2008-06-05

お部屋1527/あれやこれやの表現規制 4-12

3羽の雀さんが復帰してひと安心です。「草の根」をめぐる次のテーマに取り組む前に、「第4章/児童ポルノ」をきりのいいところまで進めておきます。

すでに見たように、【わいせつな行為や被写体になることを強いられて泣いている子供がどれほどいるか、分からない】「世界日報」は書きます。

現実には、児童ポルノ法の「被害者」に、一般にイメージされる「子ども」はほとんど存在していません。なおかつ、「強いられるケース」もほとんどありません。私がそう感じているだけでなく、警察庁が発表した平成19年度版「少年非行等の概要」を見ても、そのことがわかります。

「主な少年非行事例等」として、児童ポルノの事件が四例出ていますが、うちふたつは複製製造と販売目的の所持です。つまり、これで逮捕された人々は直接撮影に関与しているわけではない。

その片方は「女子高生」とあって、雑誌の付録につけたDVDなので、おそらく雑誌側は気づかなかったのではなかろうか。

つうか、これは大きな話題になったあの事件だと思われます。もしそうだとすると、投稿ものの映像です。

投稿雑誌では、見るからに18歳未満であるとわかるものを除いて、投稿者が「被写体は18歳である」と言えばそう信じるしかない。被写体がサインした誓約書を送らせるようにしている雑誌もありますが、いくらでも偽造できてしまいます。身分証明書の現物を送らせるわけにもいかないですし。

その事件の場合も、編集部では18歳であることをまったく疑っていなかったのですが、被写体は18歳未満の高校生で、しかも、投稿者は、雑誌に投稿することを彼女には言わずに撮影。彼女は単なる個人的な趣味の撮影だと思っていたわけです。

因みに彼女はバッグなどの物を買ってもらってはいたものの、金はもらっていたなかった模様です。

知り合いから「ここに出ているのはおまえじゃないか」ということになって、彼女が警察に通報し、投稿者は逮捕されました。他の雑誌にも多数投稿していたのですが、たまたま彼女が見て通報した、その雑誌の編集者も取り調べを受けた次第。

どうやら警察は、投稿者と編集部がツーカーで、高校生だとわかっていて掲載したと思い込んでいたようなのですが、検察は、雑誌には過失はないとしたのか、罪が軽いと判断したのか、不起訴処分になっています。

残り2件のうち、ひとつは【出会い系サイトで知り合った女子高生(17歳)等に対償を供与して性交するとともに、わいせつ画像を撮影し】、インターネットを通じて販売したもの。つまりは、援交女子高生が、納得した上で、金品を得て出演したものです。

この場合、どうして児童であることが発覚したのかがよくわかりませんが、ホストクラブに出入りしていて補導され、その時に警察で「どこから金を得ていたのか」と追及されてゲロして発覚することがよくあります。それでも児童ポルノ法上は被害者扱いです。

ふたつめは【男子児童の裸体を撮影し】、DVD1枚をインターネットで知り合った人物に提供したもの。これは単なる裸体画像のようです。なんでこれがバレたかわかりませんが、ゲイの出会い系サイトで知り合ったオジサンに頼まれて、こづかい稼ぎをした男子高校生がいったって程度の話ではないでしょうか。もし幼児であれば、そう記述しそうですので。

この報告書では、「児童ポルノの製造と販売」「男子児童を被写体にした児童ポルノの製造と提供」「雑誌付録のDVD」「児童ポルノの複製製造と所持」というパターンで事例を集めているわけですが、もし「世界日報」が言うように【幼い子供をレイプするなど重大な犯罪と密接にかかわって制作されること】が本当に多いのであれば、そのような例を出すってものです。

それらは、誘拐や強姦などの罪で起訴されているために、児童ポルノ事件としてカウントされないというのであれば、児童ポルノとして検挙されている例の中には、ひとつとして「幼い子供をレイプするなど重大な犯罪と密接にかかわって制作されたもの」は入っていない可能性があって、それらが含まれない児童ポルノの数字をもって、あたかも多数の幼い子どもの被害が増加しているかのようなデマを流すべきではない。

犯罪がからんでいるとすれば、16歳、17歳を対象とした児童買春淫行条例違反であり、レイプとは大違い。

事件数が増加している正確な事情まではわかりませんが、あり得るのは映像機器の発展とそれに伴う意識の変質でしょう。フィルムの時代はDPE屋に出さなければならず、性器が撮影されていると紙焼きしてもらえなかったのが、今はデジカメですから、気楽に撮影できます。女の子らもケータイでそういう場面を撮りたがり、撮られたがります。

ちょっと前に、「マツワル」で、「いかに写真の意味が変質したか」「いかに写される行為の意味が変質したか」という話を書いていたのですが、援交少女じゃなくとも、彼氏と写真を撮り合った経験くらい多かれ少なかれあるってもんでしょう。

ここはエロサイトではないので、具体的なことは省きますが、昨日も取材で、たまたまそういう場面に遭遇しました。彼女は二十歳の女子大生でして、とんでもないことになっているその真っ最中に、「写メ撮って」と叫び出して、笑いました。そんなことを考えている状況ではないと思うのですが、そういう状況だからこそ記録を残して、あとで自分で見たいわけです。「友だちにも見せる」と彼女は言ってました。

こういった写真が「ケツ毛バーガー」のように流出することで、今時の世間一般の人々がいったい何をしているのかをかいま見ることができ、その中には18歳未満の被写体が混じっていて、事件に発展することもありましょう。

そういった時代であることを考えれば、児童ポルノの事件数が増加していることはなんら不思議ではなく、「世界日報」が妄想しているような理由ではおそらくない。むしろ多くのケースで、「児童」は合意の上で撮影されていて、合意していなかったケースがあるとすると、公表する点についてのみであったことが見てとれます。

つまりは、今の時代の写真の意味をしっかりと把握していない鈍感な人々が、児童ポルノを論じようとするから、現実とズレまくった妄想を展開してしまうわけです。

こういった行為や写真が容認されるべきだと言っているのではなくて、「どんな主張をするのも勝手だが、表現規制を主張するのであれば、せめて事実関係を正確に把握してからにしてはどうか」ってことです。「東村山市民新聞」じゃないんだから。まっ、似たようなもんか。

欠陥があるのは、児童ポルノ法に所持の禁止が入っていないことではなく、こういうことを安易に言う人々の精神構造であり、こういうことを言う新聞の取材能力でしょうし、恥ずかしいのは、エロ漫画ではなく、こんな新聞の存在です。事実の確認もせずに、デタラメを書く新聞こそ規制されてしかるべきです。

これは「世界日報」だからこそとも思えましょうが、他の新聞もこれとさして変わらないことを主張しています。

続く。