2008-12-05

岩村匠『性別不問。』


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● 岩村匠『性別不問。―「性同一性障害」という人生』(成甲書房)

★★★ 性同一性障害のカミングアウト本が同性愛者のそれよりも出版点数が多いのはなぜ?

もし朝目覚めて、男性であるあなたの股間から、あるべきものが消えていたら? もし女性であるあなたのおっぱいがしぼんで、あるはずのないペニスがついていたら? 本書を読むと、「性同一性障害」の人たちの苦悩というのは、そういう根源的な身体感覚にあることが、おぼろげながらわかってくる。

『性別不問。』の著者、岩村匠は、女性のからだに生まれたにもかかわらず、女性であることに馴染めず、ずっと心の性別とからだのそれとの不一致に悩んできた。岩村は子供の頃から女性の性役割に強い抵抗感を抱き、思春期になると、女の子のことを好きになる自分を、レズビアンではないかと後ろめたく思うようになった。

長じて、同性愛を受け入れられるようになっても、レズビアンという名付けにも納得がいかず、ある時、自分が女性として女性を好きになっているのではないこと、つまり同性愛者でないことをはっきりと覚る。岩村は、男性として女性が好きだったのだ!

「かつて跳べないノミだった僕がどのようにして思い込みを捨て、跳べるノミに変身することができたのか」。著者は「性同一性障害」という体験談を読者に語りたいのではない。その「経験」を通じて得た、自己と社会の限界を超えていくための心構えをメッセージしようとしている。

実際、彼の言葉には、修羅場をくぐり抜けてきただけの深みがある。「環境が悪いことより、環境に居心地の悪さを感じていたにもかかわらず、問題から目をそらし続けたことのほうが、人格形成に与えた影響は大きかった」。マイノリティであることに居直らない、開けた視座があるのもいい。

本書の醍醐味は、こうした著者の自身への問い直しに寄り添いながら、社会のせいにも、個人の問題にも還元できない、生きていくことのままならなさを、共感することにあるのかもしれない。

*初出/福島新報(2003.11.22)ほか