投稿者「伏見 憲明」のアーカイブ

伏見 憲明 について

作家。 1963年生まれ。 著書に『魔女の息子』(第40回文藝賞受賞/河出書房新社)、『さびしさの授業』(理論社)、『ゲイという[経験]増補版』(ポット出版)ほか多数。 編集長として『クィア・ジャパン vol.1〜5』(勁草書房)、『クィア・ジャパン・リターンズ』(ポット出版)を刊行。 詳細なプロフィールへ→

いただいたご本・中野翠『ラクガキいっぷく』


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今年も押し詰まってまいりました。例年のごとく、お送りいただいた中野翠さんの一年のコラムをまとめた単行本を読みながら、08年を振り返っている伏見です。

それにしても時代の移り変わりが激しい。秋の金融危機以前と以降ではマスコミの論調は全然違うし、どんな殺人事件も次々と起こる不可思議な犯罪のなかですぐに記憶があいまいになってしまう。もはや秋葉原の事件すら、「あれ、今年のことだっけ?」という感じだ。そういう変化を中野さんが時代に刻み付けた言葉とともに辿るのは、自分の考えを整理するのにうってつけ。

中野さんの筆致は今年も鋭く、瑞々しい。無駄な「権威」を身につけないのは彼女の他の人にはない魅力だと思う。

湊かなえ『告白』


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● 湊かなえ『告白』(双葉社)
★★★★ やめられないとまらないかっぱ海老せん♪のようなミステリー

友だちが「面白いから読んでみなよ」と勧めるので、珍しく新刊本を購入。とくにミステリーファンではないのですが、話題になっているだけあってエンターテイメントとして秀逸。時代的な闇を引き受けていて、自分のなかのどす黒い感情が揺すぶられる。年末年始、ブラックな気分になりたい人にはお勧め。

純文学的な読みからすると、人物造形がステレオタイプだとか、説明的だとかといった「ステレオタイプな批判」がされるのかもしれないが、もうそんなことどうでもいいのよ。心臓がドクンと動いてくれることが、(退屈な)文学的な価値なんかよりもずっと意味がある。著者は小説家としても大したものだが、社会学者とかにもなれる頭の良さを持っていると思った。

いただいたご本「論叢クィア」「精神看護」

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*「論叢」って「ろんそう」と読むのだそうです。「ろんぎょう」って読んでいて変換しても文字が出てこないわけだ(笑)。知らなかったー!

sei.jpg本書は昨年設立されたクィア学会の学会誌。伏見の参加しているシンポジウムも活字化されているのだが、伏見の発言はこれまで残した対談、鼎談の類ではもっとも内容のないもの。大きなテーマをそのまま振られても言葉が出てこないという伏見の実力ゆえの結果なので、自己責任と受け止め、学会誌に恥を残すことにした。その他にも、現在、話題沸騰中の論文・森山至貴「「懸命にゲイになるべき」か?」なども収録。

「精神看護」2009.1(医学書院)は伏見が『発達障害当事者研究』の著者、綾屋紗月さんと熊谷晋一郎さんと行った対談が掲載されている。こちらは近年脳の劣化がはげしい伏見にしてはノリノリでトークをしている。ときどき脳みそが甦るみたいですね(笑)。三人でコミュニケーションの困難さについて語り合っています。できることなら綾屋さんたちのご著書を読んだ上で読まれることを勧めます!

上野千鶴子ほか『セクシュアリティの社会学』


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● 上野千鶴子ほか『岩波講座現代社会学 (10)』(岩波書店)

★★★ この本が出版された時代はまだ社会構築主義も洗練されていませんでしたね

上野千鶴子ほか『セクシュアリティの社会学』と、ジェフリー・ウィークス『セクシュアリティ』はともに、これまで精神医学や心理学などがもっぱら対象としてきた「性」「セクシュアリティ」の領域を、社会学や歴史学の視点から捉え直そうと試みる論考である。前書は上野千鶴子はじめ現代日本の気鋭の社会学者らの手による論文集で、後書はポスト・フーコーの旗手と欧米で評価の高いジェフリー・ウィークスの翻訳である。

これらは、「人の性とは何か?」という問いかけのもとに言葉を編み上げてきた精神医学や心理学といった近代の「知」に対して、「『人の性とは何か?』と『知』が問いかけるのはなぜか?」、「そのことによってどんな現象が近代に生じたのか?」という問題意識にそって、「性」に社会的、歴史的な分析を加えている。 続きを読む

田中美津『いのちのイメージトレーニング』


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● 田中美津『いのちのイメージトレーニング (新潮文庫)

★★★★ この人の言葉には言霊があります

『いのちのイメージトレーニング』は、ちっぽけでいながら至上のものである「私」、という人生を、いかに喜びに満ちて生ききるかを思索した本である。

著者の田中美津は、70年代初頭のウーマンリブ運動の旗手として活躍。「それから大しておもしろくもない活動でさらにエネルギーが奪われて……もととも弱かった私のからだは一層ヨレヨレになってしまって……『もはやこれまで』と思うに至ってメキシコへ」。

4年の滞在を経て、帰国後、鍼灸師になる。そして、近年、イメージトレーニングと出会い、自らインストラクターも始めるようになった。 続きを読む

辻仁成『ワイルドフラワー』


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● 辻仁成『ワイルドフラワー (集英社文庫)

