スタジオ・ポット
ポットのサイト内を検索 [検索方法]
| ▲風俗嬢意識調査 top | オリエンテーション | 風俗嬢へのアンケート内容 | 活動日誌●199908--10 | 活動日誌●200003--05 |
| アンケートにご協力下さい | 11. 4シンポアンケートから |
活動日誌●1999年8月--10月 [最新日誌●10月21日付/11月25日更新]

8月10日(火)

新宿ロフト
プラスワンにて

 新宿ロフトプラスワンでのイベント「内外タイムスの50年」に参加。内外タイムスの薄井さんや、ストリッパー一条さゆりを紹介するコラムなどを書いているみのわさんらのトークのほか、フードルの利沙ちゃんと流宇ちゃんがゲストで登場。アイドルみたいで超かわいかった。2人の連載が読めなくなるのが残念。

8月14日(土)

曙町・親不孝通り
とは何か

 意識調査プレテストで横浜・曙町へ行く。はじめての曙町に超感動。一種のテーマパークです、あそこは。ビルの何階とかじゃなくて一つの建物全体が風俗のお店になっていて、看板とかも超派手でおもしろかった。風俗喫茶に寄り、通称「親不孝通り」を歩く。絶対また行きたい!この日はお盆休みということもあってか、訪ねたお店の待合室はお客さんでひしめきあっていて、当然女の子空いてなくて、仕事帰りの女の子を直撃してプレテストを行う。3人しか出来なかったがみんな明るかった。特にAちゃんは、しゃべりたいっ、聞いてほしいって感じでいっぱいしゃべってくれたので、15分以内の予定が20分くらいかかってしまった。曙町で働いてるから元気なのかな?と思った。一方、Yちゃんはこの道長いし、取材慣れしてるみたいで、仕事のこともお客さんのことも考えがまとまっていて簡潔に答えてくれた。このあと池袋のイメクラにも行くが、同じくここも大繁盛で諦めて帰る。

8月15日(日)

豹ちゃんの
ドキュメンタリー

 午後、ドキュメンタリー番組を観る。ろうあの風俗嬢で有名になった豹ちゃんのドキュメンタリー。風俗嬢のドキュメンタリーって、なんであんなにナレーションの声が暗いんだろう。こわいやん!って思わずつっこみたくなる。

8月17日(火)

花札と歯痛

 内外タイムスのイメクラ取材で一緒に池袋に連れていってもらう。取材している間、お店の従業員と花札をして負ける。取材終了後、意識調査で2人の女の子にアンケートに答えてもらう。Rちゃんは歯が痛いところ、がまんして協力してくれた。親の借金というネガティブな動機と一見思われるが、仕事に対して誇りはすごくあるというし、罪悪感もまったくないという。Uちゃんは、「他の職業に例えると?」という質問に、「さびしいひとにやさしくしてあげるし、彼女の代わりになってあげたりするからボランティアかな」と言っていた。Uちゃんのように、風俗の仕事を「福祉」と答える子が多い。仕事の捉え方が窺える。

8月26日(木)

拘束プレイ

 池袋のイメクラ取材に同行。プレイルームに手足を縛る手錠のようなものがあったのでそれを使ってひとりではしゃぐ。取材終了後、2人の女の子にアンケートに答えてもらう。2人とも風俗歴はそれぞれ2、3ヵ月で、取材顔出しOK。面談は1人ずつ別々に行うのだが、2人とも、「誇りはあるか」という問いに、「お客さんをイカせてあげられるということに誇りを持っている」と答えた。最後に答えてくれた子が、「アンケート結果見てみたい」と言っていた。みんなどう考えているのか興味があるみたい。

8月27日(金)

こっ、こんな
子が……!

 ひとりで渋谷のイメクラへ。オープンしてそんなに経ってないせいか、行った時お客さんはいなかった。お客さんが来ないうちに4人にアンケートに協力してもらう。働き始めて1週間とか5ヵ月が3人でそのうち私と同じ23歳が2人、19歳が1人だったので、みんな初々しいし、セーラー服が良く似合う。店長に、「こっ、こんな子がどうしてこんなところに!こっ、こんな子がこんなHなことをするなんて!って感じでまさに男の夢ですね」とコメントすると、「あんた、誰?」と冷ややかな目で見られる。お店のコンセプトなのか、茶髪や顔グロはいなかった。
 「この仕事であなたは何を売っていますか?」という質問があるのだが、今日に限らず、今までダントツで多いのが、「楽しい時間や精神的なくつろぎ・安らぎ」という答えだ。この答えが一番多いのが私にとっては意外だった。「イカせること」とか身体的なことが一番多いのだろうなと思っていたから。また、今日はおもしろい意見が聞けた。「この仕事を他の職業に例えると?」という質問に、「ファーストフードのお店」と答えた子がいた。理由は、「早く出てくるし、回転が早いから」。他にも女の子がいたけど、寝ていたので起こすのも悪いし、今日はこの辺にしておいた。

8月28日(土)

深田恭子

 近々内外タイムスを辞めて新たに風俗誌をつくるために仲間と出版社を立ち上げる矢島さんの仕事で、池袋の性感ヘルスに同行させてもらう。矢島さんは今までにない風俗誌をつくることを目指していて、今日の取材の仕方にもそれが表れていた。女の子の写真に修正が入らないように、(例えばフェラチオのシーンは)おちんちんの代わりにバナナを使用して、女の子の顔の細部まで写真にちゃんとおさまるように気を使っていた。矢島さんは以前、「単なる女の子の裸を撮ればいいとか、モノのように撮るのではなくて、ちゃんといい部分とか引き出せるように撮りたい」みたいなことを言っていたので、それは私たちの盲点だなと思って感心したことがある。いろいろ勉強させてもらいたい。同行した性感ヘルスに行くと、待合室に案内され、そこではお客さんが何人かいて、私一人だけ女だったので少し緊張した。待合室で23歳くらいの女をみたら「ゆっこちゃん!」と一声かけてほしい。すぐにプレイルームに案内され、矢島さんの取材が終って、女の子にアンケートに答えてもらう。彼女は質問に対してあまり多くを語らなかった。ウザイと思っているか、別に何も答えることがないのか(そういう意味で深田恭子に似ていた)。とりあえず申し訳なさそうに部屋を出る。
 今日の内外タイムスの記事に、「読者アンケート『風俗産業』世のため人のためー認知派8割」というのがあった。読者アンケートの質問は、「ソープやピンサロ、ヘルスなど法律上営業が認められている風俗を、アナタは職業として認めますか」というもので、結果は、「認める」が81.69%、「認めない」が7.04%、その他が11.27%。「認める」の意見として、「やはり労働してお金を稼いでいるわけですし、これは職業です。泥棒とかヤクザとは違います」、「風俗が減少すれば、当然売春行為の増加が予想されます。またそれによって法律に違反する行為が増すと思います。それらを少なくするためにも風俗に関する職業を認めるべきだと思います」などが紹介されていた。なかでも最も多かったのが「職業に貴賎(きせん)なし」という理由だったそうである。そして記事の最後は、「『しっかり税金さえ払っていれば、何も問題ないでしょう』という意見がありましたが、これこそが残りの18.31%を認めさせるカギとなるでしょう、きっと」と締められていた。

8月29日(日)

