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ポット出版
立ち読みコーナー●風俗ゼミナール 上級お客編
[2003-05-23]
風俗ゼミナール 上級お客編

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風俗ゼミナール 上級お客編
[2003.05.23刊行]
著●松沢呉一

定価●1500円+税
ISBN4-939015-50-5 C0095
四六判 /224ページ/並製
印刷・製本●株式会社シナノ
イラスト●おぐらたかし
ブックデザイン●小久保由美+松沢呉一

在庫有

【立ち読みコーナー】※本書所収原稿の一部を紹介

Lecture02
名古屋の評判


前回の講義でも名古屋の話が出てきましたが、名古屋はソープより、なんと言ってもヘルスの街。たいていの店はサービスがいいし、たいていの店は女の子の質もまあまあ高い。ただし、一部にかなり問題のある系列店があります。よりによって、こういう系列店が東京に進出しているようで、名古屋のイメージを思い切り悪くしております。ただでさえ名古屋はイメージ悪いのに。名古屋に行く時、また東京で遊ぶ時はくれぐれもこういう店で遊ばないように気をつけてください。

  ある名古屋のテレビ番組が、「東京に進出している名古屋のヘルスを取材したいので情報が欲しい」と連絡してきた。他の地域への風俗店の進出はそう簡単に成功するものではないのだが、名古屋資本のヘルスは、激戦区・歌舞伎町でもぼちぼちうまくやっているのである。しかし、評判のよくない店を紹介するわけにはいかないので、調べて欲しいというのだ。
 これだけ頻繁に歌舞伎町に行っている私だが、名古屋から東京に進出している店で、仲のいいところが一軒もない。私自身、中学から浪人生までの五年間は名古屋で過ごし、今も実家は名古屋にあるから、あまり悪口は言いたくないのだが、実のところ、名古屋のヘルスはあんまり好きではなく、名古屋資本というだけで敬遠するところがある。好きではないのは女の子たちではなく、従業員であり、店のやり方だ。端的に言って、名古屋のヘルス従業員は取材に対して横柄で高飛車なのである。
 初めて名古屋のヘルスを取材しに行った時のこと。納屋橋にあるヘルスで、写真の撮影をするためにアポをとって、編集者と一緒に時間より早く店に出向いた。その女の子はまだ接客中だというので、彼女が空くのを待合室で待っていた。
 時間を過ぎても、全然呼ばれる気配がない。客が延長したのだろうか。そういうこともあろうから、我々はダベりながら悠長にかまえていた。
 そう流行っている店とも思えず、その間、待合室には私と編集者しかいなかったのだが、ここに若い客が入ってきた。従業員は写真を見せている。私は横目で、その様子を窺っていたのだが、我々が約束をしていた女の子の写真まで見せているではないか。私は編集者に目配せした。彼もそれに気づいてムッとしている。
 ああやって写真を見せておきながら、「この子は三十分待ちです」と客に説明してくれるんだろうと思っていたら、従業員は「五分ほどお待ちいただければ」などと、その子を勧めている。客は言われるままに彼女を指名した。そのため、我々はそれからさらに待たされたのであった。
 一時間以上無駄にして、やっと五分ほどの間に写真を慌てて撮らせてもらった。その子は愛想がよく、協力的だったから救われたが、店を出たあと、編集者は「二度と来るか」と言って、店長の名刺を破り、道に投げ捨てた。
「おい、住所がわからないと、掲載誌を送れなくなるぞ」
「あ、そうか。あとで教えてください」
 編集者の行動としてはいささか軽率だが、そうしたくなる気持ちは私にもよくわかった。あとさき考えなくていいんだったら、名刺を破り捨てるだけじゃなく、あの店ドアに石を投げてガラスを割り、角材で看板をぶち壊してやりたい気分だ。
 そりゃ、こっちはギャラを払わずに写真を撮らせてもらうのだから、客を優先するのはある程度しょうがない。アポの段階で、「八時過ぎは混み合うので、六時にして欲しい」といったことなら文句を言わず相手の都合に合わせる。当然のことだ。客が延長するのもまあ仕方ないとしよう。しかし、いったんアポをとって以降は、こちらを優先すべきではないのか。それが大人の約束ってもんだ。
 この時は次の予定が入ってなかったからよかったようなもので、もし他の店の取材が決まっていたら、どやされるのは我々である。
