2004-07-05

お部屋751/日垣隆氏への回答

日垣隆氏の有料メルマガ「新ガッキィファイター」を購読している人から、こんな文章が出ていたとメールされてきました。

【同年齢で同業者の松沢呉一(くれいち)さんによる、俺批判。

日垣隆・対談集『ウソの科学 騙しの技術』(新潮OH!文庫)にこんな言葉が出てきます。
[有村アナ:雑誌や本でも対談や座談会はたくさんありますが、対談者の一方がすべて文章化の作業に当たる、というのは初めての試みだといっていいのでしょうね]
 〔中略〕
 お坊ちゃま、お嬢ちゃま方は、下々の者がどんな苦労を日々しているのかも知らず、「初めての試み」などと胸張っていられるのですから、たいそうお幸せでいらっしゃる。私は私で、そういう仕事のやり方しかずっとしてこなかった人が存在していることを想像できていませんでした。マスコミ業界のとてつもないヒエラルキーを実感しないではいられません。
 たぶん彼らは自分でテープ起こしをするライターがいるなんてことも想像できないのではないでしょうか。原稿用紙1枚千円に満たない仕事があるとか、経費が自腹の仕事があるとか、ギャラを払ってもらえないことがあるとか、単行本の印税をごまかされるとか、写真使用料を払ってもらえないとか、単行本
の原稿枚数も指定してもらえず、そのくせあとで文句だけ言われることがあるとか……》(<真実・篠田博之の部屋 松沢呉一の「創」編集長批判>第21回
2001年3月23日)

 このような、推量に基づく無根拠な批判をなさっておいでなのをもちろん承知で、今年1月24日に私が主催した「朝までライター・セミナー」のパネラーとしてお招きしたのですから、俺も太っ腹だと思っておいて。

 さて私がフリーになって、最初の正月を越すため知人に頼んでありがたくもらった仕事はテープ起こしでした。今でも、インタビュー・テープを自分でよく起こしますし、対談を引き受ける条件として、自分からそれを申し出ることさえあります。もちろん無料でね。

 貧乏自慢が芸の領域に達した感のある松沢さんは、単純な曲解をしているだけなのですが、その文章はしばしば思い込みだけで暴走してしまい、言うに事欠いて俺(日垣)らは《自分でテープ起こしをするライターがいるなんてことも想像できないのではないでしょうか。原稿用紙1枚千円に満たない仕事があるとか、経費が自腹の仕事があるとか》って、まさかそんなことを知らないって、ありうると本気で思ってるのかなあ。

 よく知っているからこそ、敢えて俺は原稿料や印税についてオープンに語り(これは松沢さんもやろうと試みてタブーの厚さに弱腰になってできなかったことでしょう。ご自身も別のところで書いておられるとおり)、くれいちさんを招いて原稿料や印税をめぐるシンポを開いたりしたわけですよ、ねえ。
 訂正してくれいち。
—–
以上です。】(6月19日配信「新ガッキィファイター」より)

求めるのであれば、その前にやることがあるのでは?

【推量に基づく無根拠な批判】とありますが、有村アナの【雑誌や本でも対談や座談会はたくさんありますが、対談者の一方がすべて文章化の作業に当たる、というのは初めての試みだといっていいのでしょうね】という言葉を根拠に私は書いてます。
こんなことを言っている人がいる現実を踏まえて初めて【たぶん彼らは自分でテープ起こしをするライターがいるなんてことも想像できないのではないでしょうか】という私の文章が導き出されたことは歴然としてます。
この文章を見ていただだければおわかりのように、もちろん、これは推量ですよ。根拠を挙げた上で、推量を推量とわかるように書いています。
このような推量をされて仕方のないことを有村アナは言っているのです。

「雑誌や本にたくさんある対談や座談会で、対談者の一方がすべて文章化の作業に当たることなどいくらでもある」ことは原文で指摘した通りです(日垣氏のこの文章では省略してますが)。
日垣氏自身、今回のこの文章で、【今でも、インタビュー・テープを自分でよく起こしますし、対談を引き受ける条件として、自分からそれを申し出ることさえあります】と書いていて、だとするなら、【雑誌や本でも対談や座談会はたくさんありますが、対談者の一方がすべて文章化の作業に当たる、というのは初めての試み】であるはずがないことくらいおわかりでしょう。

ならば、有村アナがこの発言をした際に、その場で日垣氏は否定すべきです。有村アナは対談相手ではなく、日垣氏のアシスタント的な役割ですから、本にする段階で加筆、削除、訂正することも容易だったはずです。
現実には、この言葉を、自分の名前を冠した対談集にそのまま掲載しているのですから、この発言を日垣氏も認めていると解釈されてもしょうがない。
というのが、私の原稿の意味です。

さて、本年1月14日、日垣氏からは、私の指摘を認めたとしか解釈できないメールをいただいてます。
私の指摘を納得してくれたのなら、それでいいやということなんですけど、今回の「新ガッキィファイター」ではその旨は一切書かれておらず、一方的に私を批判しておられます。
どういうことか意味がわかりません。「対談者の一方がすべて文章化の作業に当たる初めての試み」ではないことを認めたのであれば、その旨を明記した上で、そこからの推量も間違いなので、訂正を求めるというのがスジではないんでしょうか。
私が知らないだけで、すでにこの部分については訂正するなり撤回するなりしてるのかもしれないのですが、おそらく「新ガッキィファイター」の読者もそんなことは知らないでしょう。

本を回収するとか、謝罪広告を出すというような大げさな話ではないので、まずは「新ガッキィファイター」で、有村アナの発言は間違いであったこと、それをそのまま『ウソの科学 騙しの技術』に掲載したことも間違いであったことを認めてくださいな。
その上で私は当該の文章を消すか、注釈を入れることにします。

日垣さんにお願いですが、これについてのやりとりは、今後、「黒子の部屋」で公開することを承諾してください。また、「新ガッキィファイター」の読者にもわかるように、リンクするように要求しておきます。

確実に本人の目に触れるように、この文章を「黒子の部屋」に出す旨は日垣氏に直接お知らせしておきます。