1-1●日誌--沢辺

妄想のポットのサテライトオフィス構想

ポットのサテライトオフィスをつくっている。
場所は北軽井沢。

30年ほど前の1987年の夏に、
友達と数人で建てたログハウスを、貰い受けた。無償でだ。
なぜそんなものを貰えたのか? というのには、
さまざまな事情や経過、行きがかりなんかがあるのだけど、
そこんとこは長くなるので、割愛。

一昨年の春ころから、家具・荷物の整理や処分、
手すりをつけるとか、保護塗料をぬるとかいった作業をしていたのだけど、
ほぼほぼ、めどがたった。

そこで今、考えているのは、
ポットのサテライトオフィスにする、ということだ。
設備では、ネット回線を引いて、A4のモノクロレーザープリンタを持ち込む。

現地での足として、フルタイム四駆・軽のワンボックス・車検1年つきを
スタッドレスタイヤ付きで、18万で買った。
電車やバスでたどり着けば、日常の買い物は、これでできる。

作業なら、ほとんどの作業はサテライトで可能。
社内の会議は、Googleのハングアウトで、すでに2回ほど、実験してみて、
まあ、問題ない。

残るは社外での会議だけど、それはしょうがないんで
東京に移動するってことでどうだろう。
北軽井沢から軽井沢駅まで、車で40分くらい。
新幹線にのれば東京まで1時間。新幹線代は片道5,000円ちょっと

また 北軽井沢から渋谷までの直通のバスが、
4時間で、バス代は3,500円。
一度、渋谷からバスで北軽井沢に行ってみたけど、
渋滞につかまって、1時間30分、余計にかかったんで、
道の混まない平日くらいしかつかえないけどね。

もちろんこのサテライトオフィスは、
スタッフだれもが、浅間山で林のなかで仕事できることにする。

問題は、俺以外のスタッフで希望者がいるか、だ。
たぶん、だれもめんどくさがるだろうな、、、、。
それにスタッフで免許持ってるのあと二人だけで、
ほかは持ってないから、あっちで動きがとれないな。

ということで、まだサテライトオフィスは、
妄想でしかないんだけどね。

●小屋の場所と写真などは、コチラ

出版する権利・著者の権利、著作権について

社内で、著作権にからんで社員から質問があって、
メールを書いた。
それを日誌に書いとこう。

●品切れ・重版未定について
・絶版というのは、著作権と契約の面からみると、
著作物の使用契約を、出版社側から、更新しない状態(契約をやめた)。
したがって、著作権者は、その契約に拘束されず、その著作物をいかようにも利用していい状態。
他の出版社に、もう一度「売っても」いい。
・品切れ・重版未定、という在庫ステータスは、
重版する予定なんだが返品とかありそうで、
その判断を一時的に先延ばしている状態、ということのはずだけど、
重版する気はないのだが、
絶版にすると、他の出版社に著者が売ることができるので、
それをさせないために、使われる実態もあるよう。
これが、日本文藝家協会、などからものすごく批判される点。
「塩漬け」とも言われている。
ある文芸系の出版社の友人に聞いたのですけど、
その社では、こうした権利の塩漬けはよくないということで、
品切れ・重版未定のものを絶版にして、
作家に「権利をお返しします」と、一斉に連絡する取り組みをしたそう。
結果は、さまざまなリアクションがでたそうだけど、そこは割愛。
こうしたことから、品切れ・重版未定は、
絶版同様、契約が切れている状態という解釈に、
十分に根拠があるのだろうと思う。

●紙の本と電子書籍の出版契約
・紙の本と電子書籍で、利用する権利はそれぞれ別に契約する必要がある。
電子書籍の利用は「公衆送信権」という利用形態で、
紙の本とはその利用の形態が違うから。
・著作物を出版するためのには、
出版許諾契約と、出版権設定契約と、大きく二種類の方法がある。
紙の本、電子書籍とも、どちらの契約形態でもかまわない。
ポイントは、紙の本、電子書籍、それぞれに契約することです。
(一つの契約書に両方の内容をいれることもでき、ポット出版は両方いれてる)
電子書籍などなかった(あるいは例外だった)ころの契約は、
当然、紙の本の契約だけのはずです。
ということは、電子書籍の契約は「空いている」状態ということ。
大手出版社、とくにコミックに関してこのことは重大な問題で、
「空いている」電子書籍の契約を
他社に取られないように、契約変更を急いだようだ。
出版社同士なら、空いているからといって、それを取ると、
自社の著者にも「やられる」可能性が増えるので、
そこまで過激なことはしないだろうと考えられるが、
そうした業界内「常識」を共有していない会社を警戒し、
契約変更、あるいは電子書籍化により早く取り組んだ、
という事情があったのかもしれない。