 そんな事情には一顧だにせず、目の前で金を払ってくれる客を優先し、金を払うわけではない取材を後回しにして当然と考えるのは名古屋人らしくもあって、「名古屋人はセコい」と言わしめるところである。
 この編集者は今に至るまで「名古屋の店は二度と取材したくない」と言っている。たった一軒で判断してはいけないが、これはまだ序の口にしか過ぎないのであった。
   *
 その後、名古屋に行った時、地元でよく知られた人妻ヘルスに取材を申し込んだ。店長は「社長に確認をしておく」という。この電話の応対もつっけんどんで非常に不快だったのだが、翌日、電話したら、まだ社長がつかまらないという。こちらとしては、そう何日も名古屋にいるわけにもいかないため、ダメならダメでさっさと返事をして欲しい。
 その数時間後、たまたまこの店の近くを通りかかったので、挨拶がてら顔を出したら、露骨に鬱陶しがられて、ろくに話もしてくれず、「社長に確認をしておく」という話もまるでなかったようだ。
 あとで聞いたところによると、この系列店は過去に摘発されたことがあるくらいに本番で有名。そのために、取材を受けないらしい。だったら、「取材は受けない」と最初の電話で言えばいいだけではないか。
 ここが不思議なところで、その店長は最後の最後まで「取材はお断りです」「今回は見送りたい」なんて言葉を言わなかったのである。面倒だから、さすがに私もそれ以上交渉せず、とっとと別の店を取材したからいいんだけどさ。
 名古屋に限らないことなのだが、「取材を受けるには社長の許可をもらわなければならないし、女の子にも話を通さなければならない。あー、面倒臭い。かといって断るのももったいない」ということなのか、いつまで経っても返事をくれない店がある。ダメだったら、改めて別の店に一から取材交渉をしなければならないのだから、さっさと断ってくれた方がよく、特にこの場合のように、その地に滞在する数日の間に取材しなければならないと、こういうはっきりしない態度が一番困るのである。
 ところが、名古屋では断り方がまた不快。取材を申し込んでも、「あ? うちはいいよ、ガシャン」と電話を切られたり、フロントに肘をついたままで、目も合わせないで「いいよ、いいよ」と手だけで「あっちいけ」と意思表示したり、「ヤなカンジ」ということがあまりに多い。
 こうなってくると、特定の個人、特定の店の問題ではなく、名古屋の風俗店全体、あるいは名古屋そのものの特徴だと思うしかなくなってくる。
   *
 東京の店でも別の地域の店でも、一度取材をすると、あちらから連絡してきて、「今度また寄ってください」なんてことがあって、こっちも特に用がなくても顔を出し、「お茶でも飲んでいってくださいよ」ということになって情報交換をするようになり、やがてはメシを食いに行くようになったりするものだ。ヘルス系は特にそうだし、ソープでもこういうところがある。
 名古屋でも取材に協力的な店はわずかながらあるが、こんだけ取材に出向いているのに、親密な関係までができている店は、名古屋ではほとんどないのである。どういうこと?
「東京の人は冷たい」なんてことをよく言うが、名古屋人に比べれば、ずっと気さくで人懐っこくて親しみやすくて親切だと思うぞ。
 大阪や札幌も同様。四国の人達もホントにいい人が多い。「岡山県人にいい人はいない」と岡山県人自らが言う岡山だって、親切な人はたくさんいるし、仲のいい店もある。大阪人によれば、京都や神戸はスカしているということになり、私の印象でも、ちょっとはそういうところがあるが、そうではない人の方がずっと多い。
 名古屋に匹敵するヤなカンジの店が多かったのは仙台と博多と群馬かな。どれも取材で行ったのは一回だけで、たまたまその時そうだっただけの可能性もあるが、名古屋は何度行ってもヤなカンジ。
 相性というのがあるから、私は名古屋人と相性が悪いだけかもしれないと思ったりもする。名古屋に住んでいた頃も「名古屋人とは相性が悪い」と思っていたもんな。もちろん、個人差であって、いいヤツもたくさんいるのだが、名古屋全体のノリは当時も今も苦手だ。
 しかし、風俗関係の取材をやっている編プロやカメラマンも「できることなら名古屋は取材したくない」とはっきり言っているくらいで、私だけのことではないらしい。
 また、名古屋にいる時に、ここまでヤな体験をすることは少なかったから、おそらく風俗産業は、名古屋人のヤなカンジを加速させる特有の理由があるはずだ。
