2008-10-27

石井政之『顔面バカ一代』


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● 石井政之『顔面バカ一代―アザをもつジャーナリスト (講談社文庫)

★★★★★ 美醜の問題を考える上で、もはや古典ともいえる作品

*単行本版のタイトルは『顔面漂流記―アザをもつジャーナリスト

衝撃的な本である。そして、名著として評価されるべき内容の作品でもある。

衝撃的というのは、顔にアザを持って生まれた一人の青年が、そのことによってどれほど心に深い傷を受けてきたかを赤裸々に綴ったという意味で、これまでにあまり類のない告白であるということ。

著者は単純性血管腫という病気で、生まれつき顔面に赤アザを持っていた。幼児のときにドライアイス療法というのを受けるが、アザは消えることなく残った。そして顔面に「障害」を持つものの多くが「体験」するように、子供時代にはイジメを受ける。思春期以後、コンプレックスに打ち勝とうと勉強に専念したり、身体を鍛えたり、アザを隠すメイクを施してみたりと、さまざまなことを試みるが、心の平安はやってこなかった。成人してさえ、見知らぬ子供たちにも侮蔑的な言葉を投げ付けられる人生。

本書はそういう「ハンディ」を抱えた著者の切実な自分探しの旅であり、闘いの記録でもある。

また、著者は同じ「障害」を抱えた人たちを国境を越えて訪ね対話をし、歴史と書物の中でアザを持つ人々がどのように扱われてきたのか取り上げ、ハンセン病の人たちと問題を共有しようと四国遍路に身を投じ…それこそあらゆる角度から、顔にアザがある人生の意味を検証する。

そして、この本が確かに名著だと言えるのは、筆者が自分の問題を「ふつう」の人々の問題意識に接続することに成功している点である。人間にとって顔は何を意味しているのか、美醜とは何か、あるいは美という価値観自体が危険なものではないか。読み手は自分自身の価値観を揺さぶられながら、答えの出ないところで自問させられる。

そのとまどいや揺らぎの中でのみ、マジョリティはマイノリティと繋がることができるだろう。そしてそうした瞬間を可能にした著者は、すでにアザに支配された人生ではなく、アザを沃土にした人生を歩んでいると断言できる。

*初出/共同通信→福井新聞(1999.5.16)ほか