パンティー
プレゼント

 日曜日ということで、夜、渋谷のイメクラに出かけたが、途中、すごい豪雨にみまわれ、ハチ公のところのスクランブル交差点は膝まで水が浸かる池みたいになってて、「え〜っ、どうしよう」と思って行くのを躊躇ったが、まさにこの豪雨の今こそ、客の足は引いているはず!と思って、暇な店の方が女の子空いててうれしい私は、「もっと!もっと!」と心の中で叫びながら池のようなスクランブル交差点を渡った。渡っている途中、雨宿りしている人々の視線が私に集中しているのが気になったが、これも調査のためと思えばなんてことなかった。でも、この姿が翌日のニュースで放映されたりしたらちょっといやかなと思った。案の定、お店は空いていた。店の玄関の前では、あまりの豪雨のため帰るに帰れぬお客さん2人が自分を持て余していた。私はびしょ濡れになっていたため、お店のひとにタオルを拝借して、マントみたいに被っていたので女の子に変な目で見られたりした。お店の従業員のひとは気を使ってくれて、「短パン貸してあげようか」とか言ってくれたりした。「パンツもあるから」とも言ってくれたが、お客さんへのパンティープレゼント用のものだったので遠慮した。すごくいいひとたちだったので、来る時高円寺で買った、仕事が成功するおまじないのろうそくをあげた。
 この日は結局PM8時過ぎから11時までの間に7人の女の子の調査ができた。疲れたけどやっぱり行って良かった。またおもしろい意見が聞けた。ある女の子は、「誇りはあるか」の質問に、「三大欲求の一つを解消してあげられるから」、「誇りはある」と答え、「他の職業に例えると?」という質問には「レストラン」と答えた。理由は、「食べさせてあげるところと、やらせてあげるところが似ているから」。この2つの質問の答えには整合性があると思った。「他の職業に例えると?」という質問に対する他の女の子の答えとして、「床屋さん」(理由:すっきり、さっぱり、手の届かないところ掻いてあげるみたいな)、「居酒屋」(理由:お酒飲むと変ったりする人と、風俗の店に来ると変ったりする人が似ている)おもしろい意見だと思いませんか?調査の合間、アンケート以外でみんなとおしゃべりすることができた。ここのお店はすごい広くて、1階が玄関、2階3階がプレイルームとなっている。3階はベットが大きかったので、VIPって感じだった。VIPが空いている時はみんなここでくつろぐみたいで、女の子も従業員も出入りしていた。そこで私も輪の中に入ってお店のみんなの関係とか聞いたり、女の子の働きやすさはどうとかいう話をした。私の印象では、女の子の何人かは、お店のシステム(特に客の導入部)に不満を持ってるようだったが、従業員が他の部分でフォロー出来ていたり、お店の居心地の良さでなんとかやっていけてるといった感じだった。それは初対面の私に対する接し方にも表れていたように、お店のみんなの雰囲気はごっつ良かったし、仲良かった。「調査がんばってねー」と言ってくれる子もいたりして、初めて風俗で働く子にとっては、良い労働環境かもしれない。帰りに、自分へのご褒美にセンター街でBLUESEALのアイスを食べる。渋谷はさっきまでの豪雨が嘘のようにいつもの活気を取り戻していた。

9月1日(水)

「あっ、おっぱい
星人だ!」

 お昼、池袋のイメクラへ。おっぱいの大きい子がたくさんいるというのが売りとだけあって、みんな胸がでかい。キャミソール1枚の姿なので一目でそれがわかる。「大きいね〜」と、指をくわえながら眺めていたら、「あなたは何カップ?」と聞かれ、「一応Dだよ」と答えると、「じゃあうちの店で働けるよ」と言われたが、胸のでかいのも2つのタイプがある。スリムででかいのと、太ってて肉がついているのと。私は後者のタイプで、背中や腹の肉も含まれているからそんなに自慢できるものではない。
 イメクラにもいろいろあるから、働く子は自分に合った仕事内容のイメクラを選ぶのだろう。ある女の子は、「この仕事で何を売っていますか?」という質問に、「おっぱい」と答えた。(厳密にいうとおっぱいは売ることはできないが、おっぱいを使ったサービスの提供ということだと思う)
 ここにきて、やはりというか、「医者から説教を受けた」という子が出てきた。性病の検査で病院に行った時、「そんな仕事やめなよ」みたいなことを言われたという。彼女はそれを、「(どちらかというと親切で)注意してくれた」という風に受け取ったので、アンケートの記録には、「病院でいやな思いをしたことがある」にカウントされなかったが、人によっては、その医者の言葉が失礼にあたることも多分に予想される。他のお店の子でも、説教ではないが、「セクハラじみたことを言われ、傷ついた」という子がいた。
 病院では誰もが同じ患者として平等に扱われるべきだと思う。こういうことがあっては、自分の職業を正直に言いにくくなる。そのために、患者に十分な手当てや処方箋がなされないということがあってはならない。
 今日は2時間で8人の女の子のアンケートをとることができた。アンケート以外で、女の子とホストの話をしたり、待ったりして2時間だから、面談に慣れてきた証拠だと思う。アンケートの質問項目も、もうだいたい覚えているので、スムーズに次の質問にいける。

9月2日(木)

南智子語録

 午後3時、渋谷のイメクラへ行こうとお店に電話をするが、取材中なので夕方6時ごろにしてくれと言われ、渋谷で時間潰しに『諸君!』10月号に載っている「開かれた女たちー鹿島茂(司会)、藤本由香里、酒井あゆみ、南智子、北原みのりによる座談会」を読む。セックスワークについてとかの話がされてある。
 印象に残ったのは、南智子さんの「自分の性の商品化は、個人の創意工夫の問題だ」という言葉。いろいろな業種を今調査している私としては、この言葉を見つけて、頭の中に「!(びっくりマーク)」が浮かんだ。確かに、南さんのおっしゃるとおり、風俗とか性の商品化と言っても、ほんとに「創意工夫」の問題で、ヘルス系にもいろいろあるし、お店にもよるし、女の子だって、その子によって、サービス内容はばらばら。NGのサービス内容とかあるし、キスしない子もいるし、指入れさせない子もいるしで、お店で決められたサービスについては、自分のがんばれる範囲でみんなやっているという感じ。そう考えれば性の商品化という言い方はかなり抽象的かも。それにしても、『諸君!』を読むことなんてほとんどないからちょっとびっくり。「え〜」って感じ。
 夕方6時になってまたお店に電話したら、「お客さんが何人かいてちょっと今だめ」と言われ、「明日にした方がいいですか?」と聞くと、「そうしてもらえる?」と言われたので諦める。
 帰りに109の近くにあるビックカメラでドコモのiモードを買ってご機嫌でかえる。

9月3日(金)

賎業意識とは何か

 お昼、昨日だめだったお店に再度行く。しかし、空いてる女の子は2人だった。「風俗で働いていることで、生活・手続き上困ったことは?」という質問に、一人は「お金を借りたり、カードを作ったりする時に困る」、もう一人は、「引っ越しする時に困る」と答えた。彼女たち以外にも、他のお店でも、例えば「源泉徴収とかの証明がない」とか、「税金を申告する時困った」とか、「履歴書に書く時や、友達に聞かれた時困る」とか、「保険のことを突っ込まれたり、給料明細、アリバイなどに困る」などの意見があった。手続きの問題とかは、風俗が職業として認められてないから生じるのだと思う。また、人々の風俗に対する賎業意識も影響しているのかもしれない。
 「今の仕事を他の職業に例えると?」という質問に、「看護婦」と答えた子がいて、それは人に奉仕したりするところが似ているからかなと思ったら、「看護婦さんは初めはやりたくてやろうとしたんだろうけど、100%納得してやっていないと思う。(そういうところが似ている)」という理由からだった。すごい大人な考え方だなと思った。
 店長が「昨日は悪かったね」と言ってきたので、かわりに買ったばかりのiモードの使い方を教えてもらった。

9月5日(日)

「なんでこんな
仕事してんの?」
という質問とは
何か

 池袋のイメクラへ行く。日曜日なので夜が空いているだろうと思って9時に行ったら、逆に女の子が少なくて2人しか調査が出来なかった。土曜の昼夜と日曜の昼は混んでるだろうと思って日曜の夜にしたのに、店長に「昨日とか今日の昼間だったら女の子いっぱいいたのに」と言われて、すげー後悔。今度からそうしよう。
 「あなたにとって一番いやなお客さんは?」という質問に、「『なんでこんな仕事してんの?』とかいろいろ聞いてくるひと」と答えた女の子は今まで1人だったが、今日で2人目になった。この2人の子は、別の質問「風俗嬢を見下したようなしゃべり方をするひとは実際どのくらいいますか?」に、「10人中3人」と、他の子より多く答えている。「なんでこんな仕事してんの?」という質問を浴びせる客は推測で多いと思うが、客のこのような質問を「見下している」とは捉えない子の方が多いということか?しかし、冷静になって考えてみると、では、風俗の仕事以外の職業に就いている人に、「なんでこんな仕事してんの?」という質問をするのは自然かというと、なんか不自然な感じがするので、やっぱりこの質問は風俗嬢を見下している、少なくとも失礼な印象を与えるものと受け取ることができる。
 「なんでこんな仕事してんの?」という質問が「見下したしゃべり方」として風俗嬢に幅広く認識されていないのだとしたら、それは、何度もこの質問をされて当たり前になっていて、もう気にならなくなっているとか、いちいち気に障っていたらやってられないということを意味しているのだろうか。そうだったらなんかいややなあと思った。

