投稿者「伏見 憲明」のアーカイブ

伏見 憲明 について

作家。 1963年生まれ。 著書に『魔女の息子』(第40回文藝賞受賞/河出書房新社)、『さびしさの授業』(理論社)、『ゲイという[経験]増補版』(ポット出版)ほか多数。 編集長として『クィア・ジャパン vol.1〜5』(勁草書房)、『クィア・ジャパン・リターンズ』(ポット出版)を刊行。 詳細なプロフィールへ→

いただいたご本『ゲイ・マネーが英国経済を支える!?』

gay_money.jpg「英国はいかにして一八兆円市場を生み出したか?
なぜ英国は日本よりも豊かになったのか?
金融ビッグバンや民営化のおかげ? いや、それだけではない。
高額の収入があり、それに比例して消費欲も旺盛、旅行やパーティといった“形に残らない愉しみ”へも惜しみなく費やす――
そんな金の卵を産む同性愛者たちの聖地となったことで、英国は一八兆円市場という巨大なマーケットを手に入れたからだ!
バークレイズ銀行やIBMといった巨大企業が注目し、閣僚やメディアの仕掛け人も生まれはじめた、知られざる英国ゲイ・パワーの実態をリポートする。」(プレス・リリースより)

ゲイ・アクティヴィズムと経済の問題をレポートした一冊。日本ではゲイ・マーケットというのはなかなか実態として捉えづらいが、欧米では可処分所得の多いゲイたちの動向は市場に影響を及ぼしている。今後日本のゲイたちがそのような主体となるかどうかは疑問だが、ポップミュージックの分野などではすでに、レコード会社がゲイ向けのパブリシティを仕掛けたりしている。はてさてどうなるのか?

● 入江敦彦『ゲイ・マネーが英国経済を支える!? (新書y 190)』(洋泉社新書)780円+税

いただいたご本『家庭でできる法事法要』

ha.jpg手にしたときに、なんといまどきの本なのか、と感心。装丁に「5000円かからない!」と入っているが、誰でもチープに気軽にできる法事法要のマニュアル本だ。だけど、監修はあの社会学者、橋爪大三郎氏。橋爪氏が宗教社会学を得意としていることは存じ上げているが、かの大先生がこのような本を出すとはいったい……。

しかしよく読んでみると、この本が単なる法事法要のマニュアル本ではなく、ブッダが主張した仏教本来の教えに立ち返り、我々がそこから出発するための思想書であることもわかってくる。お経の読みと現代語訳まであって、勉強になること請け合い。また、橋爪氏の言葉にも味わい深いものがあって思わずジュンとくる。「やがて死ぬとわかっていて、立派に毎日を生きていく。こういうことのできる人間って、なかなか大したものだと思いませんか」。

『おひとり様の老後』の後は『家庭でできる法事法要』がベストセラーになるかもしれない! 橋爪氏にはできたら、「ひとりでできる生前葬」とかも書いてほしいわね(笑)。 

● 橋爪大三郎 監修『家庭でできる法事法要』(径書房) 1200円+税

いただいたご本『家事と家族の日常生活』

kajitokazoku.jpg本書は、社会学者の品田知美氏が博士論文を単行本にまとめたもの。地味なタイトルなので、専門外の人間としては、いただかなければ書店で手に取る機会はなかったと思うが(すみませーん)、これがかなりスリリングな内容の本になっている!

品田氏はこれまでの繰り返し語られてきた「家電製品の登場や市場化の発達により女性たちが暇になり、社会進出を果たすようになった」という物語の真偽に挑戦している。そしてその実態は副題に「主婦はなぜ暇にならなかったのか」とあるように、主婦はちっとも暇にはなっていなかった。彼女の分析によると、「主婦たちは産業化してゆく社会で変わり行く生活を維持する家事を、できる限り技術革新や市場化などによって省力化しようと努力をつづけていた。それでも家事量が減らなかったのは、大多数の日本人が豊かな生活様式の追求をめざした結果、必要となった家事水準が高まったからである」。

さらに、そうした研究の考察から、これまで上野千鶴子氏や落合恵美子氏らによって前提とされてきた日本の「近代家族」自体に、根本的な疑問符が投げかけられていく。実直な分析からラディカルな議論が導かれていて、社会学の業績にはこうした鋭角的なものもあるのか、と恐れ入った。ジェンダーを一つの分析道具にしながらも、ジェンダーのイデオロギー性に呑み込まれない姿勢が、学者としての信頼性を感じさせる良書。

● 品田知美『家事と家族の日常生活―主婦はなぜ暇にならなかったのか』(学文社)2000円+税

いただいた雑誌「小説新潮」

20080222.jpg中村うさぎさん、松沢呉一さんとの鼎談「快楽も半ばを過ぎて」の最終回です。といっても、まだ収録して活字になっていない部分のほうが多く、それはこれから単行本化されるときに加えられる予定。一足先に読みたい方は、雑誌でどうぞ。

しかし、この鼎談は伏見にとっても実に面白い経験でした。まあ、中村さんと松沢さんをノンケ女子とノンケ男子の代表とは間違ってもいえないけれど(もちろん伏見がゲイの代表とも相当言い難いが)、異文化どうしが語り合うことで見えてくるものは大きい。性をより立体的なものとしてとらえることができたのが、この鼎談の魅力だったと振り返ります。

