2007-11-25

お部屋1379/今日のマツワル65

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出すタイミングを逸してましたが、「ディフェンディング・ポルノグラフィ」シリーズが始まりました。これは ナディーン・ストロッセン著『ポルノグラフィ防衛論』にからめた内容です。「表現の自由を確保するために、ポルノは擁護されなければならない。にもかかわらわず、なぜこれを規制しようとする輩がこうも多いのか」「セクハラという名のもとに、性表現、性行動を規制することが如何に危険か」といったこの本の中心的テーマと、それにからめたさまざまを述べていこうと思っており、しょっぱなは、些か古くなってしまいましたが、10月のロフトプラスワンの話を書いてます。その2回目です。

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< ディフェンディング・ポルノグラフィ2>

ロフトプラスワンでの直接のテーマは、この夏にちょっとだけ話題になっていたパラダイステレビの番組に対する助成金が打ち切られた問題でした。

いまさらながら、ここでまとめておくとしましょう(以下はあの日の主催である熊篠慶彦氏からもらった資料に大いに依ってます)。

ロフトプラスワンの会場で、当該の番組「裸の手話ニュース」を観せてもらったところ、とくにその回はとてもいい内容でした。女性キャスターが手話を使いながら、HIV検査を呼びかけ、エイズ予防財団などの連絡先も紹介します。その間に服を脱いでいき、最後は全裸になります。

パラダイステレビはエイズ予防財団に寄付をしています。本来なら税金を費やすべきところの穴埋めを私企業がやっていて、さらに番組を使ったHIVのキャンペーンにも協力している。そこでは聾唖者に対する配慮もしている。素晴らしいではないですか。日本テレビやフジテレビだって、ここまではやっていないのではないか。

総務省の管轄下にある情報通信研究機構がこの番組に「字幕番組等制作促進助成金」を交付。これまでにその金額は40万円になるそうです。1回当たりいくらになるのか不明ですが、1ヶ月に1本の製作として、1回3万円程度でしょうか。

手話をつけるためのスタッフのギャラや手間を考えると、この金を目当てにして、わざわざ手話をつけることは考えにくい。金儲けになるのであれば、どこもかしこもやるわけで、それにかかる費用の一部を助成しているに過ぎません。

これに対して、「週刊新潮」の報道から始まって、「朝日新聞」などがこれを取りあげ、結局、助成金は打ち切られます。バカバカしい話です。

「週刊新潮」がこういう記事を書き飛ばすのは、おそらく読者の平均年齢が60代になっていそうなあの雑誌の性質から当然として、なんでこんな雑誌の与太記事に右往左往して、ルールを無視して助成金を打ち切るのでしょう。怒りを覚えます。

怒りの対象には、メディアや行政だけでなく、聾唖の団体も含まれます。

おそらく「朝日新聞」が最初にこの問題を取りあげた7月9日付けの朝刊には、こんなコメントが出ています。

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全日本ろうあ連盟の久松三二・本部事務所長は「個人的な意見」としたうえで、「番組に手話をつけることは大変ありがたいが、この番組に助成金を出すのはいかがなものか」と指摘する。

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個人的な意見としても、こんなことしか言えない人物が全日本ろうあ連盟の事務所長をやっているのはいかがなものか。現にこの人は会に対して影響力のある立場にあって、その立場を明示した上で発言しているのですから、これは全日本ろうあ連盟自体の問題でありましょう。

あるいは8月12日付けの「朝日新聞」にはこんな意見が紹介されている。

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聴覚障害者支援のNPO法人「みみより会」参与で作家の江時久さんの話

障害者も性的関心は普通の人と同様であり、どんな番組であっても見る自由がある。そうした理解を深めるのは重要だが、公費で助成するのなら、社会性、公益性を判断するのが当然で、内容審査をきちんとすべきだ。支援が必要な対象はほかにもたくさんあり、今回の交付は社会良識にも反している。

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こいつら、なーんも考えてないべ。考えてないくせに考えているように思い上がっている人物の典型です。サイテーだな、「全日本ろうあ連盟」「みみより会」

聾唖の団体のすべてがこのような立場をとっているわけではく、東京都聴覚障害者連盟は番組を支持する声明を出していますが、主流派は否定的な立場をとっていると見られます。

字幕番組等制作促進助成金は、放送に字幕をつけることを促進するのを目的としたものです。つまり、「字幕がつくこと」は聾唖者にとって無条件に「いいこと」であり、それ自体が社会性、公益性があると判断している。その考えから税金を使っている。

であるなら、それが成人向けであっても、裸があっても、「いいこと」なのです。選択できる番組の幅が広がることが「悪いこと」のはずがない。

また、この助成金によって、手話のつく番組がひとつでも多く制作されることは、聾者の雇用を促進します。聾者が出演者として起用されることもあれば、手話のアドバイザーとして起用されることもあって、ロフトプラスワンに当事者が来ていたように、実際に、パラダイステレビにおいてもそうだったわけです。

当初、情報通信研究機構は助成金を出していることについて、「断る理由ない」としていました。

7月9日付けの「朝日新聞」

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 放送局は、昨年7月に助成金交付を独立法人・情報通信研究機構(東京都小金井市)に申請。同機構は審査のうえで、「手話は専門家の指導を受けており正確。聴覚障害者の役に立つ」と判断し、同年10月に交付を決定した。

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パラダイステレビはルールに則って申請を出し、情報通信研究機構はルールに則って助成金を出していただけのことです。本来の趣旨に反する内容にもかかわらず申請を出して、それに情報通信研究機構は反対ができなかったというのではなく、パラダイステレビがやっていることは、まさに趣旨通りってことであり、これ自体、社会性、公益性がある。

その趣旨を無視して「週刊新潮」が異議を唱え、それに「全日本ろうあ連盟」「みみより会」は同調している。どうして、このような反社会的、反公益的な団体が放置されているのでしょうか。どうしてこいつらは聾者の雇用までを奪うことを主張しているのでしょうか。

自分らの主張に正当性があるとなお言い張るのであれば、社会性、公益性の定義を今すぐ出すべきです。それがあるから、パラダイステレビには社会性、公益性がないと判断しているのですから、すぐに提出できるでしょう。「この社会は自分らの基準に屈服すべきである」というのなら、その基準を出せ。

今後はその基準に従って、字幕番組等制作促進助成金の交付先については、厳密な判断をして、それにそぐわないものはすべて排除です。個人がエロを楽しむのはいいとして、税金を出してはいけないのというのでしょうから、性に関わることが出てきたら、すべて交付は打ち切りです。

ことさらエロだけの問題ではなく、個人の娯楽に属するようなものは聴覚障害者から取りあげればよい。聴覚障害者の団体自身がそう主張するのですから、税金の無駄遣いをやめるためにもそうしましょうぜ(続く)。

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