 某誌で私を担当してくれているM氏の体験。名古屋に取材に行くことになって、M氏が懇意にしている風俗誌の人に頼んで、名古屋のいくつかの店をリストアップしてもらった。M氏としては、私の取材先を決めるために、単に参考資料が欲しかっただけで、結局、条件に合わずその店は取材しないことになったのだが、風俗誌の人は取材するという前提で店に話をしていたため、M氏が謝りの電話をしたところ、相手は「女の子も用意していたんだぞ、今から謝りに来い」と怒鳴ったという。
 女の子を用意していると言ったって、日程もなんも決めていないのだ。その時間を彼女が無駄に過ごしたわけではなく、取材のために服を新調したり、整形をしたわけでもない。店としても内装を変えたり、そのためにスカウトマンを雇って人を探したわけでもない。彼女に「あの話はなくなった」と言えばいいだけであり、編集者が「すいません」と謝れば「じゃあ今度またよろしく」で済む。これなら関係がつながるってもんだ。怒鳴られたんでは「二度と取材するか」になってしまうだけで、事実、M氏はそう言っていた。なんかヘンだぞ、名古屋。
 名古屋の風俗誌は、ほとんどが広告ページのため、店側がマスコミを宣伝屋としか思っていないのではないかとも私は疑っている。金を払っているお客は自分らであって、その相手が勝手にキャンセルにしたら腹が立つってことなのかもしれないが、広告を出しているわけじゃない雑誌にまでそんな態度をとることはねえだろうがよ。しかも、東京の人間に「今から来い」って、何考えてんだ。
 あるいは、名古屋ではホストあがりの従業員が多いことにも関わっているのかもしれないのだが、態度がとにかく横柄なのだ。あいつら、女に媚びるのは得意でも、男に頭を下げることができないんだろう。
 名古屋には、ホストクラブ系列のヘルスがよくあって、金津園のソープの系列もよくある。ソープの系列はまたバカ丁寧。ヘルスなのに従業員が床に頭をつけて応対する。もちろん腹立たしい思いはせず、無礼な連中よりはずっとマシだが、こういう店もイマイチとっつきにくくて私は苦手だ。
 店と取材者が対等につき合うというよりも、出入りの業者扱いか、慇懃無礼で内心何を考えているのかわからない対応をされて、繰り返し取材したり、遊びにいくような関係にいつまでもならない。タモリがよく名古屋差別をやっていたが、風俗店で見る限り、私はあれに反対しない。
 といった体験をしているから、名古屋資本というだけで、東京にあっても、やっぱり足が向かず、仲のいい店は一軒もないんである。
   *
 さて、前置きが長くなったが、これからが東京に進出している名古屋系列の店の話である。
 私は何人かの人に「東京に進出している名古屋の店の評判を知らない?」と聞いてみた。悪い評価だけを集めたかったわけではないのに、出るわ、出るわ。しかし、いい評判の店はまったく出てこない。
 歌舞伎町にあるヘルス店の社長は、「名古屋系で評判のいい店があるわけがないじゃないですか」とまで言う。
「前は名古屋資本でも、いい店があったんですよ。サービスも女の子の質もいいし、従業員の態度もいい。でも、そこは潰れて、今は全滅でしょう」
 この社長に聞いて初めて知ったのだが、名古屋資本の店は「名古屋系」と呼ばれて、インターネットでボロクソ叩かれているのだそうだ。社長はその部分をプリントアウトした紙を私にくれた。
 そこには店名が列挙されており、相当の情報通が書いているものと思われる(ただし、その社長によると、名古屋資本じゃない店も間違って書かれている)。どれも、風俗誌に広告を出しているような店ばかりである。一部、名古屋系を排除している風俗誌や案内所もあるのだが、ほとんどの案内所には割引きチケット(割チケ)が置かれ、ほとんどの風俗誌や風俗系のウェブサイトで堂々と取り上げられている。その点では、ボッタクリよりも風俗産業全体に悪影響を与えているかもしれない。
「ああいう店があると、うちみたいに良心的にやっている店が信頼されるので、二軒か三軒ある分にはいいんですけど、こうも増えると、歌舞伎町全体が敬遠されてしまいますよね」
 ここでも名古屋から東京に進出したヘルスを「名古屋系」と呼ばせてもらうが、名古屋系のやり口はどれも似ている。一説によると、どれも同じ系列店がバックにいるとも言う。
 複数のルートから聞いた話だが、歌舞伎町のある店に、割引チケットをもっていくと、「チケットを使用できる女の子が限られている」と言われるそうだ。
 前出のヘルスの社長と雑誌の編集者が二人でその店に行った時のことだ。