最終回は「良いチンコ、悪いチンコ」「良いマンコ、悪いマンコ」みたいな具体的なことがらが話題となっているので、あきないと思います。

●「小説新潮」3月号

いただいたご本『I LOVE 過激派』

hayami.gif(たぶん)面識のない方なのだが、早見慶子さんからご著書をお送りいただいた。ありがとうございます。

それにしてもいったいなぜ伏見に?(笑) というか、早見さんって誰? 本の帯によると。

「80年代バブルの時代。セレブなお嬢様にならず、なぜかゲリラの激しい過激派・戦旗で活動してました。アジト生活、ガサ、逮捕と最底辺の生活。対立して、やめてからは布団も電気製品もない貧しい日々でした。今は社会を変えることより、周囲に感謝することのほうが大切だと気づきました。」

へえ、面白そうな本だなあとプロフを見ても、早見さんが何歳なのかもわからない。ジェンダーを感じる?(笑) 過激なわりに小市民的なところが可笑しそう。

● 早見慶子『I LOVE過激派』(彩流社) 1800円

いただいた雑誌「Quick Japan」

QJJ.jpgアンケートとコラムを寄稿。同じQJでもこちらのQJはいまだに元気ですね。というか、そもそもQUEER JAPANは、書店でQUICK JAPANと間違えられたら売り上げが伸びるかもしれない、と考えて名付けた雑誌名(笑)。

ちなみに、ぼくの雑誌はガス欠で休業中。ゲイへの愛情が戻ってこないとああいう仕事はできないなあ。

● 「QUICK JAPAN」特集・爆笑問題(太田出版)

いただいたご本『家を出る日のために』

iewo.jpg伏見が実家を出て独り暮らしをしたのは、いまからちょうど二十年前のこと。最初は、独りでいることの自由と気ままさに心が解かれたようでただ楽しかった。それから、日々のなかで寂しさや孤独の意味を知り、改めて誰かといっしょにいることの快もわかるようになった。若いうちに独りの暮らしを体験することには、多くを教えられるものだ。

そんな生きていくことの基本について語ってくれるのが、この『家を出る日のために』。著者は「家事塾」を主宰する女性で、「どうしたら心楽しく豊かに生きていけるかを、等身大の言葉で提言しつづけている」。暮らす、ということを思考する一冊である。

巻末の「家出テスト」は挑戦の価値あり!

● 辰巳渚『家を出る日のために (よりみちパン!セ 32) (よりみちパン!セ 32)』(理論社/よりみちパン!セ) 1200円+税

いただいた雑誌「dankaiパンチ」

08_02.jpgコラムを寄稿したので掲載誌が送られてきた。これってタイトルからして団塊の世代向けのものだと思うのですが、ちょっと下の世代であるぼくにも興味深い記事がけっこうある。「妻の死とその後」「俺たちはハゲじゃない」「本を捨てたら見えてきた世界」……なかなかタイトルに惹かれる。

で、ぼくの原稿は「宣言 さらばセックス」という特集のなかにある(もちろん、「撤退しない宣言」を書いているのだけどね)。その頭にある山口文憲さんと亀和田武さんの「セックスはしなくても愉しい。妄想しているときが華なんじゃないかな」という対談が、これまで男性があまりセックスに対して語ってこなかった正直な内容で、よかった。

それにしても、見開きページのなかで、ぼくと、安部譲二さんと、末井昭さんの顔写真が並んでいるって、なんかすごい絵面(笑)。それもセックスがらみのページでね……。

● 「dankaiパンチ」(飛鳥新社)980円

いただいたご本『完全解説 ヘーゲル「精神現象学」』

hege.jpgヘーゲル?精神現象学?んなものあたいにわかるか!とお思いのあなた、いい本が出ました。その名も『完全解説 ヘーゲル「精神現象学」』。竹田青嗣さんと西研さんの共著で、講談社選書メチエ「知の高峰を読み平らげる新シリーズ第一弾」ということですから、きっと素人にもわかりやすいものでしょう。

哲学に興味はあっても、独りで原著を読んで勉強するほどの根性も、知力もない我々にとっては、空からすくいの糸がたれてきたようなものです。著者たちの志も、専門家のあいだの謎解きにしかなっていない知の遺産を、一般の人たちが共有できるものとしたい、というところにあります。ありがたいことです。

ぼくも、自分の文章のなかにヘーゲルとかカントとか引用したらかっこいいなー、などとミーハーな憧れを抱いていたので(笑)、これを機会に勉強してみたいと思います。えぇ、読み切ってみせます。投げ出さないで読んでみせるー!

● 竹田青嗣・西研『完全解読 ヘーゲル『精神現象学』 (講談社選書メチエ 402 完全解読)』(講談社)1700円+税

謹賀新年

081.1_fuku.jpg本年もよろしくお願い申し上げます。
ご無沙汰している人、よくお目にかかる人、まだ出会えていない人、08年にはどこかで言葉を交わすことができれば、と願っています。
伏見は今年も何冊か単行本が出る予定です。楽しみにしていてください。
今年がみなさんにとってすばらしい一年になることを祈っております!