投稿者「伏見 憲明」のアーカイブ

伏見 憲明 について

作家。 1963年生まれ。 著書に『魔女の息子』(第40回文藝賞受賞/河出書房新社)、『さびしさの授業』(理論社)、『ゲイという[経験]増補版』(ポット出版)ほか多数。 編集長として『クィア・ジャパン vol.1〜5』(勁草書房)、『クィア・ジャパン・リターンズ』(ポット出版)を刊行。 詳細なプロフィールへ→

いただいたご本『低炭素革命と地球の未来』

● 竹田青嗣・橋爪大三郎『低炭素革命と地球の未来』(ポット出版) 1800円+税

ポット出版から竹田青嗣氏と、橋爪大三郎氏の対談『低炭素革命と地球の未来』が上梓された。

ポットさんが以前に出版した『自由は人間を幸福にするのか』もシンポジウムを収録したものだったけど、本としてはやや食い足りない感じがあったが、今回の対談本『低炭素革命と地球の未来』はかなりの満腹感を得られる。二人の思想家の基本的な考え方がわかりやすく語られているし、意見の異なるところにも突っ込んでいる。

橋爪氏の言う通り、地球環境の問題を考えれば、「大きな物語の終焉」ではなく、いまこそ我々が「大きな物語」を生きているこを認識し、その課題への取り組みが必要なのだろう。そして竹田氏と橋爪氏の共通の前提である、資本主義と国家を諸悪の根源として否定する批判思想、マルクス主義やポストモダン思想にピリオドを打って、とっととやるべきことをしないと時間切れになっちゃうよー!という主張にはまったくもって大賛成。強迫的な無根拠性の指摘や、ありがちな権力批判に終始していなくて、ちゃんと代案、アイディアを用意しているところが、この二人の思想家の素晴らしいところですね。

9/2(水)は通常営業

matsuri.jpgレインボー祭り(写真はイカホモのお神輿)も盛り上がり、衆議院選挙も政権交替の結末に終わり、夏の汗を台風が流していってくれた感のする週明けですが、みなさんお元気でしょうか。夏バテしていませんか? 

エフメゾはまだカフェタイム(17:00−19:00)を続行中で、バータイムの学生向けの釜飯サービスもしばし継続することに。繰り返すと、バータイムにお越しの学生さんには釜飯が無料です!(ママったら太っ腹じゃないのよ) 最近は学生のお客様も多く、初心者向けの学生店子を夏休み中はキープして対応しておりますので、ゲイバーに足を踏み入れるのに躊躇しているあなたも、安心して二丁目デビューができますよ。

営業時間は17:00−04:00ですが、深夜はお客様がいなくなり次第、看板を消してしまいます。

ビヨンセ様をマスター?

mfmap.gif先週のエフメゾ営業はソウルとかR&BとかのナンバーをBGMに流していた。ダイアナ・ロスとかスティービー・ワンダーとかチャカ・カーンとか 80年代くらいまでの名曲を中心にセレクトして、それがけっこう好評だった。ちなみに、チャカ・カーンがビートルズをカバーした「We can work it out」は、伏見が17歳の夏、最初に二丁目に行ったときに、ディスコ(MAKO)の扉を開けるや耳に飛び込んできた曲!(もう三十年前…)

伏見は黒っぽい音楽も好きなのだが、この10年くらいはブラックミュージック・ファンと言うのに躊躇があった。というのも、00年代に入ってからのディーバ、ビヨンセ様の音楽の良さが全然わからず、自分の感性がまったく時代に追いついていない、もうポップがわからなくなっているんだと痛感していたから。そう、ビヨンセという名前を聞くたびに時代遅れになった自分へのコンプレックスがうずいていたのだ。

それが!昨日突然、iPODに音楽を入れていた際、ふと耳にしたデスチャの「Independent Woman」が、不感症のからだにオーガズムをもたらすようにビンビンと響いたのだ。理由はわからず。でも、やっと、ビヨンセでイケたと、心身が歓喜にわきましたよ。10年遅れてビヨンセのイキどころを体得した気分でございます(それでもまだ10年前の段階)。感性もあきらめずに訓練すれば少しずつ進化するものなんですね。←肛門性交の体得と似たところがある?(笑)

ということで、8/26(水)のエフメゾは再びブラックミュージックの特集ですが、伏見のビヨンセ処女喪失記念に(笑)、デスチャとかドリームガールズとかバンバンかけます。ほかにもプリンスとかレイ・チャールズとかジャミロクワイとか。

