2008-03-12

お部屋1422/「黒子の部屋」リニューアル

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mixiの利用規約改正はとうてい受け入れられないので、間もなく退会することになりそうです。それにともなって、「黒子の部屋」を久々にリニューアルです。

どうするか、まだはっきり決めてないないのですが、「マツワル」の転載はやめようと思ってます。一部だけ見せて、「あとは有料です」というのは気分が悪いので、極力、読切に近いものを出してきたのですが、続きものが多いので、どうしても前後を切り取った出し方になってしまいます。かといって、その前後まですべて転載すると、購読者に申し訳ないですし。

そこで、「マツワル」とは全然別のものを出して、「マツワル」で配信した内容は軽く触れる程度にしようかとも思っているのですが、「今日は何をした」なんて日記を出しても仕方がなく、何を出すのかまだ決めてないです。mixi同様、もっぱら告知の場になるかもしれません。

ひとまず今回はmixiの規約改正について。「マツワル」では、「包括的な人格権不行使の規約が法的に有効であるのかどうか」「有効だとしても、こういった規約は著作権法の趣旨からするとまずいのではないか」といったことを論じつつあるのですが、そういった大きなテーマとは別に、ここでは「mixiはなにを考えているのか」について書いておきます。

ここ数日、「もし私がmixiの人間であったなら」という前提でずっと考えていたのですが、私であれば、本を出すなんてしょぼい商売はしません。もっと簡単に金になることを考えるでしょう。

たかが本のために、あそこまでの規約改正は考えにくく、mixi事務局も【ユーザーのみなさまの日記等の情報を書籍化することに関するお問い合わせもございますが、こちらの点につきましても、従来どおり、ユーザーのみなさまの事前の了承なく進めることはございません】とわざわざコメントを出したことから、答えはここにはないなと。

すでに指摘している人たちもいるでしょうが、狙っているのは、スポンサーへのコメントの提供ではなかろうか。現在は、広告をクリックした利用者の性別、年齢、居住地、職業などを数値化したものをスポンサーに渡しているだけですが、クリックするという作業を経た人に限定しないで、より数多くのデータをとるためには、ある商品について、日記やそのコメントに書いていた人たちのデータを集めればよい。

さらに、ここに「どう書いていたか」の言葉まで添えられれば、スポンサーは金を出します。高い金を出してアンケートなどの市場調査をしなくてもいいわけですから。

ある製菓会社がチョコレートを出して、発売から一ヶ月の間に、その商品に対するコメントつきの千人分のデータがとれれば、50万円くらい払うでしょう。しかも、そのコメントは、製菓会社が広告にも自由に使用できる(リスキーなので、ここまではmixiも許諾しないかもしれませんが)。

検索すればいいだけですから、今でも手作業でこれをやることは可能ですけど、それを集計してまとめるだけでも手間や日数がかかります。また、過去のものは調べられず、日記についているコメントも検索できない。しかも、その文章を利用するには、いちいち許諾をとらなければならない。それをすべて金で済ませられるのであれば、スポンサーはいくらでもいます。

しかし、ネックになるのは著作権です。著作物として成立している文章であれば、広告に使用しなくたって、コピーして渡すだけで複製権の侵害。名前を消すと、今度は氏名表示権の侵害。勝手に文章に手を加えると同一性保持権の侵害。

それらをすべてクリアするためには人格権の不行使を規約に入れるしかなかったのでしょう。

これが可能になると、一気にmixiのビジネスは拡大します。今までは広告を出すスポンサーだけを相手にしてきたわけですが、今後は広告が必要ない。利用者の書き込みがストレートに金になり、ほとんど経費や作業が必要ないのですから、コストパフォーマンスが非常にいい。千人分を10万円で売っても利益は出ましょう。

以前、「マツワル」で実験したことですが、そこそこの有名店であれば、たったひとつの飲食店でも、週に10人程度の人が店名を日記に書いています。コミュの分をかき集めれば倍くらいになるかもしれない。つまり年間で千件のその店についての感想が集められるわけです。感想はなく、「渋谷の××でごはんを食べた」と書いているだけでも、利用者のデータはとれます。これを10万円で得られるのであれば、たったひとつの店でも金を出すかもしれません。