★★ 伏見には文学が本質的にわからないのです

ニューヨーク、破滅、ホモセクシュアル、インモラル、純愛…といった言葉がちりばめられた宣伝文句から、「過激なエロチシズムや風俗」を売りにした、ありがちな小説なのかという気がしていたが、『ワイルドフラワー』が問題にしているのは、今日の男としてのアイデンティティーとは何か? という極めて時代的なテーマであった。
 
肉体的にも想像力においても盛りを過ぎた中年作家と、自分がゲイではないかとおびえ、そのことに決着をつけようとニューヨークへやってきた青年。恋人の白人女にペットのように調教されてきた写真家の卵。その三人の男たちが、一人の女との関係を軸にして、自らに男としての存在証明を試みようと苦闘する物語が、同時進行していく。 続きを読む

長山靖生『鴎外のオカルト、漱石の科学』


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● 長山靖生『鴎外のオカルト、漱石の科学』(新潮社)

★★ 現在も世の中の半分はオカルトですよね(笑)

『鴎外のオカルト、漱石の科学』、なんとも妖しい題名である。といっても内容はけっしてキワモノではなく、本格的な文藝評論、時代批評となっている。

著者のあとがきによれば、「二十世紀は科学の時代だったが、漱石や鴎外は、科学の成果や自然科学が提示した新しい思考法を、どのように理解し、また利用したのだろうか」という問題意識から、「時代を超えて読み継がれて、後世になっても同時代人のごとくに影響を与え続ける『不死の人』」としての彼らを輪郭づけている。 続きを読む

大塚隆史『二丁目からウロコ』


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● 大塚隆史『二丁目からウロコ―新宿ゲイストリート雑記帳』(翔泳社)

★★★★★ 頭でっかちではない、本当に練れた思想というのはこういうのを指すのだと思う

『二丁目からウロコ』の著者である大塚隆史氏は、日本という土壌の中で、一貫して「ゲイ」であろうとしてきた希有な人物である。この国でも90年代になって、ゲイ・ムーブメントは活発な様相を呈してきているが、たぶん、ゲイ・リベレーションという方向性を初めて公に示したのは大塚氏ではなかったかと思う。

70年代末、人気ラジオ番組「スネークマンショー」の中で、ゲイ・パーソナリティとして全国の同性愛者に向って「『ゲイ』として肯定的に生きよう」とメッセージし、「ゲイ・リブ」や「カミングアウト」の言葉を海外から輸入したのは氏の功績である。 続きを読む

イブ・コゾフスキー・セジウィッグ『クローゼットの認識論』

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● イブ・コゾフスキー・セジウィッグ『クローゼットの認識論―セクシュアリティの20世紀』(青土社)

★★★ こういうマニアックな文体に官能する人にはいいんだろうけど、もっとわかりやすく書けよ!って感じ

アメリカに遅れること20年、日本でゲイ&レズビアンのムーブメントが活発化したのは、90年代に入ってからのことであった。そこで主張されたのは、同性愛というのは趣味・嗜好の問題ではなく、その人の存在にとって本質的な指向性なのだから、それを差別したり否定したりすることは人権の問題だ、というものだった。

日本でそうした「本質主義」の考え方を背景にした運動が展開され始めた頃、欧米では、同性愛者というアイデンティティそのものが近代において構築されたもので、それこそが権力作用の産物であると批判した、フーコー以降の「構築主義」の理論がゲイ・スタディーズやフェミニズムに積極的に導入されていた。 続きを読む

西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』


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● 西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)

この本は圧倒的に5つ星です! ★★★★★

サイバラ先生の漫画の熱心な読者というわけでもなかったけれど、いろんな機会に断片的に作品を拝見し、面白い方だなあとは思ってきた。でも今回、よりみちパン!セシリーズで刊行された『この世でいちばん大事な「カネ」の話』を読んで、神様のように尊敬してしまった。身体はってるってスバラシイ!

かつてなら会話のタブーと言えば、性と金だったと思うが、いまや性はある意味で個性を語るのと同義となり、それこそ一般人でさえも「萌え」という言葉を使って自分の「性的偏向」を口にできるようになった。一方で、金に関しては、「これで儲けられる!」みたいなビジネス本はたくさん出版されているけれど、自分の生々しい体験として書かれることはあまりない。やはり、それは最後まで隠しておきたいことなのだ。

そうした事柄を本書は著者自身のディープなおいたちや体験を通じて真摯に言葉にしている。これ、けっこう勇気のいることだと思う。そして、パン!セの読者である思春期の子供たちに語りかける問題としても、いまの時代とりわけ重要なテーマだろう。金で人生ころぶのは簡単なことなのだから。

サイバラ先生の言葉には体験の裏付けがあり、血と汗の匂いがする。

「仕事っていうのは、そうやって壁にぶつかりながらも、出会った人たちの力を借りて、自分の居場所をつくっていくことでもあると思う」
「手で触れる「カネ」、匂いのする「カネ」の実感をちゃんと自分に叩き込んでおく。そういう金銭感覚が、いさというときの自分の判断の基準になってくれるからね」
「お金との接し方は、人との接し方に反映する。お金って、つまり「人間関係」のことでもあるんだよ」

金は人間関係、なんてなかなか言えないこと。しかしそれは現代社会の本質でもある。いやあ、学ぶこと大です! お金について40代になるまでほとんど真剣に考えてこなかった伏見には、本書はもう聖書のようにも思えてくるほどだ。ページを繰りながら、思わず、正座してしまった(笑)。

平成不況の今日、一家で読むべき必読書!