1-1●日誌--沢辺

デジクリ連載07 ■アップルのアプリ内課金必須は良かったかな?

■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[07]
アップルのアプリ内課金必須は良かったかな?

沢辺 均
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20110517140200.html >
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●アプリ内課金必須化はアップルの「独占」を頓挫させるか?

アップルは、電子書籍を販売する場合には、マージンを30%ヨコセと言い出した。このことは一見、電子書籍販売の独占を進めるように思えるかもしれないが、僕は、むしろ(期待も込めて)アップルの影響力のヨワーい電子書籍市場をつくるかもしれないと思っている。そしてそれは望ましいことだと思える。

・長期的に電子書籍は増えて行くと考える
・どう考えても、iPadが、電子書籍端末として100%に近いシェアを独占することはできない
・アンドロイド系の端末、PCを端末とするなどということがあり得る以上、販売総数がふえるのだから、どの出版社も電子書籍は複数の端末に対応した販売をすることを選ぶことになる
・すると、30%ものマージンが必須になるアップルストアには、出版社は後ろ向きになる
──という理由からだ。

もちろん、電子書籍市場はこれまでの出版社とは別の主体があらわれると考えている人なら「別に出版社がつくんなくていいじゃん」なわけだから、これらに異論はあるだろう。

電子書籍市場の主役はだれか? という議論はまた別な大きなテーマなので、それはひとまず横においとく、けどね。

●アプリ内課金必須になって電子書籍書店の取り分は激減

ほとんどのデジタルクリエイターのみなさんは、もうご存知だろう。そもそもこの問題は、ソニーが「ソニーリーダー」のAPPストアでの公開が認められなかったことから生じた。

「ソニーリーダー」は、直接ソニーサイトで電子書籍のダウンロードと、決済をする仕組みのアプリだったようだ。iTunesの課金システムを通さないことが問題とされた。つまり、ソニーサイトで売ってもいいけど、その場合は30%のマージンを寄越せということだ。

ポット出版は、2010年1月の新刊から、紙の本と.book形式の電子書籍を基本的に同時に発売して始めた。ボイジャーの理想書店で販売している。このボイジャーも、「一応」アップルの軍門にくだって、30%をアップルに支払う方法「も」残すそうだ。こうしないと、ビュワーアプリのバージョンアップもできないようなのだ。

アプリ内課金をする仕組みかそうでないかは、いま公開されているアプリを見直すのではなく(つまり既得権は尊重する=一度認めてしまったアプリは削除したりはしない)、新規公開やバージョンアップという、今後審査する際にチェックしていくらしい。

ボイジャーはこれまで通り、ポット出版に売上げの60%を支払い続けてくれる。ということはボイジャーの取り分は1/4になってしまうことになるのだ。

紙の本のマージンは大雑把に言えば、書店の取り分が20%強、取次の取り分が10%前後、出版社の取り分が70%弱、あたり。電子書籍と違って、全国の書店まで紙の本という物体を送品したり、返品したりの輸送料がこのなかでまかなわれている。

これに対して、電子書籍の出版社の取り分は60%で、すでに10%低い。では、電子書籍の書店が10%程度でサーバー運営、決済手数料(カード決済だと4〜7%の手数料がかかる)をまかないきれるだろうか? 到底無理だと言わざるえない。

このことは、アップルのiBookストア以外の、iPadを対象にした電子書籍書店の出店はほぼ絶望的になることを意味していないか?

●日本の出版社はアップルを向かなくなるんじゃないか

電子書籍の普及に必要なのは、まず第一に(もちろんできるだけ早く)大量の電子書籍を、市場にならべることだと思う。と同時に、さまざまな電子書籍書店が、いろいろサービスを付加したりして競い合うことが大切だろう。読者に望まれる電子書籍サービスは、まだまだ開発の途中。

たとえば、僕は、自分が本棚に入れてある本が電子書籍でも発売されて、すでに買っているのだから低料金で電子書籍を買えるってことになるのなら、買い直して紙の本を捨ててしまいたいと、思っている。あるいは、自分の電子書籍が、すべてひとつところに集められて検索できればいいのにな、などとも考えている。

でも、こうしたサービスのありようは、僕自身も含めて本当に利用するのか、必要なのかはわかっていない。

僕のiPhoneには、ダウンロードしたり買ったりしたアプリがイッパイあるけど、すでにまったく使ってないアプリもイッパイあるワケで、欲しがったけど結局使わないなどというのはよくあることだ。だから、さまざまなサービスが、さまざまな人に利用され、残るサービス/消えるサービスにこれから分かれて行くんだと思う。

APPストアだって、山ほどのアプリがあって、それらが競いあうから、これほど人気があるんじゃないだろうか?

今回のアプリ内課金を必須にするってアップルの考え、少なくとも電子書籍書店同士の競いあいをなくして、参加できる条件をアップル独り占めにするってことだ。

これって、逆説的に言えば、電子書籍端末としてのiPadを「あれってヤバいよね」と思わせることになって、結果としてアップルの独占に大きく歯止めをかけることになるんじゃないか? って思う。

電子書籍書店の出店意欲が下がる、アップルに販売を頼んでも、どんな理不尽な条件を言ってくるのかわかったもんじゃないと考える出版社が増えるようになるんじゃないか?

ましてや、アップルはストアで著作権違反ものの「電子書籍」の販売はするわ、出版社が取り下げを依頼してもノラリクラリしてるわ、なんだから。

◇『eBookジャーナル』5月23日発行に対談記事が乗ります。植村八潮さん(東京電機大学出版局)との対談で、電子書籍市場が広がるためにはなにが必要かなどを議論。今回の記事とも関連した話をしています。ぜひ購入を(笑)。
< http://book.mycom.co.jp/user/teiki/eb_cp1010.shtml >

【沢辺 均/ポット出版代表】twittreは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)
ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。
NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。
おやじバンドでギター(年とってから始めた)。
日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。

ポット出版社長・沢辺均の日記 -117[2011.04.29〜2011.05.10]

●2011.04.29金祝〜2011.05.06金
大型連休で、北軽井沢の山小屋を借りて、遊びに行って来た。
というのも、愛犬・鉄とすずをひろいところでいっぱい走らせるというのが最大の目的。
ほかにしたことといったら、
・本を読んだ=結局ミステリーとかばっかりで「勉強」しようなどと持っていった本にはほとんで手ツカヅ
・DVDを見た=軽井沢駅そばにある平安堂でいつもまとめて借りる。本もついでに買う。
 このところ、WOWOWで映画をハードディスクレコーダーに録画して見ているので、レンタルDVDをみても、
 結構見てしまっているのが多い。それでも無理して借りたけど、面白かったのは一本は「今日から愛妻家」。
・ギターの練習=あーあ、ほんの少しやっただけ。
・草刈りとかの作業=これも少しだけ、エンジン草刈り機でかっただけだ。薪はまったくつくらず。
・別荘探検=不動産屋に2回ほどひやかして、なるほど土地の相場とかワカッタゾ(不動産が趣味なもんで)。
・食事=行きつけでお気に入りの三原食堂で、ラーメン+半ソーツカツ丼セットとか2回いった。
 あとはレストランに「挑戦」。レストランは、まあ、引き分けかな?
途中、深沢さんが、愛車でドライブで一泊。あさまでおしゃべり。
ともかくサイコーにグータラな連休。
帰りに、沼田の迦葉山に13人のなかまで、30年近く前につくったボロ山小屋(って連合赤軍じゃないですよ、5坪のログハウスだし、80年代につくったんだし)をみてから、
オクサンの実家に顔出して、「一二三」とううなぎと天ぷらのみせで夕飯を食って東京にもどる。

●2011.05.07土
事務所にでて、連休中にやろうとしていた仕事。
と思ったら、机のうえにある、郵便物、請求書などのヤマをかたづけたりして時間が過ぎちゃう。

●2011.05.08日
このひも、事務所。急遽出版することにした「渡辺海旭」の本のことでいろいろ。
ほかに、雑誌にのる、対談原稿を読んだり。問題発生で、こまったけどね。

●2011.05.09月
連休明けで、スタッフそろう。
渡辺海旭の本の、打ち合わせ・会議・組版作業など。

●2011.05.10火
「話題」の独立行政法人 日本原子力研究開発機構 の印刷文書の電子化の調査でインタビューを受ける。
鈴木一誌さんのページネーションマニュアルインタビュー。
終わってから、「国立国会図書館サーチの評価に関するディスカッション」つうので、
三菱総研へいく。原田さんなんかとディスカッション。
NDLサーチの、検索スピードとか、メニューの見やすさとかの話ってことですすんでいたんだけど、
天の邪鬼なおいらは、NDLはインフラ作りを中心にやるべし、インフラの活用は図書館(公共も大学も)とか、
サービス開発をやりたい人が、つくるきっかけになるようなモデルを提示すればいいんじゃないの?
ってことでおしゃべり。

4.21木〜4.24日<HELP-TOSHOKAN(被災地図書館支援隊)>のこと

4.21木〜4.24日<HELP-TOSHOKAN(被災地図書館支援隊)>に言ってきました。

●ツイッター(写真付き)つぶやきまとめは、コチラ
<HELP-TOSHOKAN(被災地図書館支援隊)>

●Flickrで写真をまとめました。一応簡単な写真説明もつけました。コチラ

●他に動画をyoutubeにアップしたんですけど、グループ化できてないし、説明もつけてません。このあたりにあります

●日本図書館協会にも報告記事があります。とくに図書館の被害のことなどがあります。

●日本図書館協会からアンケートがきました。沢辺が回答したものです。

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第1回目への参加、ありがとうございました。日本図書館協会での今後のボランティア活動のために以下のアンケートにお答えください。回答はメールでお願いします(締切:5月5日)。