9月6日(月)

山田詠美

 昼、昨日行ったお店に再び訪れる。女の子の出勤時間がバラバラなので、12時オープンから来る子もいれば1時とか2時とか3時に来る子もいるので、根気よく、12時から4時まで居座る。1時間ごとぐらいにぽつぽつと調査をし、女の子の出勤を待つ間の中途半端な時間は、お店の従業員らが昼間から燃えまくるドリームキャストの格闘技ゲームの観戦で店長を応援。あまりの盛り上がりに、「ここは一体どこやねん?!」という錯覚に陥る。
 4時間くらい居たけど、従業員がゲームする部屋と女の子がたむろする更衣室をうろうろしていたのであまり長く感じなかった。それはゲームを観ていたということの他に、女の子と作家とか小説の話をしていたからだ。このお店のMちゃんは、風俗に入った動機は、アンケートでは「お金がほしいから(ほしいものを買いたいから)」であるが、後で雑談をしていて、「山田詠美の『跪いて足をお舐め』を読んで、風俗嬢になりたいって思った」と話してくれた。
 前にどっかの雑誌で村上龍が「僕の小説を読んでいる風俗嬢は多い」みたいなことを言っていたが、確かにそれはあると思う。風俗とかはよく、山田詠美や村上龍の小説のモチーフになっている。私はアンケートを作るときに「あなたが最もよく読む作家は誰ですか」という質問を入れたいなと個人的に思ったが、もちろん個人的な興味に過ぎないので心の中でそう思っていただけだったけど、こうしてアンケート以外で雑談することがまたあれば、他にもMちゃんみたいな子がいるかもしれないと思っている。
 今日は5人アンケートに答えてくれた。

9月7日(火)

バイブは活力

 今日行く予定だった渋谷のお店の店長は私より年下と聞いているので、すごく楽しみにして店長からの電話を待っていたが、連絡なかったので今日は勝手にオフにして、友人が高円寺にオープンしたアダルトショップのお店に買い物に行く。
 内外タイムスの薄井さんと矢島さんに、ポッキーの香り付きコンドームと携帯できるペン型バイブをそれぞれおみやげに買う。自分用にはピカチュウみたいなかわいいバイブを2つ買う。帰ってから「バイブは活力」ということを改めて実感。しばらくお世話に。

9月8日(水)

風俗嬢が
最も抵抗ある
サービスとは
何か

 夕方、薄井さんの取材の仕事に一緒に行かせてもらう。お店の場所は今日の昼に起こった「池袋通り魔殺人事件」の現場から少し離れたところ。もし取材が昼からだったら東急ハンズ前を通っていたかもと思うとゾッとした。初めてゴムつきのイメクラのお店に行った。中にはゴムを使わない女の子もいると思うが、アンケートに協力してくれた5人のうちほとんどはゴムを使用しているようだった。
 現在の風俗業界は不況の影響を受けて以前よりお客さんが少ない上に、風俗店や働く女の子の数は減る傾向にないので、特に風俗激戦区・池袋では苦戦を強いられる。そのため過激サービス、つまり生フェラのお店が多い中(多分ね)、ここのお店はめずらしい(多分)。どういったことで女の子のゴム使用可にしているのかお店の人には聞けなかったが、薄井さんによると、「ゴム使用可のほうが女の子が集まりやすいからではないか」とのこと。なるほど。
 今日アンケートで目立った答えは、「NGのサービス以外で一番抵抗のあるサービス内容がキス」5人中3人。この3人のうち「ディープキスがいや」が2人で「キス自体いや」が1人。ゴム付きのお店とだけあって、体液(粘膜)と体液が触れ合うのをいやがる女の子が多いということか。
 今日を境に、「抵抗あるサービス」ワースト1位と2位が入れ替わった!昨日までワースト1位をキープしていた「アナル系サービス(アナルなめやアナルマッサージ)」は今日をもって2位に転落。「アナル系サービス」を抜いて堂々の第1位に躍り出たのは、まさにその「キス」!(ここでお父さんから「何書いてるんや?」というツッコミが入る)
 「アナル系サービス」を細分化して統計をとれば、キスはダントツで1位になる。キスが嫌いな子が多いんだなということが分かってきた。

9月11日(土)

西川貴教と尾崎豊

 9月5日(日)の失敗を教訓に、夜池袋のイメクラへ。やっぱり女の子がいっぱいいて、8時半から10時半までで7人のアンケートがとれた。ここのお店の店長は、すげー愛想よくて、西川貴教みたいなノリの良さ。女の子を紹介する時に、「次は指名NO.1の〜ちゃんでーす」とか、「次は二枚目の〜ちゃんでーす」とか言って、すげーテンション高い。
 「仕事のことで相談したりできるところ/ひとは?」という質問に、7人中2人が「店長」と答えていたが、わかる気がする。
 今日の調査での出会いもう一つ。「あなたがこの仕事をしようと思った動機は何ですか」という質問に、「興味があったから」と答えた子がいた。このような答えはこれで2人目になる。「なんとなく」とか、「風俗店を出すため」と答えた子は今まで何人かいたけど、ほとんどの子はたいてい、「貯金」・「借金」・「生活」か、「学校」・「旅行」・「買いたいもの」・「趣味」のいづれかを答える。
 今日出会った彼女は、他の質問にも今までにない答え方をしていてすごく印象に残ったので、他の質問項目についてもちょっと紹介したい。
 「興味があったから」風俗を始めたという彼女は19歳で風俗歴6ヵ月。ナイタイの男性向けのお店の広告を見てみつけたという。この時点でめずらしい。普通は風俗求人誌とかスカウトなどでみつける。サービスはアナルファック以外は全部できる。「他の仕事ではできない点で喜んでもらえる」ということに誇りを持っていて、風俗に対する見方の変化については、「やさしい世界だなと思った。お金を出せばどんな人でも受け入れてくれる」と回答。なんとっ!!なんという!!これを聞いた時私は、彼女が天使に見えた。実際天使みたいな顔してたけど。私は面談をする時の心得として、どんな子にも、どんな回答にも、「んーなるほど」みたいな相づちを打ちながらやっている。それは、だれもが本当のことを答えやすいようにそうしているのだけど、彼女に対しては動揺を隠せなかった。想像もしていなかった回答が得られたから。「す、すごい」と思わず口から出てしまった。反省。その他、自分にとって一番いやなお客さんは、「あいさつもなく始める人。やることだけやって終りみたいな」。彼女、礼儀正しかったもんな。愛想もよかったし。私が客だったらこういう子につきたい(あれ?なんか松沢呉一みたいになってきたぞ)。あと、風俗を始めてからの精神的変化については、「強くなった。いろんなひとにいろんな自分で接するから、余計、自分をしっかり持つようになった」。なんかこっちが考えさせられるというか、「おまえも自分をしっかり持てよ」と言われてるみたいな気分になった。彼女まだ19歳なのにすごいなあ、尾崎豊の歌詞みたいなこと言ってて格好いいなあと思った。この子の人生に負けた気がした。
 さっき言ったように、彼女の前にも「興味」が動機で風俗入りした子がいて、この2人の共通した回答が見つけられた。この仕事を他の職業に例えると、一人は「食べるところ」と答え、もう一人は「コックさん」と答えていた。理由はそれぞれ、「食べるとうれしい、というところ」、「料理を作って、食べてくれるひとが喜んでくれるのを見て、自分もうれしいというところ」が似ているという。もう一つ共通点。何を売っているかについても、2人とも「やさしさ」と答えていた。
 調査をやってて、いろんな子に出会う。しんどそうに、いやいややってる子も結構いる一方で、今日出会った彼女みたいにそれとは180度違う子もいる。他の職業がそうであるように、風俗嬢も一概に語れない。

