投稿者「伏見 憲明」のアーカイブ

伏見 憲明 について

作家。 1963年生まれ。 著書に『魔女の息子』(第40回文藝賞受賞/河出書房新社)、『さびしさの授業』(理論社)、『ゲイという[経験]増補版』(ポット出版)ほか多数。 編集長として『クィア・ジャパン vol.1〜5』(勁草書房)、『クィア・ジャパン・リターンズ』(ポット出版)を刊行。 詳細なプロフィールへ→

デニス・アルトマン『グローバル・セックス』


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● デニス・アルトマン『グローバル・セックス』(岩波書店)

★★ 物知りなんでしょうけど(笑)

7,8年前に北京旅行で見た光景を思い出す。その頃流行りはじめたというゲイクラブに入ると、店内にはビレッジピープルの「YMCA」が鳴り響き、大胸筋や上腕二頭筋を鍛え上げた中国人の若者たちが、白いタンクトップを身につけて踊っていた。そのスタイルは、ゲイカルチャーのスタンダードともいえるものだった。

まだ社会主義という言葉が生々しかった当時の北京にさえ、ゲイネスのグローバル化の波が押し寄せていることに驚いた。もちろん「グローバル化」というのはそれ以後に広く用いられるようになる言葉だが、まさに資本や情報、労働力の移動などによって、セクシュアリティのありようも世界標準化に向かっているのだと、予感した。 続きを読む

飯野由里子『レズビアンである〈わたしたち〉のストーリー』


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● 飯野由里子『レズビアンである〈わたしたち〉のストーリー』(生活書院)

★★★★ 著者には現在のレズビアンたちの感性を掬う仕事をしてほしい

どんな人でも経験することであろうが、人はいま自分がどんな時代を、どんな流れのなかで生きているのか、その時点ではわからないものである。筆者は九十年代以降、性的少数者のムーブメントを生きてきたが、その活動をはじめた当初、自分がどんな道を歩んでいるのか見えていたわけではなかった。なので個人的にも、本書の第一章、レズビアン&ゲイの運動や思想の歴史についての概観は興味深かった。

そこで明らかにされているが、現在の性的少数者をめぐる理論研究の主流は、アイデンティティをもとにした政治を批判する社会構築主義やクィア理論である。かつては、「ゲイ」とか「レズビアン」という抑圧された人たちが存在し、その人たちが解放されることが目標とされる「解放の政治学」が運動の中心だった。が、フーコー以降のアカデミズムでは、「ゲイ」「レズビアン」といったアイデンティティ自体が権力の産物であり、その土俵を踏襲することは、近代の「同性愛/異性愛」の二項対立的な構造を再生産することになってしまう、という議論が支配的になっていて、この本の著者もその思潮に乗っている。 続きを読む

長谷川博史『熊夫人の告白』


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● 長谷川博史『熊夫人の告白』(ポット出版)

★★★★★ 旧世代ゲイの実存の記録

『熊夫人の告白』は、あるHIV感染者の自叙伝である。著者は40代のゲイで、HIVの活動家として著名な人物。「熊夫人」とは、著者がときに扮するドラァグクィーン、ベアリーヌ・ド・ピンクを指したものだ。けれど、人は仮面をつけることによって、かえって自分に正直になれるのかもしれない。

「熊夫人」の生き方は、現在の40代以上のゲイの、ある一つの極を行っているように見える。彼の世代は、同性愛=変態という認識が社会に広く行き渡った時代に、青春期を送った。そうした抑圧の中では、あってはいけない己の欲望を否定すればするほど、逆説的に、それに囚われてしまう。結果、彼の否定的なアイデンティティは、本人の実存を性化した。 続きを読む

河合香織『セックス ボランティア』


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● 河合香織『セックスボランティア 』(新潮文庫)

★★★ 寸止めの誠実さ?

物質的に豊かになって、ある程度富の平等が実現すると、人々は今度、エロスの平等を求めるようになる。誰だって、素敵な恋がしたいし、めくるめくセックスだって経験したい!

もちろん、体の不自由な人たちがそう思うことだって、当然である。本書は、ただ生存しているだけではなく、人生にそうしたつややかな時間を獲得しようとし始めた障害者と、それをいかにサポートするかに奮闘する人たちに関するレポートである。 続きを読む

海野弘『ホモセクシャルの世界史』


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● 海野弘『ホモセクシャルの世界史 (文春文庫 う 18-3)

★★ ペダンチック

近代を生きる私たちは、いささか性にとらわれすぎている。その人が誰とどのような性愛関係にあるのか、どんな性的指向、嗜好を持っているのか……どこかで意識せずにはいられない。しかし「私」と他者との関係は、性愛かそうでないかという二分法では割り切れない。

著者は本書において、友愛という観点から男同士の絆を再構成しようと試みている。だから、このタイトルはあまり正確ではない。近代において〈性〉という視線によって分類された〈ホモセクシュアル〉は、通史的な現象とはいえず、ここで描かれる多くの男たちの絆は、近代人が知りえない他の〈可能性〉であるともいえるからだ。

著者は該博な知識によって、古代ギリシアのアキレウスから、キリスト教会のアウグスティヌス、ルネサンスのレオナルド・ダ・ヴィンチ、オスカー・ワイルド、はてはナチの同性愛まで、西洋社会におけるさまざまな男たちの物語を紡いでいく。読者はそのエピソードの意外さと、多彩さに、興味が尽きないだろう。