○個人の携行品について
個人で携行して役に立ったものを教えてください。
・iPhoneの予備バッテリーと、車のシガーソケットからバッテリーと本体に充電できるもの
キャンプ地は電気は通っているけど、そこで借りるより気が楽。
また、iPhoneからツイッターで、写真をつけながらつぶやいて速報代わりにしていたので、移動中の車で充電できて助かった。
ツイッターのつぶやきのまとめはコチラ→ http://togetter.com/li/126719
・コーヒーのドリップ(1杯ずつのやつ) コーヒー好きなもんで。

個人で携行して役立たなかったもの、使わなかったものを教えてください。
・水/ガスコンロとコッヘルセット 矢崎さんのキャンピングカーに準備されていた。

準備しておけば良かったと思うものを教えてください。
・特にないけど、軽装で行けばよかった。

○協会で準備した携行品について
車両用ステッカー・ベスト・名札・協会の旗・「日本の図書館」・東北地方の地図・
配布用児童書・文房具類・食料・食器・衛生用品などを用意しました。
役に立ったものを教えてください。
・車両用ステッカー・ベスト・名札・協会の旗は、支援隊全体として役立った(必要だった)。

役立たなかったもの、使わなかったものを教えてください。
・地図は、途中のサービスエリアで無料配布のものと、iPhoneの地図と、カーナビで間に合ったと思うけど、念のためあってもよいかな。

準備しておけば良かったと思うものを教えてください。
・現地でやる企画、が大切で、携行品はむしろそのための道具が必要。たとえば、プルジェクターなどで映画をやるとか。

○協会からの募集や事前のお知らせなどについて
お気づきの点、要望などについてお聞かせください。
・支援隊と、協会も、その都度ツイッターなどで速報するのが良い
速報体制がよろしくないかな?と思う。
日図協のメールマガジンの速報をだすのが必要と思う。

○その他
その他、お気づきの点、要望などについてお聞かせください。
・全額協会で負担する必要ないと思います。
むしろ参加者から自分の費用は徴収してよい。
・学生や若い人などにむけて、協会持ちコースも平行して。
・このアンケートもワードファイルをわざわざ添付する必要はないと思います。
メール本文で充分。そのうえ、ワードも最近のバージョンでなければ開けないdocx形式だし。 txt形式が良い。
グーグルフォームを使うなど、モット事務処理の省力化・最速化をはかるべきでしょう。

○協会までの交通費について
3000円を超えた半額を協会で負担します。協会までの交通費をお聞かせください。
・大丈夫です。

○お名前              
沢辺均            

ご協力、ありがとうございました。
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ポット出版社長・沢辺均の日記 -116[2011.04.16〜2011.04.28]

●2011.04.16土
月に一度のベラミナイト(近所のスナック「ベラミ」で毎月第三土曜日にやってるセッション)。やっとみんなとナゴメて来た。

●2011.04.17日
もう思い出せない。
メガネ屋にいってあたらしい眼鏡を買う。ははは、遠近両用レンズだ、これになってレンズ代が2倍に跳ね上がってる。

●2011.04.18月
15時から、eBookジャーナルの対談。電大出版局の植村さんとの対談。
日本で、早く電子出版を利用可能にするためには、スキャン画像での既刊本の販売、配信がいいんじゃないか?という話し、。
書き手にお金を還流させる機能が必要で、それは出版社(電子書籍出版社でもいいんですよ)が担うのが現実的、ってことで話が合ったんだけど、戻って来てから考え直した。
ポット出版の本は2,000円前後で2,000部〜3,000部が多い。基本は刷り部数に対して10%ではなくて、実売にしてもらっている。
だから仮に3,000部うれても60万円。まあ、3,000部売れたら重版するし、重版からは刷り部数で支払うので、80万円くらいになるけどね。
新書も聞くところによれば1万数千部程度の刷り部数で、定価はだいたい700円くらい。だからまあ100万円か。
でも、100万円じゃ、年収になんないよね。その上、取材や調べものにも費用かかる。
だから、出版はかなり前から、それだけで食べるのは無理なことになってる。
雑誌で書いてまず「原稿料」というカタチで収入を得て、そのボーナスってのが本の世界。その雑誌、もちろんポットじゃ出してないけど、そうした原稿料を支えていたのが広告なわけで、その広告がダメダメになっているんで、書き手にお金を還流させる機能はすでに、というか元々というか、ないってのが現状で。ちょっと見当違いだったと、思い直した次第。
夜は代々木図書館でスタッフたちとミーティング。
帰って来てから、デジクリの原稿書き。「デジクリ連載06 ■著者と出版社と図書館と

●2011.04.19火
04/21木〜24日に日本図書館協会(日図協)の<HELP-TOSHOKAN(被災地読書支援隊)>に参加するので、その準備。
iPhoneで写真と動画を撮ってその都度ツイッターでつぶやく、USTREAMで中継をして保存、このセットで記録を撮っておくことにして、そのセッティングやら、ガスコンロやコッヘルとかいろいろ準備。
結構手間がかかる。

●2011.04.20水
出版会議。
なんと、ブックメール倶楽部が書誌情報のネットワーク上での登録と、書店・取次などなどへの転送といったシステムを、特許を出願していて、それが特許庁で出願公開されていた。
出願していることは去年の12月には解っていたんだ。
これって完全に版元ドットコムのパクリだ。
版元ドットコムは2000年にはじめている。ブックメール倶楽部はそれからはるか後に発足。
にもかかわらずサイトのトップページには「本サイトの仕組み及びシステムは、出願番号:特願2009-201474 にて特許出願中です。類似のシステムを開発される場合はご連絡下さい。」と書いてる。
主催者はくろしお出版の岡野秀夫という人。
オイラも何度か会ったり立ち話したりはしている。
その岡野さんはJPOに、自分が特許だしてる、近刊情報センターが無料で近刊情報を収集して配信するとブックメール倶楽部の商売がたち行かなくなるので、仕事を回してほしい、というようなことを言いにきている、ということだ。
まったく度し難い。
夜は雑協の報告書会議。17時〜22時の長丁場。

●2011.04.21木
日本図書館協会(日図協)の<HELP-TOSHOKAN(被災地読書支援隊)>で、今日から気仙沼にいく。
まずは日図協に集合。だけど、30分近く遅刻してしまう。
水とか食料とか買い込んでとても持てないので、奮発してタクシーで行ったんだけど、カーナビのないタクシーで、日図協の付近は一通ばかりで、オレもよく知らんし。ってことで遅刻。
この日は、ともかく気仙沼への異動。
東北自動車道は、売店/レストラン/ガソリンスタンドなどは通常。宮城のサービスエリアでタバコがヨウモクのメンソール3種類しか残っていないし、福島・宮城アタリになると、道路の補修後がかなりある、ってのが震災後らしいところかな。
・ツイッターのつぶやきまとめはコチラ
・写真のまとめのフリッカーはこちら
・動画はyoutubeにアップしました。
これらは利用自由。表記(ポット出版と)で利用自由です。
まだ写真説明など未完成だけどね。

●2011.04.22金
日本図書館協会(日図協)の<HELP-TOSHOKAN(被災地読書支援隊)>の2日目。

●2011.04.23土
日本図書館協会(日図協)の<HELP-TOSHOKAN(被災地読書支援隊)>の3日目。

●2011.04.24日
日本図書館協会(日図協)の<HELP-TOSHOKAN(被災地読書支援隊)>の4日目、最終日。
朝起きて、ボランティアキャンプのトイレ掃除とかをして、東京へむけて出発。
ベンツのトラックを改造したキャンピングカーを運転。

●2011.04.25月
日本図書館協会(日図協)の<HELP-TOSHOKAN(被災地読書支援隊)>帰りで、後始末したり、溜まった書類をかたしたり。
夜は代々木図書館のスタッフとミーティング。
それが終わって、渋谷で北尾トロさん、下関マグロさんのトークショーへ(アーカイブあり)。

●2011.04.26火
午後に、鈴木一誌さんが来てメージネーションマニュアルインタビューの3回目。

●2011.04.27水
夜、版元ドットコムの組合員会議。
最長の18時〜22時の4時間マッチ。第三書館の北川さんのラフな高円寺フェス・本の楽市企画の予算をめぐって激論。
はじめて組合員会議に参加してくれた31歳・濱崎さん、ビックリして帰った。
北川さんとは、ハブとマングースだと言っているのだけどね。

●2011.04.28木
翌日から連休。ポットは2日と6日を「統一有休日」としているので10連休。
オイラは、鉄とすずを思いっきり走らせるために北軽井沢へいくのだ。
午前中、月例の出版会議。少し長いポット出版の方向についても話す。
終わってから2週間ぶりに整体を受ける。
夕方日図協の西野一夫常務理事に、「ず・ぼん」17号-03のためのインタビュー。
5月配信のメールマガジン版「ず・ぼん」は日本図書館協会(日図協)の<HELP-TOSHOKAN(被災地読書支援隊)>です。
そして、そして、図書館関連の打ち合わせの合間に、iPadを2に買い替え。
iPadはオクサンに売りつけることにした。

デジクリ連載06 ■著者と出版社と図書館と

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■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[06]
著者と出版社と図書館と

沢辺 均
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20110419140200.html >
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は〜、隔週の原稿はやっぱり結構しんどいな。柴田編集長のお誘いには「毎週でも隔週でも月一でも、なんでもどうぞ」と返信してた。こういう機会でもなければ、なかなか書かないから、いい機会にしようなぞと思っていたのだが、自分の無能の自覚がたりなかったようだ。

作家の樋口毅宏さんが、今年2月25日に新潮社から発行した『雑司ヶ谷R.I.P.』の巻末に、公共図書館での貸出しを半年間猶予するよう【公立図書館のみなさまへ この本は、著作者の希望により2011年8月25日まで、貸し出しを猶予していただくようお願い申し上げます。】という文章を載せた。読売新聞の翌日の報道では定価1,600円書刷り6,000部だそうだ。印税は96万円、樋口さんはこの執筆に一年かけたらしい。