9月12日(日)

射精産業労働者諸君

 再び横浜曙町へ。薄井さんの承諾を得て、調査対象地域として新宿・渋谷・池袋に加え、横浜も入れることに。私がまた曙町に行きたかったから。えへ(^_^)。
 午後2時から閉店する午前0時までずっと曙町にいた。なぜかというと、お店の人が女の子の送迎をする車に乗せてもらえたから。
 10時間いたらいっぱいアンケートとれるだろうなと思っていたけど、女の子少なかったので6人しか出来なかった。他店にも行ったけどそこはお客さんいっぱいで女の子空いてなかった。で、空いた時間何してたかというと、スタッフルームにあったパソコンで風俗嬢意識調査活動日記のページを開いて、お店の女の子に見せてあげたりして、勝手にブックマークに追加しておいた。夕方、お客さんが入りだしたので従業員と一緒に近くのホルモン道場に行って焼き肉を食べた。お店に戻ったら店長に「女の子少ないんだよねー。働かない?」と言われ、「今、生理っすよー、無理っすよー、2日目でもうドボドボっすよー」と言ったが、「そういうのも好きなお客さんいるんだよねー」と言い返され、仕方なく、というのはウソで、「それヤバイっすよー」と言ってなんとか断った。
 今日のアンケートでの新たな発見。「今の仕事の良い点は何ですか」という質問に、「風俗ということで言えば、収入がいいということ。イメクラということで言えば、コスチュームで欲情してくれるからヘルスより楽」と言う子がいた。なるほどねー。
 その他、風俗に対する見方の変化として、「外見と内面を一緒にしてはダメだと思った。風俗の子はしっかりした子が多い。金使いも荒くないし」と答えた子がいた。こういう意味合いのことを言う子は大変多い。例えば今まであった意見として、(ちょっと長くなるけどごめん)

  • 他の仕事と同じように、みんな目的を持ってやっている。
  • 人間関係がいい。
  • 接客が楽しかった。
  • 客が汚い人ではないということがわかった。
  • 「売春」みたいなイメージあったけど実際は全然違う。
  • お客はHで来てるんじゃなくて、ストレス解消とか、女の子と話がしたくて来る。悪い人もいない。女の子もHな子いない。夢もある。遊び半分じゃない。
  • 風俗は全然別の世界ではない。
  • 客は浮気じゃなくて、遊びに来てるって感じ。
  • 絶対やれないと思ってたけど、「こんなもんか」とやれた。
  • 普通の仕事だ。OLでもなんでも変わらない。
  • ドロドロしてるかと思ったけど、みんな明るい。
  • 汚いとかチャラチャラしたイメージだったけど普通の子がやってる。誰でもやれる仕事。
  • 悪いことじゃないし、女の子もがんばってるし、こういう仕事もあっていいと思う。
  • 一つの仕事としてみれる。
  • 全然働きやすい。
  • 居やすいし、やりやすい。
  • お金を稼ぐためだし、みんな一生懸命やってるし、恥じることはない。

などなど。
 みんなが上記のように考えているわけではなくて、中には1人か2人ぐらいやっぱり汚い仕事と捉えている子はいて、やりたくないけどこの仕事をせざるを得ないという子がそういうふうに答えている。見方は変わらず、風俗は風俗というふうに捉えている子も何人かいる。でもほとんどは、上記のように見方が変わっている。やってみなければわからないということを意味しているのではないだろうか。
 今日は女の子の数が少なかったので、番外編として、初の従業員アンケートを実施した。従業員2人に答えてもらった。私がやろうとしたのではなく、「俺もアンケートとって」と言ってきたので、質問できるもののみ答えてもらった。
 ある従業員(私は「射精産業労働者諸君」と寅さんみたいに呼んでいるが)は、この仕事の良い点として、「先が見えないこと」と答えた。それは、先が見えてるようではおもしろくないということらしい。だから、この仕事をやめるのも「先が見えたとき」と答えていた。他の職業に例えると、「いろんな商売の基本」だと言っていた。そして一番いやなお客さんが、「『かわいい子いないじゃん』
と言う奴」。お前ついてもいないのにそんなこと言うなと思うらしい。
 もう一人の従業員は、他の仕事に例えると、「コーディネーター」(理由:女の子を育てる)と答え、一番いやなお客さんは、「写真を見て『これ』って言う人。(『この子』と言ってほしい)」と答えていた。
 本番迫るお客さんと見下したしゃべり方するお客さんの想定数は、女の子の意見と違って、ずいぶん多かった。一人は、本番迫る人10人中8人と答え、もう一人の人は9人と答えた。見下したしゃべり方する人についても10人中8人と、3人と答えていた。お客さんは従業員に対する態度と女の子に対する態度が違うということか。
 初めて従業員アンケートをやってみたが、女の子とはまた違った意見が聞けておもしろかった。ハマりそうである。
 家に着いたのは夜中2時だった。長い一日であった。でも楽しかった。

9月14日(火)

宮台さんから見た
援交女子高生とは
何か

 夜、渋谷へ行く。先週9月7日(火)に行く予定だったお店にやっと今日は行けた。このお店は、在籍している女の子自体少ないので、出勤していた女の子は3人だった。たまたまこの3人は、しゃべり方、性格、考え方がそれぞれ全く違うタイプ(タイプ別に分けるのは失礼)で、調査をしていておもしろかった。
 一番楽しかった子は、最も世代のギャップを感じさせる子だった。それは、ちょうど社会学者の宮台真司さんが今時の女子高生を紹介する時に出てきそうな子と言ったら分かってもらえるだろうか。
 パツキン(金髪)で顔グロの20歳の彼女は、「まじめな仕事をしたくなかった」という動機で風俗で働き始めた。誇りはありますかという質問に、「別にィー、あるわけでもないわけでもない」と答え、「売春は悪いと思いますか」には「ううん」(いいえ)と首を振ったので、「なんで?」と聞いたら、「やってたから」と言った。これは初めて聞く理由だ。例えば他の子は、自分がやっていることだとしても客観的な判断、回答(つまり相手が理由として納得する回答)をしているが、彼女の場合、そのような客観性を取り払っていて、自分がやっていること・やっていないことそのものが答えで理由。他の職業に例えると?という質問には、「お話相手する仕事」。理由は、「お話の相手をするから」。「そのまんまやな」と言ったら「うん」と言って笑っていた。彼女はなんて素直でストレートなんだろう。私が客だったら……(もうええって)。ここまでは話し方は淡々としていたが、風俗に対する見方の変化の質問のとこで今時の若者のしゃべり方が聞けた。彼女は風俗に対する見方は「変わらない」と答え、どう変わらないかというと、「たまに偏見した見方する人がいると、『はあ?!』って感じィ?必要だからこういう仕事があるんだし、偏見持つ人だって性欲あるのに『バカじゃん?』って感じィ?」という。そして一番いやなお客さんは、「しゃべんない人。あと、『あれやれ、これやれ』とか言ってくる人。AV観過ぎだっちゅうの!」。あと、今まで働いたお店で従業員・女の子とタイプが合わなかったらしく、「そのときどうしたの?」と聞いたら、「しゃべんない」と答えた。自分の快/不快に実に忠実だ!
 次に19歳で学生の彼女。彼女は、「風俗嬢を見下したしゃべり方をするお客さんはどれくらいいますか」という質問に、「10人中4人」と答えたので、「そんなに多いんだ?」と言うと、「学生だと言っても風俗嬢ということでなかなか信じてもらえない」のだという。お客さんの中で、「昼間何してんの?」と聞いてくる人がいて、「大学生です」と答えても、「ウソだあー、ほんとにィー?」と言ってなかなか信じようとせずムカつくので、具体的な大学名まで教えたらやっと信じてもらえるのだという。その時はムカついた衝動で大学の名前を教えてしまうけど、後から「また教えてしまった!」と後悔するそうだ。
 ひどい話だ。風俗嬢が大学生じゃおかしいのか。お前は昔の人かと言いたい。風俗嬢とはこういうものといった偏見がもろに出ているエピソードである。こういうエピソードを記入する箇所は特別にないけど、「見下す客の例」を、これからこまめに聞いて余白に記録していこうと思う。そして公表することでそういう失礼な客を少しでも減らせればいいなと思う。
 最後に、キャピキャピ、ピチピチした女の子。でもって、すごいまじめな子。18歳で風俗歴1ヵ月だが、週4日は働いている。この仕事をみつけたのはスカウトがきっかけで、この仕事をしようと思った動機は、「スカウトの人がすごい丁寧な人で、『この人を信じよう』と思ってついていった」。この仕事に対する誇りとしては、「みんな楽して稼げると思ってるけど、楽じゃない。お客さんはお客さんですごい気使ってるし、こっちもいろいろ悩みながらお客さんに合った対応して、トラブルとか起きないようにすることとか、すごい気を使ったりしてるし。この仕事は体を売ってるわけではなくて、お客さんに満足してもらうこと。恥ずかしい仕事だとは思っていない」。彼女は1つ1つ言葉を選ぶように話してくれる。売春については悪いと思うと答え、その理由として、「お店で働くことは、お客さんをどう満足させるかなどでいろんな努力をするけど、売春はその時間だけ我慢して、自分は努力しなくても男の人がリードしてくれるから。努力しないと、お金が手に入ってもあまり大切じゃなくなる」。お金を稼ぐということについて誠実な考え方をしているんだなあと思った。彼女の今までの労働経験がどういったものかは分からないけど、18歳なのにしっかりしてるなあと尊敬の念を抱く。その他、他の職業に例えると、「営業の人」(理由:その人に合った対応の仕方を考えなくてはいけないから)。この仕事で売っているものは、「笑顔は絶対。絶対手を抜かない。差別しないこと」。風俗に対する見方の変化としては、「良くないイメージ持ってたけど、入ったら、全然普通の人でいい人たちだし、みんなお客さんが喜んでくれるように努力してるし」。
 今日の日記のように、女の子のインタビューを片っ端から紹介しようとする意図は、この社会にある風俗嬢への様々な偏見や誤った情報を真っ向から覆すような話や実態が当事者の口から聞けたからというのはもちろんあるが、もうひとつは、風俗誌などを見ていて、女の子のインタビューや紹介が載ってあるけど、たいていは性感帯がどことか、得意技とか、好きなタイプとかの話で、なかなか考えとか本当の話を聞けなかったりするし、風俗誌じゃない週刊誌のルポとかでも、女の子のインタビューについてライターの分析によるバイアスがかかっていたり、ライターの納得のいく自己満足なストーリーに仕立て上げられたりしていて、純粋に、素直に女の子の話が見えなかったりするからだ。だからせめてこの調査日記では、日頃風俗誌では読めない話や、バイアスのかからない実際の女の子の話に近い紹介ができればと心がけている。が、「バイアスがかかっている」とのお叱りの声を既に頂いており、これから気をつけたいと思う。この場をかりてお詫び。(9月1日の日記「ある女の子は、『この仕事で何を売っていますか?』という質問に、『おっぱい』と答えた。 (厳密にいうとおっぱいは売ることはできないが、おっぱいを使ったサービスの提供ということだと思う)」という部分における勝手な解釈というご指摘)