そしてスティービー・ワンダーの「ハッピー・バースデイ」とともに店子のアンジェラの21歳、司の35歳の誕生日パーティです! ぜひご来店ください。

カフェタイムは17:00−19:00、バータイムは19:00−04:00。深夜はお客様がいなくなり次第、看板を消してしまいます。

いただいたご本『はじめての言語ゲーム』

● 橋爪大三郎『はじめての言語ゲーム』(講談社現代新書 760円+税)

「そのときこそ賭けてもいい、人間は波打ち際の砂の表情のように消滅するであろう」
というのはフーコーの有名な言葉で、こういうちょっと知的で、謎めいた文言に打たれてしまうインテリ予備軍は多い。そして、かのヴィトゲンシュタインも妖しい魅力を放つ文言を残している。
「語りえぬことについては、沈黙しなければならぬ」
……やっぱ、なんか、かっこいいっすねー!←恥ずかしながらそれ以上の理解ではない。

ロングセラー『はじめての構造主義』で日本人の構造主義に対する理解を広げた橋爪大三郎先生が(先生という敬称は、伏見が現在橋爪先生の下で学問を学んでいるため)、二十年経って再び講談社現代新書で『はじめての言語ゲーム』というヴィトゲンシュタイン入門の新書を上梓された。これ、きわめて理論的な本なのかと思ったら、ヴィトゲンシュタインの生い立ちから掘り起こして、もちろん、彼の「言語ゲーム」理論についても説明し、なおかつ、橋爪先生オリジナルの、本居宣長を「言語ゲーム」で読み直すという論考までもが含まれている。文章もわかりやすいし、とてもコンパクトにまとまっていて手に取りやすい。

20世紀最高の哲学者の一人と言われるヴィトゲンシュタインを学ぶにはもってこいの一冊だろう。伏見もいま書いている小説の原稿を上げたら、もう一度頭を論理方面に切り替えてじっくりと勉強してみたい。

書評『挑発するセクシュアリティ』

● 初出/現代性教育研究月報

志田哲之・関修編『挑発するセクシュアリティ』
石丸径一郎著『同性愛者における他者からの拒絶と受容』

これまで同性愛をめぐる学術研究というのは、同性愛/異性愛の二項対立を脱構築しようとするアイデンティティ懐疑の議論が多かった。しかしそうした思潮と、当事者の生活実感はかなり乖離していただろう。思弁的にアイデンティティを懐疑することが、ふつうの当事者には自分たちの生に何か意味のあるものを示しているようには感じられなかったのである。

が、時代はまた進み、そんな言説状況に新しい視点を加える論文も現れてきた。『挑発するセクシュアリティ―法・社会・思想へのアプローチ』に収録されている小倉康嗣「ゲイのエイジングというフィールドの問いかけ」と、金田智之「セクシュアリティ研究の困難」がそれだ。 続きを読む

「和モノ祭り」のスタッフの装い

090810_2359_01.jpgIMG_1076.jpg8/12(水)のエフメゾは「和モノ祭り」と題した営業ですが、スタッフの装いはこんな感じになります。

普段着でのご来店もOKですが、よかったら浴衣、甚平、六尺などで飲んでください。ただしミックスでも女子は下着飲みはできません(笑)。

お盆休みの一晩、楽しく、ちょっと色っぽく楽しみませんか?

営業時間は17:00−19:00はカフェタイム、バータイムは19:00−04:00。バータイムにご来店の学生には釜飯をサービスします!

深夜はお客様がいなくなり次第、看板を消してしまいます。

いただいたご本『前略、離婚を決めました』

● 綾屋紗月『前略、離婚を決めました』 1400円+税

名著『発達障害当事者研究』の著者である綾屋紗月さんの、よりみちパン!セからの新刊である。今回は幼少のころから記憶を掘り起こし、思春期の孤独、恋愛から結婚・離婚に至るまでの自己史を、自分の子どもたちへの手紙の形式で書き綴っている。

平易で繊細な文章も読ませるが、内容はけっこうエグい。元夫との離婚までの過程をセックスの問題にもちゃんと突っ込んで語っている。そういう意味では他にあまりない類の本だろう。その率直さは感動的でもあり、夫婦というものの本質的な問題を描き出している。

本書については別に書評を書くことになったので詳細はそちらにゆずるが、ただこの本を読んで伏見は、「でも、自分もこの人と結婚して暮らしたら、DVのアルコール依存の夫になるかもしれない…」とふと思った。夫の暴力の原因を彼女に押し付けるつもりはないのだけれど、どうしてそのような読後感を抱いたのか、いつか自己分析してみたい。

