2008-04-22

お部屋1467/あれやこれやの表現規制 13

肖像権がどういうものかわかったところで、この件についての有村議員の国会での質問は妥当なのかどうか、もう一度確認してみましょう。

http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/529555/
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このパンフレットにのっている制服姿の青年、この青年は現役自衛官であり、彼が靖国神社に参拝しているところを、この映画「靖国」をつくった人が無許可で撮影をし、その映像が無許可でこの映画に使われ、このパンフレットにおける掲載がされていることもこの自衛官の方は一切しらなかったんです。この現役自衛官の方がたまたま靖国神社にお参りしたときに撮られた、勝手に無許可で撮られた肖像権はまったく守られていないというのが、常態化、今も続いています。

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ここではパンフを強調しているようにも見えますが、パンフが有村議員の手元にあっただけのことです。パンフについては次回改めて検討しますが、映画に関しては、この人物を無断で撮影し、無断で公開しても、肖像権上問題がないことはここまで書いたことで十分に理解できるでしょう。

「原則、誰でもが入れる公共性、公開性の強い場所で、自ら望んで示威行為をしていること」「多数のカメラがあること」「自分が撮影されていることを認識できていること」「にもかかわらず、拒否をしていないこと」「この撮影自体に公益性があること」などなど、どこをとっても許諾が必要なケースではない。

有村議員は「靖国神社はドキュメンタリー映画で取りあげるほどの公益性はなく、取るに足らない存在だ」とでも考えておられるのでしょうけど、取るに足らない存在だとしてもなおこの場合の肖像権は問題にならないってことなのです。

有村議員がどこから「肖像権」なんて言葉を仕入れたのか知りませんが、これで映画を批判するなら、せめてそれがどんな意味か調べればよかったのに。

有村議員はこうも言ってます。

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しかも私がこれを本格的に調査したのは3日前でございます。質問が決まってからでございます。それでも私はこういう情報を入手しているんです。

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いかに付け焼き刃の質問だったのかよくわかります。3日足らずの間に慌てて作り上げた質問であり、それ相応の内容ってことです。せめて肖像権についても1日くらい調べてから質問をすべきではなかったか。なんでこうも焦ったのでしょうね。

上映後であれば、この質問が適切かどうか判断できる人が増えます。私自身、観ていたからこそ、肖像権についてのこの質問がまったく意味をなさないことを瞬時に見抜けましたが、観ていなければ、「どうも怪しいぞ」程度のことは感じたにしても、批判することまではできなかったかもしれない。

この質問は3月27日のものです。映画の上映が次々と取りやめになっていた時期です。このまま一般公開はなされず、ありもしない肖像権侵害をでっち上げても、それを検証されることはないと考えたのではないか。あるいは、大急ぎであることないこと言って、さらに一般公開を潰すことを狙ったのではないか。

これはうがちすぎだとしても、上映前に「この映画は肖像権も守っていない」という偏見を広げておきたかったのだろうと疑わないではいられません。実際、観たところで、肖像権上、問題があるのかどうか見抜けない人たちもいるでしょう。肖像権のことをなんもわかっていないんですから。

右翼団体の試写会のあとの討論でも、まさに有村議員の言っていたことそのままに自らの肖像権を主張する人がいたのを見て、「なるほどな」と思った次第。

多くの人たちは「この映画はこう観るべし」という枠組みを与えられると、そのまんま観てしまうものです。「反創価学会」のブランドがあると『東村山の闇』を疑わずに読んでしまう人たちがいるように。

有村議員は、一般公開前に、その枠組みを作っておきたかったのでしょう、おそらく。さもなければああも杜撰なことを大慌てで質問する意味がわかりません。

では、次回はパンフの肖像権です。