図書館で発行直後からどんどん貸すので本が売れない──という認識人なんだな? 樋口さん。

「図書館で発行直後からどんどん貸すので本が売れない」という著作者は、どんどんこう書き込むのがいいと思う。そして、実際に他の著作と比べて、その方が売れるなら、あらためて図書館での貸出しのルールを考え直さなければならないと思う。

実際にこの樋口さんの著作を、発行時に買わないようにしたのか、買ったとしても貸し出さないようにしたのか、それとも買うところは買って著者の意思にかかわらずに貸し出しているのか、図書館の状況を僕はまったく知らない。だから、今回、これで書店での販売が、樋口さんのほかの著作と比べて売れるか売れないか試すことができるのかわからない。残念。

この一文は著作権法・図書館法の上で効力をもつようには思えない。逆に、図書館がこれに従ってみても、著作権法・図書館法を逸脱するとも考えられない。だから、図書館は樋口さん(と、もしそれに続く著者がいればその著者たち)の意思を一旦受け入れてみて、図書館が貸すから本が売れないのかどうか積極的に試すのがいいと思う。

試してみて、その結果からまた今後の良いルールを生み出していくというサイクルをもつのがいい。「売れない」「むしろ売れる」とかいった信念の対立はいい加減にやめて、実証的な検討をするべきだ。

この話とは別に、ここ何年ものあいだ図書館でよく「○○図書館のリクエストベスト10、この本をお持ちなら図書館に寄贈してください」といった張り紙やチラシを良く見かける。ベスト10には当然、本屋でもよく売れているベストセラーが並んでいる。この寄贈要請はいただけない。

図書館は書物を商売(いや、サービス?)のネタにしているわけだ。そのネタをつくる出版業という産業を、いかにして振興させるのかというのは図書館の大切な課題だと思う。そもそも、ベストセラーを大量に貸し出す無料貸本屋に堕してしまっていいのか? 一部の住民にすぎないヘビーユーザーが、佐伯泰英の文庫を何冊も一度に借りて行く、ことだけを追求するのが図書館サービスの中心ではない。

もちろん、娯楽向きの本を貸し出して、文字・活字に親しむ人を増やすことは大切だが、それって図書館の機能の一部分じゃないか。。米屋はうまい米をつくる百姓を大切にする、酒屋がいい酒をつくる酒蔵を大切にするのとおなじように、図書館は本の産業を大切にすべきだ。ましてそれは、税金で運営されている公共図書館なのだから。

これは商道徳としてそうなのだと思う。商道徳として、図書館で貸し出す本はちゃんと買いましょう、と思うのだ(さらに、その本は大量注文顧客だということで、10%を越える値引きをさせているのも、どうかと思う)だから、リクエストベスト10を寄贈してください、といったチラシや張り紙を見るたびに腹がたつ。

つくってヨシ、売ってヨシ、買ってヨシ、だろう。

◇気仙沼へ、日本図書館協会〈HELP-TOSHOKAN(被災地読書支援隊)〉にいってきます。
僕としては取材してこうと思ってるのだけど、応援作業優先で行ってきます。4月21日(木)から24日(日)まで。参加準備記からポット出版サイトに書き始めました。てか記録だな。よろしければご覧ください。
・日本図書館協会〈HELP-TOSHOKAN(被災地読書支援隊)〉参加準備記 01
< http://www.pot.co.jp/diary/20110415_221236493923292.html >

【沢辺 均/ポット出版代表】twittreは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)
ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。
NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。
おやじバンドでギター(年とってから始めた)。
日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。

ポット出版社長・沢辺均の日記 -115[2011.04.13〜2011.04.15]

●2011.04.13水
出版会議。SDとの会議。
その後ボイジャーの清水さんと新人君が来る。
ボイジャーストアの話。
夜は中野へ行って、げんきな図書館の理事会。
深沢英次さんにたのんで、図書館スタッフに研修と、サポートやICT利用提案などをしてもらうことが決定。
中野の図書館は5月から、閉館時間の繰り上げを中止して平常通りの時間になり、
渋谷の図書館は、5月から、今の閉館時間繰り上げに加えて休館日を増やすなどの、震災対応。
両区とも、開館時間の短縮にともなった委託料の減額、ということになっていて、その対応なども。
そんな一日に、ファックスで電子書籍状況の講師を紹介してくれというファックスと(留守中に)何度も電話がくる。
依頼して来たのはNPOの、市民学校みたいなものを行政から受託しているところ。
差出人の名前にもNPOの名前にも記憶がない。
紹介するなら、紹介する先にある程度の信頼がないとやる気にならんし、。
市民学校のようなところで電子書籍状況の講座をする意味もわからん。
勝手な妄想ではあるが、NPO的傲慢さを感じてしまったな。
ファックスに「紹介は遠慮したい」みたいなことを書いて返送。その後も留守中になんどか電話がかかってたらしい。

●2011.04.14木
午前中、代々木図書館に行く。
整理日なので、新館長への挨拶。古いなじみの人。
渋谷区中央図書館に行って、開館時間短縮にともなう委託料減額の話。週明けまでに減額金額の案を提出することにした。アンケートの集計も頼まれてもって変える。
帰って来て、整体を2週間ぶりに受ける。
夜は、受託している富ヶ谷のスタッフが飲み会やっているので行こうとしたけど、バタバタしていて断念。
大和田図書館のアンケート集計のためにエクセルをつくるなど。

●2011.04.15金
ポット会議。
そのあと大和田図書館に行ってアンケート集計の事務打ち合わせ。
近刊情報センターの説明会は欠席。病院もサボり、いろんな雑用に負われる。

日本図書館協会<HELP-TOSHOKAN(被災地読書支援隊)>参加準備記 01

日本図書館協会(日図協)の<HELP-TOSHOKAN(被災地読書支援隊)>に参加することにしました。
「ず・ぼん 図書館とメディアの本」を発行していることもありますしね。
4月21日(木)〜24日(日)の4日間。

これから出発なわけですけど、準備などのことも含めて日誌にしようかと思ってます。よろしく。

そのため4月23日(土)の阿佐ヶ谷ロフトのイベント
文藝春秋プレゼンツ
「出版大崩壊と電子書籍の罠 ポスト大震災の出版業界のゆくえ」
の出演を断りました。
文春の目崎さん、ご迷惑かけて申し訳ない。
著者の山田さん、ごめんなさい。
大迷惑をかけたので、これを読んでくれた方はぜひ、阿佐ヶ谷ロフトへ。
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4月23日(土)昼
文藝春秋プレゼンツ
「出版大崩壊と電子書籍の罠 ポスト大震災の出版業界のゆくえ」

【出演】
山田順(『出版大崩壊 (文春新書) 』著者)
【Guest】
たぬきち(「リストラなう!」著者)
沢辺均(ポット出版)
ケビン・クローン(タレント、コラムニスト)
徳川家広(翻訳家、徳川家第19代宗主) 他

Open 13:00 / Start 13:30
料金¥1500(+飲食代)
※電話・ネットで予約できます。
http://www.loft-prj.co.jp/lofta/reservation/

http://amzn.to/h5vX6U

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で、支援行動のことです。
まず、日図協の呼びかけ文です
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○被災地への支援行動を呼びかけます。
 日本図書館協会は東日本大震災支援の一環として、<HELP-TOSHOKAN(被災
 地読書支援隊)の派遣>を計画しました。協力を訴えます。
 目的:今回の地震・津波・原発事故などで読書環境を奪われた被災地に直接
 間接の支援を行う。現地の図書館と協議をしながら、支援を行っている団体、
 個人が共同して支援を行うようにする。
 1)具体的な支援行動 第1期(4〜5月)
 ・週末(木曜〜日曜)を利用しての支援行動を、4月21日(木)から4回行う
 ・第1回4月21日〜24日、第2回5月12日〜15日、第3回5月19日〜22日、第4回
  5月26日〜29日(各回4〜5名を募集、運転できる方特に歓迎)
 ・集合地:日本図書館協会(車は、協会でレンタカーを手配)
 ・活動拠点:当面1,2回目は宮城県気仙沼を中心に展開の予定(宿泊は今回
  支援活動で協力関係にあるシャンティ国際ボランティア会現地臨時支部を予定)
 ・支援内容:児童書を中心に域内の分館や施設に避難している子供たちへの
  配本、読み聞かせ、上映会など。
 ・参加条件:ボランティアが基本です。日当などは支給できません。着替え、
  食料は各自持参ください。ただし、集合場所までの交通費は3000円を超え
  た半額を協会で負担します。ボランティア保険未加入の方は応募の際、申
  し出てください。
 ・問合先:日本図書館協会(震災対策委員会)西村、西野
   TEL:03-3523-0814 FAX:03-3523-0844 e-mail:●●●●(略しました 沢辺)
 2)具体的な支援行動 第2期(6〜7月)
 ・HELP-TOSHOKANの地域拡大
 ・自動車図書館による配本活動の開始
 ・義援金を活用した配本10,000冊の展開
 ・自主ボランティアによる図書館復興支援の組織化
 ・図書館関係団体による図書館復興に向けた共同の政府要請行動
 ★なお、計画は状況により今後変更されることがあります。
────────────────────

そんでもって、今日「第1次被災地支援行動のしおり」が届きました。
こんな内容です。
今後、参加しようかと思っている方の参考になれば。
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東日本大災害対策委員会現地派遣員確認事項
2011.04.15(震災対策委員会事務局)

