投稿者「伏見 憲明」のアーカイブ

伏見 憲明 について

作家。 1963年生まれ。 著書に『魔女の息子』(第40回文藝賞受賞/河出書房新社)、『さびしさの授業』(理論社)、『ゲイという[経験]増補版』(ポット出版)ほか多数。 編集長として『クィア・ジャパン vol.1〜5』(勁草書房)、『クィア・ジャパン・リターンズ』(ポット出版)を刊行。 詳細なプロフィールへ→

福島次郎『蝶のかたみ』


*マイミク募集中! http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3837974 

* ↓↓現在、ブログ布教中につきご協力を。踏んだ数だけご利益がある!?
ずっとベスト10前後を行ったり来たりなので、もう少しのご助力を!(笑)

● 福島次郎『蝶のかたみ』(文藝春秋)

★★ こういう感性って文学好きにはいいのだろうけど……

福島次郎は『三島由紀夫―剣と寒紅』で、文壇のタブーであった三島由紀夫の同性愛を自らの青春の体験と絡めて描き、世間の注目を多いに集めた人物である。その彼の自伝的な小説「蝶のかたみ」と、1996年に芥川賞候補になった「バスタオル」を併録したのがこの作品集である。

淡々と流れる文体の行間に垣間見える深いやみは、主人公(著者)の己の人生に対する怨嗟と、同性愛への愛憎をはらんでいる。 続きを読む

藤野千夜『夏の約束』


*マイミク募集中! http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3837974 

* ↓↓現在、ブログ布教中につきご協力を。踏んだ数だけご利益がある!?
ずっとベスト10前後を行ったり来たりなので、もう少しのご助力を!(笑)

● 藤野千夜『夏の約束 (講談社文庫)

★★ 感動のツボが違うので

藤野千夜は芥川賞作家として初めてクィア(性的少数者)であることを公言した人物である。

藤野は、力みを感じさせずに「カミングアウト」をさらりとやってのけた。政治主義的な主張でもなく、あるいは「文学とプライベートは別なのだ」というわざわざの自己表明をするでもなく、男性から女性のトランスセクシュアルとしてそこに存在していた。そのたたずまいこそが21世紀のクィアらしい。 続きを読む

今一生『家族新生』


*マイミク募集中! http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3837974 

* ↓↓現在、ブログ布教中につきご協力を。踏んだ数だけご利益がある!?
ずっとベスト10前後を行ったり来たりなので、もう少しのご助力を!(笑)

● 今一生『家族新生』(ワニブックス)

★★ 結論には異論がないが

私たちには郷愁の中に普遍を見出したがる傾向がある。ほんの少し前の過去の状態が、本来あるべき姿なのだという思いを抱きやすい。たかだかここ百年くらいの間に作りだされたものが、通史的な伝統や、人間の本来性を兼ね備えていると錯覚されている例もままある。

ここで問題にされる家族にしてもそうである。多くが婚姻関係を国家に届け出るようになったのは案外最近のことだし、かつて農業が中心だった社会では、女性も労働の重要な担い手であり、職を持っていない「専業主婦」という存在は、きわめて今日的な女性役割にすぎない…。 続きを読む

速水由起子『恋愛できない男たち』


*マイミク募集中! http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3837974 

* ↓↓現在、ブログ布教中につきご協力を。踏んだ数だけご利益がある!?
ずっとベスト10前後を行ったり来たりなので、もう少しのご助力を!(笑)

● 速水由起子『恋愛できない男たち』(大和書房)

★★ 怒りは伝わってくるが、説得力がいまひとつ

これは男たちに向けられた怒りの書である。

著者の速水由紀子は、現代の風俗を追う仕事で定評のあるジャーナリストである。が、本書を通じて読むと、ジャーナリズムとしての客観報道より、著者の抱く怒りの感情に強い印象を受ける。

速水は言う。「本著では、恋愛コネクション能力がきわめて低く、『どんなに愛しても愛してくれない男たち』をルポしてみた。つまり、恋愛で一番大切な相手を心から求め、共生のために歩み寄ろうとする建設的な人間関係が築けない人々だ」 続きを読む

松沢呉一編『売る売らないはワタシが決める』


*マイミク募集中! http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3837974 

* ↓↓現在、ブログ布教中につきご協力を。踏んだ数だけご利益がある!?
ずっとベスト10前後を行ったり来たりなので、もう少しのご助力を!(笑)

● 松沢呉一編『売る売らないはワタシが決める―売春肯定宣言』(ポット出版)

★★★ 現場の声は大切です!

フェミニズムからの「性の商品化」批判が盛んだった10年程前の状況を考えると、こうした本が出版されるは、隔世の感がある。『売る売らないはワタシが決める』は、性風俗で働く当事者とそれを支援する人たちからの、職業差別を解消するための訴えであり、「性の商品化」なぜ悪い!という、「性の商品化」肯定論なのである。

90年代、性をめぐっては、同性愛者をはじめとしてさまざまなマイノリティが自らの存在証明をすべく声を上げたが、昨今のセックスワーカーを名乗る売春婦(夫)たちの権利獲得への主張は、もしかしたら最後の「解放の政治学」になるのかもしれない。彼女ら(彼ら)は、売春を合法化し、労働問題としての認知をいま社会に迫っている。 続きを読む