●編集者の労力について
僕の感覚から言っても、著者だけでなく、
編集者がその著作物を完成させるのに、一定の役割を果たしていると思う。
もちろん、その貢献はさまざまで、ひとまとめにできない。
編集者の貢献なんか殆どないこともあるし、
一冊まるごと編集者が書き換えるなんてこともある。
あ、うちじゃないけど(笑)。
むしろ出版社というものに、社会的な意味があるとしたら、
こうした役割を果たすことに、その意味があるのだと思う。
(また別な役割も、あると思ってますけど)
このことは、大手出版社でも、同様に考えているようです。
だから、先般の著作権法改正の際に、
出版社に「著作隣接権」を出版業界が、求めたのだと。
結果は、出版権設定契約の拡充というとこまで押し戻された。
僕も、著作隣接権が出版社にあるのがいいという立場。
しかし、だから現在、編集者には、なにも権利がないということ。

●デザイン、イラスト、写真
デザインに著作権はない、イラスト、写真には著作権がある。
たとえ、幼稚園の子供の書いた絵でも、
子供がシャッターを押したものでも、著作権がある。
ただし、それに価値を見出して対価を払う人がいるかどうか別問題というだけ。
猿が撮った写真の著作権を、その飼主のカメラマンが主張して、
争った事があったよう、、、、だけど、それはまた別問題。
ただ、図表は、どんな図表かによって権利の有無が変わる。
単純な折れ線グラフなどは、権利がないでしょう。
下記の版面に権利がないのと同じように。
それがイラストのようなものになっていれば権利のある場合もある、
ということ。

●版面権
版下(昔の言葉ですね〜)をつくった人(オペレータなど)や、
つくることに金を出した人(出版社など)に、
その版下そのものの権利はない。
つくった人に権利があるなら、重版に際して「版下利用料」のようなものを支払う根拠がでてくる。
つくることの費用を負担した人(出版社など)を無視して、
その版面を使うことには、たしかに道義的な問題はある。
もう20数年前ですけど、その道義的な責任を主張して、
利用料のようなものを支払ってもらう話をしたこともあるし、合意もできた。
ただし、底本の版面そのものを利用して
紙の本として「復刊」するという話だった。
ただ、その版面に、独立して著作権のあるイラスト・写真がある場合、
その版面を利用すると
結果的にイラスト・写真を利用してしまうことになるので、
そのイラスト・写真は個別に許諾を得る必要がある。
また、書協の出版契約の雛形には、版面の権利は出版社にありという条項を入れいて、契約で権利を獲得する構造になっている。

●書影について
・電子書籍として販売するには、書影はゼツ必。
これはシステムとして必要というより、
販売サイトで、その電子書籍を見せるため。
紙の本のカバーを利用することがほとんだと思う 。
デザインに著作権はない、と思うので、カバーを利用することも可能。
ただし、デザイナー・イラストレータ・カメラマンときちんと合意をえる。
・グーグルが図書館の本をスキャンして、一般に公開することをしたときも、
イラストとか、写真をわざわざ消して、公開していたのを見た記憶がある。

著作物の塩漬けは、著作物そのものにいいことはない。
放棄=絶版にして、著者に権利を返すこよも考える必要がある。

沢辺の勝手メール●7.29(日)クロコダイルでライブやります・でます

たまに、メールのアドレス帳に載ってる人に、
片っ端から「沢辺の勝手に送りつけメール」というのをおくります。
おもに自分でやるライブの告知です。

ぼくは、ギターを少しやります。下手っぴです。
下手っぴでも、バンドでアンサンブルでやると、サポートしあえるのがいい。

歌とギターを両方やると両方に気がいってバラバラになるんで、
ボーカルが別にいたり、歌うときはギターをやめたり。
ギターでベース音・低音を強調するといいなってとこは、ベースにまかせ
リズムはドラムに合わせておけば狂いづらい、とかね。

で、地元神宮前二丁目の住人や働いてる人を中心に、
なんと憧れのクロコダイルでみんなでライブをすることにしました。
「神二音楽祭」としました。

素人バンドばかりだけど、
来てくれた人には楽しんで帰ってもらおう、とだけは
努力しようと思ってます。
どなたでも歓迎、もし来る方がいたら、当日声かけてください。
「ポットの日誌をみて来ました」と。
そんな人がいれば、僕がワンドリンクごちそうしますよ(笑)。

●以下、勝手に送りつけたメールです――――――――――
7.29(日)に原宿クロコダイルというライブハウスで「神二(じんに)音楽祭」というライブをやります。
沢辺も出場します(2つのバンドで)。12時から30分、15時から30分が、出番です。

神宮前二丁目という地元の音楽仲間で、クロコダイルを借り切ってみんなでやります。
地元の会社員・開業医・紅茶屋マスター・中華のスタッフ・美容師など、で。
もし「たまには見てやろう」という人がいたら、いらしてください。

「遠くで汽笛をききながら」のリード・ギター、
「コミック雑誌なんかいらない」「たどりついたらいつも雨降り」のボーカルなんかやるので、
沢辺を笑い飛ばすチャンスです。

当日ふらりと来てくれるのでも、沢辺にメールしてもらうのでも、
フォームから前売りticketを購入でも、かまいません。
(なんと前売りまで売るなんて、本格的でしょ(笑)

