2009-05-09

対談「中年オカマと淫乱女の友情」

DSCN0215.JPG対談「中年オカマと女の友情ーー四十路はいろんなことがありますの巻き」
伏見憲明 × R子

R子プロフィール/昼はキャリアウーマン、夜はど淫乱女として「世界を股に入れて活躍」。性のジャパニーズ・テクノロジーと各国で絶賛される。最近まで中国大陸、パラオなどで働く。現在、シングル生活を謳歌しつつ、子育て中。
ノリ江ママの本では、木村薫子の名前で対談に登場し、自らのブス人生を赤裸々に語っている。←『性という饗宴』に収録

この対談は久しぶりに再会した中年二人組の近況報告。オカマと女の友情はそこそこ毒づきながら続いているのであった。ただし、あまり内容はないのでご了承のほど(笑)。

● 鹿のチンポコの買い付け

ママ/R子さん、なんでも今回上京したのは、鹿の睾丸を買い付けに中国に行くため、とか?(笑)

R子/睾丸じゃなくて、鹿のチンポコそのものを乾燥させたものを買いに行くのよ。強壮剤としていいらしいんだけど、それが女にもスゴイ効くっていうからさ。男の場合は、高校生のチンポコくらい元気になって、飲んで一週間は、ちょっとした刺激だけでビンビンになるんだって!

ママ/あら、うらやましい。あたし、ビンビンって田原俊彦くらい懐かしい響きだわ。あんたも、40代になって人生紆余曲折して大変だったから、ここらでマンコにも気合いを入れようってわけね。でも、あんたみたいなど淫乱が、40歳すぎてまた高校生みたいな性欲になったら、モンモンとしてかえってヤバいんじゃないの?

R 子/失礼ね、あたしの高校時代なんてかわいいもんよ。男にマンコを手で触らせることはあっても、チンコは絶対に入れさせなかったくらいで、身持ちかたかったのよ。あたし、推薦で一流私大に入学したくらい真面目だったからね。ヤバくなったのは、大学卒業したあたり(笑)。あの頃は頭の上に性欲の塊がぶら下がっているみたいだったよね。

ママ/そうね、いつもしょうもないチンコを拾い食いしてたよね。でもよかったじゃない、ふたたび性欲にまで気が回るくらい元気になったのは。だって、あんたってここんところ、次々とんでもない災難に見舞われて、散々だったでしょ。厄とかってやっぱあるのかしらね、40歳前後って急に変わるようね。あたしもさ、ここ数年、いろんな意味でボロボロよ。体調は悪いし、心は疲れ切っているし。もう満身創痍。で、あんたの運の尽きは何だったの?

● R子、上海で女社長に

R子/あたしね、上海で小さな会社を経営していたんだけど、去年、一千万円強の詐欺に遭ったのよ。

ママ/えぇ、あんたみたいな用心深い人が!?

R子/そいつは日本人の、札付きのペテン師野郎で、詐欺が発覚して追求しても、だらだらだらだらウソをつかれるばかりで、いまだ800万円くらいが返済されていないの。刑務所に入れたらもう金は一銭も返ってこないから、被害にあった連中はみんな、そいつを訴えることもなく野放しにしているんだ。

ママ/でもあんたの会社はすごくはぶりが良かったんでしょ?

R子/そうなのよ。一夏で利益だけで一千万円くらいあったの。どんぶり勘定の商売で、いったい何をどれだけ使ったのかを考えられないほど忙しかったんだけど。

ママ/成功したってことじゃない!

R子/でも、あたしがずっとついていないと回らない商売だったの。だから自分の許容量以上には成長できない事業。いってみれば芸能人みたいなもので、あたしが雇った人たちというのは、あたしをサポートするマネージャー役ってわけ。

ママ/いつのまにか出世していたのねえ。だって、あんたって最初に大陸に渡ったときは、新聞のチラシで見つけた求人で、たしかカラオケバーのママ採用だったでしょ?(笑) 北京の夜の街で、海千山千の中国人女子を猛獣使いのように働かせていたんだよね。

R子/そう、北京で最初はカラオケバーのママをやって、それから日本人向けのアパートを営業する仕事に転職。その後、北京の某一流ホテルの営業職にステップアップ。次に上海に移って広告の営業の仕事をして、その延長線上で自分の会社をはじめたの。

ママ/いったいどんな商売していたのよ。べつに売春組織の元締めってわけでもないんでしょ?(笑)

R子/雑誌の広告代理業務をやったり、商品の開発や販売の企画を企業と組んでやったり……というのを何社とも提携してやっていたの。それぞれの企業は社員を増やしたらそれだけ固定的な支出が増えてしまうので、商品企画ごとにあたしを社員のような立場で関わらせるわけ。

ママ/ほー、そんなことやってたんだあ。まあ、あんた、夜はただの淫乱とはいえ、もともとは日本でも一流企業社員だったしね。関西で暴力団の事務所に商品を押し売りして、その営業力を認められて東京栄転した実績があるくらいだから。でもそんなふうにぶいぶい言わせていたのに、何が失敗のもとだったの?

