2008-05-19

お部屋1507/あれやこれやの表現規制 5-4

「読売新聞」の社説では、【マンションなどのポストには、宅配ピザや不動産情報など、様々なチラシやビラが投函(とうかん)される。こうしたチラシやビラを重宝にしている住民も多い。(略)一般のチラシやビラの配布まで警察が摘発するのは、現実的ではない】とありますが、「それを重宝する住民がいるかどうか」は住居侵入罪が成立する要件ではありませんから、重宝する住民がいたところで、住居侵入は成立します。つまりは現実的ではない逮捕をも肯定したのがこの判決です。

また、【チラシやビラを重宝にしている住民も多い】ことをもってビラまきを違法とすることに反対するのであれば、ピンクチラシも禁止することはおかしいことになりましょう。客がいるから配布されるのであって、重宝する住民は確実に存在しています。

住民全員が重宝している場合、誰も通報したり、被害届を出したりしないだけの話で、例えばマンションや団地の入り口に「ビラの投函禁止」「関係者以外の立ち入り禁止」「勧誘行為や押し売りは禁止」と、誰にでもわかるように表示され、なおかつ被害届が出される、対面で抗議されるなどしていれば、いかに住民の中にそれを歓迎している人たちがいても、住居侵入罪が適用されるはずです。

ピザの宅配、寿司の宅配、そばの宅配の場合は、住民が「この人はうちの客です」として招き入れることが可能でしょうが、単なるビラの投函や勧誘行為は、恣意的に気に入らない侵入者を選択して、それを犯罪者にすることができるわけです。

これまでそれが問題にならなかったのは、「まさかこんなことで警察は動かないだろう」「まさか法に触れないだろう」と皆さん思って通報しなかっただけのことで、この裁判によって通報する人たちは増えるでしょう。

こういう場合、住民ではなく、ライバルの足を引っ張るために通報することが定石でありますから、敵対するピザ屋や不動産屋がビラを配布している事実をつかんだら、住民のフリをして通報すると警察が動いてくれるんじゃないですかね。イヤな世の中ですよ。

しかも、この判決を支持するメディアがあるのですから、愕然とします。

3羽の雀さんが示唆しているように、「東村山市民新聞」の配布も、一般の新聞の配布や勧誘も同様に通報の対象です。本当にしつこいのがいますからね。しかし、これからは安心です。

「勧誘お断り」とあるにもかかわらず、新聞勧誘員がマンションや個人の敷地に一歩でも踏み入れたら、まずは抗議して、それでも同じ新聞の勧誘員(同じ個人ではなくても)が足を踏み入れたら、住居侵入で通報です。裁判所は有罪判決を下してくれましょう。

新聞の勧誘は表現の自由とは直接には関係のない商行為ですから、議論の余地なく住居侵入は成立しましょう。私も今後は「読売新聞」の勧誘が来たら通報しようと思います。しないけどさ。

また、マンションの住民たちは、「読売新聞」の新聞配達員が敷地に立ち入るところを見たらすぐに注意し、夕刊も配達に来たら通報するといいでしょう。これは表現活動とすることができるでしょうが、ビラと同様ですから、要件を満たせばアウトです。「読売新聞」の宅配を頼んでいる人は、毎朝毎夕、マンションの敷地外に出て新聞を受け取るがいい。

だからさ、政治的立場、思想的立場が違うからといって、こういう判決を支持すると、自分のところにも必ず影響は及ぶんだってばさ。

新聞社の編集委員や論説委員たちは、新聞を勧誘し、配達している人たちの苦労なんぞこれっぽっちも想像しないで、デスクの上で原稿を書いているだけなんでしょうけどね。

これだから、新聞の購読者はどんどん減るんじゃなかろうか。

続く。