<目的>
今回の大震災で読書環境を奪われた被災者住民の方々に、図書館を通じての読書支援を行う。

<方法>
震災以前に図書館のサービスが及んでいた地域を中心に、緊急の配本、読み聞かせ、映写会などのサービスを行い、復興への一助とする。図書館との協議、指示に基づき、地域の避難所や学校、地域施設を巡回する。

<期間>
4月21日(木)~24日(日)を第1次として、4回にわたり宮城県気仙沼地区*に巡回サービスを行う。
*気仙沼地区の特色:1970年代から総合的な図書館活動を展開し,東北地方リのーダー的役割を果たしてきた。
図書館の施設面での被害もありながら、職員集団としての復興への立ち直りがはやい。図書館サービスを受けていた地域の被災状況も相当なものがあり、支援による効果が多く期待できる。また、同地区には、従来から協力関係にあるシャンティ国際ボランティア会の支援拠点もあり、支援のためのインフラも整っている。

<日程>
4月21日(木)午前10時集合(日本図書館協会)書籍などの積荷を搭載後出発(10時30分)
 ⇒現地到着時刻午後8時(予定)
4月22日(金)、23日(土)図書館の指示に基づき、気仙沼を中心に各所で配本などのサービスを展開
4月24日(日)気仙沼市役所などを表敬訪問後、沿岸部の被災状況を見ながら仙台を経由し帰京

<参加人数>9名(別紙名簿参照)
<使用車両>トヨタハイエース(レンタル)、キャンピングカー(矢崎氏所有)運転担当:矢崎、西野、齊藤、
<宿泊場所>清凉院敷地内シャンティ国際ボランティア会臨時現地本部(住所:気仙沼市本吉町大森17)           *シャワー、トイレは有ります。

<携帯品>
図書館協会で用意する物:水、現地での基本食料(非常食)、
参加者が用意してほしいもの:初日と翌日分の食料、個人用非常食、嗜好品、下着、ねぶくろ及び防寒用マット、懐中電灯、マスク、バンドエイド、その他。
<経費>
・現地との往復費用は、日本図書館協会が一部を負担します。また、供出いただいた場合の車の行動中の修理代は原則として協会が負担します。
・レンタカー代、ガソリン代、高速料金、自宅から日本図書館協会までの往復費用の一部(3000円を超えた部分の半額まで)

<その他>
・報償費などの手当はありません。あくまでもボランティアとしての活動となります。保険については、一般的なボランティア保険への加入手続きを図書館協会で行います。
(すでに4月1日以降加入済の方は、その旨申告してください)
・ご参加いただいた皆さんには、今後も何らかのかたちで被災地支援ボランティア活動の一翼を担っていただけることを願っております。
・写真撮影などは許可をえれば可能ですが、被災者のお気持ちを十分配慮してたで上の撮影をお願いいたします。
・所持金は、基本的にご自宅と図書館協会との往復以外には必要ありませんが、万一のことも考えて5000円程度のご用意をお願いいたします。
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ポット出版社長・沢辺均の日記 -114[2011.04.10〜2011.04.12]

●2011.04.10日
代々木図書館→富ヶ谷図書館→大和田図書館を一回り。
まあ、特に用はなかったんだけど、現場のムードを少しは感じておきたいなって。
鉄とすずとの散歩はやめた。

●2011.04.11月
午前中は国立国会図書館に行って「ず・ぼん」17-2のための取材。
NDLのネットワークの活用について聞く。
事務所に戻ってブックデザインの打ち合わせ。
またまた「ず・ぼん」17の記事のための下ごしらえで、自治総研の上林さんをたずねる。
図書館の委託/指定管理などの料金をしらべて、それをもとに、料金比較をできないか?って。
夜、代々木図書館へ行ってスタッフと打ち合わせ。
4月中は、毎週月曜に一緒に打ち合わせをしようと。

●2011.04.12火
午前中、マンション管理組合理事会。
節電要請がきていて、共用部分の電灯を消せとか。
夜間電力は不足してないんじゃないか?
以前から通路の照明の電球をキレたら蛍光灯電球にしようとしていて、
まずはこれから始めましょう、ってことで。
午後は鈴木一誌さんにデザイン論でインタビュー。本にしようとしているのだ。
「ず・ぼん」の編集委員の斉藤さんから連絡。
4月21日からの日本図書館協会の東北ボランティアのメンバーに当確、の連絡。
四日間、本を届けたり、配ったらり、読み聞かせをしたりって計画。
そのまえに日程の調整をしなければならんことが一つ。明日やろう。

ライブのお誘い 再開!06.18土 Vol.7 LIVE 勝手にしやがれ

3月12日に予定していたVol.7を再開!自粛も解除(自粛してたか?)です。

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●日時 2011年6月18日・土曜
 18時30分開場(飲み放題開始)
 19時開演・21時終演予定
●場所 新宿ミノトール2 地図→ http://bit.ly/gq9mhq
03-3341-2655 新宿区新宿5-11-4龍生堂ビルB1
副都心線/丸ノ内線/都営新宿線「新宿三丁目」C7出口2分
●料金 3,000円
2時間30分飲み放題(18時30分〜21時予定)・軽食付き
●定員 50人
●申込 申込フォーム= http://bit.ly/hB56Oz
    もしくはバンドメンバーか下記メール・ファックス・電話へ
●曲目(予定) 
勝手にしやがれ/伊勢佐木町ブルース/マニフェスト/ Hotel California/Sweet Home Chicago / Layla/百恵メドレー/ほか
●メンバー
青んぼ(g cho)/木谷マキ(d)/ミナ(vo)/沢辺均(g)/ババッチ(p)/ハル(vo)/日野智(b)/本多羅々(g)/&カラオケタイムのみなさま(vo)

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飛び入り大募集

●バンドをバックに「生オケ」コーナーあります。
●楽器参加も大歓迎!。
事前にご連絡いただければ、歌詞+バンド用のギターコード譜はこちらで用意します。
●もちろん当日の飛び入り参加も歓迎します! 
その際は歌詞+ギターコード譜(4部ほど)をお持ちください。
●事前スタジオ練習に、参加してみませんか?
詳しくはメンバー、または主催者まで連絡を。
予定練習日=2/6(日)、2/20(日)、3/6(日)

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打ち上げ・ニ次回

終了後、歩いて5分の特設借り切り会場(?)で打ち上げをします。
焼酎・ソフトドリンク飲み放題=2,000円
その他持ち込みのつまみ割勘
当日、その気になったら気軽に合流ください。

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●主催 勝手にしやがれプロモーション 
 150-0001 渋谷区神宮前2-33-18 #303沢辺宛
 電話03-3478-1774 ファックス 03-3402-5558

ポット出版社長・沢辺均の日記 -113[2011.04.06〜2011.04.09]

●2011.04.06水
週イチ出版会議。
夜はず・ぼん会議。日本図書館協会の気仙沼ボランティア隊に、斉藤さんと一緒に申し込むことにした。
4/21から。入れるかどうかわからんけどね。

●2011.04.07木
富ヶ谷図書館へ、iPad(一時貸出し)をもって行く。
富ヶ谷ではまだパソコンを用意できていなくて、当座をiPadでしのごうというわけ。
自転車に乗って、すずを連れて行ったら、事務所では「すず行方不明」となっていたらしい。
すずは、富ヶ谷のスタッフたちにしっかりコビを売ってやんの。
その他にも、図書館のパソコンや、iPadやらなんやらの設定。

●2011.04.08金
ポット会議。今日は短時間。
その後、出版クラブ会館でJPO近刊情報センターの普及促進サブワーキング。
近刊情報センターは順調だな。
夜は、ポットで編集をやっていた木村瞳がちょっとした用事で来社。
一緒にメシをくいに行く。

●2011.04.09土
なんか、この自粛ムードやだな、と思って、地震の翌日にやることにしていて、
中止した「ライブ 勝手にしやがれVol.7」を再開することにした。
6月18日(土)。
でもって、そのお知らせ文やらチラシをつくったり、メンバーに送ったりの作業のため、
事務所へ。
プリンタやメール便なんか使ったから、金払わなきゃ。

近刊情報センター/WEB入力出版社説明会は2011/4/15金

近刊情報センターというのができた。
オレも設立に、一応協力。発行前の本の情報を、書店などはもちろん、だれもが取得できるようにしたい、という取組みだ(あくまでオレ的には、だけどね)。
その出版社向けの説明会がある。
どうやって近刊情報を出版社が送るのか、送るとどんなことになるのか、みたいな話になるはず。

僕も出席するんで、どうですか?みなさんも。

WEB入力説明会
(記)
◎日時  4月15日(金)13:30~15:30
◎場所  日本出版クラブ会館3階 地図
・FAX番号  03-3267-2304
・電話番号  03-5261-0539

ポット出版社長・沢辺均の日記 -112[2011.04.02〜2011.04.05]

最近は、この社長日記を書くので手一杯。
できるだけこまめに書いて、日記以外のネタも書きたいもんだ。

●2011.04.02土
昼に、スタッフの採用のことで、自転車に乗って富ヶ谷図書館に行く。
ちょうどひるめし時。一緒にランチしながら。
それが終わって、ポットチャンネルの花見へ行く。
松沢呉一さん、下関マグロさん、掟ポルシェさんのパーソナリティと、ツイッター見て参加した人。
鈴木クニエ、畑仲哲雄夫婦が犬を連れて来てくれて、久々に。畑仲さん、50歳直前で共同通信を退職して、
博士論文に励むそうだ。
松沢さんたちと原発論議。松沢さんは、メールマガジンで読むのと、直接話をするのでは印象が違うと思った、な。
Ustで、ダラダラと中継。有料参加者22人、募金箱には626円。
夜は、オクサンと久しぶりに「まい泉」に夕飯に行く。