つまりは、広告を出せる大スポンサーじゃなくても、今後は小さな会社や店から金を引っ張れるのですから、一挙にビジネスは拡大します。

だったら、堂々と「これこれこういうビジネスをします」と宣言してもよさそうなものです。「本サービスに協力する方はyesをクリックしてください」といった選択が可能になるようにして、それをクリックした人だけが著作権の使用を許諾し、人格権不行使に承諾することにすればいい。

しかし、これをやると数が稼げなくなりますし、クローズドなmixiのイメージは崩れかねないでしょう。また、知られてもいい人だけのデータしかとれず、確実にデータに偏りが出て、スポンサーとしては買うのを躊躇しそうです。

もしこういうことを考えているとしたら、大手代理店と共同で話を進めていて、mixiの一存ではどうにもならないために、説明に時間がかかっているのではなかろうか。

なんてことを考えていたのですが、実際のところ、どうなんでしょうね。あっちは一年中mixiを利用した金儲けを考えているのですから、もうちっと複雑なビジネスモデルがあったりするかもしれません。

mixi内の議論でも、「無断で本にされる」という話が先行してしまってますが、もう少しいろんな可能性を考えておいた方がいいかもしれない。それこそ規約に「書籍にする場合は〜」という一文を入れられて事が沈静化してしまいそうなので。

とはいえ、人格権不行使の規約がネットで広がっていることの方に興味が移行しているため、私としてはmixiという一企業についての関心はもうあまりないのですけどね。

なお、「マツワル」の転載専用になってから、コメントはつけられないようにしていましたが、今後は復活させようかとも思ってます。つけられないようにしていたのは、同じような議論を「マツワル」と同時進行でやることになるのを避けたかったからです。それと、「黒子の部屋」は更新の時にしか見ないため、コメントをつけていただいても、返事がなかなかできないためです。こちらの事情は今後も変わらないと思いますが、ひとまず今回はコメントできるようにしておきます。

追記(3月12日):さらによく考えたら、何も、特定の商品、特定の会社についての情報を、その会社が欲しがるだけではないですね。

代理店の立場になれば、「あらゆる消費者動向を探る調査ができる」と気づきました。

製菓会社に対して、「これこれこういう動きが起きているのです」「御社の過去の商品はこんなところが嫌われてます。その点、他社のヒット商品ははこんなところが好かれてます」「東京杉並区に住み、なによりチョコが好きな20歳のアパレル関係者は、こんなアイデアをもってます」などと、日記のコメントを添えて、新製品や新製品のキャンペーン企画を提案できます。それぞれにコメントが百個ついていれば、説得力があります。

それを会社に持ち帰った宣伝部は、社長の決算をとるときに、このようにコメントを使用します。

「島根県安来市に住む36歳の工務店勤務の男性は、小学6年生の自分の娘に新製品を買って帰ったら、ひと目見て“ダサ”と言って手をつけかなかったことを報告してます。若年層に受けないことが、この商品の決定的な失敗だったため、急遽、コマーシャルの方向を若年層向きにしたい。現在起用している巨乳タレントの××は若い女性から嫌われてます。23歳の美容師は、このタレントと同じ東京都板橋区在住にもかかわらず、“バカっぽくてサイテー、チョーむかつく。地元の恥”と書いてます」

企業に渡すデータからは、個人情報として、名前などを削除しましょうが、これらはすぐにmixiで検索して探せますから、誰が書いたものかわかってしまいます。

宣伝部はその画面を見せて、こう言います。

「社長、これこの通り、23歳の美容師が書いてます。この女はミニチュアダックスフントを飼っているのですね。かなり遊んでるみたいです。この女自身がバカっぽいですが」

その画面を見た社長はこう言います。

「ん、どれどれ。今君はバカっぽいと言ったな。これはワシの愛人だ。マイミクのパパというのはワシだ」

おあとがよろしいようで。