例えば、カエサルは、見習士官の時代、派遣先の「王に男の操を売った」との噂が立てられたこともあり、旺盛なバイセクシュアルだった。また、イエスが聖書にある〈愛する弟子〉を特別あつかいしたことに着眼して、イエスとヨハネが愛者と愛人の関係にあった、という推論まで紹介される。

これらの断面は、史実に新たな陰影を与え、語りえなかったもう一つの世界史をかいま見させてくれる。

「私はどうやってあなたと結ばれるのか。禁じられ、差別されてきた〈ホモセクシャル〉は、人と人の絆の極限について考えさせてくれる」。著者は同性愛的な関係に焦点を当て、それらを並記することで、近代の性体制を相対化しようと企図する。しかし、その〈ホモセクシャル〉に関する尋常ならざるオタクぶりに、かえって性に拘束されているようにも見える。

もしかしたら、友愛の可能性は、性愛の周縁や過去にではなく、その果てにしか見出せないものなのかもしれない。

*初出/共同配信→

山田昌弘『希望格差社会』


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● 山田昌弘『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く (ちくま文庫 や 32-1)

★★★★ 読みたかないが読まずにはいられない現実

大学の講師をしていたときに、女子大生の楽観的な未来予想図にいらだちを抱いたものだ。「卒業したら一応就職して、いい条件の相手と結婚して、専業主婦になります」。若い世代は意外と保守的な考え方を持っていた。「いい条件の相手って、絶対数が少ないんだから、つかまえるのは難しいよ」などと意地悪なつっこみを入れても、若い女性というのは妙な自信を持っているのである。「大丈夫」。

しかし現実は、社会に出て数年で彼女たちからその余裕を奪うことになるだろう。学歴エリートでもなく、女優のような美貌を兼ね備えているわけでもなく、(これはその場で質問したことだが)とりたててお金持ちでもない女子に、顔がよくて、お笑いのセンスがあって、高学歴で、稼ぎがいい男が回ってくる確率はかなり低い。 続きを読む

伊藤文学『「薔薇族」のひとびと』


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● 伊藤文学『「『薔薇族』の人びと その素顔と舞台裏』(河出書房新社)

先日とある公園で高校生らによって同性愛者の男性が襲われ、現金を奪われる事件が起こった。少年たちは同性愛者なら通報しないと思ってやった、と自供したという。

この件は、まだまだ社会に同性愛者への差別意識が根深いことを物語っている。一方で、被害者が警察に通報したことは、時代状況の進展も示しているだろう。かつてだったら同性愛者だということで被害に遇っても、それを知られないよう泣き寝入りせざるをえなかったからだ。 続きを読む

星乃治彦『男たちの帝国』


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● 星乃治彦『男たちの帝国―ヴィルヘルム2世からナチスへ』(岩波書店)

★★★ 政治学のセクシュアリティに踏み込む試み

政治と性愛、この一見なんら関係がないように見える二つの現象の連関を、近代ドイツの政治史を例にとって考察したのが本書である。

第二帝政からナチスドイツ、そして戦後にいたるまで、ドイツの近代史の中には、同性愛とミソジニー(女性嫌悪)をめぐる問題が政治現象の裏側にうごめいていた。しかしそれを「どう政治史の分析に取り入れていくのかの戸惑いが研究者の中にあったため」、これまでその重要性は看過されてきた。 続きを読む

中島義道『ひとを〈嫌う〉ということ』


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● 中島義道『ひとを“嫌う”ということ (角川文庫)

★★★ 他者との関係にヒリヒリしてしまう方にお勧め

私の場合、もっと若かった頃は性的欲望に翻弄されたり、恋愛感情に支配されてしまう自分が疎ましくてならなかった。が、この頃は、性愛の効用をありがたく思えるようになってきた。それは、性愛の欲望によって誰かと関わる機会を求めたり、あるいは実際に抜き差しならない関係になったりということが、自分を他者につなぐ回路になっていると感じるからだ。

振り返ると私は、人を見る目が養われ社会的な経験を積むことでかえって、誰かと関わることがヒリヒリとした痛みを伴うようになった。他者に対する批評眼が鋭くなり、また他者の自分への感情や、相手との差異に敏感になったがゆえに、他者と関係することが困難になっていった。ところが、性愛というファクターが働くと、そうした理性的な認識から解放されて、その抗えないような「魔法の力」によって、他者との交流を求めるようになる。これは、対人関係に強い違和を持つ人間にとっては、この上ない癒しでもある。 続きを読む

斎藤美奈子『モダンガール論』

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● 斎藤美奈子『モダンガール論 (文春文庫)

★★★★★ 倫理主義的なフェミニズムとは一線を画す

フェミニズムが心をそそらないのはなぜか。これだけたくさんの関連書が書店に出回り、学会の論客がメディアで舌鋒鋭く女性差別の解消を訴えても、どうも、人口の半分を占める女性たちの大きな支持を得ているようには見えない。フェミニストという党派の立場からすると、「男社会の価値観の中で育てられた女性たちは、自分たちが不利益を被っている事実をなかなか受け入れられない」ということになるのだろう。しかし、ウーマンリブが沸き上がった1970年代初期ならともかく、現在も一般大衆の女性たちが、社会の女性差別の網の目に気がついてないと考えるのは、あまりにもナイーブだ。 続きを読む