R子/あんまり忙しくて営業に力が注げなくて、気がついたらある月からの先の仕事が入ってない状態になっていたの。そのときにふたりばかり雇っていたんで、はたと困って、つい、人に投資して毎月利益を得る、っていう美味しい話に乗ってしまったのよ。よくある詐欺ね。

● 儲かる仕事は詐欺まがい

ママ/あんたって、いままで人を騙したことはあっても騙されたことなんてなかったのにねえ。でもさ、一千万円の詐欺に遭ったといっても、それだけ儲かっていたんなら、そんなに致命傷ってわけでもなかったんじゃない?

R子/すぐに生活に困るわけではなかったけど……たぶん、失敗が少ない人生を送ってきたからショックだったんじゃないかなあ。

ママ/でも、商売なんだからそれくらいの浮き沈みはあってもアリでしょう。なんであんなに心を病むようなことになったのだろうか、と。あんたって強靭な精神の持ち主だし、体育会出身で体力も根性もあるし……。

R 子/いまの中国での広告とかマーケティングの仕事って、ある意味、人にふっかけてぼったくりしているみたいなものなのよ。商売とはいえ、詐欺な感じもあるの。そういうことをずっと続けていたら、このあたしにしても(笑)罪の意識が溜まっていったのね。「もうあたしギリギリまであこぎなことしてる。あと少しで罰当たる……」って。

ママ/それってそんなにあこぎなことなの? 商売って多かれ少なかれ、人を騙してなんぼの行為でしょ。

R子/たしかに商売ってそういうもんでもあるんだけど、それをどこまで受け入れられるのかはその人の許容量にもよるのよ。あたし、それまでキレイなものしか売ってことなかったからね。マンションやホテルの営業って、買った人にもそれなりに見返りもあるわけだけど、広告って、それを打っただけのものが返ってこないことが多いのよ。顧客に大損させることもある。

ママ/だけど、日本の電通とか博報堂とかもそういううさんくさい商売であそこまでになったんでしょ?

R子/株屋とかもそうだよね。

ママ/ということは、あんたはそういうビジネスを展開していくには小心者だったわけか。それは意外ね(笑)。

R子/実は良心があったのよ!

ママ/まあね、それまであんたが売ったもので一番汚いのは自分のからだだからね。

R子/あれは売ったんじゃなくて売られたの! 女友だちが「女二人と男四人の複数プレイに参加しない?」って誘うから参加したんだけど、あとでそこに参加した男から聞いたところによると、オーガナイズしたその女が、男たちからはかなりの額を巻き上げていたのよ。あたしなんてルームサービスのサンドウィッチごちそうになっただけなんだよ!

ママ/ホント、安いマンコだよね(笑)。それはともかく、あんたって関西人のがめつさがあって、商売には向いていると思っていたけど、そうでもなかったんだ。

R子/あぶく銭がどっさり入る商売ってね、やっぱ絶対に騙しが入っているのよ。誰かうかうかと金を出している人がいて、その人が損をさせられている。そういう大きな金の動きは得意じゃなかったんだね。

ママ/小さな金の出し入れは好きだけど(笑)。商人気質でも、資本主義の人ではなかったんだ。

R子/そうそう。セコセコしたことはホント好きなんだけどねえ。

ママ/下半身は巨マンだけど、巨万の富のほうに縁がないんだね(笑)。

R子/こつこつ貯めろってことよね。

ママ/でも借金にはならなかったわけだよね。としたら、失ったものは、自分のアイデンティティみたいもの?

