2004-10-26

モーターサイクル・ダイアリーズ

チェ・ゲバラの若き日の旅を描いた
モーターサイクル・ダイアリーズ

「モーターサイクル・ダイアリーズ」パンフ 今から50年ほど前、アルゼンチンに実在した23歳の医学生・エルネストとその先輩・アルベルト。2人の青年がおんぼろバイクで南米大陸を旅するこの映画は、ロードムービーであり、冒険物語であり、青年たちの成長物語でもある。そしてまた、観客にとっては普段あまり知ることのない南米大陸の自然、そこに住む人々、ラテン・アメリカの社会的・政治的現実に、否応無しにふれることになる、一粒で二度も三度もおいしい味わい深い作品だ。

2人の旅は、アルゼンチンのブエノスアイレスから始まる。隣国チリの海岸線を走り、ペルーのクスコやマチュピチュ遺跡を抜け、アマゾン川を下り、奥地にあるハンセン病療養所へと、全行程1万キロ以上の道のりである。

エルネストは、若き日のチェ・ゲバラ。革命家として、その名をよく聞いてはいたが、彼について、本当のところはよく知らなかった。映画を見た後、思わず彼のことが知りたくなって、「チェ・ゲバラ伝」(三好徹・著/原書房)を買ってしまった(そう、上映館の恵比寿ガーデンシネマの良いところは、映画の関連書籍やCD、DVDなどの販売が充実していること。飲食NGなのは不満だが…)。

映画によって、チェ・ゲバラへの興味はすごくかきたてられる。
しかし、じゃ、この映画が偉大な彼の若き日を描いただけの映画であるかというと、決してそうではない。ゲバラを演じるガエル・ガルシア・ベルナルは、ラテンのブラピと言われているらしいが、哀愁を帯びたまなざしが似ているぐらいで、ゲバラよりずっと、きゃしゃな感じだ。
映画にも描かれているが、実際のゲバラは、幼い頃からぜんそくに悩まされていた。その発作シーンは見ているこちらが息苦しくなるくらいで、自分のことだけで精一杯のはずなのに、よくぞ人々のために立ち上がる勇気が持てたものだと感心してしまうほど。それほど画面のゲバラははかなげでもある。
一方でスポーツを愛し、たいへんな読書家で、ダンスが下手でと、とっても人間味あふれる人物だったらしく、それもきちんと映像化されている。
人よりちょっとばかし正義感のある青年が、1万キロに及ぶ旅の中で、知らなかった現実を見て、それをきっかけに自分の中の何かが変わるのを感じた。これは、淡々とした中に説得力をもってそれを描き出したという点でもすばらしい。

映画は、ゲバラ自身が書いた「チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記」などを原作にしている。かねてから企画を温めていたというロバート・レッドフォードが製作総指揮を務め、監督は、『セントラル・ステーション』で一躍有名になったブラジル人のウォルター・サレス。