9月18日(土)

Rちゃん連絡待つ

 3日間さぼってしまった。パソコンが調子悪くなってデータが消えてしまったので不貞腐れて寝ていた。しかし、その分プレッシャーが大きくなり、来週から本腰入れて取り組むことにした。具体的には、毎日、終日お店に入り浸るつもり。一日10人目標。やれるかな。(ここで宣言しておいたらやるだろうと自分を追いつめている)
 せっかく復活したのに今日訪ねたお店は2軒とも「今忙しい」と言って断られた。しょっく〜。「今後ともよろしく」とあいさつして、店長の携帯の番号など聞いて帰る。帰りに9月5日に行ったお店の従業員にばったり会う。従業員をやめたらしい。「調査でRちゃんに会ったら電話くれと言っておいてくれ」と伝言を頼まれたが、どのRちゃんか分からないのでとりあえずRちゃんという子に出会ったら伝えよう。

9月20日(月)

年齢がお父さんに
近くても見た目が
自分のタイプ
というのと、
見た目はお父さん
だけど年齢が若い
というのでは
どっちがいい?

 9月6日に行ったお店に行く。出勤していた女の子の内、この前いた女の子が半分くらいで、新たにアンケートとれたのは5人。見通しが甘かった。
 今日は新人の女の子とおしゃべり。18歳の彼女は風俗で働きはじめて1週間。服とかアクセサリーなどの買い物をするためにやり始めたという。この意識調査にすごい関心を持ってくれて、こっちがいろいろ聞かれた。調査の目的などを話したら、すごく共感してくれた。その他、「こんな私でお客さんが満足してくれるか不安」と言うので、私は、「そういう風に戸惑っているところがお客さんに伝われば、かわいいな、いい子だなと思ってくれると思うよ」とアドバイスなどした。次会う時、彼女がどう変わっているか楽しみ。
 新人の彼女がアンケートに答えてくれたものの中で、今までにない回答。一番いやなお客さんは?という質問に対して、「見た目が自分の嫌いなタイプ。自分のお父さんに近い年齢の人」。年齢がお父さんに近くても見た目が自分のタイプというのと、見た目はお父さんだけど年齢が若いというのとでは、どちらがいやですか?という究極の選択を今度彼女にしてみよう。
 その他、アンケートに答えてくれた女の子の変わった意見。他の職業に例えると?という質問に、「温泉」(理由:ひとときのやすらぎだから)、「回転寿司」(理由:ネタをいろんなものに例えて、それを選んで売るところ。ヘルスとかイメクラとか自分で選べる)など。
 最後にストーカー問題を。5人中3人がストーカーされた経験を持つ。例えば、「店から家までつけられた」、「駅で待ち伏せを毎日された。『つきあって』と言われ、断ったら『殺す』と言われたり、暴力的な言葉を言われた」、「家のそばにいた人がいる」など。
 アメリカでは1990年以来49の州でストーキング法が制定されたが、3つの州は被害者の自宅付近等で待ち続けることを禁止している。多くのストーキング法は事前連絡無しの面会を禁止している。
 日本ではストーカーに関しては軽犯罪法のつきまとい行為にあたるとされているが、ストーカー/ストーキングの定義が曖昧で、これでは被害者が報われないことも有り得る。日本でもストーキング法の制定が急がれるべきではないか。

9月21日(火)

客を蹴り飛ばす
風俗嬢

 9月1日に行ったお店に行く。今日も思い出に残る出会いが。
 風俗で働き始めて3ヵ月で18歳の新人の女の子。しかし、風俗は既に4つの業種を経験している。彼女、風俗歴3ヵ月なのにしっかりしているのだ。
 例えば、あんまりしつこく本番を迫ってくるお客さんに対して、どうしますか?という質問に、「蹴り飛ばす」と答えた。今までにない答え。また、今まで働いたお店で、「女の子に物を捨てられたり、『あの子本番やる』とお客さんに言い振らされた」らしく、「その時どうしたの?」と聞いたら、「女の子全員に問いただした」という。女の子によるいやがらせとかいじめがあったという話はこれまでもあったが、その時の対処としては、店を変えるとか、諦めるが主流であった。彼女は強いな。その他の質問に対する答えでも、彼女は他にない答え方をしている。この仕事を他の職業に例えると?には、「芸能界」。理由は、「仕事をとるために、人と寝ることが似ている。役者がプロデューサーと寝るように」。彼女は週刊誌などを読んでいてそういうことを思ったのだろうか。まあ、芸能界に限らず、仕事がほしいから仕事をくれる人と寝るということは他の業界でもあるだろうけど。
 昨日から、風俗嬢を見下したしゃべり方をする人はどれくらいいますか?という質問のあとに、例えばどういうお客さんがいるかということを聞いている。
 今日得られた答え。ある女の子には、「借金あるの?」、「いいよね、女は」、「どうせ1万なんて100円みたいな価値なんでしょ?」という失礼極まりない暴言が浴びせられた。こういうことを言われた彼女は、料理屋を出すためにこの仕事をしているというのに、勝手に彼女にとってのお金の価値を決めつけられ、さぞかし悔しい思いをしただろう。もうひとりの子が言われたのは、「これくらいの仕事しかできないんでしょ、君」。その子は学生で、将来就きたい職業があり、そのために今勉強している。もちろん、料理屋を出すためだろうが、他に就きたい職業があろうが、これらの失言自体、許されるものではない。その他、(プレイが終った後で)「よくこんなことやってるよね」、「恥ずかしくないの?」、(最初から)「H好きでこういうことやってんの?」、「こういうとこで働いているんだったら、本番とか平気なんでしょ?」と言われたという女の子がいて、そういうあほに対して、その子はいつも、「だったら来んなよ、そういうお前は来てんじゃねえか」と言い返すようにしているという。拍手!!