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神二音楽祭 in HarajukuCROCODILE
日時 2018年7月29(日)11:30開場 12:00開演
会場 原宿クロコダイル
渋谷区神宮前6-18-8 ニュー関口ビルB1
Tel: 03-3499-5205 明治通り沿い
渋谷駅から750m・9分 原宿駅から850m・10分
    明治神宮前駅から600m・8分
料金 当日2,000円・前売り1,800円(1ドリンク込)中学生以下無料
申込 お子様連れ大歓迎。
前売りは ▶http://eventregist.com/e/berami2018
12:00 神二楽団
寺沢/本多/ツトム/村林/沢辺/小川/アヤ
 ▶トランジスタラジオ/コミック雑誌/ずっと好きだったんだぜ、など
12:30 ELK HAIR CADDIS
 ▶全曲 オリジナル
12:45 みやさんバンド
 ▶海風/安奈/路地裏の少年/マネー/Jboy/ビッチ/ラズベリードリーム
13:15 はとのもりブラザーズバンド
 ▶スローなブギにしてくれ/涙のテディボーイ/風をあつめて、など
13:45 朝練部
 ▶Come Together/Brown Sugar/Oh,Pretty Womanなど
14:15 CurtainRail
14:30 narifuramu
 ▶初恋/今宵月の下で、など
14:45 カツオバンド
 ▶ロックとハニー/茜色の夕日/さよならカラー
15:00 勝手にTravelingBand
青んぼ/木谷マキ/ミナ/沢辺均/チッチ/本多羅々/朝倉克己
 ▶ダンシング ヒーロー/タイムマシンにお願い/遠くで汽笛を、など

*上記の予定曲はあくまで予定です、あしからず

情報 Facebook https://www.facebook.com/events/300488537153391/
主催 神二音楽祭実行委員会 03-3478-1774(ポット出版内)
――――――――――――――――――――

Slackの宣伝を読んで、ツールについて考えてみた

Slackという、チャットのようなツールが「先端」ぽいのかな? よくわかんないけど。
まあ、それなりに長く生きてると、いろんな「団体」や「活動」にハマってて、いくつもの連絡網に関わってる。
社内連絡網は、古典的に同報メールだけなのだが、
Facebookグループ・メーリングリスト・LINE・メッセンジャー、
とかいろいろなツールで連絡をやり取りしてるんだ。

最近Slackというのも使いだした。openBDという版元ドットコムとカーリルで組んで始めた書誌・書影をAPIで提供する取り組み。

何日か前、Slackの広告みたいなやつを読んだ
(1)リアルタイムで連絡可能
(2)組織ごと、テーマごとに「セット」みたいなもん作れるから整理できる
みたいなこと書いてあった。

いつでもメールばっかり見てるんみたいなんで、
作業がはかどらないんだ、ってことでメールが嫌われてるような気がする。
だから(1)は、メールがSlackにかわっただけ。
Slackだけじゃなく、LINEでもなんでもおんなじ。

日々状況が変わるもんで、最初に考えた分類はいつも役立たずになる問題、
から永遠に逃れられないんじゃないか、って思うもんで、Slackつかっても、
またあたらしい分類作っただけ、ってことにならないか?
むしろ分類なんか一切あきらめるしかないんじゃないか?
って気になってる。

ってことで、永遠に解決しないんだろうな、と。
AIでもダメだと思う。

今日は変な日誌でした。

ポット出版の近刊『戯曲小鳥女房』

ポット出版は、スタッフのときどきの興味に応じて、あまり脈絡なく、ジャンルもさまざまに本を作ってます。そんな姿勢を「正当化」する理屈も考えてはいるんですけど、気恥ずかしくいんで隠しておきます。

で、次の本は戯曲です。
千木良悠子の戯曲「小鳥女房」という芝居の脚本をだします。
千木良さんの書いたものを読みたい方はコチラへ
去年2017年秋に、渋谷のユーロライブで上演したときの映像をDVDにしてつけて発売します。

戯曲はこれまで、岩松了の新作を上演に合わせて本にしてきました。
岩松了以外の作家の戯曲を本にするのは、これが初めてです。

高校や大学などの演劇部などで上演しやすいように、演出ノートを書き加えています。

僕自身は芝居を時々見に行く程度です。この千木良さんの「小鳥女房」はたまたま見に行ってます(感想は、出版前でもあるんであえて書きませんが)。本にすることにしたのは、今年に入ってっからです。

子供のころから、芝居好きな死んだ親父につれられて見に行っています。
高校一年生のときに、親とは関係なく初めて見に行ったのが、渋谷公会堂の天井桟敷の「邪宗門」っていうのが、ちょっと自慢でして(笑)。

ということで、『戯曲小鳥女房』は7月7日に発行しますんで、ご期待くださいね。

『電子書籍の制作と販売』、質問に答える

『電子書籍の制作と販売――出版社はどう作り、どう売るのがいいか』というのを書いたら、
出版社の人から、質問をもらった。
その返事を書いておきます。参考になればいいな、と。