いただいたご本『どんとこい、貧困!』

● 湯浅誠『どんとこい、貧困!』(理論社/よりみちパン!セ) 1300円+税

ずいぶん前に版元から送っていただいた本なのだが、ずっと手に取る気がしなかった。帯に「「自己責任」よ、これでさらばだ!」というコピーが謳われていて、こういう二者選択、勧善懲悪的な議論がすごく嫌いだからだ。

反差別の運動でも、政治的な運動でも、どこからどこまでを社会の問題にすべきなのか、個人の問題として引き受けるべきなのかは、実際すごくセンシティブな線引きで、その感度を大切にすることでしか社会的な了解は成立しないと思う。格差社会批判というのは、自由か平等かという古典的な論議の変奏で、経済状況が良くなれば自由に重きが置かれ、悪くなれば平等への希求が増す、という一方の思潮の出方にすぎない。なので、「自己責任」だけを諸悪の根源であるかのような物言いって、すごく幼稚で、時流に乗っているみたいで……。

とはいえ、読んでみれば本書の言っていることはけっして間違っていない。平等の側の観点から見れば、こういう格差社会批判は当然ありうるもので、80年代、90年代のバブリーな時代に自由のほうに線引きが寄っていたことを考えれば、視点を平等の側に戻す必要もあるだろう。著者は現在の社会の一面を説得力ある形で記述することに成功している。そういう意味では非常に良い本。だけど、シリーズのバランスで考えれば、自由のほうの視点で世界像を示す本があってもいいかもしれない。両方そろって初めて、若い人は社会への複眼的な見方を獲得できる。

8/12(水)は和モノ祭り

wawa.jpgもう夏休みに入っている人もいるかもしれませんが、来週のエフメゾはお盆休みの前日にあたる人が多いことと思います。なので、「和モノ祭り」を開催します。

って大袈裟なものではないのですが、8/12(水)は甚平、浴衣などの和装、六尺、勝負下着などで下着飲みをしてくださる方、お待ちしております! せっかくのお盆ですので、「和」な気分で楽しみましょう。もちろんドレスコードでもないので、普段着でのご来店でも大丈夫ですよ。

着替える方はビニール袋で着てこられたものをお預かりします。女性の和装での参加も大歓迎ですが、下着飲みは男子にかぎります(笑)。

料金は通常通りで、営業時間も17:00−19:00がカフェタイム、19::00−04:00がバータイムです。深夜はお客様がいなくなり次第、看板を消しております。

いろんな人が来るから面白い

ゲイバーにもいろいろな用途があるので、どういうバーが良いバーだとは単純にはいえない。発展目的なら発展目的の、お洒落に楽しみたければそれ用の営業のあり方がある。エフメゾの場合、一応「昭和のくっつけバー」の復興を目標にはしているが(笑)、実際はコミュニケーション欲を満たしに来てくれるお客様が多い。

なので、いろんな人に集まってもらえることが大事になってくる。イケメンばかりでも、ゲイばかりでも、エリートばかりでも、有名人ばかりでも面白くない。そこらのガキんちょからご年配の紳士まで、オカマやビアンからノンケまで、頭のいい人から天然の人まで、お金持ちから借金まみれの人(誰?)までいろいろいるからコミュニケーションも充実する。最近は「多様性」という言葉が陳腐な表現になってしまったので、あまり使いたくないが、やはり多様であることの力はバカにできない。

もはやすっかりエフメゾ名物になった感のあるママ特製「男ができるカレー!」も、とにかくいろんな材料が入っているから、素人(ママ)の腕前以上の引きになっているのではないか。でもそれらの素材をまとめるルーがなければカレーにはならない。きっとカレーのルーと同じものが、エフメゾの場合、「ゲイ」というフレームだ。それはもはや男性同性愛者という特定のアイデンティティには収まらない「何か」だが、男性同性愛者が培ってきたものであることは間違いない。「なんでもアリ、誰でもOK」の場はかえって面白くなくなってしまうのだけれど(ポリティカル・コレクトって、なんかエロスがないよねえ)、「基本ゲイなんだけど、いろんな人に開かれている」くらいの御簾の上げ具合がいちばん面白くなる。それを「差別」「排他性」ととらえたい感性の人にはエフメゾは開かれていない(笑)。

8/5(水)もカフェタイム(17:00−19:00)からやっています。バータイムには学生さんには釜飯の無料サービスがあります! 閉店は04:00ですが、深夜お客様がいなくなり次第、看板を消してしまいます。