ニセ警官を射殺せよ!?

アムステルダムのゲイパレードに参加して帰ってきたところです。報告は明日以降にでも。
 アムステルダム行きのタリス(Thalys)が停まっていたパリ北駅のプラットホームを、目的の車両を探しながら歩いていたら、ジャケットを羽織った中年の白人男性と若い黒人女性に呼び止められた。二人とも私服である。
「ちょっといいかな」
 といって、二人は警察手帳を私に提示した。
 テロ対策のために、不審な人物を検問しているのだとすぐに合点がいった。
「日本から来ました」
 といってパスポートを出すと、安心したように
「あぁ〜、日本からか」
 と男性警官はいって私のパスポートを一瞥し、
「鞄の中を見ても良いかな」
といって、財布など貴重品の入った小さな鞄を開けさせた。
日本で買った胃薬を見つけて、
「これは何かね?」
と聞く。
「薬です、胃のための」
「そうか。ナイフはもっていないね?」
「もちろん」
「よし、ではよい旅を」
 と微笑んだ。背中にカメラ機材や着替えの入った大きなリュック・サックを背負っていたのに、日本人ということで安心したのだろうか、こちらは開くようには要求しなかった。
 私の前には、10代に見える黒人男性が念入りに荷物検査を受けていた。彼は両手をあげ、全身、男性警官に手で触られているところだった。
 車内に入ってから、私は旅行案内本に書いてある注意を、思い出した。旅行関連サイトなりガイドブックには、「ニセ警官に注意」という記述がある。アムステルダムやパリで被害が出ているという。手口は単純で、旅行者に近づき警察官だと名乗り(警察手帳のようなものを見せるという)、持ち物検査をして財布から金を抜き取るのだ……という。
 先日、テロリストとして疑われた男性が警察官の制止を振り切って逃げたところ、射殺される……という事件がロンドンであったが、過剰ともいえる警察の強硬な手段の前提には、警察官の絶対性が保証されていなければならない。第一に、職務質問をするさいに不正を働かないということであり(たとえば、金をせびったりする。発展途上国ではよく見られる)、第二に警察官が本物であることが保証されていなければならない。警察官が歩行者を呼び止め恐喝するようであれば、身に覚えのない人であろうとも逃れようとするし、ニセ警官が横行していれば呼び止められれば市民は構えてしまうのが当然であろう。
 さて、旅行者が警察官に呼び止められて、ニセ警察官だと思って逃げた場合、射殺する……ということはパリやアムステルダムで有り得るのだろうか。いくら、本物の警官が警察手帳を見せたところで、ニセ警察官も手帳もどきを見せるのだから、旅行者には真偽を判断しようがない。テロを未然に防ぐために、強行措置をとるというのであれば、ニセ警官の取り締まりを強化しなければなるまい。ニセ警官だと思って職務質問を振り切り逃げたところ射殺される……という悲劇が起こる可能性があるのであれば、いっそのこと、ニセ警官こそを射殺してはどうか……とまではいわないが。

カテゴリー: 及川健二のパリ修行日記 | 投稿日: | 投稿者:

及川 健二 について

ジャーナリスト/研究者。 それまで一分もフランス語を学んだことがなかったのに、 フランス留学を決断。2002年UCLAエクステンションセンター・ 夏期英会話講座・修了、グランゼコールの一つ、2004年 リール政治学院・夏期特別セミナー修了(European Summer University Program at Institut d’Etudes Politiques de Lille)。 フランス国立パリ第九大学・Dauphine修士課程に2004-05年に在学。 多国籍企業の経営戦略が研究テーマ。大学では”英語”で講義を 受け、語学学校でフランス語を勉強するというチョット変わった留学生活をおくる。2004年7月3日から2006年3月25日までフランスに滞在。リール、トゥール、パリにて生活する。数々の政治家にインタビューする。 共著『オカマは差別か』(ポット出版)、2002年1月。 編集・共著『常識を超えて』(ポット出版)、2002年6月。 単著『ゲイ@パリ 現代フランス同性愛事情』(長崎出版)、2006年10月。 単著『沸騰するフランス 暴動・極右・学生デモ・ジダンの頭突き』(花伝社)、2006年10月。 単著『フランスは最高!』(花伝社)、2007年6月。