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[第16章●天国への階段]
4… 扱い品目はどうするか
[2005.04.17登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

前に書いたように、ぼくたちがネットショップを始めようと思ったのは、シゴトとしてネットショップオーナーの取材を何度かしたことが契機になっています。

これは「店」をはじめるにあたっては最悪の動機といえましょう。商売は「売るもの」が先にあるのが順当で、売るものも決まらないのに「店」だけが先行するのは、カタチとして、どうもよろしくない。ライター稼業でいえば、まず「ライターになりたい」と思ってから(あるいは「ライターです」と宣言してから)文章を書き始めるようなもんで、あまり筋がいいとは言えないでしょう。

しかし、事実はそうなんだから仕方がない。

ただ、「自社製品」を持つということだけは最初から決めていました。オリジナルの商品をラインナップの中に含めるという方針です。自社製品と自社製品と仕入れ品を組み合わせた商品構成にしたいということだけは、最初に思いついたときから決めていた方針です。

別段なんかの理論があってのことでもありません。そうしたかった、というか、店って、そうあるべきでしょうと思っていたというだけのことです。ま、強いて言うなら、価格決定権を持ちたかったということでしょう。

ライター仕事には、実は価格決定権はそうありません。先方から指定の金額でやるかやらないかを決めるだけです。おもえば、そういう暮らしを長く続けてきたので、店をやるんなら価格決定権を持ちたいと熱望したのでしょう。

そのことだけは決めていました。しかし、その時点では、具体的に何を扱うかは決めてませんでした。

常識的に考えれば、繰り返し消費される性質の商品を選ぶのが、もっともいい戦略だと言えます。ネットであろうと実際の店舗であろうと、もっとも難しいのが新規顧客の開拓です。新しいお客さんを獲得するのには、エネルギーもコストもずいぶんかかる。

反面、お得意さん相手の商売は誠実にやっていけばなんとかなりそうです。そのためには、いったん信用してくれたお客さんが、定期的に継続購入してくれるような商品を扱うべきだ、と。

具体的には食品とか洗剤とか。

しかし、こういうたぐいの商品に関しては、ぼくは知識も経験もないし、思い入れもない。目が利かないわけです。まだ開店もしていないのに生意気なことを言うようですが、けっきょく、ネットショップといっても(ほかの商売と同じく)、売るものは「自分自身」でしかないように思うのです。たとえば「関サバ」の仕入れルートを開拓して、それを売ったとしても、それはあくまで「単なる関サバ」にすぎず、それを石田豊(なり若松屋)を通して買うという意味はまったくでてこない。それじゃ、あかんのやないか。

ぼくはそう考えたわけです。じゃあ、自分自身が出せるものってなんだろう。自ずと扱えるものはしぼられてきます。というより、始めると決めたときから、実は漠然とそれを考えていた。ただ、アイテム数が少ないので、はたして店としてのカッコがつくかなあという疑問というか逡巡があっただけだったのです。

その商品とは「読書グッズ」です。小学生の時分から、ぼくの最大の楽しみは本を読むことでした。だからというわけでもないですが、本を読むということについてはずいぶん考えてもきましたし、原稿にもしてきました。ある程度は「目が利く」わけです。といっても本自体の販売には、ぼくはそう魅力は感じません。立派な書店は無数にあるし、すばらしい古本屋もたくさんあります。今更ジュンク堂やアマゾン、石神井書林と戦っていく自信なんか持ちようもありません。

それに、すべての本が扱えない以上、なんらかのかたちで「選書」しなければなりません。それは本意じゃない。本なんか、何を読んだっていいんです。読む人の勝手。ぼくの考える「店」は自分たちが自信を持ってすすめられるものだけを置くということが基本戦略になるはずですから、本は、そうした戦略の元では扱いにくい商品だと思うのです。だから、本屋をやるつもりは毛頭なかった。だいいち、利益率が低すぎる。

