2006-03-31

DKNY

DKNY.jpgパチンコで数時間にン万円すってもまったく平気なくせに、他のものにはほとんどお金を使わない伏見である。パチンコに印税丸ごと持っていかれて余裕がないのもあるが、そもそも消費という行為に興味がわかない。物欲はほとんどなし。その上、服飾品を買いに行くのが何より嫌い、ときてる。だって、なかなか合うサイズがないし、似合う(と思える)ものを見つけるのがとにかく至難の業。試着室は恐怖の空間で、あそこの鏡を見ることくらいつらい瞬間はない。それで服は必要最小限しか持っていない。

息子のやることにめったに口を出さない老母にまで、
「あんた、人前に出る仕事してるんだから、もう少し着るものを買ったら?」
と言われるてしまうくらいだ。
「うっせんだよ、こちとら文士でモデルじゃないんだから、着てるもので見栄張る必要ないんだよ!」
と言い返すのだが、いつも同じ服を着てるのは、実は、洋品店で絶望の淵に立たされたくないからだ。世界中の鏡よ、全部割れておしまい!

しかし本日、いつも着回しているラガーシャツ(オカマの戦闘服)がクリーニングに出してあって一枚もないということが判明。外に着ていく服がまったくない。もう清水の舞台から飛び降りる覚悟(本当にそんな気分なの)で、電車で少し離れたところにあるエディーバウアー(サイズの大きいものがある)に出向いた。次にショッピングする勇気が出るのはいつになるのかわからないので、まとめ買い。でも結局買ったのは、ラガーシャツ(オカマの戦闘服)とチェックのシャツ(デブの戦闘服)などなど。

そんなんで帰ってきてクローゼットの整理をしていたら、老母が、
「このダウンはまだ着るの? 捨てるんだったらクリーニングには出さないけど」
と毎年着ているDNKYのダウンを指差した。以前フライトアテンダントをしていた相棒がシドニーで買って一冬着たものを、譲り受け、気づいたら十年も愛用していた。その間、寒くなるとどんなときでもぼくの傍らにいてくれたものだ。捨てるのは忍びなくて来年も、と思うのだが、もうさすがにいろんなところにほころびがあって、羽毛が出てきてしまうようになっていた。

なんだか寂しいけれど、お別れすることにした。十年も温かく寄り添ってくれて本当にありがとう。