●2011.04.03日
午後、代々木図書館にemobail接続不調を見に行く。
富ヶ谷図書館用に買ってあった新型と入れ替えする。
代々木図書館も買ってから二年になってよけいな費用がかからないから。
それから大和田図書館に回って、節電にともなう閉館時間の繰り上げ時の勤務時間をどうするか相談しに。
帰りに東急名店街によって、二つにぶち切れて100円引きの銀ダラ西京漬とサーモンのなんとか焼き、大型卵焼き、
鳩サブレ10枚入り袋などを買って、ビックカメラを眺めて帰宅。
デジクリ柴田編集長からメールがきて、震災で発行を停止していたデジクリが4月11日(月)から復刊だそうだ。
オレは19日に掲載予定。

●2011.04.04月
夕方、代々木図書館に行ってスタッフと打ち合わせ。
4月は毎週月曜にその日出勤のスタッフと受託業務についてさまざま打ち合わせしていこうということにしたもんで。
その前に、ヨドバシカメラで、iPodタッチを購入。
代々木図書館でつかってもらうようにするためだ。代々木図書館では、随時「ミニ特集」をやっていて、
それなりに好評のようなで、ツイッターで、写真つきのつぶやきをやりたいと前から思っていたのだ。
でも、デジカメでとってパソコンに取り込んで、ってやってるとメンドーだ。
iPodタッチなら、携帯電話機能のないiPhoneとして使えるので、これで撮影→即つぶやく、って簡単にできると思ったのだ。
ほかにも、出勤スタッフ分のiPodタッチを用意して、これを館内でのさまざまなツールとしてつかえないか?
たとえば、カウンターが込んだときに、書架整理などしてるスタッフを呼び出すとか、机の前にあまりいない
仕事の場合の道具になりえないか、などなどと考えてる。
戻って来てから、出版チームに印税の考え方でお話。というよりも説教か?オレの。

●2011.04.05火
今日は出版チームのリーダーの那須が「自宅勤務日」で不在。
渋谷区立中央図書館に行って、新館長、地域館担当、の人たちと挨拶、。
加えて、開館時間の繰り上げ中の、スタッフの勤務時間の相談。問題なくゴー。
帰って来てから、溜まっていた雑用やアポ、などなど。
NPOげんきな図書館の受託した図書館に配ってある、iPadの活用法を考えたり。
とりあえず、カウンター前において、電光掲示板みたいに使うなどから始めようと、
アプリを調べたり実験したりもした。
深沢さんに電話で知恵をもらったので、なかなかいいワークフローがつくれそう。
FaceTimeを使って、iPhone4、imac、iPoタッチなどなどで、テレビ電話ができそう。
ならば、受託館との連絡にも使えるかも、と、友達のみずき(15歳)のiPhoneにアクセス。成功。
だいたいやり方がわかった、ゾ。

ポット出版社長・沢辺均の日記 -111[2011.03.15〜2011.04.01]

NPOげんきな図書館が、渋谷区で代々木図書館/こもれび大和田図書館につづいて富ヶ谷図書館を受託した。
スタッフ採用から、受託準備に加えて東北大震災の電力不足対応のため、中野区も渋谷区も閉館時間を繰り上げ。
そんなことに伴う、スタッフの勤務時間体制の調整とか、ともかくいろんなことがバタバタ。

●2011.03.15火
予定していた鈴木一誌さんのデザイン論インタビューと、書誌情報・書評情報研究会を両方中止。

●2011.03.16水
出版会議。夜は「哲学者・石川輝吉の、ちょっと「ぐずぐず」した感じ」のコーナーのインタビュー。
大学生。

●2011.03.17木
ポットチャンネルの掟ポルシェさんの回。掟さんの変態人脈はすごいな。この日はパックマンさん。

●2011.03.18金
ポット会議。そのあとブックデザインの受注で打ち合わせ。

●2011.03.19土
ベラミナイト(まったり篇)。大震災のあとだけど、まあ集まろうってことで。

●2011.03.20日
鉄とすずと代々木公園。

●2011.03.21月祝
ともかくダラダラと。

●2011.03.22火

●2011.03.23水
眼科へ。レーザーを当てて網膜なんちゃらって手術。
夜は版元ドットコム会議。
例の話は着々と進んでいるらしい(●さんの話)。
終わって飲み会で第三書館の北川さんと議論。北川さんの考えも共感するとこもあるんだけど、
議論の仕方が古くさいんだなー。

●2011.03.24木
月例の出版会議。夜はポットチャンネルの沢辺の回
ゲストはマイクロソフトの楠正憲さん。この人に興味があるんだなー。
なんと言ったらいいんだろう。今の30代40代のこういうタイプになんだか共感するんだ。

●2011.03.25金
ポット会議。
げんきな図書館のレファレンスの研修が中止。

●2011.03.26土
55歳の誕生日。だからもう放射能でガンの発生率が高くなったっていいんだよな、55歳だから。

●2011.03.27日
小浜逸郎さん主宰のシネクラブがポットの会議室で。オイラは夕方に図書館のスタッフにあって、
いろいろ相談したんで、不参加でしたけどね。
で、飲み屋で図書館スタッフ2名といろいろおしゃべり。
うー、難しいんだな。

●2011.03.28月
国立国会図書館の「全文テキスト化実験」の協力出版社の定例会の最後。
ジャパニーズ・ブックダムの中心の計画だけど、うー、残念だけど不発=「失敗」だな。
どうする、ジャパニーズ・ブックダム。自分でも次の方針を見つけられないんだから困った。
午後は、光和コンピュータの社長さんくる。今後の協力のことなど。
夜は富ヶ谷図書館のスタッフと、委託になる4月以降の打ち合わせ。

●2011.03.29火
11時に中野の中央図書館にいく。
節電→図書館の閉館時間の繰り上げ(開館時間の短縮)→委託料の引き下げの提案をうける。
あーあ、委託料は全部人件費。つまり究極に硬直した予算システムだから、吸収するのがむずかしいんだな。
困った困った。
午後には鈴木一誌さんデザイン論インタビュー
うー、ん。話が面白いなー。いい本になりそうだぞ。

●2011.03.30水
出版会議。

●2011.03.31木
ポットチャンネル第一期最終回。松沢呉一さん+下関マグロさん+掟ポルシェさん+オレ、
パーソナリティ4人で総括会議
Ustは、全世界メディアでなく、ご近所・小さなコミュニティメディア、
テレビの真似になりやすい
ちんこマンコ気違いなどと叫べるメディア
といった総括(なんて総括じゃい、と自分でも思うけど、ヤッパそうなんだ)。
そして、
いまこそ花見を! 中高年は放射能浴びてそうな農産物・魚介類をたべる!を掲げて、4月2日土曜に新宿中央公園で花見をすることに急遽決定。パーソナリティみんなくるから皆さんもご参加を。

●2011.04.01金
ポット会議。翌日に迫った花見の準備、など。そしてこの週も、図書館受託体制づくりでがちゃがちゃ。

ポット出版社長・沢辺均の日記 -110[2011.02.28〜2011.03.14]

佐藤は、2/28月に「修羅場終了」を宣言したんだけど、なんだかオイラはバタバタしていて、結局15日も日記をためてしまった。
そしてそのあいだに大地震、が起きてしまった。

●2011.02.28月
雑協のデジタル配信実験の報告書、第一次締切でバタバタ。
それから、渋谷区立富ヶ谷図書館、本町図書館の委託プロポーザルの決定通知。
2館とも立候補したのだけど、富ヶ谷図書館が受託決定。

●2011.03.01火
午前中、マンション管理組合理事会。
午後に図書館に行く。
夜は阿佐ヶ谷ロフトAで「続・2010年代の出版を考える
なかなか良い議論ができたんじゃないかな?と思ったぞ。

●2011.03.02水
出版会議。
午後は国立国会図書館にいって、全文テキスト化実験の表示の見学。
夕方から集英社で雑協のデジタル配信実験の報告書の検討会議。
ながーい会議。
帰って「ず・ぼん」編集会議。

●2011.03.03木
夜はポットチャンネルの松沢呉一さんの最終回
お相手はオレもよく知ってるアキラくん。

●2011.03.04金
午前中はポット会議。会議を終えてポットの仕事場の配置変更。
夜は、渋谷区立中央図書館で、富ヶ谷・本町図書館で働いていた非常勤職員にむけた、
採用説明会。

●2011.03.05土
人間学アカデミーの事務局会議を12時から。
一端9期で終了することにする。
そのまま西野さんの講義の3回目。
だから懇親会。

●2011.03.06日
03/12土に控えたライブの前、最後のスタジオでの練習。
飛び入り参加の人も来て、4時間のスタジオ。
終わって、いつもの居酒屋で最終打ち合わせ。

●2011.03.07月
午後は眼科で検査。
夜はまた、渋谷区立中央図書館で、富ヶ谷・本町図書館で働いていた非常勤職員にむけた、採用説明会。
夜中までかかって、デジクリの原稿を書く。

●2011.03.08火
忘れてしまった。

●2011.03.09水
昼は出版会議。終わって、メシから帰ると、SD会議。
夕方から、富ヶ谷図書館スタッフの採用面接の第一回目。予備日なので、2人。
終わってから、NPOげんきな図書館の理事会。

●2011.03.10木
午後に整体を受けて夕方から渋谷区立中央図書館へ。
現富ヶ谷図書館館長とご挨拶、のあと、スタッフ採用面接。メインの日。
事務所に戻って、採用者をほぼ決める。
この日のポットチャンネルは下関マグロさん