「「この子とこの子は割チケが使えない」って言われて、指名の少ない暇な子しか使わせないんですよ。それ自体、ひどい話じゃないですか」と社長。
 だったら最初から割引チケットにその旨をひとこと明記すべきであり、これだけで悪質店と言われてもしょうがない。
「指名のないような子と遊ぶのはいやなので、「じゃあ、割チケを使わなくていい」という話になって、僕らは通常料金を払うことにした。女の子はいい子だったから、そのことも忘れて遊んだんですが、僕が早く終わって、待合室で待っていたら、そこにまた割チケをもった客が来た。その客には「この子は今客がついている」と言って断っている。その客が指名しようとしたのは僕がついていた子だから、その時は空いているはずなんですよ。頭に来たから、「その子は今空いてますよ」って言ってやろうかと思いましたよ」
 割チケを使えないというなら、せめて理由を統一すればいいものを。たぶん一人で来た客には、「今接客中で」「予約が一杯で」と言って断るが、客が二人だと、どいつもこいつもダメということがわかってしまって文句をつけられかねないため、割り引きになる子とそうでない子がいるとはっきり言っているんだろう。それをまた他の客が横にいるところでやるから、マヌケである。
   *
 これとは別のヘルス店の従業員が、これとは別の名古屋系ヘルスに行った時の話。
「かわいい子がいたら遊んで行こうと思って、写真だけ見に行った。あまりいい子がいなかったので、「今日はいいや」と言って帰ろうとしたんですよ。よくあることじゃないですか」
 写真見学は無料ってやつだ。特に歌舞伎町はこうやっていろんな店を見てから決める客が多い。
「ところが、従業員が帰そうとせず、しつこくエレベーターのところまでついてくる。それでも相手にしなかったら、「こんなに女の子が揃っているのに、選ばないんじゃ、あんた、歌舞伎町で遊ぶ資格がないよ」って捨てゼリフを言うんですよ」
 この従業員よりもずっと東京の風俗店で長く働いている人に、ポッと出の名古屋人がなんということを言うのか(名古屋資本だからって、従業員が名古屋人とは限らないが)。
 名古屋のほとんどの店は、入場料というワケのわからないものをとる。ここがまたセコい名古屋らしい。たとえば、プレイ料金が三十分で八千円となれば標準的な価格である。しかし、いざ遊んで行こうとすると、入場料二千円に指名料千円をとられて、結局一万一千円になったりする。また、女の子のバックが五割で、八千円のうち四千円が女の子の取り分であれば標準的なギャラである。ところが、入場料は全額店が取るのだから、一万円のうち四千円しか女の子がもらえていない。本当は四割バックなのだ。
 この二千円は冷やかし防止の意味もあるんだろう。二千円を払って、写真だけ見て帰る客はまずいない。そういうことに慣れているため、名古屋の従業員としては、写真だけ見て帰る東京の客には腹が立つんだろうが、だったら名古屋と同じく入場料をとればいいだけだ。しかし、東京で、そんな店に誰が入るかって話であって、歌舞伎町で通用しないのは、名古屋の方式なんである。
   *
 割引チケットは「先着十名だけなんですよ」と断られることもよくあるそうだが、チケットが使えたとしても、まだ落とし穴がある。
 名古屋系で働いていた女の子の話。
「チケットには三十分五千円なんて書いてあるんだけど、このコースだと、女の子の体は触れないんですよ。シャワーを浴びている時にそれを説明して、「普通のコースじゃないと触れないのね」と言うと、たいていの人はコース変更しますよね」
 フロントで説明すると、「だったらいいよ」と言って帰る客もいるだろうが、シャワーまで浴びていると、いまさら帰るわけにもいかない。
 風俗取材をあまりやったことのない知り合いのライターが、週刊誌の仕事で歌舞伎町を取材するというので、事前にレクチャーをしてあげ、いくつかの具体名を挙げて「名古屋系には気をつけろ」と教えた。
 こうして彼は万全の体制で、案内所に行き、割引チケットをとってきて、ある店に潜入取材をすることにした。
 シャワーを浴びている時に女の子の体を触ろうとしたら、彼女はこう言った。
「あ、お客さん、このコースでは体は触れないんですよ……」
 この男、あんだけ注意してあげていたのに、安い値段に釣られて、よりによって名古屋系の店に入ってやがったのだ。
「しょうがないから、通常コースに変更して遊んできましたよ。店を出てからノートのメモを見たら、松沢さんが言っていた名古屋系のリストにその店の名前が入っていました。さすが松沢さんの情報だと思いました」
