2012-06-05

いただいた本●本棚の中のニッポン─海外の日本図書館と日本研究

笠間書院・岡田圭介さんからいただきました。

書名●本棚の中のニッポン
副書名●海外の日本図書館と日本研究
著●江上敏哲
発行●笠間書院
定価●1,900円+税
2012年5月25日発行
ISBN978-4-305-70588-4 C0000
A5判/296ページ/並製

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●本の説明

日本人の知らない「海外の日本図書館」。そこはどういうところで、今、何が必要とされているのか。

海外で日本について学ぶ学生、研究者、そのサポートをする海外の日本図書館について紹介し、その課題やニーズに日本側からどう応え、資料・情報を提供・発信していけばいいのかを考える本です。

本書では、海外の日本図書館やそのライブラリアンについて、資料・蔵書の様子、資料・情報の流通・提供・利用の様子、図書館・ライブラリアンによるサービス・サポートや連携・協力活動の様子、課題・問題点を紹介します。
そのうえで、海外の日本研究者・学生や図書館・ライブラリアンは、どのようなニーズを持っているか、日本側では、そのニーズをどのように把握し、どのように応えればよいか、日本資料・日本情報を、日本から海外へ効率的・効果的に提供・発信するには、どうすればよいかといったことを考えます。

海外の人びとが(資料・情報的に)日本に何を求めているのか、そのユーザのニーズや課題・問題点を、私たちがちゃんと把握して応えていく。日本の資料・情報を効率的・効果的に提供・発信していく。それができるかどうかは、ほかでもない日本の私たちにはねかえってくる問題である――。

「海外の日本研究・日本図書館について多くの方に関心と意識を持っていただくこと。その結果として、さまざまな場面での日本資料・日本情報の効率的・効果的な提供・発信に、ご理解とご協力をいただくこと。本書の最終的な目的はそこにあります。より多くの方に”援軍”となっていただくきっかけとなれば幸いです」……本書・序より

注1■
この本に関して、著者が開設しているブログ、『本棚の中のニッポン』blogもあわせてご覧ください。

注2■
刊行記念イベントが、ジュンク堂書店池袋店で2012年7月14日に開催されます。
和田敦彦×江上敏哲「国境を越えた知の流通 過去・現在・未来 ―海外の日本図書館から考える」
ぜひ、ご参加ください。

著者プロフィール

江上敏哲(えがみ・としのり) Toshinori EGAMI
京都大学文学部卒業、同文学研究科修士課程(国語学国文学)修了。司書として、京都大学(工学研究科・附属図書館・情報学研究科(1998〜))、 Harvard-Yenching Library(visiting librarian・在外研修(2007))を経て、2008年より国際日本文化研究センター資料課にて勤務。また玉川大学教育学部、立命館大学文学部、同志社大学社会学部にて非常勤講師として勤める。
論文「欧州の日本資料図書館における活動・実態調査報告 : 日本資料・情報の管理・提供・入手」「イタリアの日本資料図書館における活動・実態調査報告」「フランスの日本語資料図書館における活動・実態調査報告」(以上『大学図書館研究』)、公式blog「ハーバード日記 : 司書が見たアメリカ」(京都大学図書館機構webサイト内・http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/modules/wordpress/)ほか。
詳細は http://ha6.seikyou.ne.jp/home/egami/を参照。

●目次

序 日本人の知らない日本図書館
 Tanizaki Jun’ichiroの“The Thief”を探す/本書では/「海外の日本図書館」をとりまく世界

第1部 日本語の本は誰が読むか、どこにあるか

1 日本語の本は誰が読むか、どこにあるか―総論
 UMass Amherstの日本資料・図書館・ユーザ/世界に学ばれるニッポン/パリ・日本図書館のさまざま/良き“日本理解者”のために/海外からのリクエストはあなたにも届く/“日本リテラシー”がない人も、日本資料を求めている

■インタビュー(1)「日本の図書館員は国際会議の場にもっと出るべき」

2 海外の日本図書館を巡る―事例紹介
 1.University of California, Los Angeles (UCLA)
 UCLAとその図書館/東アジア図書館と日本資料/古典籍・マイクロフィルム・移民資料―特殊コレクション/e-resource/日本はどう学ばれているか―研究者と学生たち/デジタル化とコラボレーション―日本への注文
 2.University of Pittsburgh
 University of Pittsburghとその図書館/東アジア図書館とその蔵書/何をどう集めるか―日本資料の収集/棚にどう並べるか―日本資料の配架/日本経済史が凝縮― 三井コレクション/e-resource/日本を教える―情報サービスとインストラクション/グローバル化する日本研究
 3.フランスの日本図書館
 École Française d’Extrême-Orient (EFEO)/EFEOの図書館と日本資料/目録データベースとSUDOC/Bibliothèque Universitaire des Langues et Civilisations (BULAC)/Bibliothèque Interuniversitaire des Langues Orientales (BIULO)/ひろがるネットワークの輪
 4.台湾の日本図書館
 台湾の日本研究・日本資料/国立台湾大学図書館/中央研究院・人文社会科学連合図書館/国立中央図書館台湾分館