いっぽう、読書グッズといいましょうか、快適な読書時間を支援するための用品類を扱う店ならどうでしょう。

ここでも書きましたし、またほかでも前から言い続けていることですが、なんでそのような店がないのか、ぼくは長年疑問であったわけです。大型書店でもレジ周りに申し訳のように置いてある程度。本を読むときに使えば、もっと快適な時間を過ごせるのにと思うような商品は多少存在しています。それらを集めた「本の周辺機器の専門店」はいかがであろうか、と。

書店は全国に1万2千軒くらいあります。でも本グッズの専門店は寡聞にして知らない。ここがいいんじゃないかなあ、と。

なんだか、あまりにも「快適な読書環境を作る」ということがいままでないがしろにされてきたように思うのです。それはもしかしたら「読書の権威主義」みたいなところとどっかでつながっているのかもしれません。

いわずもがなではありますが、本を読んだら賢くなるなんてことは妄想です。そりゃ、賢くなることもありましょう。でも釣りをしてもガーデニングをしても、同じように賢くなるのとまったく同じです。現に、平均の数倍は本を読み続けてきたぼくがこのていたらくでありますので、人体実験で実証されているというようなもんです。本を読めば高潔な人格者になれるというのもデマであります。それは松沢呉一氏が身を持って証明されております。氏はぼくの数倍は本を読んでいるでしょうが、ヘンタイを自称されております。

でも、読書はなんだか「いいもの」「すばらしいもの」「ほかとは違うもの」というような地位を与えられており、その反動として「楽に本をよむ方法」なんて発想が忌避されてきたんじゃないか。これを使えば目も腰もラクでっせ、なんていうと「貴様、読書をなんと心得る!」なんておこられたんじゃないかな、と。

探すと、世の中にはかなりの数の快適読書支援グッズがあります。それらの中から、実際に自分たちで試してみて、ほんとに効果的なものだけを集めて売る店なら、なんとか存立の余地はでてくるんじゃないか。そのように考えました。

で、店の名前は「快読ショップYOMUPARA」としました(ずいぶんベタではありますが)。YOMUPARAとは「ほん読む人のパラダイス」っていう惹句から来ているわけで、もっぱら本をよむ時間や空間を快適にするというコンセプトの商品を扱っていくつもりにしています。このシリーズの名前が「天国への階段」であったことに、不審を感じてらした方もおられるかもしれませんが、ここんところの掛詞でありました。すんません。

現在までに集めてきた商品は、たったの10アイテム。色変わりなどをいれても30点ほどしかありません。吉野屋じゃないんだから、これではちょっと少なすぎるのですが、開店までに準備が整うのは、よくってもあとプラス2アイテムくらいです。10アイテムの中の3アイテムは自社製品。ウチで開発した商品です。

んなことするから、ますます忙しくなるんですね。なんども試作品を作り、なんども仕様変更をし、これは実にタイヘンでした。ぼくはいままでパソコンライターとして数々の製品のレビューを書いてきたのですが、その中でさんざん「残念ながら完成度の点では疑問を感じざるをえない」とかなんとか。お役目とはいえ、人として惻隠の情にかけることをしてきたのかもしれません。メーカーは、メーカーであるだけでエラいもんや、と思いました。

ずいぶん前にも書きましたが、ぼくは極端に疲れたり体調不良に陥ったりすると、リンパ腺が腫れる体質なんですが、あんのじょう、昨日から鼠蹊部のリンパ節が腫れてしまってます。うーむ。ついに臨界点を超えてしまったんですね。ま、準備はおおむね完了したのではありますが。

自業自得であります。

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たけながさんより
ご意見いただきました

[2005-04-21]

やっぱりそうきましたか

どんな商品がならぶのか、たのしみにしてます。

空木 茜さんより
ご意見いただきました

[2005-05-13]

拡大読書機

石田さま 先日メールをいただきまして、読書グッズが何かあるかと考えていました。高齢化社会では小さな活字はだめなんですよねー。図書館ではそんな方へ拡大鏡を貸していますが、拡大読書機というのもあるんですよ。TV画面状に、本の活字にスキャナーをあてて拡大文字を写すものです。これの家庭版をつくったらいいかも。思い付きですが。         うつぎ

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