●索引や注とのリンクなどは、
 専門書の電子化には必要と思っていますが、コストがかかります。
 どこまでの品質を保つべきとお考えですか。
【返事】
 索引は、索引の一覧を作るだけで良いと思ってます。
 リフローなら、索引項目があれば検索できますから。
 編集者が、同じ索引項目でも、採用する箇所、採用に値しない箇所、と
 分けることにも従来意味があったのだと思いますが、
 電書では、検索などで読者の手に委ねる、ほうがいいと判断。
 注リンクは、そのたびに注の箇所に飛んでもどったり、
 むしろ鬱陶しいので、リンク不要と考えいます。
 むしろ段落直後や章の最後にまとめて掲載が親切だという見方もできるので、
 コストをかけて、リンクする必要はない、と思ってます。
 また、今後の技術の発展によって、
 そうした人間の手作業の意味が減っていくとおもってます。

●図書館(とくに公共図書館)への提供については、
 1点購入されたら、広く無料で読まれてしまうではないか、
 という懸念が出版側にはまだあります。沢辺さんのご意見は?
【返事】
・図書館への販売で、出版社の一番の抵抗感は
 「一度売ったら、未来永劫保存され、貸し出され続ける」ことだと思います
 電子は、スペースいらず/本が壊れることがない、のに、
 未来永劫、、というは抵抗感あり、は当然だと思ってます。
 でも、逆に、うちの本でも、正直未来永劫保存貸出されても、ないよりいいな
 あるいは、壊れたあとに買い直してくれる本じゃないよね、というは、
 まあいいかということもあります。
 で、現実論として、
 JDLSが2年52回貸出権利で紙の価格の2倍程度をうろうモデルを
 つくったことにより
 TRC-DLでも、この方式の選択が可能になりましたよね。
 それでも、図書館は、このJDLSモデルへの抵抗がつよいようです。
 これもあと、5年~10年で、出版/図書館お互いの抵抗感が、
 一定のところにおさまって、安定した商習慣ができると思ってます。
 なので、いまいまは、
 よく貸し出される本だからJDLSモデル
 2年で52回も貸し出されないよな、という本は、
 図書館の抵抗のない未来永劫モデル
 というふうに分けて販売しています。

ポットの日誌、再起動

なが~く停滞してしまっていた「ポットの日誌」ですが
今日から再起動させます。
毎週水曜の午前中にやっているポット会議で日誌の停止問題が激論になって、
結論としては再起動することにしました。
●これまで同じように、スタッフの順番制でまわす
ただし、順番から外れるという希望のものもいて、外れる希望はオッケーとしました
その場合は、仕事に関することで必要な場合に書くことにしました。
●逆に、順番にかかわりなく、書きたいときは自由にかいてもいい
●内容もこれまで通り、一切問わなくなんでもいい
ただし、議論のムードからは今後ポットの仕事に関するものもが増えそうです

そういうわけで、再起動です。

今日、社内の電話システムの交換をしました。
これです →https://www.mot-net.com/motpbx
MOT/Phoneといいます。
机の上の電話の代わりに、スマホで受発信するようにしました。
それと同時に、従来のメタル回線から、光回線にも変更
今まで使っていたビジネス電話は、20前に中古機器をリースで入れたもの。
十分もとはとったぞ、と。あたらしいシステムの導入費用は1.5万/月の6年リース
光回線に変えたこともあって電話料金は減る予定でよかった。
でもポット出版の本の注文電話やファックスは減らないでほしい
と思ってます。

アマゾンバックオーダー終了問題について(版元ドットコムmlへのメール)

出版業界、とりわけ中小出版社のあいだでの大きな話題がアマゾンバックオーダー終了問題だ。

版元ドットコムという出版社組織の情報交換メーリングリストに、何人かからメールが投稿されたんで、
その返事として、長いメールをかいた。まだ、話題がホットなようなんで、
この『ポットの日誌』にも、掲載しておくことにした。
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一昨日、出版学会の星野さん(文化通信編集長)のアマゾンバックオーダー終了問題の講演に行ってきました。

それまでの僕は、アマゾンとんでもないってちょっと凝り固まってたんですが(笑)、
星野さんの話を聞いて、少し冷静になって考えると、
できるだけ安く仕入れよう、などといったアマゾンの考え方は、まあ、それはそれでまっとうだよね、
と思い返しました。
ただ、この論理に全面的に賛成してるわけでなく、自分の利益を増大させるためになにをやってもいいわけじゃない。
作る人売る人運ぶ人とお客の要望との調和は、利益のまえの大事だろう、と青臭いことが、僕の考えの基本です。

その上で、今回のアマゾンのバックオーダー終了は、アマゾンは何を目的にしているか? です。
出版流通のまずさから、売上が毀損しているなら、バックオーダーを終了しても、その毀損は回復しないし、
むしろ減るのだと思います。
今回のバックオーダー終了は、アマゾン社内でもかなりの激論になったという「噂」もあるようです。

とすれば、その目標の可能性は、主にロングテールを切るということで、
ロングテール部分の出版社直取の拡大だとしか思えない。
直取することで、仕入れコストを下げること、あわせて不透明な日本の取次の流通状態をバイパスすること
なんだろうと思います。
とくに、バイパスは問題解決には妥当な策かな?とは思います。