●2011.03.11金
10時から出版クラブ会館で近刊情報サブワーキング会議。
一端事務所に戻って、富ヶ谷図書館スタッフの最後の採用面接=2人。一人はふるーいなじみの○さん。
こもれび大和田図書館(渋谷駅近所)にいたら、おおきな揺れ。
図書館から、表をみたらみんなセルリアンタワー東京を見ている。あとで見ていた人に聞いたら、ぐわんぐわんと
大きく揺れていたそうだ。
最初は、この地震をなめていて、16時ころポットに戻ろうと図書館からでて、急いで変え要りたかったのでタクシーで
帰ろうとおもっていたら、すでに渋谷駅は人だらけ。山の手線などが止まっていて、池袋行きのバス乗り場には、数百人の人が列をつくっていた。
だもんで、歩いて帰ることにした。
帰ってからポット会議。
夜になるとどんどん悪い状況が解って来た。東京も交通ストップ。
ポットにも何人も泊まらざるえない。みんなの夕飯を買いに行ったらコンビにの棚は見事にカラッポ。
冷凍のうどんとかラーメンとか、お菓子を買う。

●2011.03.12土
ライブ「勝手にしやがれVol.7」当日だけど、中止を決めて連絡。
ひたすらテレビのニュースを見てグダグダ。

●2011.03.13日
鉄とすず、をつれて代々木公園のドックランに行く。
帰り際に、鉄を久しぶりにドックランの中で離す。まあ、ほとんど他の犬に絡むことはなかった。
ほかは、ともかく地震情報のテレビばかり見ていた。

●2011.03.14月
この予定の版元ドットコムの勉強会も中止に。
ほかにも、翌15日の鈴木一誌さんインタビュー、夜の「書誌情報・書評情報整備活用研究会」も中止。

東北に行きたくなった。

ポット出版社長・沢辺均の日記 -109[2011.02.21〜2011.02.27]

今回はスゲー早い日記更新だとおもっていたら、一週間たってた。
オレの感じだと、3〜4日だとおもてったのにね。

●2011.02.21月
ランチミーティングというか、情報交換というか意見交換というか?
デジクリの原稿書いて送る。
デジクリ連載04 ■イッキに数10万の既刊本をPDFにして販売したらいいのに

●2011.02.22火
午前中は、JPOの近刊情報小委員会。本日最終回で、会議出席料を2並び×4回を直接受け取り。
個人あての謝礼で、会社の仕事時間中にしているので、スタッフにはフランス料理フルコース(!)をオゴル。
って、年末の忘年会ですませてたんだけどね。
つづいて、弁当を食べながら近刊情報のサブワーキング。
近刊情報はほぼ完成していて、これからあまり時間を使わずにすみそうだ。
神楽坂から、お茶の水の楽器屋でフェンダーテレキャス用の6角レンチセット(インチのレンチってことだけど)と、
ピックをまとめて買う。
昔はピックが「消耗」するなんて感覚無かったんだけど、最近はピックの先端の削れ/欠けとかで、
ちょくちょく捨てる。はははー、なんかミュージシャンポイ発言!
お茶の水から東京電機大学へ交換フォーマットの発表会に参加。
カタチになっておめでとさん。
帰ったらモバイルブックの人が営業に来てた。二人とも大日本からの出向だって。
契約することにした。料率にちょいとビックリ。

●2011.02.23水
午後にマイコミ=Ebookジャーナルの取材。編集部3人ライター1人カメラマン1人の大群。
2時間しゃべりまくり。迷惑だろうな?
夜は、版元ドットコム組合員会議。会議が始まる前にJプロジェクト(これ勝手にオイラが命名してるだけ)
の報告と沢辺の参加継続の了解。
終わって「ひょうたん」に飲みに。

●2011.02.24木
昼前から出版会議・月例バージョン。
終わってから均整をうける。2週間ぶりかな。
夜はポットチャンネル。雑誌協会・マガジンハウスの久我さん。
雑協実験の記録を残しておきたかったのだ。深沢さんも聞き手になって、
終わってからもいろいろおしゃべりで少し知恵ついた。

●2011.02.25金
今日は給料日、ポットの銀行口座から盛大にお金がでる日だ。
朝10時から神保町でJプロ世話人会。
その後、新世界菜館のカツカレーをランチでたべる。
戻って、ポット会議と掃除大会。

●2011.02.26土
午後から事務所で、メールマガジン版「ず・ぼん17」のiPad用(A5版)PDF作成。
久々のinDesign作業で、あれこれ忘れてる。

●2011.02.27日
午後から事務所。
鈴木一誌さんのページネーションマニュアル解説本のレジュメをかいたり、いろいろ。
楽器屋めぐりや、ヨドバシなど。

デジクリ連載04 ■イッキに数10万の既刊本をPDFにして販売したらいいのに

デジクリ連載です。今日2月22日(火)に配信されました。
3月1日の「続・2010年代の出版を考える 阿佐ヶ谷ロフト」のイベントでもネタにしたいことなので、
さっそく、転載・公開します。

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■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[04]
イッキに数10万の既刊本をPDFにして販売したらいいのに

沢辺 均
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20110221140100.html >
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電子書籍普及のために、今、やれるといいなと思うことを夢想してみた。

●数10万の規模で、本をスキャニングして画像+OCRデータ(PDF)を、まずは無料で行う会社をつくる

このデータは──

・ブックスキャンなどにも委託するなどして、できるだけ低コストでつくる(スキャン100円+OCR100円?)
・コストを下げるためには出版社に本を一冊提供してもらい、ノドを裁断してスキャンする
・OCRの精度は向上するだろうから、定期的にOCRをかけなおして徐々に精度を向上させていく
・スキャンしておくだけなら、著者の了解はいらないだろう。だが、読者や販売者などに提供するには著者の了解が必要で、それも(最初の通知だけとか)代行ぐらいしたい。もちろん、了解の返信をもらえなかった著者には出版社がキチッと連絡

このデータの使い道は──

・出版社 自由に使えるようにデータそのものを渡す。書誌情報の整備とあわせてデータベース的に保存して、いつでも引っぱり出せるように管理、出版社が未管理でもバックアップとして利用できるようにする
・読者 著者・出版社の選択によって、紙の本を買った人には、少し料金をとってデータベースにアクセスさせるなどして、PDFを見えるようにする
・読者・販売者 著者・出版社の選択によって、アマゾン・グーグル・PDFも扱う書店(ネット書店が中心になるだろうがリアル書店も対象)での販売用に提供
・検索データベース 著者・出版社の選択によって、ネットワーク上で全文もしくは目次索引などの一部を検索させて一部を表示できるようにする

これらは多くの出版社の参加が見込めないと意味がうすい。多くの出版社が本を提供するような条件作りは工夫しないといけない。また、そもそもそんなカネをどうするのか? という問題も大きい、んだけれどもね。

●なぜPDFから始めるのか?

紙の本で既に出しているものの一定数を、デジタルで読めるようにしないと、そもそも電子書籍の普及は望めないと思う。せっかくデバイスなどの条件が少しずつ良くなっているのに、だ(もちろんアップルの課金問題が浮上したので、悪い方向へも進んでいるけど)。

たとえば、超大型書店として有名なジュンク堂にある本は、今月に発行されたものはごく一部のはずだ。あの膨大なタイトルのほとんどは、ここ何年か、何10年かのものがあって、あれだけの量=選択肢をお客に提供してる。

ポット出版の本でも、少なくとも10年前後のものも置いてもらっていたりする。ネットやデジタルのある種の特性=膨大な選択肢の存在、を考えると、電子書籍にも多くの選択肢がなければ、そもそも見向きもされないのではないだろうか?

とすると、すでに出版されている本の何10万点かは電子書籍として提供できるならば、電子書籍の普及が一気に進む可能性がでてくると思う。

現在、書店を通して返る本は80万点とか130万点とかいう説がある。ならば、数10万点が一気に電子書籍になるくらいのインパクトが必要ではないか?

一方、これまでに出版した紙の本を電子化するには、かなりのコストがかかるはずである。まず、校正などを経たテキストデータは、出版社にはほとんどない。印刷所にあると思われているけれどこれも不確か。実際に確認した報告を読んだことがない。

印刷所にテキストデータがあったとしても、それはInDesignであったりQuarkであったり、写研の電算写植システムのデータだったりするはずだ。するとOSのバージョン、アプリのバージョンなどもあって現在「開ける」ものがどれほどあるだろうか? あったとしても、それなりの手間が必要のはずだ。

さらには、そのデータの帰属は不明瞭で、出版社が無料で入手するのはかなりむずかしいと思われる。たぶん印刷所もその「所有権」を主張するだろうし、折り合うためには手間賃のほかに、なんらかの料金を印刷所が請求するのではないか、と思える。

そうした難しい課題をクリアしてテキストデータを出版社が入手しても、今度は電子書籍にするのにコストがかかる。XMDFにしろ、.bookにしろ、ePubにしろ、タグをつけ直して、点検したりしなくてはならない。

ポット出版の電子書籍づくりは社内でやっているのだけど、仮にこれを外注で制作を請け負うなら、10万円くらいはほしい(これでも安く言っている)。それも簡単な、文字がほとんどの単行本でもだ。

そこで、断裁→スキャン→OCR、なのだ。なんだか「自炊」みたいな話だ。そうなんだ。最近の自炊の評判(ほんとに流行っているのかどうかはわからないけど)をみて、自炊というアイデアをパクらせてもらった。

自炊をすべきなのは、むしろ出版社なのではないだろうか? と。
                     (この項、続くかもしれない)

◇2011.03.01 阿佐ヶ谷ロフトイベント
< http://www.loft-prj.co.jp/lofta/schedule/lofta.cgi?year=2011&month=3 >
続・2011年代の出版を考える 〜電子書籍ブームの先へ
日時:2011年3月1日(火)OPEN18:30/START19:30
会場:阿佐ヶ谷ロフト(東京都杉並区阿佐谷南1-36-16-B1)
前売り、当日共に1,500円(飲食代別)
【出演】
橋本大也(ブロガー・「情報考学」)
仲俣暁生(フリー編集者・「マガジン航」編集人)
高島利行(語研・出版営業/版元ドットコム)
沢辺均(ポット出版/版元ドットコム)
+ゲスト