 今さら感心されてもな。
 この店は歌舞伎町の一番街にあり、その店の上のフロアに入っている店と私は交流があるのだが、その店の従業員も、上の店のことをボロクソ言っていた。私自身が体験しているんだが、この店のヤツらは、他店の客にまで嫌がらせをする。
 ここも以前は名古屋系であることを私は知らなかったように、「ひどい店」と思っていた店が名古屋系だったことがよくある。「上級・女の子編」の「風俗探偵・2」に、歌舞伎町一番街にあるひどい店の話が出てくる。四十分コースで入った客を三十分とか三十五分で帰す「早出し」を女の子たちにやるように指導する呆れた店で、女の子同士の争いも凄まじく、私の知り合いはすぐに退店している。この話を教えてくれた彼女も私も当時はよくわかってなくて、「ひどい店があるなあ」なんて彼女と話していたのだが、実はここも名古屋系であった。
   *
 金にもならないのに、すっかり名古屋系の取材にはまっていた私だが、ある知り合いからメールが届いた。彼はエロ系ではないライターをやっていて、個人的な趣味で風俗によく行っているんだが、歌舞伎町のヘルスでひどい目に遭ったという。
 彼がフラリとその店に入って、「写真を見せて欲しい」と言ったところ、誰もいない待合室に通された。写真見学は普通フロントでやるもんじゃないのかと思いつつ、言われるままに待合室へ行き、写真を見せられた。
 こうなると、「また今度来ます」などと言って帰るのは面倒でもあって、指名して遊んで行くことに。しかし、従業員の態度が悪くて、彼はムカつきながら万札を渡した。今回は様子見なので、三十分のコースである。
 従業員は釣りをもってこないまま、割引チケットをもってきて、もっと長いコースを勧める。このチケットを使えば、あといくらか払うだけで長いコースに入れるというのである。たぶんこの日は暇で、ちょっとでも金を落とさせようとしたのだろうが、それなら、金を払わせる前に言うべきだろう。
 そのやり方にも、従業員の横柄な態度にも腹が立ち、彼は「それで接客?」とイヤミを言い、「キャンセルしたい」と申し出た。従業員はフロントに戻ったのだが、三分ほどしても戻って来ない。その間もフロントからは笑い声が聞こえてくる。こんなん十秒もあればできることだ。
 いよいよ腹を立てた彼は、フロントに行き、再度、「金を返してくれ」と言ったところ、フロントの中にいた男(こいつは、待合室に来たのとは別)が「殺されたいの?」と何度も凄んできた。ちょうどそこに別の従業員が店に戻ってきて、この従業員に文句を言って、金を返してもらったとのこと。
 金を返してもらえてよかったという話だが、釣りを渡さずコース変更させるやり方や「殺されたいの?」はひどすぎ。殺されたくない人は、こういう店には行かないことだ。
 彼は店名をよく覚えておらず、「店名にパイがついていた」と言う。「パイジャック」は池袋だし、この店の従業員はいいカンジてある。「とにかく待合室に入れてしまう」「金を先にとってから長いコースに替えさせる」という方法や横柄な態度は、名古屋系の特徴だとすでに学習していた私は、リストを調べてみた。やっぱり「パイ」のつく店名が入っていた。
 名古屋系はどこもろくでもないということであると同時に、歌舞伎町のろくでもない店はたいがい名古屋系であるとさえ言えるかもしれない。
   *
 女の子の管理についてもひどい話を聞いた。名古屋では、女の子に対して、バンス(前借り)で縛るやり方をしている店が今もある。入店する際に「お祝い金を出します」と言いながら、これが全部借金になる。こんなん、「お祝い金」じゃなかろうて。「入店を祝って金を貸します」って、なんだよ、それ。
 また、寮に入る時にも保証金という名目でバンスをつける。通常、保証金や敷金は返済してくれるものだが、これは返済してくれない。
 こうやって無理矢理金を貸し、その上、高率の利息をつける。さらにはホストにはめるといったやり方で借金を増やしていくのだ。
 借金が膨らむと、とにかく稼がなければ店を辞めることもできず、店は彼女らの弱みにつけ込んでハードサービスを強いたり、無理矢理顔出しさせたりするらしい。これでは苦界と呼ばれた昔の遊廓である。
 名古屋のヘルス嬢が言っていたが、名古屋でAF(アナル・ファック)をやる子はバンスが溜まって身動きとれず、AFをやらざるを得なくされているのが多いとのこと。気持いいことなのに、気持よくできなくなってしまう話だ。