ただ、もともと、健全野党の出現を促したい、と思っているので、
アマゾンが、ロングテールを切ることを人質にして直取拡大に「勝負をかけた」のをチャンスとして、
アマゾン以上の品揃え、アマゾン以上に在庫の有無の確実な情報での流通の迅速化、で、
他のネット書店の頑張りに期待しています。
同時に、版元ドットコムとしても、
アマゾン以上の品揃え、アマゾン以上に在庫の有無の確実な情報での流通の迅速化、
の取組みをしているつもりです。

hontoの近刊予約システムはその第一歩です。
近刊予約時だけではありますが、hontoに対して確実な入手可能情報を提供することで、
hontoでの、販売活動を促すのが、その目的です。
確実な入手可能情報にもとづいた品揃えで、アマゾン以上になってほしいし、
そのことでロングテールのアマゾン毀損分を、回復できるのではないかと思うのです。

それと同時に、アマゾンでのバックオーダー終了に、短期的な対策も考えたいと思っています。

版元ドットコムシステムの機能に、
アマゾン、HonyaCLUB、honto、の在庫状況表示・カート状況を自動的に取ってくるシステムを検討しています。
HonyaCLUBの在庫が、日販倉庫の在庫状態をほぼ示していると思うので、
それを社別に一覧でしめして、日販への、倉庫への在庫依頼・アマゾンへのカート回復依頼の、
交渉用の基礎資料とするものです。
もちろん、日販との交渉、カート回復依頼に実効性があるかはわからないのですが、
その際、hontoへの在庫依頼交渉もあわせておこなって、
「今、アマゾンには在庫ないけど、hontoならネットで買えますよ」という、販促を出版社から
することも、アマゾンカート落ちの対策になると思うのです。
(hontoは、その手始めに交渉して近刊予約システムまでこぎつけましたが、今楽天との交渉を始めています)

いかがですか? そうしたシステムは有用でしょうか?

◎オマケ
アマゾンの日販への要求は、日販倉庫に、アマゾンが予測した需要を満たすための本を在庫しておけ、
と読めます。
もちろん、100%はむりだけど、なければすぐに調達しろ、と。
これは、全国の本屋の悲願じゃないでしょうか? その意味では納得するのですが、
それを実現するのは、倉庫の大幅な拡大と、流通情報の確実性(あるなし、いつ出版社から取次・本屋に届けられるのか)
の大幅な向上が必要だと思います。
で、流通情報の確実性の向上は、我々出版社もホンキで取組む課題だと思ってます。
ただ、読み方によれば、日販はアマゾンが作りきれない倉庫の補完をしろ、第二倉庫になれ、とも聞こえます。
これは図々しいでしょう、アマゾン。何様だ?と思います。
アマゾンを含む日本の本の小売に対してそうしたことを実現したいとは思うのですが、
アマゾンのためにやるのは違う、と。
あいかわらずお店で売れている本の送料はたぶん6~7割。アマゾンだけ改善させるより、6~7割の販売環境の改善のほうが、
効果が有るはずです、算数的に、。
この意味から、「バーシャル須坂構想」が必要じゃないかと、、、、、。

記憶ですが、アマゾンのアメリカ創業時は、読者から注文があったら、出版社に注文だして、納品されてから届ける、
ってモデルじゃなかったでしょうか?
当時、「持たざる経営」というのが流行って、本社を売却してリースにきりかえるとかした大企業もあったやに思います。
ところが、ある時点で、大きな自社倉庫に在庫をもっておいて、注文がきたら自社倉庫から出荷することに切替えたように記憶してるんですけど。
その理由は「現物が手元にないと、あるなしを確実に客に答えられない」と言われていた?
もしそうだとしたら、アメリカの流通も日本のそれとどっこいどっこいだったのではないか?
で、いまでも「現物が手元にないと、あるなしを確実に客に答えられない」というのが、
アマゾンだけでなく、すべての小売の現状なんじゃないかと思うのです。だから「バーシャル須坂構想」が、、、。

◎オマケの2
いずれにしても、流通のマージン率を高くしないとならなくなると思います。今後。
出版社が流通に出荷する時点の正味が50%くらいにしなければならない事態がやってくる気がします。
この場合、今2,000円の価格の本の出版社出し正味1,400円を確保するには、2,800円の価格(出し正味50%で1,400円にするか、
手間を減らして、出し正味1,200とか1,000でやっていけるようにして価格2,400くらいにするか、
などの手立て複数で、吸収していくのではないでしょうか?

返事にはなってないですけど、。

沢辺

8月の新刊から、書店との直取引にします

主に、書店のみなさま

ポット出版は、8月の新刊から新レーベル=ポット出版プラス(ISBN出版社記号・86642)からの発売にして、
書店との直接取引にします。

これまでポット出版として発行してきた既刊本は、取次(日販・トーハン・大阪屋栗田など)からの注文・出荷・返品を継続します。

8月以降の新刊は、トランスビュー扱いで書店との直接取引で仕入れていただき、ひきつづき販売をお願いしていきます。
また、トランスビュー扱いとしての契約がない書店でも、一度だけの直接取引、取次を通した仲間取引として買切りでの取引ができます。

●トランスビュー扱いでの主な条件
・仕入れ額は、希望小売価格(いわゆる定価と同義)の70%が基本です
・返品はすべて受取ります。注文は1冊からおくりますから、必要部数を何回でも注文してもらい不要な返品を減らせられると思います
・午後5時までいただいた注文は、その日に出荷します

