2008-04-23

お部屋1469/あれやこれやの表現規制 3-1

次々といろんなことが起きます。第1章もまだ終わっていないというのに、第3章のスタートです。

第3章はSLAPPです。Strategic Lawsuit Against Public Participationの略で、日本語で言えば「戦略的対市民活動訴訟」です。企業や権力の座にある者が、市民の活動やジャーナリストに対して起こす恫喝的な訴訟のことです。

しばしばいやがらせ効果を高めるために高額な損害賠償請求をするわけですが、そうじゃなくても、市議が市民を訴える、市議がジャーナリストを訴えるといった訴訟はSLAPPと言っていいでしょう。

企業、金持ち、権力者、仕事をしない市議といった人々にとっては、必ずしも裁判に勝つ必要はなく、相手を脅し、さらなる批判を封じることができればいい。訴訟の濫用ですから、SLAPP先進国のアメリカでは、すでにそれらを禁止する法制化が各州で進んでいるそうです。

もちろん、金のある企業や、団地の管理費を払わない市議でも訴訟をする権利はあるわけですが、濫用については一定の規制をすべきであり、日本も早くこの対策を進めるのが望ましい。

日本でもSLAPP情報を集めるSLAPP WATCHというサイトができていて、着々と国内の裁判情報が取りあげられています。例のSLAPP常習者がまだここには取りあげられていませんので、誰か教えてあげるといいでしょう。

さて、昨日の午後のこと。流対協(出版流通対策協議会)から、「オリコン裁判」で東京地裁は、烏賀陽氏に100万円の損害賠償を命ずる判決を出したとの速報が流れてきました。

「エーッ」と声を出して驚いて、ついでに脱糞しそうになりました。

以下、時事ドットコムから。

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2008/04/22-18:03

取材受けた側に賠償命令=オリコン名誉棄損訴訟−東京地裁

 音楽ヒットチャートの信頼性に疑問を呈すコメントで信用を傷つけられたとして、音楽市場調査会社「オリコン」(東京都港区)がジャーナリストの烏賀陽弘道氏(45)に損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は22日、「コメントがそのまま掲載されることに同意した場合は、取材を受けた側も例外的に責任を負う」と述べ、100万円の支払いを命じた。
 烏賀陽氏は「取材行為が成り立たなくなる。前例にならないように争う」とし、控訴する方針。
 問題になったのは、月刊誌「サイゾー」2006年4月号の記事。編集部が同氏に電話取材し、チャートの基になる売上数について「予約だけ入れて後で解約するカラ予約が入っている可能性が高い」などのコメントを掲載した。

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この裁判の不当性については、あちこちで書かれているので、皆さんもご存知かと思いますが、簡単にまとめると、「サイゾー」の記事で、烏賀陽氏に「だいたい本当のこと」を言われたオリコンは、雑誌やライターではなく、記事内でコメントした烏賀陽氏個人に、5千万円もの損害賠償請求をしたというものです。

●紙媒体を所有し、なおかつ多数の読者をもつサイトを運営するオリコンが、言論による解決を求めず、訴訟を起こしたこと
●雑誌「サイゾー」の発行元やライターではなく、そのコメントをした個人を訴えたこと
●5千万円という、とうてい内容にそぐわず、ライター個人が支払えるはずもない損害賠償請求をしたこと

という三点において典型的SLAPPだと断定していい。

続く。

このエントリへの反応

  1. [...] 「草の根」については、自らああも訴訟を起こしてきた歴史があるし、市議であり、「新聞」を発行し、FM局もやっているのですから、力のない個人ではありえません。いくら訴えたところで、SLAPPであるとの批判はされないでしょう。批判するのがいたら、私は断固擁護します。 [...]

  2. [...] 「草の根」については、自らああも訴訟を起こしてきた歴史があるし、市議であり、「新聞」を発行し、FM局もやっているのですから、力のない個人ではありえません。いくら訴えたところで、SLAPPであるとの批判はされないでしょう。批判するのがいたら、私は断固擁護します。 [...]