2008-12-21

田中美津『いのちのイメージトレーニング』


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● 田中美津『いのちのイメージトレーニング (新潮文庫)

★★★★ この人の言葉には言霊があります

『いのちのイメージトレーニング』は、ちっぽけでいながら至上のものである「私」、という人生を、いかに喜びに満ちて生ききるかを思索した本である。

著者の田中美津は、70年代初頭のウーマンリブ運動の旗手として活躍。「それから大しておもしろくもない活動でさらにエネルギーが奪われて……もととも弱かった私のからだは一層ヨレヨレになってしまって……『もはやこれまで』と思うに至ってメキシコへ」。

4年の滞在を経て、帰国後、鍼灸師になる。そして、近年、イメージトレーニングと出会い、自らインストラクターも始めるようになった。

イメトレは田中にとって救いだった。幼い頃の「チャイルド・セクシュアル・アビュース」(幼児への性的虐待)の傷は実は過去のものになっていなかったからだ。「ウーマンリブは私をペケから救ってくれた……自分の過去を話しても去っていかない友を得た……あれは整理済みの過去。傷口だってとうに乾いている。そう思いたかったけど……そうじゃなかった」。45歳で生涯何度目かの恋をした田中は、「ある日ふと部屋を見わたしてギョッ、家具がない……好きな男と座るにピッタリのイスがない……なんてこった!……ヘンな話だけど、この地球上の日本という国に実際住んでいるくせに『この星は私の星じゃない』と、小学生の頃から私はひそかに思い続けてきたのです。いつだって居場所がなかった。ウーマンリブしてた頃も、鍼灸師になってからも、ね」。

田中は、無意識下の「泣いている子供」の自分に「ダイジョーぶだよ」という癒しの声を届けることができるイメトレを始めることで、「生きていることが楽しくなる、好きになる」。イメトレはこうなったらうれしい自分、うれしい事態、を先取りしてイメージする自己催眠。それによって、心から、からだをもポジティブにしていく方法だという。

イメトレは誰にとっても効果を上げられるのかどうかはわからない。しかし、己の「チャイルド・セクシュアル・アビュース」の傷を、運動に専念することで乗り越えようと苦闘し、その後もさまざまな経験を経た末にそこにたどり着いた彼女の言葉は深い。それは、たぶんその方法論以上に、読み手の心を癒してくれる。

「チャイルド・セクシュアル・アビュース」の問題は日本でもやっと語られ始めた。それが存在することすら隠蔽されてきた暴力に対して、当事者はなんの助けも得られないままに傷を深めてきたのだ。そうした人々へのアプローチとしてフェミニスト・カウンセリングの立場から書かれた本に『あなたが悪いのではない―子ども時代に性的虐待を受けた女性たちをカウンセリングする』(木犀社)がある。心の深いところで複雑に絡まってしまった糸を解きほぐすのは、容易ではない。自ら体験者であり、これまでカナダで多くのクライアントと接してきた著者の言葉は、これまた説得力をもって読み手に迫ってくる。オーソドックスなカウンセリング理論書として最良。

*初出/現代性教育研究月報 1997.5