9月23日(木)

いつか起る
風俗嬢のスト

 9月11日に行ったお店へ。昨日店長に電話したら、「今日はこの間と同じ女の子しかいないから、明日の午後3時くらいに来れば5人はアンケートとれるよ」と言われたので期待して行ったけど、世間は休日なのでお店は昼間からお客さんで超満員。3時から9時までいたけど3人しか出来なかった。でも、その日は徹夜だったので、私にとってはグットタイミングのお昼寝ができた。途中でアンケートで起こされるのがつらかったけど。
 ここのお店はあるいけない特徴が。今日答えてもらった女の子で、「今まで働いたお店で何かいやなことはありましたか」という質問に、「予定の労働時間を断りもなく延長させられた」と答えた子がいた。その子はお店の人に改善するよう訴え、一旦約束させたが、また同じことを繰り返すのだという。前にこのお店に来た時も同じように答えた子がいて、その子はお店側に「終電がなくなったのでタクシー代を請求した」と言っていた。他にも犠牲者はいるとみた。
 予定の労働時間を断りもなく延長させられたというのはどういうことかというと、シフト通りの仕事を終える時間だというのに勝手に店側が次のお客さんをとってしまって、「もうお客さんとっちゃったからお願い、もう一本ついて」と言われることである。ここのお店は繁盛していそうだから、従業員の感覚がお客さん至上主義になってしまっているか、確信犯的にそういう方針にしているかのどっちかだと思う。いつか女の子がマジギレするぞ。

9月24日(金)

職業の境界線とは
何か

 今日は2軒行った。はじめに行ったお店では2人、そのあと行ったお店では3人のアンケートがとれた。
 みんな風俗歴1年以内でそのうち2人は以前水商売をしていた。水商売をしていた2人は、他の子と違って、この仕事については「指名」とか「愛情を注ぐ、恋人になりきる」、「精神的なものにつきあってあげる」ということを共通して意識していた。全体のサンプルを用いて比較しないと言えないことだが、お水をやっていた子は、風俗の仕事をその延長のように捉えているのかな。お水をしていなかった子でも、風俗の仕事を水商売に例える子が何人かいるけど。確かにお話するのがうまくないとどちらもできない仕事ではある。
 お水をしていたある女の子は、「売春は悪いと思いますか」という質問に対して、「どちらでもない。この仕事をしてからどこまでがいいか悪いかとか、どこまでがどうとか分からなくなってきた」と答えている。実際風俗で働いてみると、従来自分が思っていた様々な職業なり職種の境界線というものが見直される(考え直される)ということが起ってくるのだろう。良い現象だと思った。

9月26日(日)

真夜中の曙町

 やってきました横浜曙町!天気も良くって風俗日和って感じ。でも日曜日で超混んでいて、さらに女の子は前にもいた子が多くて、新たにアンケートとれたのはわずか2人。私は暇でまたホルモン道場に行ってしまったぜ。
 現役看護婦さんに出会った。風俗で働き始めてまだ2日目であるが、この風俗の仕事は、「その人の身体的・精神的満足を満たせるようにすること」という点で、看護婦の仕事に似ていて、「ただやることが違うのかな」と言っていた。本物の看護婦さんだけに説得力がある。
 もう一人の女の子は、風俗歴1ヶ月半だが、この仕事をするようになってからの体の変化として、「歯ぐきから血が出やすくなった」らしい。前にもそんな話を聞いたことがあるが、なんでじゃろ。仕事内容に関係あることなのかな。だれか知ってたら教えてくりくり。
 その他余談として、浄水機を買うのが目標という子がいて、彼女はお酒が好きだから、おいしいお酒を飲むためにおいしい水が必要なんだって。極めるわけだな。私もお酒好き。でも水はいらんの。ロックかストレートで飲むから。お前のことはええってか。
 今日は朝早く家を出たから夜眠くなって、もう一軒行こうと思っていたけど、「死ぬ〜」とか言ってうっかり寝てしまった(許せ薄井さん)。目が覚めたら終電に間に合わない時間になってしまっていて、横浜で一泊する羽目に。夜中、曙町を一人でうろつき、京たこなど食べる。朝方お店に戻ってまた寝て、起きたら朝の9時45分。あわてて寝ていた従業員をたたき起こし、10時開店の準備を手伝う。一体何をしに来たのか。それは言わない約束〜。

9月27日(月)

風俗店における
標語とは何か

 曙町2日目。朝から忙しかったため、調査を諦めて帰った。
 帰り際、お店の壁に、Rちゃんの決意を書いた写真が貼られてあるのをみつけた。「支払い以外は全部貯金する」。
 ここのお店に限らず、標語みたいなものを壁に貼り付けてあるお店は今までもあったのを思い出した。
 池袋のあるお店には、徳川家康の名言(多分、人のせいにするなみたいな意味の言葉)が貼ってあって、渋谷のあるお店には、「世界の平和と幸福なんたらかんたら」という標語が貼られていた。誰の趣味か分からないけど、なんかいい感じ。「ああ、このお店は世界平和を願っているのだな」とか分かるから。我が家にも何か標語を。

9月28日(火)

祭りのあとの
過ごし方

 池袋の新しいお店に。すごく小規模店で女の子は3人しかおらず、在籍も10人もいないというくらいだからすごく家族的な雰囲気に包まれた店である。
 今日に限って珍しく私は、前もって雑誌でお店の女の子をチェックして行った。いつもはそんなことはせず、お店に調査に行ってからその後、風俗誌や内外タイムスを見て、「あっ、〜ちゃんだ!」とか言って、ひとりでアルバムを見るように喜ぶのだが、今日は逆バージョンをやってみようと思ってやったら、雑誌を見て風俗に遊びに行く客の気持ちが少し分かったような分からんような。
 雑誌に載っていたRちゃんに会えた。Rちゃんのことは前に雑誌のマンガになっている体験取材の記事で読んだことがあったので、会った時はマンガのRちゃんを思い出してちょっとドキっ。そーか、マンガって、読者の想像を掻き立てるから結構期待効果があるんだな。
 でも今日のRちゃんは具合悪くてしんどそうな上、このアンケートに答えたらすぐにお客さんにつかなければならず、私はごめんねと言いながら忙しそうに質問しなければならなかった。Rちゃんを待っているお客さんは私も見たマンガを見て来たのかな。そしたら今ごろ頭の中は大変だなと思いながら調査をした。
 その他の子とはゆっくりアンケートをとることができた。19歳にして既にホストは卒業したという子がいた。「飽きた」と言っていた。9月1日に行ったお店にもホスト卒業生がいたが、飽きる子は飽きるのね。彼女はアンケートに対しては多くを語らなかった。そして、「わからない」という答えが多かった。でも、「今の仕事の良い点は?」のところで、「フェラチオがうまくなった」と答えた。彼女と違って、フェラが上手くなることについて複雑な気持ちになる子もいるらしい(月刊『創』11月号掲載「魔境の迷路」松沢呉一連載参照)。
 一方、淡々としていた19歳の彼女とは打って変わって、この道2年6ヵ月のMちゃんは、仕事に対する学習意欲が感じられる。例えば、今の仕事の良い点は、「男の本心が分かる」ことで、他の職業に例えると、「役者」で、この仕事で売っているものは、「客の妄想や幻想を現実のものにしてあげること」と答えた。
 更に、同業者の女の子の洞察にも深いものがある。「風俗は、落ちるとこまで落ちた人がするものだと思っていたけど、逆だった。普通の仕事してる人より考え方とか人間性がしっかりしている女の子が多い」とのことである。
 今日の3人はたまたま、動機が「貯金のため」と言っていたが、9月12日に出会った女の子も言っていたように、風俗嬢が金使いが荒いというのはウソである。そういう子も中にはいると思うが、ホスト卒業生がそうであるように、金を使いまくるというのも、いづれ飽きることではないだろうか。そういえば最近では女子高生の援助交際は減ってきていると言われている。5、6年前、ブランドものを買うことが一種の流行で、一過性のものであったように思う。今は落ち着いてきているのかな。祭りのあとの静けさに似ている。(今度は何の祭り?) 帰り際、お店の従業員に、「今日は、風俗店摘発の瞬間の場面が出る、警察24時みたいな番組があるらしいっすよ」と教えたら、「えっ、どこのテレビ局?、観る観る」と興味津々だった。私、観損ねたけど、誰か観たっていう人いたら教えてくりくり。