R子/あと、やっぱ、罰があたったのかな。

ママ/あんたも意外といい人だったんだー。

● 上海からパラオ、過労で大怪我

ママ/でも、いま回復してよかったけど、一時、あんたが鬱病になってしまったのはショックだったわよ。財布の面でも心の面でも、あんたのこと頼ってたんだよね、あたし。こっちから上海に電話しても、何か言うことがヘンだし、うつろな声だし……正直、もう駄目かと思った。

R 子/あれは反応性精神障害。すごくショックなことがあったときに、一時的に精神錯乱になるの。ふつう一ヶ月くらいで治るんだけど、そのままパニック障害や鬱病になってしまう人もいるの。だけど、あたしの場合は、しばらくして完全に治ったんだ。

ママ/いやあ、あんたみたいな殺しても死なないような人でも折れてしまうんだ…と思ったら、こっちがアイデンティティ・クライシスに陥ったわよ。最近、やたら心の病になってしまう友人、知人が多いのだけど、R子までそうなってしまうんだ、と思ったら、自分自身に自信がなくなって落ち込んだわ。

R子/病になる前に、10月、11月に持病が悪化するって占いに出てたのよ。その年は新しい仕事をはじめたり、からだに無理をしてはいけないって書かれていたんだけど、ものすごく売れっ子だったからひどく無理をしたの。夏だけで25カ所くらい中国中を仕事で旅して、朝昼晩と働いた。一人三役くらいこなして、夜帰って来てからメールとかもチェックするから、寝るのは夜中の2時、3時。土日はマッサージをしてもらっていたんだけど、からだが動かないほど過労がたまっていた。外国に住んでいるだけで緊張があるのに、中国みたいな警察国家だと、いつ誰かにやられるかみたいな警戒感をいつも抱いていて、安心できない状態が続いていたしね。

ママ/それで、詐欺にあったことがわかったときに、周りがみんなで自分を騙しているような被害妄想に陥ったんだ。

R子/あたしの持病って被害妄想だったんだよね。それを忘れていたのよ。

ママ/それはわかってたじゃない?(笑) あんたって昔から生理のときに猜疑心が強くなってたもん。

R子/大酒飲んでぐでんぐでんになっているときも、そういう傾向があったのよ。それをすっかり忘れていて、過労と警察国家に対する不安、あとそれまで仕事であたしに騙されていた人たちへの良心の呵責で、切れちゃったんだよね。詐欺が発覚して、不眠で弁護士を探し回ったり、自分でできるだけの対処をしたにもかかわらず、解決の糸口がまったく見えなかったこともあって、プチッと。

ママ/それであっさり上海で事業をすることは諦めて、自分の会社をたたんで、パラオに渡ったわけよね? それは何のお仕事で?

R子/それもホテルの営業。そういう仕事って、経験者だとけっこう求人があるのよね。実践ですぐに使える人ならどこにでも仕事はあるの。だけどね、あたし、そこに移ったはいいが、職場環境や上司とうまくいかなくて、すぐに首になるかなという状態になったのよ。でもせめて3ヶ月はがんばろうと思って働いていたの。週3回くらいは、夜中にお客さんを空港に迎えに行けなければならなかったり、レポートを寝ないで上げたりした。その上に、自分の子供を幼稚園に送るのに6時には起きなければならなかったりで、睡眠不足が重なってた。だけど、パラオは南国のパラダイスですごく気持ちがいいから、すごく疲労していたのに、週末は子供と海ではしゃいでいたの。いわゆる疲れマラ勃ち、みたない状態ね(笑)。それで、ある日、海で首の骨を折る大けがをしちゃったのよ。

ママ/いやーーー!!

● あわや重度障害に!?

ママ/でも、なんで海で首の骨なんて折るのよ。

R子/ボートで遊んでいて、いっしょに乗っていた人が飛び込んだのにつられてザブンっと行ったら、そこが浅瀬だったの。岩とかにぶつかったわけではないのだけど、砂底にぶつかって、首の骨が折れたんだ。当たった角度が悪かったのね、きっと。でもそのときはタンスに頭をぶつけたくらいの衝撃しかなくて、海から上がろうと思ったら、からだが浮かんでいかないの。それでおかしいなと思って水中で右手を見たら、ぶらんって垂れ下がって漂っていた。あれ、あたしは右手を動かしているはずなのに動いてない、おかしい、この手はいったいなに?って(笑)。遊体離脱かしらとも思って、あたし死んじゃったのかなあとも一瞬考えた。でも口に塩の味がするからまだ死んでないはずと、自分が息が出来ない状態で海中にうつぶせで浮かんでいるんだと理解したのね。実際、手と足が動かなかった。でもこのままだと呼吸ができないから死ぬな、水死した人たちはこんなふに死んでいったんだと思った。それから子供に「こんなところでママは死ぬことになって、ごめんね」と。