●直接取引へ移行する理由
ポット出版はすでに取次をとおした流通でも新刊委託・見計らい送品をやめて、新刊でも書店からの注文を受けた配本をしてきました。
これは、一般のお客さんにも「この本を買ってみよう、売ってみよう」と思ってもらえる本をつくることをポット出版の基本にしてきたからです。
書店の方には負担が増えるお願いです。
さまざまな情報を入手して、売ってみようと思う本をさがし、注文をしてください、というお願いなのですから。
昨今は、出版物の売上・書店の閉店などの問題が指摘されています。
これらへの対応として、まったく新しい可能性をもった出版物の創出(その一つとしてのデジタル・ネットの活用)ももちろん必要なんだろうと思います。
同時に、買ってみたい本・売ってみたい本をつくるこがそのオオモトの基本だとしか思えないのです。

直取はまた、現在の本の流通の問題のいくつかを具体的に解決します。
・本屋で注文しても、時間がかかり、いつ入荷するかも追跡できない
 →書店にも即日出荷する
・返品(送料コストばかり往復かかるが売上額はゼロ)が40%もある
 →出版社側の希望的観測にもとづいた送りつけをなくす
などです。

ほかにも本の流通にはさまざまな問題があります。
本の存在を知らせるオオモトになる、本の情報が業界からうまく発信できていない。
この間、ぼく自身、業界の委員会などに参加して、業界全体の改善にも取組んできたつもりですが、さまざまな利害を抱える大手出版社を中心とした
改善の取り組みは満足できるものではありませんでした。ほぼ絶望しています。
まず自らできることを、タンタンと進めていこう、というところに改めて戻ろう、とも考えました。

●つくった本の情報をとどけますから、売ってみようという本をみつけてください
書店のみなさま
ポット出版プラスとポット出版でつくった本の情報をみなさんに届けるように、最大限取り組みます。
具体的な方法は、豊かな書誌情報をつくり、ネットで探せる環境を準備して(版元ドットコムをぜひ活用ください)、ファックスでも届ける、
新刊はネットでためし読みも公開する(コチラ)、
といったことくらいしか思いつきませんが。
ぜひ(ポット出版プラスとポット出版の本にかかわらず)売りたい本を見つけて、お店で売ってください。
読者のみなさま
ポット出版プラスとポット出版の本の入手方法はこれまでと変わりません。
書店で見つけてください。
見つからなければ書店に注文してください。
ネット書店でも、出来る限り早く届けられるように改善しています(もうすぐ大きな取り組みが実現しそうです)ので、探してみてください。
内容がイメージできるように、どんな内容なのかといった情報は豊富に公開しています。新刊はネットでためし読みがでます。
新刊発行と同時に電子書籍判も発売します。

ポット出版プラスとポット出版、これまで同様ご贔屓に!

『同性パートナーシップ証明、はじまりました。』をつくったときに、考えていたこと。

版元ドットコムの「版元日誌」のために書いたのですが、コチラのポットの日誌にも掲載しておきます。
今の日本社会にとって、一番大切なのは、自分の価値観・考え方と他の人の(自分のモノとは違った)それを、どうやって「共存」させるかという ことだと思う。
恋愛やセックスが好きな人と、嫌いな人、どっちでもいい人。その対象が異性か同性か、どっちでもいいのか。
さまざまな「人それぞれ」を尊重するってのは、今の日本ではなんとなく「そうだよね〜」ぐらいの合意ができているように思える。
ところが、その「人それぞれ」のことから派生する社会制度のことになると、途端に正しさの議論になってしまっていないか?
どうにも居心地が悪い、というが常日頃感じる僕の感覚だ。
ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー。
こうした「人それぞれ」を持ち合わせている人に向かって、多くのノンケからのあからさまな罵倒や差別は、あまり見えなくなっていると思う。
もちろん性的少数者を揶揄するようなノンケの軽口もまだアルけれど、それを発するノンケに強い差別意識を感じるかというと、そうでもない。あからさまな差別は、社会のお上品化にも助けられて、社会から見えなくなっている。
ところが、同性同士の婚姻を、社会の制度に組み込むかどうか、という話になると、とたんに、良し悪しの議論が始まってしまう。
僕は「人それぞれ」なんだからいいじゃないの、と思うのだが、どうだろうか?
婚姻には、たんに戸籍上の結婚を届け出る以上に、社会システムさまざまに絡みあうものである。
社会保険も、扶養手当て、遺産相続問題もからんでくる。
こうしたシステムのデザインが、婚姻の制度の一部を変更したとたんにドミノのように影響しだす。
そうやって絡みあうシステム全体をうまくデザインしきれていないという問題もある。だから、「人それぞれ」なんだからいいじゃないの、ではすまなくなる、というはよくわかる。
でも逆に言えば同性同士の婚姻というひとつの問題提起をきっかけに、今の婚姻が影響する社会のシステムを見直すきっかけとして利用するのが有意義じゃないんだろうか。
『同性パートナーシップ証明、はじまりました。 渋谷区・世田谷区の成立物語と手続きの方法』
という本を、去年(2015年)の12月に発行した。
渋谷区と世田谷区でスタートした「同性パートナーシップ証明」はどのようにしてできたのか、そしてどうやって手続きをするのか、というのが大きく二つの柱になっている。
この制度は、はじめからゴールを見据えて取り組んだというより、まさに偶然が偶然を呼び、さまざまな立場・考えの人の行動が、
いつし か全体に集約され、熱意と思いと偶然(偶然の積み重なりが必然でもあると思う)によって作り上げられたものだった。
いまの社会の成り立ちもまた、さまざまな人の「営み」としか言いようのないふらふらした行動の総和から生まれたものではなかったか。
本来保守的な立場の80代の区長、40代の比較的リベラルな若手区議たち。国政では自民党と連立政権を組む公明党の区議。
昔の言葉で言えば革新という政治的な立場の区長とトランスジェンダーの区議。
こうした政治家を動かすきっかけをつくった街の掃除のボランティア活動。「役人」と揶揄されることの多い公務員たち。
もちろん当事者(最近よくメディアから聞こえるLGBT)たち。
こうした人たちを著者と一緒に訪ね歩くなかで、さまざまな営みの接合の一面を
見ることができた。
そして著者たちが書き上げたこの本は、冷静に現場の側面を切り取ることに成功している。
何十年と取材のようなことをやってきて、久しぶりに予想を裏切られる取材の快感を感じるものだった。

