2005-04-05

『ええじゃないか!』展(Eijanaika! Yes Future!)……フランスで日本のゲイ・アートが紹介された……

予約投票本『PHOTOエッセイ Gay @ Paris』用に書いた原稿です。本が出版される折にはさらに推敲したものを掲載いたします。まだ予約されていない方はこの機会をお見逃しなく。企画内容・記事構成も掲載されています。予約・企画内容はこちらから

★★★★★★★
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 『TETU』に対抗して創刊されたゲイ・レズビアン総合誌『Preference』第四号(2004年9-10月号)に、日本のゲイ・アートを取り上げた『Eijanaika! Yes Future!』(ええんじゃないか!未来!) と題された記事が載っている。筆者はエリック・メジル(Eric MxJ凹il)さん。小見出しには、「ポスト20世紀の日本は私たちの現在を激しく問いかけている」と書かれている。ちなみに、「Post」には

①〜後期
②〜後

という意味があり、ここでは「20世紀後半」「それ以降の日本」という二つの意味合いで、用いられている。

「1998年にParisで、2004年の春にリールで催された『Eijanaika! Yes Future! Le Japon post-ⅩⅩe sixJ蚊le 』と題された展覧会三部作が幕を閉じた。リールの催しでは、西洋でカワイイ(”Kawaii!”) といった語で紹介されている日本の文化様式を扱うことはせず、消費社会の中で生まれた”天才的なもの”を推奨した。10年来、この催しの主催者の一人である筆者は1995年から続いている社会的変革によって一変した現代芸術(コンテンポラリー・アート)を喜んで紹介してきた。1995年という年は日本の歴史の中で、転換の年である」

筆者は冒頭部でこのように述べる。

日本文化を紹介する三部作の第一弾は1998年に国立パリ美術学院で開かれた『どないやねん展』であり、第二弾が2004年リールで催された『あきまへん展』、そして第三弾がアヴィニョンで開かれた『ええじゃないか展』である。

フランス語では”Zen”(禅)という日本語が「落ち着いた状態」という意味で用いられるように、”Kawaii”(カワイイ)という語も日本語と同じ意味で用いられる(Zenは世代を越えて用いられているが、Kawaiiはどちらかといえば若者を中心に遣われている)。フランスの雑誌・新聞では10代、20代の日本人女性の「かわいい」文化がしばし取り上げられることがあるが、同展覧会ではそれとはひと味違った文化を紹介するために開かれたという。

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1995年の特徴として、阪神大震災とオウム真理教による地下鉄サリン事件をあげ、経済危機が顕著になった年だと述懐している。そして、芸術家とはいえ、この危機的状況を直視せざるをえなかったと主張する。

同展示会では戦争をテーマにした作品が展示される一方、日本のエロ・アートも紹介されている。

「エロティズムとセクシュアリティは同じ情熱でもって扱われる。アーティスト(芸術家)はアクティビスト(行動家)になり、アクティビストがアーティストになったのだ。展覧会では、この種のテーマに長く取り組んできた三人の性労働者(sex-workers)の芸術作品が紹介されている。ブブ・ド・ラ・マドレーヌ、ハスラー・アキラ、コノスナッチ(ConoSnatch)による展示では、病気の予防と同時に、顧客に与えられる快楽が趣旨となっている。性産業が盛んであるにもかかわらず偽善的な主題でもある日本という国で、政府が自身の無能力に直面し、アーティストたちに予防のキャンペーンを実行・制作の依頼をするようになるほど、彼らは包み隠すことなく『エイズ』について話すことの権利と必要性を要求してきた。そして、『バイターズ』(The Biters)という語をつかったテレビ番組が作成された。バイターというのは英語で『かみ砕く』という語から来ているのだが、年をとった売春婦に浴びせられる言葉『売奴』とかけているのである」

ブブさんはセックス・ワーカーにしてアクティビストであり、ハスラー・アキラさんは元セックス・ワーカーで現在はHIV啓蒙活動に取り組んでいる。お二人とも『売るうらないは私が決める』(ポット出版)の筆者である。

日本の政府が10年前では考えられないことも、HIV対策で行っている。たとえば、ゲイ向けポルノ雑誌『G-Men』の初代編集長(現在は退任)にして、ドラッグ・クィーンであり、HIV感染者の長谷川博史さんが、厚生省関係のイベントでメイン・スピーカーとして呼ばれるようになっている。それは長谷川さんや、『Preference』誌がいうようにバイターズのメンバーなどの努力の成果なのだろう。

リールとアヴィニョンの展覧会では、西欧で初めて「常軌を逸するほどまでに幻想的な同性愛漫画の書き手である」田亀源五郎さんが再編集したエロティック・アートが紹介された。田亀さんは男性同性愛者向けの作品を書いており、作品の幾つかは英訳されており、フランスのゲイ雑誌『TETU』でもかつて、取り上げられたことがある知る人ぞ知る漫画家だ。
筆者はそれらのアートについて次のように評価する。

