2008-10-25

小浜逸郎『「弱者」とは誰か』


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● 小浜逸郎『「弱者」とはだれか (PHP新書)』(PHP新書)

★★★★★ 差別や反差別運動を考える上での必読書

 これは、被差別者でもマイノリティでもない、「私」としての著者が、「弱者」を取り巻く問題に正面から向かい合った一冊である。

 小浜はこの本の主題を「いわゆる『弱者』や『マイノリティ』への配慮のあり方について」だとしている。そしてそういった社会的な認知を受けた人々が「自分たちの問題について語る『聖なる特権』を得……逆に、その認知を受けない他の人々は、その領域に踏み込むことに対して、不要な恐れ(畏れ)を抱くようになる」構造に、鋭く批判のメスを入れる。

 この問題はまさに、現在という時代にその種の「運動」がぶつかっている壁であり、「運動」を停滞させている原因だとも言える。差別問題として認知されることと引き換えに、その領域が「アンタッチャブル」なものとなり、かえって当事者と他者との溝を深めてしまう。そして差別・抑圧の枠組みはそのままに、過剰な報道の自主規制や「ことさらな言挙げ」だけが、繰り返されていく。「運動」の当事者もそれに寄り掛かることで、甘ったれた気分にすくわれてしまう。

 小浜はそういった「遠慮の構造」がどのような心理から生みだされるのかを具体的な事例から分析し、差別のメカニズムを論理的に、個別的に詳らかにしていく。そして、それらを乗り越えていくための視点をも提示する。

 私は本書を被差別者の「運動」にかかわってきたひとりとして読んだが、率直に言って、学ぶ点が多かった。もっと言って、「運動」の当事者として、小浜の思索に叶う言葉を紡ぎだす努力を怠ってきた自分を恥じた。

 いま「運動」がすべきことは、この議論を無視したり、小浜を意味もなく「多数派」のレッテルとともに排撃することではないだろう。ここで与えられた緊張を自分たちの生と試みに活かすこと。それだけが、勇気をもって「向こう側」から言葉を投げ掛けている著者に対する誠実な応答と言うものではないか。

*初出/共同通信→愛媛新聞(1999.9.5)ほか