版元ドットコムのデータベースとサイトをリニューアルしました。

版元ドットコムのサイトをリニューアルしました。当然ですけど、その裏で動いているシステムも刷新。

版元ドットコムサイトの「お知らせ」に掲載したものですけど、こっちにも書いておきますね。
版元ドットコムサイトの「お知らせ」はコチラ http://www.hanmoto.com/pressrelease20150902

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2015年9月2日
沢辺 均(版元ドットコム組合員)

すでに8月24日(月)に新しいサイトになっていますが、遅ればせながらリニューアルのお知らせです。
移行にともなって、旧サイトからのRSSやAPIの移行に手間取ってご迷惑をかけた利用者のかたには、お詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。

●システムのリニューアルについて
今回のリニューアルは、2000年3月の版元ドットコム設立時から3回目であり、最大のリニューアルになります。
2000年設立の時は開発会社に依頼してデータベースとそれに連動したサイトをつくってオープンさせました。
しかしすぐに、機動的な継続開発の必要を感じ、出版社にとって必要な機能をシステム化するために、独自の開発を最初からやりなおしました。
これが最初のリニューアルです。

次に、独自開発をMac版ファイルメーカーでおこなっていたのを、Linux・mySQLなどに変更。この時も、ほぼ一から開発しなおしをしました。
これが二回目のリニューアル。

今回は、さらにもう一度、根本から作りなおしてリニューアルさせました。
リニューアルの主な特徴は次のようになります。
・サーバーを内部サーバーから、クラウドに移行
・書誌データを、XMLとRDFのハイブリッドで管理
・会員出版社以外の書誌情報をデータベースに合体
これにより約15万2千タイトル・2,232出版社のデータを持つことになりました(20150901現在)。
なお会員出版社の書誌情報は4万7千タイトル・207出版社。
出版業界では、現在入手できる本は100万タイトルなどと言われています。毎年あらたに出版される本は7万タイトルで、これらの数字から見ればまだ収集が不足していますが、JPOの近刊収集率は70%(年間5万タイトル前後)になっていますし、すでに協議している団体などの協力で充実させる体制は整ったと思っています。

XMLでの管理に移行したのは、現在JPO出版情報登録センター(旧・近刊情報センター)が送受信に利用していることと、XMLが書誌情報管理に有意義と考えたからです。

会員出版社以外の書誌情報・書影の収集をはじめたのは、
一般の利用者にとって有意義な書誌情報は、版元ドットコム会員社「だけ」のものではなくて、出版物全体だと考えたからです。
また、すでに、JPO近刊情報センター発足時から「受信利用者」としてダウンロードして蓄積していた近刊情報と書影が存在したことも大きな理由でした。
さらに、近刊情報センター発足以前の書誌情報・書影はこのデータベースにもないので、さまざまな団体と協議してデータを補完することにしました。

●サイトのリニューアルについて
同時に、だれからも見ることのできる版元ドットコム・ウエブサイトもリニューアルを行いました。

最も大きなリニューアルは、基本的な考え方の変更です。
出版社向けのサイトから、本を探す人に情報提供するサイトに、変更しました。
従来は、出版社に書誌情報を自前で作り配信して行こう、という呼びかけに軸足がありました。むしろこうした「内幕」を本好きの人々に見せることを意識的にやろう、と考えてきたこともありました。
リニューアルでは、本を探すための機能を提供して行こうと考えています。

実はまだまだ「探すための機能」のアイデアの多くは実現出来ていないのが現状です。
今回のリニューアルで公開したのは、そのアイデアの一部に過ぎません。
「中途半端」でオープンさせたのは、これからも走りながら考えつづけよう、と思ったからです。

