2004-11-24

第15回 返品

なぜ、返品率を下げなければいけないのか?

営業活動の重要な目的の一つは「利益をあげること」だと思っています。出版社の規模や売上の大小ではなく、しっかりと利益をあげて次の出版活動につなげる資金を確保するためには「返品といかに付き合うか」は、売上を伸ばすのと同様かひょっとするとそれ以上に大きな課題です。現実的に言って買切条件のみの出版社で無い限り営業の仕事の多くは返品との戦いですが、なぜそうしなければいけないかと言えば、「社内でうるさく言われるから」とか「取次から言われるから」ではなく、「利益」が問題だからです。この連載で以前に書いた幾つかの項目についても返品の話題が出てきています。今回は「なぜ返品率を下げなければいけないのか」について、私なりの考えをまとめておこうと思います。なお、ここでは主に書籍の返品について触れますが、書籍に近いムックはもちろん、「改装して再出荷」が無い通常の雑誌の返品についても、「返品といかに付き合うか」が重要であることは間違い無いと考えていります。

返品にかかるコストは利益を圧迫する。

返品を再出荷するためにかかるコストは、次項でもう少し詳細に触れますが、実際に計算してみるとかなりの金額になるはずです。つまり、売上が同じであれば返品率が低ければ低いほどコストは減り、より大きな利益をあげることが可能です。もちろん、返品率を減らすために行なう様々な営業活動のためのコストもあるので一概には言えませんが、少なくとも返品率が高くて得をする出版社は無いと言って良いと思います。

返品にかかるコスト(出版社)

ここで言う「返品にかかるコスト」とは出版社が取次から返品を受け入れてから改装して再出荷するまでにかかる費用です。返品にはこれ以外に書店・取次での負担もありますし、ヤレ本(損傷が激しく出荷に値しないとみなされた商品)の増加による廃棄についてはの環境に対する負荷というものも考えられるかもしれませんが、ここでは出版社でのコストについて考えてみます。

返品の運送に関する費用
 返品運賃(取次からの請求)

入庫に関する費用
 入庫手数料など

改装に関する費用
 改装作業費(研磨・カバーかけ・オビ巻き・投げ込み封入等)
 付き物(カバー・オビ・スリップ・投げ込みチラシ・出版案内等)

ヤレ本の廃棄に関する費用
 

次回出荷までの間の保管に関する費用
 在庫管理料など
 ※返品倉庫と整品倉庫が異なる場合は移倉費用が発生する場合も

出荷に関する費用
 出荷手数料など
 ※取次への搬入を行なっている場合は運賃も

弊社でこれらを厳密に計算してみると、思いがけないほどの金額になりました。平均単価のことを考えると歩戻しどころの数字ではありません。つまり、出版社にとって「返品率を下げる」とは、これらの返品に関わるコストを減らす、という行為に他なりません。

しかも、上に挙げたのは直接的なコストのみです。実際には返品に関わる諸々の作業についての時間や手間も馬鹿に出来ません。例えば返品伝票を入力したり整理したりする手間ですが、そんな手間はないに越したことはない、はずです。というより、返品の処理に時間と手間を取られて売上を伸ばすための方策にまで手が回らないというのは避けたいところです。また、行って返ってを繰り返すうちにボロボロになってしまった書籍(ヤレ本)の廃棄率もどんどん高くなっていきます。これも返品率が低ければ売り物になったものをむざむざと棄てる羽目に陥ってしまっているという意味ではやはり非常に残念なことだと思います。

返品にかかるコスト(書店)

返品は書店にとっても大きなコストを生み出しています。並べた本を棚から取り出して伝票を起票して段ボールに詰める、慢性的な人手不足に悩む書店現場で返品にかかる作業の手間=人的コストは非常に大きな負荷となっているはずです。業界全体の返品が減れば書店も返品の作業ではなくもっと生産的なことに時間を使える、もしくは残業の時間を減らすことが出来るのではないかと思いますが、どうでしょうか。ですが、ここでの無駄な出し入れを減らすためには「配本」という要素が非常に大きいとも言えます。そして配本の少ない店では極端に返品が減っているお店も出始めているにも関わらず、「大型店にドーン」と積まれた新刊の返品率は残念ながら下がっていないようです。私には効率販売を目指して商品を集中した結果が書店からの返品率の減少につながっているように思えません。むしろ大型店に数百冊単位で押しこまれる書籍の返品率は高い、と思っています。薄く広く、のほうが返品率は低くなると考えています(配本の件はまたあらためて書こうと思っています)。

常に返品を意識して注文を取る

「営業は注文を取ってくればいいんだ」という考え方もあるかもしれませんが、そうやって発破をかけて集めた結果である注文が「返品の素」になってしまった場合、そんな注文を取るための手間はやはり無駄手間であるように私には思えてなりません。
もちろん、戦略的に露出を確保したり、ある程度のボリュームを持ったフェア的な展開を行うために返品を覚悟して注文を取ることはあります。ただ、その際重要なことは「どれぐらい返品になるだろうか」という見通しだと考えています。常に返品を意識して注文を取ること、けして簡単ではないと思いますが、そうすることによって書店も出版社もはじめて返品を減らすことが出来るのだと思っています。POSデータ(実売データ)は返品のことを考えても必須です。

買切で露出は確保できるのか?

そんなに返品が嫌なら買切にしてしまえ、という方もいらっしゃるかも知れませんが、買切条件だけでは店頭の露出を確保することは困難です。買切だけの条件でやっていたにも関わらず経営が苦しくなってしまった出版社の例も多々ありますし、実験的な試みについても上手くいったという話はあまり聞いておりません。数百万の読者が待っているような大ベストセラーでもない限り(数百万の読者が待っているような大ベストセラーであっても)、買切だけでやっていくのは難しいのが現実だと思っています。

返品を意識し過ぎると売上が減るのではないか?

「どうせ返品になるだけだから」と言って納品を絞り続けているとジリ貧になってしまいます。返品を意識しながらも露出を確保する。返品にならないような納品を増やして売上を確保する。返品と売上の問題は表裏一体です。営業の仕事の重要な側面である「商品を(店舗に)置く」という作業には返品が付き物であり、だからこそ返品を意識した営業活動が重要だと考えています。

ということで、次回は「なぜ、商品を置かなければいけないのか」についてまとめてみたいと思います。