ママ/へえ、あんたにも一応そういう母性もあったんだ。それも驚きね。

R子/でもなんかと生きなければなあとも思ったんだけど、このまま海中に漂っていたら誰も見つけてくれないから、なんとか浮かんばないかなあともがいていたら、ふっと、飛び込む前に、太った男が腹を浮き輪にするように仰向けで浮かんでいた様子を思い出したのよ(笑)。そうしたら腰が動くことにも気づいて、くるっと回って腹を上向きにしたら、ふーっと浮くことができたわけ。

ママ/あんた、デブでよかったねえ。その出っ腹も無駄ではなかったんだ(笑)。

R子/それですぐに助けられたのよ。周囲からも一応もがいているようには見えていたみたいで、足がつくところでジタバタしているからヘンだと思って「どうしたの?」って同僚が来てくれた。で、「手足が動かないんだ」って伝えて、ボートを運ぶようにそっと波打ち際まで引き上げてもらって、それ以上は力をかけないと運べないから、それはまずかもしれないと思って、とりあえず「ここでいいから」ってしばらく寝たまま手足が動くのを待っていたの。「ごめんね、みんなに迷惑かけて」なんて言いながら試していたら、足がぴくぴくと動いた。「ああよかった、神経はつながっている」。次に、どうにか左手が動いた。でも右が動かない。あぁ、やばいかなあと焦りつつ、切れると嫌だからその場を動かさないようにしていてもらったの。それが後で考えたらよかったんだね。で、どうも頭が原因ではなくて首じゃないかってみんな疑い出して、後ろを人に支えてもらって動かそうとしたんだけど、首がずっしり重くて、これは病院にすぐに連れていかないといけない、ってことになった。

ママ/うわぁ……怖い……。

R子/それで首を固定してストレッチャーで運んでもらった。だから、折れている状態でほとんど動かさなかったから、それ以上にひどいことにはならなかったの。

ママ/そのときすでに骨が折れていたんだ。

R子/首の第5頸椎の脱臼骨折、およびからだの第5、6頸椎の正面の部分がパカッと縦に割れていている状態。

ママ/ひええぇ。

R子/それくらい骨がむちゃくちゃになっていて、神経の状態はそこではわからなかったの。その上、医療施設が整っていないからパラオでは手術もできない、って言われて(笑)日本にそのまま搬送されることになった。でも飛行機がないから翌日までその病院に置かれることになったんだけど、一晩中身動きができない上にひどい痺れに苦しんだ。なのに、パラオの病院の看護婦がぺちゃくちゃぺちゃくちゃおしゃべりしているわ、隣りのベッドで寝ていたおっさんは夜中に死ぬしで、もう嫌になっちゃったわよ(笑)。でもお見舞いにも来てくれた人に、気丈にも冗談かます余裕はあったんだけどね。

ママ/口は達者だったんだ。吐き気とかはなかったの?

R子/それもなかったんだよね。ただとにかく痺れがきつくて。仕方なくて、氷で冷やして感覚を麻痺されてそれを感じないようにしてもらっていたの。

ママ/搬送されるときに、飛行が満席だったから、迷惑なことに他の客を降ろしたんだよね?(笑)

R子/JALの直行便が一日に一便しかなかったのよ。だからあたしの替わりに降ろされた7人は他のところを経由して東京に行くはめになったんじゃないかなあ(笑)。あたしはストレッチャーに固定されて搭乗して、海で事故にあったままの塩漬け砂まみれの状態で成田まで運ばれたの。

ママ/あんたは一応、子供がいるじゃない。人間の子だか猿の子だからわからない坊主だけど。あの子はどうしたの?

R子/あいつもいっしょに帰って来たのよ。あの子はしょっちゅう人に預けているから親が面倒みてなくても大丈夫なの。飛行機の中でも他の人を頼って時間をつぶしていたから、なにも問題なし。

ママ/で、日本で成田から神戸の病院に送られた手術をしたんだよね。

R子/おかげさまで手術は成功して、心配されていた障害は残らなかった。でも紙一重で重度障害者になっていた。すっかり回復していまでは痺れもだいぶとれたしね。最初の頃は握力がほとんどなくなっていて、焼かんも持ち上げられない状態だったから、すごい回復力。

ママ/そうだったよね、あたしが手術後何日かしてお見舞いに行ったときに、握力がないって嘆いていたから、「お見舞いにぶっといディルドでも持ってきたら、チンコなつかしさでリハビリに役立ったものを」って言ったんだよね(笑)。

R子/チンコじゃなくて真面目なものを握って、見事、握力を回復させましたが(笑)。
(了)