勢古浩爾 『こういう男になりたい』


*マイミク募集中! http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3837974 

* ↓↓現在、ブログ布教中につきご協力を。踏んだ数だけご利益がある!?
ずっとベスト10前後を行ったり来たりなので、もう少しのご助力を!(笑)

● 勢古浩爾 『こういう男になりたい』(ちくま新書)

★★ こういうところからしかジェンダー論は更新されないのではないか

近ごろ男は分が悪い。若い男たちは女たちに相手にされないと、「性的弱者」を名乗るはめになる。歳を取れば威厳が身に付くどころか、若い世代から「オヤジ」と嘲笑される。

そうした状況において男が「男である」ということがどういう意味を持つのか、を追求したのが本書である。著者は、「メンズリブ」などの、「男らしさ」から「自分らしさ」「人間らしさ」へという考え方を支持しつつも、「男」である根拠をすべて放棄してしまうことを潔しとはしない。一方で、格闘技やヤクザへの憧憬に見られる「力」の獲得を男の理想型とする立場にも与しない。 続きを読む

小林信也『カツラーの秘密』


*マイミク募集中! http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3837974 

* ↓↓現在、ブログ布教中につきご協力を。踏んだ数だけご利益がある!?
ずっとベスト10前後を行ったり来たりなので、もう少しのご助力を!(笑)

● 小林信也『カツラーの秘密 (新潮文庫)

★★★ 人生はそれぞれ理由(わけ)ありです

軽口や冗談が誰かを深く傷つけていることがある。

そのことを笑いの文脈に置くことの了解が一般になされている場合、話し手にはさしたる悪意などない。しかしだからこそ、笑いの対象にされた側は怒ることもできず、その痛みを自分の中に抱え込むことになる。相手に悪意がないことに不快を露にすることが、むしろ大人げないこととされ、むきになることで、かえって周囲の笑いを誘うことにもなるからである。したがって、笑われている当事者が、自ら傷ついていることをカミングアウト(表明)しないかぎり、その痛みが相手に理解されることはない。 続きを読む

ロビン・ベイカー『セックス・イン・ザ・フューチャー』


*マイミク募集中! http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3837974 

* ↓↓現在、ブログ布教中につきご協力を。踏んだ数だけご利益がある!?
ずっとベスト10前後を行ったり来たりなので、もう少しのご助力を!(笑)

● ロビン・ベイカー『セックス・イン・ザ・フューチャー―生殖技術と家族の行方』(紀伊国屋書店)

★★★ SF的思考は現在を相対化させてくれる

『セックス・イン・ザ・フューチャー』は、人工授精、代理出産、体外受精、凍結精子・卵子、クローニング…といった生殖技術の発達が、人間の性行動や家族のかたちにどういった影響を与えるかについての、予言の書である。といっても、著者は科学者なので、それは科学的な知識と洞察力から描き出される未来予想図だ。

例えば、父子鑑定の技術が完成し、扶養義務者の登録制度が導入されると、家族関係はどうなるのか。「男性はもはや、浮気を阻止するために女性のそばに居続けなくてもいいし、女性も貧困を回避するためだけに男性の愚かさや暴力を我慢する必要がなくなるだろう」。そして、そのことは核家族の解体を促し、単親家庭と利便性優先の男女関係が社会の基礎となる。 続きを読む

イヴ・コゾフスキー・セジウィック『男同士の絆』


*マイミク募集中! http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3837974 

* ↓↓現在、ブログ布教中につきご協力を。踏んだ数だけご利益がある!?
ずっとベスト10前後を行ったり来たりなので、もう少しのご助力を!(笑)

● イヴ・コゾフスキー・セジウィック『男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望』(名古屋大学出版会)

★★ いまやセジウィックの理論はジェンダー/セクシュアリティ論の「公式」になった感があるが、でも、これも一つの「物語」だよねー(笑)

例えば、サッカーの試合で勝利したチームの選手たちが、硬く抱き合って感激を分かつとき、例えば、サラリーマンが酔いつぶれた同僚にさりげなく肩を貸して、夜道を帰途につくとき、その男性と男性の間に流れる情感はいかなるものなのだろうか。

それらは情緒的な親密さと身体接触を重ね合わせている点において、同性愛者間の性愛表現と区別することは難しい。性器的な接触がそこにあれば同性愛で、なければただの親しさの顕れであるとするのは常識的な解釈だが、体育会のような場において、男同士の精力比べのような相互ゲームが行われるのは半ば公然と知られている。そういった遊技と性行為を区別することは、定義上、相当困難なことである。 続きを読む

ジョン・K.ノイズ『マゾヒズムの発明』


*マイミク募集中! http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3837974 

* ↓↓現在、ブログ布教中につきご協力を。踏んだ数だけご利益がある!?
ずっとベスト10前後を行ったり来たりなので、もう少しのご助力を!(笑)

● ジョン・K.ノイズ『マゾヒズムの発明』(青土社)

★★ やっぱ読むよりもやるほうがいいけど

例えば、あなたが誰かに鞭で打たれたり、言葉で貶められたりすることに、性的な興奮を覚える傾向があるとする。そうした欲望を抱えたあなたが、前近代の西洋社会に生まれ、それを実践していたら、道徳にもとる行為に耽っていると、非難されるかもしれない。

近代になると、そんなあなたは精神医学によって「マゾヒズム」という病気に分類され、「マゾヒスト」という負のアイデンティティを与えられることになるだろう。後天的に、そして先天的に通常の発達から逸脱した人間として、治療の対象とされるのだ。 続きを読む