2008-04-01

お部屋1440/「靖国」上映運動のお誘い

李纓監督「靖国 YASUKUNI」が政治家の介入によって全館上映中止になってしまいました。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080331-OYT1T00594.htm
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日中合作の記録映画「靖国」、相次ぎ上映中止に

 靖国神社をテーマにした日中合作のドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」が、東京と大阪の映画館5館で上映中止となったと、映画を配給するナインエンタテインメント社が31日発表した。

 中止を決めたのは東京都内の銀座シネパトス、渋谷Q—AXシネマ、新宿バルト9、シネマート六本木の4館と大阪府内のシネマート心斎橋。いずれも今月12日から公開を予定していた。「公開によって、近隣の劇場や商業施設などに迷惑が及ぶ可能性がある」(銀座シネパトス)などと理由を説明している。

 この映画は文化庁所管の芸術文化振興基金750万円の助成を受けており、「政治的な宣伝意図があるのではないか」などとして、国会議員から問題視する声もあった。「映画を見たい」という議員の要請もあって配給会社は3月12日、都内で試写会を開き、議員約40人が参加。議員と文化庁関係者らの意見交換会が開かれ、参院文教科学委員会でも質疑が行われた。

 19日に新宿バルト9が公開中止を決定。その後、他の映画館や配給会社に上映中止を求める電話などがあったという。

 19年間日本に住む中国人の李纓(りいん)監督が、10年間にわたって、靖国神社を訪れる参拝者や遺族、神社に納める刀を作る刀匠らの姿などを記録した日中合作映画。昨年の釜山国際映画祭など海外の映画祭でも上映され、今年3月の香港国際映画祭では最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した。

 配給会社では「国際的な評価も高い作品が、こうした事態に陥ったのは大変遺憾。日本社会における言論の自由、表現の自由への危機を感じる」とコメントを発表。文化庁芸術文化課では「一般論として、芸術文化の発展の機会が外部からの嫌がらせで妨げられてはならない」と話している。

 最初に助成を問題視し、試写会に参加した自民党の稲田朋美・衆院議員は「我々が問題にしたのは助成の妥当性であり、映画の上映の是非を問題にしたことは一度もない。いかなる内容の映画であれ、それを政治家が批判し、上映をやめさせるようなことが許されてはならない」などとする談話を出した。
(2008年3月31日21時44分 読売新聞)

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asahi.comによると、右翼の街宣車が来た映画館もあります。稲田先生が狙った通りの結末になっておめでとうございます。

もしこの記事のコメント通りであれば、なぜ事前試写を要求したのでしょうか。広く公開してから議論をすればいいことでしょう。なおかつ、なぜほんの一部の人しか観ていないうちから「靖国神社が、侵略戦争に国民を駆り立てる装置だったというイデオロギー的メッセージを感じた」などとコメントを出す必要があったのでしょうか。当然ここには計算があったのでしょう。

自分の行動や発言によってこうなることの想像さえできてなかったのであれば、「よくも政治家なんてやってられるな」と言わないではいられません。

かくて日本も政治家が表現を潰す中国のような国家に近づきました。あーあ、これで「てめえらは表現の自由を認める度量もないくせに偉そうなことを言うな」と中国共産党を罵倒できなくなっちまったぜよ。

これによってまた左翼陣営が上映運動をするようなことになると、結局古ぼけた左右のイデオロギーの谷間にあの映画が埋没することになりそうで、溜息が出ます。

こうなってしまうと、右は右で「あの映画は反日映画である」という枠組みを与えられて、そのようにしか見えないでしょうし、左は左で「あの映画は靖国批判の映画である」という枠組みでしかあの映画を見られないのでしょう。そういう見方を排除して、観客自身の思考によって観なければならない映画だと思うんですけどね。

それを避けるために、この際、チベット報道については「朝日は中共の御用新聞」と批判しつつ、この問題については「稲田朋美議員の体質は中共と一緒」と批判する私のような人間たちで上映運動をしてはどうか。他に誰がいるのか知らないです。ホントに世の中、右だの左だの、手垢のついたくだらん枠組みでしか考えられない人たちが多くてイヤになります。

待てよ、もしかすっと、稲田議員は本当にこんなことになるとは想像をしておらず、心底、「上映をやめさせるようなことが許されてはならない」「この国を中国のような国にしてはならない」と考えておられるのかもしれないので、私と一緒に上映運動をしないか。

このエントリへの反応

  1. これ↓を読むと、映画制作者のうさん臭さと、役人仕事のインチキぶりの方がオモシロイと思いますね。
    http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/529429/

  2. 福島瑞穂センセイが自主上映を計画中とか。
    いよいよオモシロクなってきました。
    http://birthofblues.livedoor.biz/archives/50604109.html