2012-10-10

校正のこころ

最近ゲラの素読みをすることがグッと増えました。
しかし、エンピツを入れているときに、
「これって自分の好みの問題なのでは?」「イチャモンをつけているだけな気がする…」と
自己嫌悪に陥るときがしばしばあります。
(さんざんそういうエンピツを入れたのに、表記統一や超初級の誤字脱字を見逃していると自己嫌悪がヒートアップ)

そんな思いの一部を高橋さんに吐露したところ、1冊の本を貸してくれました。
その名も『校正のこころ 積極的受け身のすすめ』。
プロの校正者として身を立てている、大西寿男さんが書いた校正論です。

まだ読み終えていないのですが、あっちこっちで目からウロコがぼろぼろ。
彼が提唱する「積極的受け身」は、つまりはその原稿がこうありたかったであろうイデアを
原稿に憑依して汲み取る、という超人的な姿勢なんだと思います(たぶん)。
でも、イデアを見つけるためにはどうすればいいの? それって一歩間違えばただの勘違いになるのでは?
経験を積めば見えるようになるの…?と思うのですが、
それはたぶん編集者との話し合いで補うべきなのでしょう。
あるいは、この本を最後まで読めばわかるのかもしれません。
私はすっかり影響を受け、最近では心のなかで
「お前はどういう姿になりたいんだい…?」とゲラに語りかけながら校正をしています。

校正者には最終的にその原稿をどうこうする権限は何もありませんが、
その原稿をあるべき姿に整え、質を高めるのは校正者の仕事だと思います。
著者や編集者が苦労して苦労して形になった原稿をよりよい形でこの世に出すために、
校正者ができることをがんばろう、そう思わせてくれる本です。

1字も誤字脱字がない、事実誤認もない、論理的破綻もしていない、
日本語として正しい完璧な本を作るのはとても難しいことですが、
でもそれをめざして勉強を続けようと思ったのでした。