2009-10-25

追悼、イプセンのマスター

ninngyou.jpg新宿二丁目に最初のゲイバーを開店したイプセンのマスターがお亡くなりになりました。享年百歳。1909年(明治42年)生まれでした。

1953年(昭和26年)に新宿二丁目(現在の新宿三丁目)に喫茶店イプセンを出店し、それがゲイバーとして集客するようになり、周囲に蘭屋、シレなどのゲイバーが競うように開業した。昭和33年の売春防止法により、現在の二丁目サイドに遊郭の灯が消え、そこに多数のゲイバーが出店することになり、今のようなゲイの街、新宿二丁目が形成された(伏見憲明の聴き取り調査による)。

イプセンは八十年代末まで営業を続け、その後マスターは新宿で独り暮らしの隠居生活に入り、この八月、百歳の誕生日を迎えたものの体調を崩し、10月22日に鬼籍に入られた。最後まで独立自尊の人生で、他人に寄り掛かることなく、シングルであることを見事まっとうされた。

ゲイの街としての新宿二丁目の出現は、彼が伊勢丹の裏に念願だった喫茶店を開業した偶然によるところが多く、イプセンの成功なしには現在のようなことにはならなかったかもしれない。イプセン以前にも銀座にはかの有名なブランスウィックが、また新宿駅前近くには夜曲というゲイバーがあったが、ゲイバー街が形成されるには、さまざまな偶然が重なり合う必要があったのだろう。

イプセンのマスターには、伏見が以前に著わした日本のゲイの歴史「ゲイの考古学」に多くの協力をいただき、また最近ではゲイバーの先達としてエフメゾにもアドバイスをくださり、個人的にも大いにお世話になっていた。

新宿二丁目に勇気を与えられたものの一人として、この偉大なマスターに心よりの感謝を捧げ、ご冥福を祈るため、今週10/28(水)のエフメゾでお別れのスピーチをするつもりだ。二丁目を愛する人たちに、最初の二丁目のマスターがどんなに素敵だったか、そして「最古のゲイ」と言っていい人生が、どんなにすばらしい百年だったかを話してみたい。

*写真は往年のイプセンの店内