【沢辺 均/ポット出版代表】twittreは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)
ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。
NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。
おやじバンドでギター(年とってから始めた)。
日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。

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デジクリ連載03 ■自炊と国立国会図書館の「全文テキスト化実証実験」

日刊「デジタルクリエーターズ」の連載、第三回目です。
2011年2月8日(火)掲載分。

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■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[03]
自炊と国立国会図書館の「全文テキスト化実証実験」

沢辺 均
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20110208140100.html >
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国立国会図書館と有志で参加した出版社が、「全文テキスト化実証実験」をしている。

・国立国会図書館における全文テキスト化実証実験の出版社等との共同実施について
< http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization_fulltext.html >

紙の本と、デジタルデータ(PDF TXT XMDF .book)の290タイトル・384冊から、構造化したテキストデータをつくって検索して、ページを表示する。検索・表時の実験は、2月28日(月)〜3月4日(金)のあいだ、国立国会図書館のなかでおこなう。

一言で言えば、さんざん話題になったあの「Googleブックス」を日本で実現しようという取組みだ。書協(日本書籍出版協会)などの業界団体でとりくむのではなく、意思のある出版社が手を挙げて参加しているのが特徴。
試しにGoogleブックスで、本の全文検索を試してほしい。
< http://books.google.co.jp/books?source=gbs_hp_logo >

ところで、最近話題になっている「自炊」である。ちょうど一年前くらいに、自炊っていいよねみたいなことを言われても、「そんなことやるのは好きモンだろう」くらいに思っていた。

ぼくもscansnap(富士通のスキャナね)を机においていたのだけど、会議のレジュメなんかをときどきスキャンするくらいで、とても活用してるとは言えなかった。その気分が劇的に変わったのは、キヤノンの複合機を去年の秋に買い替えたときだ。

以前の複合機でも、自動紙送り装置で両面の原稿からコピーも、ファックスも、スキャンもできた。だけど、スキャンはそのネットワークにぶら下がってるPCから、専用のアプリを立ち上げてコントロールしなくちゃならない。

原稿をセットしたら席にもどって「GO」。また原稿をとりに複合機までもどる。だけど買い替えた複合機では、自分のメールアドレスに添付で送ったり、サーバにそのまま保存させたり。たったそれだけで使い心地がまったく違うのだ。そんでもって、自炊に挑戦したくなった。あああ、機械が進化するっていいもんだ。

さて自炊。なぜ、自炊が興味を引くのか? 理由は二つあると思う。

一つは、PDFで保存できるなら捨ててしまいたい本があるからだ。本の保存は場所をとる。壁をすべて本棚にした家をつくる人がいるみたいだけど、それは少数派だと思う。なくしたいけど捨てられない、というのが、多数派のような気がする。ぼくもこっちだな。

もし、PDFで保存できて、その手間もたいしたことがないなら、自炊して本は捨ててしまいたい。実際は、PDFをもう二度と開かないかもしれない。でも、紙の本だってほとんど開いてない。要は、「ある」という安心感のような感情なんだと思う。

二つ目は、移動の途中で読むため。ぼくもたった一泊の出張に本を2〜3冊持っていってしまう。1冊だと、読み終わったり、つまらなかったりしたら、なんて心配してしまうのだ。これをiPadにいれておければいいなと思う。

ならば、こうした自炊欲望に出版社はどう応えるのがいいのか。まず、その前提は「いまはまだ紙の本をつくって売るのが商売の中心」であるということ。

これを前提にすれば、
・これから出版する紙の本は、PDFファイルをつくっておいて、紙の本の購入者には無料で提供する。もちろんPDFファイルだけを売ってもいいし、そもそも電子書籍にするのでもいいわけだ。
・これまでに出した紙の本を、1冊裁断してスキャンしてPDFにする。OCRはかけておくけど、その精度は悪くてもいい。

デジタルクリエイター的に言えば、いま制作している紙の本の印刷用のデータであれば、それをPDFにするのは比較的簡単だということがおわかりだろう。しかし、以前つくった紙の本を、データからPDFにするのはちょっとコシがひけちゃう。

当時のOS、アプリのバージョンで開かないと、字送りとかもう一度チェックしなくちゃ不安でしょ。ならば、もう裁断してスキャンしてしまったほうが手早い。OCRはどんどん精度を増すだろうから、時々OCRをかけ直してやればいい。

もちろん、これらは本格的な電子書籍をつくるまでの過渡的なものだ。さらに問題もイッパイある。紙の本を買ってくれた人=無料でPDFを提供するにしても、買ってくれたことをどう確認するのか? これまで出版した本のPDFにどうアクセスしてもらうのか?

で、国立国会図書館と有志出版社の「日本版Googleブックス」である。これまでに出版した本のPDFが、国立国会図書館のサイトで検索できて、一部が表示できるのであれば、自炊した本のデータ保存箱と同じことになるはずだ。

国立国会図書館にデータがある本なら、心配しないで捨てていいですよ、一部を読み返したいなら全体の20%まではネットワークから読めます、紙の本そのものを見たいなら、国立国会図書館にあるし他の図書館にもありますよ、となればいい。

AppleのiPadは、ありふれた部品や技術でつくられている、って話があるのだけど、電子書籍もありふれた技術の活用の仕方に、まだまだ可能性があるのではないだろうか?

◇2011.03.01 阿佐ヶ谷ロフトイベント
< http://www.loft-prj.co.jp/lofta/schedule/lofta.cgi?year=2011&month=3 >
続・2011年代の出版を考える 〜電子書籍ブームの先へ
日時:2011年3月1日(火)OPEN18:30/START19:30
会場:阿佐ヶ谷ロフト(東京都杉並区阿佐谷南1-36-16-B1)
前売り、当日共に1,500円(飲食代別)
【出演】
橋本大也(ブロガー・「情報考学」)
仲俣暁生(フリー編集者・「マガジン航」編集人)
高島利行(語研・出版営業/版元ドットコム)
沢辺均(ポット出版/版元ドットコム)
+ゲスト

【沢辺 均/ポット出版代表】twittreは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)
ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。
版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。
NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。
おやじバンドでギター(年とってから始めた)。
日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。

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続・2010年代の出版を考える 3月1日(火)阿佐ヶ谷ロフト

あれから一年です。
本にも、電子書籍にもしました。
電子書籍と出版 デジタル/ネットワーク化するメディア
【電子書籍版】電子書籍と出版 デジタル/ネットワーク化するメディア

終了後も残りますから、グダグダしゃべりましょう。
沢辺

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(マガジン航から転載 文・仲俣暁生)
3月1日(火)には、阿佐ヶ谷ロフトAで「続・2010年代の出版を考える~電子出版ブームの先へ」が開催。こちらには「マガジン航」編集人の私、仲俣が参加します。出演はほかに、橋本大也氏(ブロガー・「情報考学」)、高島利行氏(語研・出版営業/版元ドットコム)、沢辺均氏(ポット出版/版元ドットコム)。さらにゲストを予定しています。

このメンバーからもわかるとおり、これは昨年行われた「2010年代の出版を考える」の続編(Ustreamで配信された前半の映像がいまも視聴できます。ことしも配信の予定)。「電子書籍ブーム」が吹きあれたわりに成果の乏しかった昨年をふり返りつつ、電子書籍の話題に限らず、幅広い視点から今後の「出版」のありかたをを考えるイベントにしたいと考えています。詳細は下記のとおり。

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昨年2月に豪雪のなかで行われた長時間トークイベントの1年ぶりの続編。「電子書籍元年」といわれた2010年。メディアは猫も杓子もiPad,キンドル、そしてガラパゴスといった話題で大騒ぎを繰り広げた。でもオモテの流行語「電子書籍」に対し、2010年のウラの流行語は実はユーザーサイドの自発的なメディア活動としての「自炊」「ダダ漏れ」だった……。

電子書籍を簡単に自作したり、簡単に映像中継できる機器がある一方で、出版社からは魅力的なコンテンツが供給されない「元年」とは何だったのか?
現在の「道具はあるのにネタがない」のはなぜなのか?
それに対するユーザー主導によるDIYの流れは今後どうなるのか?
こうしたメディアの劇的変化は、どんな可能性を提示しているのか?
魅力的なコンテンツを生み出すために出版社や編集者はこれからなにをすることができるのか、しなければならないのか? 等々といったトピックをめぐり、昨年と同じメンバーにゲストを加えて、今年も本音&ぐだぐだトークで迫ります!