10月9日(土)

ボスからの電話

 内外タイムスの薄井さんから連絡がくる。来週からたくさん風俗店を紹介してもらえることに。この調査日記しばらく休んでいたけど、またこまめに更新していくので乞うご期待ということで。次回の日記は多分、14日からです。

10月12日(火)

男女共同
参画審議会の
委員に風俗嬢を
入れろ!

 総理府主催の女性に対する暴力に関するシンポジウムに参加。資料の男女共同参画審議会の答申(今年5月27日)を読むと、売買春は「女性に対する暴力」であり、「男女共同参画社会の実現を阻害する」とある。う〜、なんでそうなるんか教えてくれ〜!
 シンポジウムにはパネリストとして、弁護士の角田由紀子さんが来ていた。角田さんによると、夫から暴力を受けた女性が警察に通報して警察官に来てもらっても、「たかが夫婦のけんかぐらい」って感じでまともに扱ってもらえないということがあるらしい。これって、「夫婦だから多少の暴力があってもしょうがない、夫婦だから我慢しろ」ってことじゃないですか。「風俗で働いてるんだからしょうがない、我慢しろ」っていうのと一緒やん。ひどい話や。総理府は夫婦間の暴力についてはちゃんと問題にしているのに、風俗での暴力は問題にしてくれないんですね。そっか、総理府は風俗自体が暴力っていう認識だから、風俗での暴力被害は取り立てて問題にすることでもないんだ。むかつくー。
 かながわ・女のスペースみずらの阿部さんという人も来ていた。みずらでは、夫からの暴力を受けたりして行き場がなくなった人とかを受け入れているが、そういう女性のためのスペースを作るのに、行政に何度も働きかけないとなかなかお金を出してもらえなかったり、また、スタッフやスペースが足りない状況でも行政の理解が得られなかったりと、いろんな苦労があるようです。
 で、風俗嬢のためのフリースペースみたいなものができればいいなと思う。これは、現状では行政に任せることなんてできない。だって、そんなものが作られたら、きっと「社会復帰の訓練」なんかさせられて、風俗嬢一掃キャンペーンが張られるに決まってるやん。男女共同参画審議会が風俗の仕事などを社会の悪と思っている以上、「助けてあげます」と言って来たって、こっちから願い下げやっちゅうねん!当然その時は審議会の委員に風俗嬢やセックスワーカーを入れるべきだ。

10月13日(水)

インドの働く
子どもたちの
労働権要求運動

 国際子ども権利センター主催の子ども労働のシンポに参加。昼間はインドの働く子どもたちとワークショップで交流できた。彼らは「自分たちの労働の価値を認めてほしい」と訴えていた。この訴えは、「子どもにも働く権利が認められないとこんな危険な目に遭うんだ」ということ以上のことを言っていたように思う。
 去年くらいからインドの子ども労働に注目している。なんかセックスワーカーの労働権の主張に似ているからだ。年々、彼らの主張の仕方には変化が見られる。去年は「私たちの働く権利を認めろ」というものだった。そして今年は、「日本の子どもが自分たちの権利が認識できるようお手伝いに来ました」と言っていた。
 私がインドの働く子どもにした質問は、「働かないで学校に行きたいか?」というものだった。そしたら彼は、「学校に行かないで働きたい」と答えた。多分、彼にとっては、労働の現場が学校なのだろう。近いうち、インドの働く子どもたちに会いにスタディーツアーに行きたい。
10月14日(木)

あこがれのマット
 午後12時、薄井さんと横浜曙町のマットのお店へ。今回の調査でマットのある店に行くのは初めて。もちろん初めてマットというものを目にした。感動した。これが長年憧れていたマットか。白くて空気が入っててでっかい。マットプレイでローションを思いっきり使うらしく、巨大ローションがそばに。薄井さんにマットについて説明をしてもらう。
 薄井「こっちが枕で、こっちが足つきね」
 ゆっこ「これはうちでもベットとして使えるかなー?やっぱ寝心地わるいかなー?」
 薄井「そんなことないよ。すごい寝心地いいよ。上にタオルとか敷いて寝れば」
 なぜそんなことまでこの人は知っているのか。あやしい。もしかして家にあったりして。わーあたしもほしいわー!薄井さんなら入手ルートを多分知っているはず。引越ししたら絶対買うぞ。っていうかクリスマスプレゼントに誰かくれ。
 薄井さんと交代でアンケートをとる。マットだけにマットに関連した回答が得られた。今の仕事に対する誇りは?という質問に、「『私たちはマット嬢よ』みたいな。『普通のヘルス嬢じゃないのよ』」とか、「普通の人にマットプレイはできない」(から誇りがある)と答えた人が2人。それから、マットプレイでよく動くせいか、この仕事を始めてからの体の変化について3人の子がそれぞれ、「腕の筋肉がついた」、「腕力がついた」、「やせた。肉体運動だから」と答えた。マットに限ったことではないけど、「フェラやせ(顔やせ)した」という子もいたな。
 このお店は曙町ということもあって、許可店のファッションヘルスなんです。だからお店はお客さんにも強気で出れるし、性病検査も月一回義務づけてある。ちゃんとしてるんです。だから本番を迫る客も少ない。今日は13人アンケートをとったが、その内訳は、(本番を迫る客)「10人中0人」、「今までに一人」、「ここの店ではいない」、「10人中1人いるかいないか」、「100人中1人」、「100人中2人」と6人がそれぞれ回答。「10人中1人」が1人で、「10人中1〜2人」が2人。「10人中3人」が1人。「10人中5〜7人」と答えたのはわずか3人。これは無許可店では今までに見られない傾向である。公権力に守られるシステムがあるのとないのとではこんなに差があるんだな。このお店、女の子を守ることにおいては、女の子からも高い評価を得ている。中には「スタッフが注意・禁止事項を徹底しているから、そういうところが誇りに思う」と答えた子もいたほど。
 その他の意見。風俗する前とした後での風俗に対する見方の変化のところで、「変わらない。仕事する以前の方が風俗嬢っぽかったかも。本番なしでイカせてあげたりしてた」という子が。そういう意味では潜在的風俗嬢は多いかも。
 あと、この仕事を始めてからの気持ち・精神的な変化として、「人に対してキツくなった。この仕事をするようになって自分に自信が出てきたから」と答えた子がいた。その子は、風俗の仕事をやりはじめたきっかけが、「やることがなかったから」だそうだ。自分でなきゃやれないことや自分だからやれることを見つけると人って、自信がつくもんね。私事で恐縮だが、私は人に対して全然キツくない。私も早く我が道を。

10月18日(月)

エロス
ファウンデーション

 オーストラリアのセックス産業政府陳情団体の人と話す機会があった。オーストラリアでは、性産業が合法化されている州が幾つもある。どうやって合法化していったのかという話の中で、今私がやっているこの意識調査のように、オーストラリアのロバータ教授が300人のセックスワーカーを対象に行なった意識調査の結果報告が、世論に大きく影響を与えたそうだ。私はそんなこと知らなかったし、そこまで考えてなかったので、「おおっ、すげえことじゃ」と思って驚いた。そんな風に聞いたらなんか派手なことやっているのかと思うけど、やっていることはすごく地味で地道なものである。でも楽しいけど。いろんな子に出会えるから。私にとってこの調査は、世論をどう動かせるかというビジネス的な意味合いよりも、風俗嬢にどう還元していくかということが大きい。また、おそらく私の人生の経験の中で、最も濃い経験で貴重な宝物になるとも一方で思っている(「くせー」宇多田ヒカル風に)。