 珍しく名古屋の従業員としては仲がいい某ヘルスの店長は、「面接をして、あの系列にいたというだけで、警戒します。店に借金が残っていると、トラブルになりかねないんですよ」とも言っていた。こんな系列で働くと、借金ができてしまうだけじゃなく、店を移動することさえも容易ではなくなってしまうわけだ。
 店が女の子に金を貸すのはいいのかもしれないが、利息をとるのは法律にもひっかかるはずで、女の子らは店から金を借りる時には必ず利息の有無を確かめた方がいいし、こういう系列店には近寄らないことである。
 で、この手法を東京でもやっていて、店から借金させて、辞められないようにしている名古屋系の店があるらしい。
 ある風俗嬢から相談があった。彼女とは以前一回だけ会ったことがあり、当時は別の店で働いていたが、いつの間にか、別の店に移っていた。この店で、ちょっとしたトラブルがあったのだが、これがまたまた名古屋系。
 彼女もその店が名古屋系であることは知っていた。
「私はしてないけど、店から借金している子はいますよ。でも、店長はすごくいい人で、私は居心地がよかったんです」
 いくら居心地がよくても、彼女自身、客に対して詐欺みたいなことをやっておいて、自分が店にひどいことをされたからと言って被害者面しても、親身にはなれない。女の子らが寄りつかなくなれば、店だってやっていけなくなるんだから、女の子らも共犯ってことでしかない。「さっさと辞めろ」という以外に答えようがなく、事実、私はそう答えた。
   *
 今は別の地域に移ったが、以前、歌舞伎町で働いていた人も、名古屋系列の店の悪い評判をさんざん聞いていて、半年ぶりに会って、名古屋の風俗店の話になった。
「うちのやり方と正反対ですよ。バンスで縛るなんてやり方は今の時代に絶対通用しませんよね。女の子たちがイヤイヤやっていたら、絶対にサービスは落ちます。そうなると、常連がつかないから稼げない。稼げないから、いい人材が集まらない。いい人材がいないから、また客が来ない。全部悪い方に向くに決まってますよ」
 その通り。情報がすぐに流れる今の時代には、こういう店は女の子たちも敬遠する。そこで、店は女の子を確保するために、いよいよあくどいことをやって縛り付けようとする。
 それに対して彼がいる系列は、「女の子が働きやすい店にすればいい人材が集まる」「いい人材が集まれば客も集まる」「客が集まれば稼げる」「稼げればいい人材が集まる」という方針で成功している。
 ここから彼は名古屋人バッシングを開始。
「うちの系列も名古屋に進出しようという計画があるんだけど、僕は絶対に行きたくない。あの場所でうちみたいな良心的なやり方を持ち込めば成功するのは間違いないと思うんだけど、名古屋人を相手にしなければならないかと思うと、気が重い(笑)」
 さすがにこの不景気の時代、歌舞伎町にある名古屋系列のヘルスは悪い評判が浸透してきて、客は入っていないとも言われているが、ああもひどい店ばっかりなのに、どうしてここまで激戦区・歌舞伎町で名古屋系がやってこれらたのだろう。
 ひとつは女の子を名古屋から連れてきているためらしい。名古屋の店はしっかり教育をしていて、使える女の子が多く、東京の店でも、名古屋までスカウトに行っているとも聞く。私には他人行儀で機械的な印象がなくもないのだが、たしかにしっかりとサービスしようとするのが多い。
 その上、女の子の取り分を利息の返済に充てさせれば、売上げのほとんどは店の収入になる。タダ働きさせているようなもんだから、さほど売上げがなくてもやっていける。
 また、名古屋人は地元意識が強く、名古屋の人達が東京に遊びに来る時は、名古屋資本の店で遊んだりするのかも(名古屋と同じ店名を使っているところもある)。
 そして、実は歌舞伎町だからやっていけているとも言えそう。歌舞伎町からボッタクリがなくならない理由と一緒で、一見の客が多いため、目先で動く店が強い街だ。あとで何を言われようと、その時に客を入れたもんが勝ちなんである。他の地域から進出した店はしばしば歌舞伎町で失敗しているのだが、そういう店は、常連客を大事にして、一見を軽んじたりして、生き馬の目を抜く歌舞伎町では金に対するシビアさがなさすぎるのかも。
 私はテレビのディレクターに以上を話して、「ひとつとして評判のいい店はない」と伝えた。
(二〇〇一/三 未発表)

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