさらカミングアウト本? なんて思ったあなた、この本はなかなか侮れませんぜ。なんてったってカミングアウトする側の声ばかりでなく、された側の親御さんや教師の赤裸々な声が聞けるのだから。

これまでのこの手の本は(伏見の本も含めて)ゲイやレズビアンの気持ちを代弁するものだった。が、それだけでは片手落ちだった(これ差別表現?)。『カミングアウト・レターズ』は当事者ばかりでなく、自分の子供に性的少数者であることを告げられた家族の気持ちのリアルに分け入っているところが面白い! 面白いなんて言ったら怒られてしまうかもしれないが、読み物としてもちょっと感動を味わえるエンターテイメントに仕上がっている。

ryojiカミングアウトとは一方的に少数者の側がするものではなく、それを受け止める側とのコミュニケーションのことを言う(べきだ)。本書はそういう意味では、初めてカミングアウトを立体的にとらえた一冊になっている。差別に置かれながらも可能性に開かれている日本のゲイやレズビアンの「いま」を、見事に映し出しているだろう。

まあ、そんな肩肘張った読み方をせずとも、親と子の自立の物語のヴァリエーションとして、多くの人たちの琴線に触れること間違いなし。そうとう斜に構えて読みはじめた伏見も、途中ぐっと胸に迫るものがあったくらいで。

写真の兄貴は編者の一人、RYOJIさん。とってもエロエロなフェロモンを出していて悩殺!

● RYOJI+砂川秀樹編『カミングアウト・レターズ』(太郎次郎エディタス) 1700円+税

いただいたご本『性同一性障害と戸籍』

douitu.jpg緑風出版の「プロブレムQ&A」シリーズから新刊が出ました。針間克己・大島俊之・野宮亜紀・虎井まさ衛・上川あや氏による『性同一性障害と戸籍』。

性同一性障害についての概論から戸籍変更のノウハウまでがわかりやすくかかれている。当事者にとっても、それに関わる人たちにとっても使い勝手のある一冊。

一家に一冊はいらないが(笑)一図書館に一冊は入れてほしいと思うのだが。

● 針間克己・大島俊之・野宮亜紀・虎井まさ衛・上川あや『性同一性障害と戸籍―性別変更と特例法を考える (プロブレムQ&A)
緑風出版 1700円+税

いただいたご本『ついていったら、だまされる』

damasareru.jpgまたまたよりみちパン!セからの一冊。今度の本は「キャッチセールスにデート商法、出会い系サイトに悪質オーディション……「自分だけは大丈夫」と思っているヒトほど、じつはいちばん危ういのだ! 世の中にあふれる「甘いコトバ」に誘われてタイヘンなことになる前に、キミをねらう詐欺やワナの手口のよみときかたを、手とり足とり、教えます」。

これも重要なテーマですね。いまどきの社会、子供のころからこういうことを教えておくのが大切かも! てか、大人も知っておいたほうがいいだろう。実に使える若者向けの本だ。

寡聞にしてこの著者のことを知らなかったのだけど、「キャッチセールス評論家」として活躍されているのだそうだ。いやあ、世の中にはいろんな評論家がいる(←オカマの評論家の伏見もヒトのこといえない)。

● 多田文明『ついていったら、だまされる』(理論社/よりみちパン!セ) 1260円

いただいたご本「ひとはみな、ハダカになる。」

bakushi.jpg一読して、「す、す、すっげぇ!」。

いやあ、こんなに過激な中高生向けの性教育の本は世界中探してもないでしょ。よりみちパン!セすごすぎます。伏見をラインナップに入れてるのも思春期の若者向けとしてはどうかと思うけれど、バクシーシ山下にAV業界について語らせるなんて奇想天外! ぼくでさえ読んでいて「こ、これって、許されるの?」みたいな話の連発だもん。例えば、

「ぼくがその会社でいちばん最初にした仕事は、ロバを迎えに行くことです。……ロバは、その女優さんと交尾というか、セックスをするという役です」

こんなネタが満載なのよ! AVを観ることだって許されていない中高生向けに!(笑) 滅多なことでは驚かない伏見も、パン!セ編集部の剛胆に冷や汗が出ました。編集サイドの懐の深い教育観にただただ感心するばかりです。

あぁ、ぜひこの本の書評を書きたいのだけど、どこか勇気のある媒体ありませんかねえ?

● バクシーシ山下『ひとはみな、ハダカになる。』 (理論社/よりみちパン!セ)
1200円+税