10月21日(木)

中尾彬の気持ち

 午後12時、一人で横浜曙町に行く。「今から調査に入りますぜ」と薄井さんに電話連絡を入れ、周りを窺いながら某ファッションヘルス店内へ。内ポケットから薄井さんの名刺を取り出し、店長に渡す。早速部屋に案内され、1人目の女の子にアンケートをとる。今日はいきなりすごい話が。新宿で働いていた時、女の子の引き抜き行為をしたと疑われて、誓約書にサインしたため、1ヵ月監禁された(夜中3時〜4時は外出できた)というのだ。その誓約書には、1ヵ月間そういう労働条件で働くことなどが書かれてあったらしい。サインしないと親に言うぞとか脅されたので拒否できなかったという。まだ彼女は19歳だし、その時どうすればいいかとか分からなかったのだろう。こういう話を聞くと、いよいよ性産業の透明化が急がれるべきだと思う。すべての風俗店を許可店にして、誰がどこでどのような営業形態で営業しているかを行政や警察が把握して管理を徹底すべきだ。彼女が被害を受けた店はもう今はなくなってしまって、加害責任も問われないまま、奴等はまた別のところで同じことを繰り返しているのかもしれない。このことは、性風俗産業がいかに無法地帯であるかを如実に表している。彼女はその後、安全な曙町の今の店に移動した。そういう悲惨な体験からだろうか、彼女は風俗の仕事を、「仕事だとは思っていない」。
 他の女の子のアンケートをとっている時も、まださっきの衝撃を引きずっていた。しかし、このお店では3人しかアンケートをとれなかったので、気持ちを切り替えて、薄井さんに電話して2軒目を紹介してもらった。
 2軒目に行ったところは、初の人妻系である。ちょっとドキドキ。だって今まで行った店では、タメ口でしゃべれるような年の近い風俗嬢が多かったから友達作りに行く感覚だったんだけど、今回はやっぱりすごい年上の人がいるんだろうなと思うと、そりゃ緊張しますよ。また、どのようなジェネレーションギャップがあるかも興味があった。店に入ると、みなさんがたむろするような待合室に案内され、店長らしき人から「ここにいればみんな来るからてきとーにアンケートとって」と言われた。店長いい感じ。しばらく女の人の離婚の話を横で聞いていた(っていうかタイミングを見計らっていた)。しかし自分がだんだん「愛する二人別れる二人」の中尾彬の気持ちになってきたので、話していた2人の間に割って入って、「そんな男別れちゃいなよ、別れちゃえばいいじゃない」と説教した。というのはウソで、「あの〜、アンケートに協力してほしいんですけど〜」と言うと、ニコっと快く引き受けてくれたのでちょっと安心。これで2人目も声を掛けられそう。
 人妻だけに人妻に関連した回答が。このお店が初めてという彼女は、風俗の仕事を始めたきっかけが「(夫との生活が)セックスレスだったから」。で、仕事を始めてからの体の変化は、「性感帯が開発された」らしく、気持ち・精神的な変化は、「満たされている」のだそうです。そしてこの仕事の良い点は、「仕事をしている自分と、家にいる時の自分、人生を2通り楽しんでいるような気がする」。これは酒井あゆみの本の帯に使えるぞ。その他、人妻系の店ならではの話は、「子どもを預けて働いているので」罪悪感がある、「当日欠勤が無理なので子どもの風邪とかいきなり熱が出たりしても休めなかった」ので生活上困る、「保育園に提出しないといけない書類とか書く時に困ったことがあった」ので手続き上困る、など。あと、お客さんで、「AVみたいに『奥さん!!』と言ってくる人、『だんなとはどうやるの』とか下品な話をする人」が一番いやだという人もいた。
 ジェネレーションギャップというほどのものではないけど、言葉や表現の仕方に風情を感じたり、大人だなあと思うものは、例えば、「愛とか女とかを売るのではなく、その瀬戸際の部分」を売っている、とか、「自分を磨けること。心の持ち方、サービスする側の心の持ち方を磨いていく。どんなに顔や体がきれいでも、心がきれいじゃないとお客さんに喜んでもらえない」(ここは富司純子風に読んでくれ)というところをこの仕事の良い点としているとか。
 これは人妻系の傾向として語るのはサンプル数的に無理があるけど、この店に限っては、ある傾向がみられた。それは、みんな一生懸命やっているという認識が強いということと、他の職業に例えると、肉体労働者系と福祉などの癒し系(?)にはっきり2分され、年齢層が低い店でみられるようなバラエティーにとんだ例えはみられないということだ。
 前者を具体的に紹介すると、どういった点で誇りを持っているかについて、「お客さんに満足させてあげたいというのがあるから。自分なりに一生懸命やっている」、「普通の仕事のように一生懸命やっているので」、「お客さんに本当に心から満足してもらえるようなサービスができた時。こういう仕事って、『これでいい』というのがないから毎日が勉強。体を売ってるとかいうことは考えたことはない。楽しい時間をコーディネートすることを考えている」。また、風俗に対する見方の変化について、「よくそういうところで働いているなと思ってたけど、みんな目的・目標を持ってやってるわけだから、目的・目標なくだらだら仕事を続けている人よりはまし」、というような回答(9人中4人)が得られた。後者の具体的な数値としては、「肉体労働者」2人・「佐川急便」1人(計3人)、「看護婦」1人・「介護福祉」、「福祉」2人・「カウンセラー」1人(計4人)となっている。
 このお店は遅番・早番とはっきり分かれているらしく、夕方頃になって、帰る支度をしだす人やら、仕事を始める準備をしだす人やら、赤ちゃんの写真を見せ合う人やらでどわっと混みだした。私は調査どころではなくなって、机の下で寝はじめた。なんで調査に来るといっつも寝るのかな。しばらくすると店長らしき人が来て、「〜さん何番(部屋の番号らしい)、〜さんは何番」とか言い出して、また部屋は閑散となった。そこでぽつりと本を読んでいる人がいたので、「何読んでるんですか?」と聞いたら、えーっと、何だったっけ?スタンド・バイ・ミーの原作者の人の本。忘れた。「日本の作家では誰が好き?」って聞いたら、「遠藤周作とか村上春樹とか……」「えっ、村上春樹好きなん?」わーい!やっと見つけたぞ。春樹ファンの風俗嬢(ここで当然春樹作品について盛り上がる)。彼女にもアンケートに答えてもらった。彼女は、高飛車な人をイカせられた時、「やった、勝った!」と思うんだって。また、お客さんと友達になっていろいろ気遣うことなくおしゃべりできて、そういうお友達ができてよかったなとも思うし、いろんな人と腹を割って話せるようになって、そういうところがこの仕事の良い点だと語ってくれた。売春については、「買う人がいて売る人がいるんだからコンビニと同じかな。(略)自分の体を大事にするという意味がよく分からない。何でも自分で納得してればいい」というふうに言っていた。
 今日はなんか楽しくて夜8時くらいまでお店に居座っていた。働くなら曙町、人妻系だな。
   
活動日誌●200003--05 page top

ポット出版図書館での出来事・考え事ず・ぼん全文記事レズビアン&ゲイブックガイド2002
石田豊が使い倒すARENAメール術・補遺ちんまん単語DBデジタル時代の出版メディア・考
書店員・高倉美恵パレード写真「伝説のオカマ」は差別か黒子の部屋
真実・篠田博之の部屋篠田博之のコーナー風俗嬢意識調査ゲル自慢S-MAP
ポットの気文ポットの日誌バリアフリーな芝居と映画MOJもじくみ仮名

▲home▲


このサイトはどなたでも自由にリンクしていただいてかまいません。
このサイトに掲載されている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
ポットメンバーのもの、上記以外のものの著作権は株式会社スタジオ・ポットにあります。
お問い合せ→top@pot.co.jp/本の注文→books@pot.co.jp