■日時:2011年3月1日(火) OPEN18:30/START19:30
■会場:阿佐ヶ谷ロフトA(地図はこちら
■出演:橋本大也(ブロガー・「情報考学」)、仲俣暁生(フリー編集者・「マガジン航」
     編集人)、高島利行(語研・出版営業/版元ドットコム)、沢辺均(ポット出版
     /版元ドットコム)+ゲスト
■チケット:前売り、当日共に¥1,500(飲食代別)
※前売りチケットはローソンチケット【L:36739】、ウェブ予約にて2月1日より発売開始。

ポット出版社長・沢辺均の日記 -108[2011.02.05〜2011.02.20]

毎日が無茶苦茶早い。あっと言う間に過ぎていってしまうのだ。
と書き出したら、前回も「ジェットコースター」なんて書いている。ワンパターン男だ。

●2011.02.05土
たぶん一日やすんでいたんだと、思う。

●2011.02.06日
午後からバンド練習。
戻って来て、図書館からみの打ち合わせを。

●2011.02.07月

●2011.02.08火
朝早めにでて来て、デジクリ原稿書き。
編集長からの督促が11時ころ届いて、12時まえにメールでおくった。
同時に、隣室302と、ネットワーク/電話線を通す工事。40万円くらいかかりそう。
午後から、大和田図書館へ行ってスタッフと個人面接。やっとはんぶんくらい。

●2011.02.09水
出版会議、SDとの会議。
夜は、げんきな図書館の理事会。渋谷区の新規委託の話など。

●2011.02.10木
午後に、雑協実験報告書のための座談会。
夜は、下関マグロさんのポットチャンネル。ゲスト:常岡浩介 (戦場ジャーナリスト)。

●2011.02.11金祝
午後、下北沢のすずなり劇場で、岩松了さんの「国民傘」を見る。
終わって、楽屋に岩松さんに挨拶にいったら、伊藤蘭ちゃん(キャンデーズですよ!)がいて、
「こちらポット出版の社長さん」「こちら蘭ちゃん」と紹介してくれる。
夜は、バンドのパート練習で、本多とミナチンと三人でスタジオへ。
原宿駅すぐそばのスタジオ。狭くてその割にはそこそこの値段だけど、新しくてきれい。
機材も良い。チララチララを主に練習。終わって近所の飲み屋でメシ。

●2011.02.12土
午後から、げんきな図書館スタッフ面接。うーん。各10分で20人前後。

●2011.02.13日
夕方事務所。

●2011.02.14月
夕方鈴木一誌さんと、「ページネーションマニュアル」単行本化の打ち合わせ。
鈴木さんの話、おもしろいんだ。
20時から石川輝吉くんの「哲学者・石川輝吉の、ちょっと「ぐずぐず」した感じ」のインタビュー。
スタイリストなどの派遣の事務所の女性。

●2011.02.15火
記憶と記録がない、、、、、。

●2011.02.16水
出版会議。一応3月までとしていたポットチャンネル。この第一期でいったん中締めすることに決める。
松沢呉一さん、下関マグロさん、掟ポルシェさん、どうもありがとう。
終わって神保町のある会社の会議室。
電子書籍をめぐって、あらたな構想浮上で、「世話人会」。
大ラッキーな話ではあるのだけど、それをやり抜くのはかなり全力投球せねば、って話だな。

●2011.02.17木
午後から大和田図書館に行って個人面接第二弾。
途中、公共図書館からの転職の人と面談。有望だ。
終わってから、オイラの図書館作戦を話したり、。
戻って来てポットチャンネル。掟ポルシェさん
ゲストは亜紗美(ピンキー&バイオレンス女優)さん。
美しく、イヤラシくて、下品。ちんこ、まんこ、うんことかがイッパイ。
掟さんたちとの食事にちょっと参加して、帰って来て、はりゅうウッドスタジオの整ちゃんと打ち合わせ。

●2011.02.1/8金
ともかくこの数ヶ月は社内の主に編集制作とデザインが大忙し。
ポット会議は中止。那須が言い出してくれたおかげで、掃除だけする。
金曜にベラミに復活したオムライスを食べに行く。
戻って来て、漫画家さんの取材。
その間に、あの20万以上するマッサージ椅子をついに処分。2万5千円でひきとり。
夜、金曜にも関わらず、頑張ってくれてるスタッフに、銀のさらから寿司の出前で、
すこしばかりの慰労。
「ガイヤの夜明け」で宅配ビジネスやってたんでね。

●2011.02.19土
午後、代々木図書館にいって、2月でヤメるアルバイトに挨拶と、面接ののこり。
それとちょっとオマケ。
夜はベラミナイト。
近所のスナック・ベラミで第三土曜にやってるセッションのような、もんかな。
チンピラーズから始まって、その場で適当にメンバー組み合わせて演奏。
この日は、きた人がそれなりに満遍なく演奏してたようだし、
その場で、ジャズ演奏の相談がまとまって、はじまったり、トランペットが来てくれたのも、よかったな。
10時半ころドラムを撤収したんだけど、そのあと椅子に座って丸くなって、
なんとなくアコスティックバージョンみたいになって、これが無茶苦茶気持ちよかった。

●2011.02.20日
バンド練習。寝坊で遅刻する。
この日は、仕上がってない曲を中心にいろいろ確認しながら。
うん、なんとか03/12のライブに間に合いそうだ。
帰って来てから、いろいろ残ってたことを片付ける。

デジクリ連載02 ■電子書籍に前向きになろうと考える出版社

この日誌は、1月25日(火)に書いています。
これから公開日程を入れておけば、もうわすれない。

一応、デジクリの連載は、オイラのあたらしいのがでたら、一回まえの記事をここに公開することにしたんで、
こういうの便利だな、と。

日刊「デジタルクリエーターズ」
2011年1月25日
■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[02]デジタルクリエイターの商売の狙い目/沢辺 均

[2993] デジタルクリエイターの商売の狙い目

日本雑誌協会が、以下の実験を行っている。
(1)発売同日電子雑誌配信(紙の雑誌を電子化して同じ発売日に販売サイトで公開する)実験
(2)アクセシビリティ(読み上げへの対応)実験
(3)海外配信(翻訳して海外版を配信する)実験
2月1日から数百人のモニターに利用してもらう予定だ。

この実験で、紙の雑誌のためのデータ=inDesignファイルから、PDFとタグ付きテキストをつくるサポートを、深沢英次さん(元「ワイアード」日本版のテクニカルディレクター兼副編集長・@pictex)と一緒にやっている。

ネットワークは出版サイドの人間も使っているわけだし、電子書籍・雑誌はいやおうなく近づいてくるから、出版を生業とするならこれらに対応できるようにしなければならない(もちろん紙は絶対に生き残るという信念があるなら対応する必要はないだろうけどね)。

そういう状況だから雑協が実験をしている。そのサポートをしていて、私が今考える出版業の最大の弱点は、デザイン+DTPの作業がすべて外部にまかされている、ということだ。一部の出版社を除いて。

第一に、inDesignファイルのデータを開くことが難しい。アプリ=inDesignがない/あっても、フォント環境をデザイナーやオペレーターや印刷所と同じにするのが大変。ご存知のように、紙の雑誌をつくる過程で、何度か校正=赤字を入れて、それをinDesignに反映させる。最終の原稿は inDesignファイルでしかないのだ。だからinDesignファイルを開けなければ、最終原稿のデジタルデータを手元におけない。

第二に、全て外部に任せているところがほとんどなので、inDesignファイルのこと、そこからPDFにするための準備などのノウハウが一部の人を除いて社内でわかる人がいない。inDesignファイルからPDFファイルにするのも、フォントの埋め込み、埋め込めるフォントのフォーマットから、画像のことなど、必要な条件や、その知識も外部にある場合が多いようだ。これでは、電子雑誌をつくろうと言っても、また外部に依存せざる得ない。

第三に、DTP工程のほぼすべてを外部に依存しているので、そのデータの所有権があいまいなまま。つまり最終の文字原稿や、写真・イラストのデータが出版社側には保存されていないということ。印刷所に「現物」のデータがあるが、出版社がいつでも電子化に向けて利用する状態にはないのだ(筆者/カメラマン/イラストレーターとの著作物利用の権利をめぐる問題は除いておく)。

出版業界紙に弁護士が、フィルム→刷版時代のフィルムの所有権は印刷所だという判例があると書いていたのを読んだ記憶があるけど、それが本当だとしたら、データだって印刷所のものという裁判結果になる可能性が高い。まあ、印刷所がデータをどういう状態で保存しているのかは薮のなかで、今は私にはよくわからない。

「なんちゃってPDF」という、全部アウトラインをかけたPDFで印刷をするって話をしてくれた人がいたし、実際に、実験のためのテストで提供されたPDFのなかにそのようなものがあった。

アップルがiPadを下請け工場に投げてつくれるのは、ハードウエアもつくっていた時代に、つくるノウハウ(徹底した設計図・指示書をつくる)があってそれが残っていたからだ、という見方があるということをある人から聞いた。日本のメーカーは工場の現場が優秀なので、少々不都合がある設計図でも工夫してつくれる。それが逆に、設計などの部門がちょっといい加減でも製品をつくれる理由だ、という話だった。

編集者やデザイナーの指示がいい加減でも、印刷所の現場が気をきかせてリッパな印刷物にしてくれている、禁則を知らなくても写植オペレーターが、そこをふまえてちゃんと印字してくれる、って話とパラレルじゃないか。

ネットワークと、電子書籍・雑誌が登場してこなければそれでよかったんだと思う。だけれど、もうそれでは持たないだろう。電子をつかった新しい「カタチ」を生み出すためには。

そんでもって、デジタルクリエイターの話。私は、出版社の人に向かっては「制作部隊を社内に持たないと、再利用やデジタルでの活用ができない」と言っているのだけど、デジタルクリエイターが相手なら、出版社に代わってデータの保管や、デジタルデータの活用のノウハウをキチッと持ってしまうのがいいと思うよ、と言いたい。

そのためには、inDesignの段落スタイルをちゃんとアテておくとか、いまさらCIDフォントはないでしょうとか、イラレでページつくるのはヤメなきゃまずいんじゃないとか、ってところから、入稿用PDFまでつくらなきゃ、などなどと思うのです。

そこらあたりにデジタルクリエイターの商売のネタがあるんじゃないかって思う、今日この頃。

【沢辺 均/ポット出版代表】twittreは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)
ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。
版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。
NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。
おやじバンドでギター(年とってから始めた)。
日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。

◇ポットチャンネルで村田真×楠正憲×境真良とEPUB話をしました。
アーカイブやtogetterもあります。
< http://www.pot.co.jp/potch/potch-archive/20110117_114238493922072.html >
日時:2011年1月21日(金)20時開始〜22時終了
村田真(GLOCOMフェロー/Twitter:@muratamakoto)
楠正憲 (マイクロソフト(株)技術標準部部長/Twitter:@masanork)
境真良(経済産業省情報U国際戦略情報分析官/Twitter:@sakaima)
パーソナリティ:沢辺均(ポット出版/Twitter:@sawabekin)