3 プロフェッショナルたちの流儀―ライブラリアンとコミュニティ
 1.North American Coordinating Council on Japanese Library Resources (NCC)
 NCCと北米のライブラリアンたち/resource sharingの仕組み―MVS/ジャパン・イメージ―IUP/研修/年次集会
 2.Council on East Asian Libraries (CEAL)
 東アジア図書館協議会―CEAL/日本資料委員会―CJM
 3.European Association of Japanese Resource Specialists (EAJRS)
 EAJRSの歴史と活動/年次集会/図書館は横のつながりなしに成り立たない

4 黄金の国からクール・ジャパンへ―日本研究・資料の歴史
 Google Booksに“Japan”はどれだけ登場するか/ジパングに行ってみた―近世/明治ニッポンの世界デビュー―19世紀後半/日本を研究するアメリカ ―20世紀前半/さらに日本を研究するアメリカ―占領期・戦後/バブル経済からマンガ・アニメの国へ―80年代から2000年代

5 Nippon Invisible―日本研究・資料の現状
 2008年=1930年説?/日本研究の“退潮傾向”/デジタル化されない日本/日本を学ぶのは誰か―学際化・グローバル化/「引退」ではなく「卒業」?

■インタビュー(2)「韓国の歴史を研究する人も、日本語の資料が必要」

第2部 日本語の本はどのように情報化され、アクセスされるのか

6 収集されるニッポン―収書・選書
 どう買うのか―収書/どう選ぶのか―選書/どう支払うのか/日本出版貿易(JPT)/送られるものと欲しいものの間―寄贈/日本美術カタログ収集プロジェクト(JAC)

7 検索可能なニッポン―書誌・目録
 書誌・目録がなければ始まらない/CJKをデータ化する/図書情報のライフライン・OCLC/OCLC、CJK対応への道/コピペされるニッポン―日本からの書誌提供/郷に入り郷に従う―日本語書誌の“北米化”/ヨーロッパとNACSIS-CAT/英国CATプロジェクト/欧州和書総合目録/自立した協力体制としての講習

8 お取り寄せされるニッポン―ILL
 Interlibrary Loan―ILLとは/敷居が高かったニッポン/仕組み化されるILL―CULCONとGIF/早稲田大学図書館の海外ILL受付/国立国会図書館の遠隔複写サービス/“システム”、“システム外”、そしてe-resourceへ

9 アクセスされるニッポン―e-resource
 CD-ROMが動かない/オンラインが契約できない/ユーザが自由に使えない/Digital Resources Committee(DRC)/コンソーシアム/「JapanKnowledge」/世界にひろがる「JapanKnowledge」/e- resource整備は日本の問題

10 クールなニッポン―マンガ・アニメ
 世界が愛するマンガ・アニメ/大学・研究図書館でのマンガ・アニメ/オハイオ州立大学のマンガ・コレクション―Billy Ireland Cartoon Library and Museum/どう書きあらわすのか―マンガの書誌・目録/どう選ぶのか―マンガの選書/“クール・ジャパン”のその先にあるもの

■インタビュー(3)「日本の高校には貴重な資料が眠っている」

第3部 日本語の本をどのように世界に発信していくか

11 日本からのサポート―専門機関 ほか
 1.国際日本文化研究センター
 日本研究のための“センター”/“外書”と図書館/データベースと海外の日本資料
 2.国際交流基金
 国際交流基金(Japan Foundation)の海外協力活動/海外拠点と図書館/パリ日本文化会館図書館
 3.国際文化会館
 国際文化会館と図書室/“窓口”と“つながり”の場
 4.研修事業
 「日本専門家ワークショップ」(日本研究司書研修・日本研究情報専門家研修)/天理古典籍ワークショップ―研修の効果

12 情報発信を考えるヒント
 Maureen Donovanさんが実践する情報発信/wikiを活用して情報を編む/社史wiki/メインストリームに流す・つながる/情報発信で何を変えたいのか/考えるヒント集/笠間書院/ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」 /リブヨ/NIHONGO eな(いいな)/カーリル・レシピ/宮城資料ネットニュース/WINE(早稲田大学OPAC)/「評価を高めたテロ事件への対応」(『未来をつくる図書館 : ニューヨークからの報告』 菅谷明子)/saveMLAK/(短信)海外日本研究と図書館

●付録 海外の日本研究・日本図書館についてのパスファインダー

あとがき 索引