「これらの未刊の作品は私たちを夢中にさせる。なぜならば、同性愛の想像が如何に進化してきたかを見て取れるからだ」

50年代には着物を着た男性の作品があり、60年代にはアメリカ化への夢想や、「作家の三島由起夫をとても喜ばせたであろう軍隊へのファンタジー」があるという。

フランスでは日本文化が盛んに紹介されているが、ゲイの世界においても日本文化が浸透していっている。

天才的なゲイ・アクティビスト斎藤靖紀さんもそのうち、パリで紹介されそうなもんである。

★★★★★★★
* 現在、新宿二丁目には厚生労働省の支援を受けて、『Rainbow Ring』という団体が「同性間性的接触によるHIV感染予防に関する啓発拠点センター・akta」を開室している。

財団法人『エイズ予防財団』エイズ予防情報ネット(http://api-net.jfap.or.jp/topics/akta/akta_03.htm)によれば、その趣旨は以下の通り。

同性間性的接触によるHIV感染予防に関する啓発拠点センター・aktaについて

1 背 景

わが国では、HIV/AIDSの広がりが深刻化しており、早急な予防対策が望まれています。特に東京の報告数は、平成14年の新規HIV感染者・AIDS 患者は368人で昨年(376人)とほぼ同数となり、男性同性
間の性的接触による感染者・患者は227人と前年の212人を上回り、男性同性間の性的接触によるHIV感染の予防にはなお一層の具体的な取り組みが必要となっています。

現在一般を対象としたエイズの予防啓発の資材やイベントなどは数多くありますが、多くの場合はヘテロセクシャルを前提とした枠組みで行われるため、さらに多くのMSM*に対してより直接的なメッセージを伝えていく必要があります。

そこでこのたび(財)エイズ予防財団の普及啓発事業(厚生労働省委託事業)のひとつとして、ゲイ・バイセクシュアル男性の多くが集う新宿2丁目に、 HIV感染の予防や感染者・患者の支援に関する情
報発信、情報交換、啓発資材の普及を積極的にはかる「コミュニティセンター」aktaが開設されることになりました。

aktaの新宿二丁目での開設によって、コミュニティーベースでの予防啓発・支援活動を促し、ゲイ・バイセクシュアル男性の人々の健康問題に貢献することを目的としています。

  *MSM・・・Men who have Sex with Men の略。男性同性間の性的接触を行う人を指す。

2. 活動内容

1.. 情報提供の場として
ここでは特にMSMを対象に書かれたHIV/AIDSに関するパンフレットを用意し、自由に持ち帰れる情報提供の場としての機能を果たします。在京の NPO、NGO、行政等が作成しているリソース
(HIV/AIDSの基礎情報、医療機関や検査機関、セーファーセックスについての小冊子など)を提供する事で、予防やケアに役立つ場とします。

2.. アウトリーチ(コミュニティー・街頭への直接的な啓発)の拠点として
街頭や商業施設に対するコンドーム配布プログラム
現在、プロジェクト「Rainbow Ring」が、既存団体(AIDSケアプロジェクトやPro-com)や二丁目振興会と協働し、街頭や店舗でのコンドーム配布計画を進めています。すでに配布員のリクルートやオリエンテーション、二丁目振興会加盟店約140店舗との協働についてPro-com、AIDSケアプロジェクトとともに進めています。

3.. 学習の場として
ゲイコミュニティの人たちに向けたHIV/AIDSのワークショップの場
新宿二丁目に集う人たちを対象とした、ワークショップの場として活用します。既存のNPO、NGO団体等からワークショップや啓発活動の場に活用していただけるよう、受付、日程調整等の準備をしています。当面、毎月1回、セックスと予防について語るワークショップを計画中です。

4.. MSMの予防・支援活動に取り組むNPO・NGOの情報交換の場として
予防啓発や感染者・患者の支援にかかわるHIV/AIDSのNPO、NGO団体のミーティングの場として活用していただき、情報交換の場としていきます。

5.. 予防活動のスキル向上のための研修の場として
予防活動をより効果的に行っていくために、それに関わるスタッフのための研修の場として活用します。現在、予防ワークショップに取り組む10代後半〜20代前半の若者に向けた、スキル研修を行っています。

6.. ハッテン場等の商業施設と連携した啓発活動の拠点として
平成14年から、ハッテン場にコンドームや啓発資材の提供を行う活動を「Rainbow
Ring」が行っています。これからもハッテン場経営者、従業員の方たちと相談しながらHIV感染予防啓発を進めたいと考えています。

7.. コミュニティーへの交流の場として
コミュニティーの人々にaktaの存在を知られ親しまれるようにするためにはコミュニティーでへの働きかけが必要不可欠です。ゲイシーンで活躍する人たちのアート作品展示の場・アート展などを行う事で、そこに集う人たちが予防の啓発資材にふれ、予防を意識化する事を目的としています。

上記の計画を進めていく事で、aktaがHIV/AIDSの予防やケアなど、様々なニーズに応じ、感染を防止する場としての役割を果たしていきます。