当ブログの書き手である石田豊(享年54歳)は、2009年6月20日午前2時30分、逝去いたしました。 生前の皆様の御厚誼を深謝し、謹んでここに報告致します。
(ポット出版)

2009-04-28

[003]明示的には禁止だが

せっかく編集部に復活の処理をしていただいたのにもかかわらず、のっけから空白の日々が続いてしまった。実は病院でつかっているマックの具合が悪くなってにっちもさっちもいかなくなってしまっていた。

病室では明示的にはPCならびに携帯電話の使用は禁止されている。というより「あらゆる電化製品の使用」が原則禁止になっているとみなせるようなマニュアルになっている。が、現実には、多くのベッドにノートPCがあるし、ほとんどの入院患者が携帯電話をマナーモードで電源ONにしている。現実的にこういう機器の電源が入っていることのリスクは病棟によって大きく変わってくるのだろう。循環器関連の病棟ではケータイはどうも……ということになっているのかもしれない。ぼくのいる呼吸器外科病棟では、看護士長が病床にLANケーブルが配備されてるべきでしょうな、キョウビなどと小声で言っているくらいである。

ぼくは、そういう時代の潮流を利用させてもらって、マックをベッドに持ち込み、最低限の仕事のチェックを毎日行っていた。通信に使っているのはサルのマークのEモバイルだが、速度は遅いけど、実用上、今のところ不満はない。

先日、どうしてもWindows環境を使わねばならぬことになり、じゃあ、いっそのこと、デュアルブートで両方とも起動しちゃえるようにしようと、いうことになった。ここでぼくにはひとつの誤解があった。ぼくの使っているMacBookは購入時点でのOSは10.4だと思っていた(だから10.5のディスクは後から購入したものだ、と)。しかし、それは別のマシンのことであって、ぼくのは買ったときから10.5であったのだ(だからOSのディスクは製品についていたもの)。そのところを完全に誤解していた。だからアップデートのためには、パッケージ判のOSセットを持参してきてあった(バンドル判はぼくの書斎のどこかにあって、ぼく自身が退院して探索しないことには発見はほぼ絶望視されている)。

マックからデータをTimeMachine(バックアップソフト名)を使ってバックアップし、データを消してOSをインスト。その順番を考えていたのだが、何の必然があってか、どう考えてもわからないのだが、ぼくのマックでパッケージ判のOS DVDを使おうとすると、不適切なディスクであるなんて吠えて、どうしても先へすすめない。OSを消しちゃった時点(役立たず)で、前にも後ろにも進めなくなってしまったのである。バンドル判のものを自宅からピックアップしてくるのは退院が前提となり、現実的ではない。そこで、しかたがないからスタッフに渋谷のApple Storeに行って、対策を聞いてきてもらった。

イシダさんらっきーです。3,4日で使えるDVDを郵送で送ってくれるんですって。しかもお値段たったのセンエン。ま、3日なら、ビョーキというシチュエーションの中では、十二分に待てる期間である。ちょうど週末はさみでもあることだし、PCレスでこれからの方針をじっくり考えようか……、なんてことを思ったりした。しかし、クチではホンマに4日で来るんか? アップルが言ってることだぞ。と報告者に軽くイアツをかけておいた。

彼女はイアツが気になったんでしょう。週明けの今日、念のためにアップルに確認の電話を入れたという。そしたらやっぱり、DVDがウチに届くまでの日数は2~3週間(デイじゃなくウィークよ)!!

「金曜日は4日とおっしゃってたじゃない」「あ、それはそう言ったものの間違いですね」
「なんでそんなにかかるの」「なにしろ海外からの発送になりますから」

ぼくはマックが好きだ。1985年にはじめて触って以来20年余。正直に告白すると、ずっと好きであり続けてきたし、ずっと使い続けてきた。ライターとして書いた、このコンピュータを礼賛する記事、使い方を説明する記事の量はハンパじゃない。ユーザとして背中に藻が生えてしまってきているので、昔みたいに礼賛を篤くブチあげたりすることはないが、愛する気持ちに根本的な変化はない。すきやねん。

だからこそ言うのであるが、トラブル解消まで、あいや、20日間、お待ちくだされ! これって、要するに「頼むからウチの製品を使わないでくれ。お願いだからWindowsで何とかしてはくれまいか」との懇願でしかない。

わざわざ海外から消耗品を発送するというロジスティックスをとり続けるのも、顧客の利益なんか考慮に値しないと見なしているからで、Mac購入時にシツコクシツコク毎回個人情報を入力させてるわけだから、こんなものは電話1本で翌日届けるなんてことは決して難しいことでもなんでもないのである。

実に不愉快である。

で。思い返してみると、この「感じ」は今はじまったものじゃなく、この25年間、折に触れて気になっていたことでもある。コンピュータとして見れば、贔屓目なしにMacはたいへん優れていると思う。にもかかわらず、シェアをジリジリ落とし続けている理由は、ぼくはこのあたりにあるのではないか、とずっと思ってきた。同じようなことを言う人も決して少なくない。ブツそのものや、製品の本質はすばらしいのだが、こうした周辺の「どうでもいいこと」がことごとく不愉快のタネになる。しかも、それをかれらは「どっかエバった」対応で処理しようとするのである。

なんだかモッタイナイなあ。

製品の本筋がダメなら、その修復には多大なコストもかかるだろう(そもそもムリかもしんない)。でもそうじゃないわけだ。その昔の江本の言い草を借りるなら、選手はちゃんとやっているのに、フロントがアホやから野球ができない、という状態だ。

こういうのって、どうすればいいのだろうか。いや、何もアップルの経営について論考したい訳でもなんでもない。我が社の問題である。

再発、入院前後から、不思議なことに弊社の売り上げが急速に落ち込んでいる。月によっては昨年対比50%減なんてびっくりの成績である。

ここでつい先日告白するまで、対外的にはぼくが病気になったことも、またそれにともなって必然的に戦力が落ちていることも、ほとんど公表していない。ウチは通販業者で、この期間の商品数の増減もなかったから、表面的にはぼくの不在とか、それにともなう戦力のダウン、心配事の増大なんてことは糊塗されているように思うのだが、違うんだな。お客様にはなぜか見通されているのである(だって、そういうことでしょ)。

ここのところ、ずっとその理由が知りたいと思い続けている。願わくば、われわれのビジネスの本筋じゃないところでの齟齬であればいいのだが……