とはいっても、すでにオープンさせた「探すための機能」は次のようなものになります。
・書評が掲載されたという情報と、それぞれの書誌情報をつけて紹介・検索する。 →書評に載った本
・書店店で配布されているフリーペーパーを収集して紹介、あわせてそれを書評として検索する。 →本屋のフリペ
・ためし読みできる本を検索して探す。 →ためし読みできる本
・近刊情報を紹介・検索する。 →新しい本/これから出す本
・増刷した本を「売れ行き好調のもの」として紹介・検索。 →増刷した本
・本に関わるイベントをまとめて紹介する →本のイベント
・版元ドットコム会員社持ち回りで書く「日誌」で会員社の本や、会員社そのものを広く紹介。 →版元日誌

書評の掲載情報は、2010年12月から朝日・読売・日経・毎日・産經・東京中日の日曜日の書評欄に掲載された本を版元ドットコムでデータベース化してあったものを、それぞれの本の詳細情報にも引用すると同時に、掲載された情報そのものも検索することができようになっています。
書店店頭で「今週の書評の本」などとしてコーナーを作っているところもあるので、こうした書店のサポートにもなると考えています。
また、この書評掲載情報を、地方紙や雑誌の掲載情報に広げるために、他の出版社や団体とも協議をはじめています。

書店のフリペは、中小書店などのお店の販促活動のフリペを、全国どこからでも見たり、探したりできるようにしようというものです。
現在掲載しているのは以下の通りです。
・ぶんこでいず TSUTAYA 寝屋川駅前店
・往来堂書店 往来っ子新聞
・青衣茗荷の文芸通信
・大盛堂書店 2F通信

ためし読みできる本のコーナーは、大手出版社の開発したシステムを提供いただいて、版元ドットコム会員出版社の発行する本を、ネットでためし読みできるようにするこころみを、広く一般の読者に利用してもらうためのコーナーです。
このシステムの画期的なのは、そのシステムに登録することで、ネット書店の本の詳細情報に「ためし読み」ボタンが自動的に反映することです。版元ドットコムサイトでのボタンも、こうしたネット書店の一つとして自動的につけています。いわば版元ドットコムの「書誌情報を一箇所に登録して、業界各所に自動的に送られる」という目的を、ためし読みという情報で実現できる仕組みです。

ジャンル検索では、従来版元ドットコムサイトのなかにあった「近刊検索β」でおこなってきた、複数のジャンル区分やその他の情報を使ったジャンル設定で本を分類して読者からのアプローチを促進しようと考えています。
このジャンル区分はライトノベルや文庫やコミックなど、読者のイメージしやすい区分にしています。

新しい本/これから出す本は、JPO出版情報登録センターに登録される近刊情報を網羅的に掲載、検索もできます。

増刷した本は、今、版元ドットコム会員社が記録している重版の情報を掲載しています。

本のイベントは、当初の開発目的には到達出来ていませんが、会員社かどうかにかかわらず、さまざまなイベントの収集を進めていくための最初の一歩です。

さて最後に、サイトからの本の販売です。
今回、丸善&ジュンク堂のネット書店と提携を開始して、利用者への本の販売はすべて、丸善&ジュンク堂のネット書店での販売にしました。
ネットで本の販売に取組むネット書店の在庫力や配送力に任せるようにしたのです。
ですからこの販売は、会員社の本はもちろん、掲載しているすべての本の注文に対応できます。
丸善&ジュンク堂では、これまでの版元ドットコムで購入いただいた会員に、移行のためのサービスとしてポイント提供もおこなってもらいました。

これらのように、今回のリニューアルは出版業界に関わるさまざまな諸団体の協力が不可欠でした。
版元ドットコムはこれからもこうした諸団体との協力を一層すすめると同時に、より広げていき、読者に本の情報豊かに提供し、あわせて会員社出版社の出版活動が広く認知されるために書誌情報を中心とした情報の提供を進めていきたいと考えています。

出版業界紙『新文化』の「出版業界関連本」のおすすめ記事の元原稿

先週、『新文化』からたのまれて「わたしが奨めるこの一冊」を書いた。
「多めの300〜400字で書いて」と言われたので、650字書いた。200字ほどに削られていたんで、元の原稿を公開しておきます。今日届いた『新文化』にのっていたんで。
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字数は650くらい有る、どうぞ、適当に縮めてください。

新文化さんから、「ぜひ読んでおかなきゃいけない本」という企画に1冊推薦と注文をいただいた。
ここは一発、ひねくれた推薦をしてやろう。
『データが変える出版販売』。1994年発行の結構古い本だ。
検索したら、版元サイトでは探せなかったけど、ネット書店では販売されていた。電子書籍(フィックス)はポット出版から発売されてます。
内容は、書籍販売において書店での実売部数を把握する方法や活用方法、出版VAN(バン)を使った書誌情報の共有の必要性が書かれている。
この20年前の本を紹介したのは、今日出版業界が取り組んでいる書誌情報やデータの充実の出発点をもう一度振り返りたいと思っているからだ。
当時永井たちが構想したことが(少々カタチは変わっていても)さまざまなインフラとなって、業界に当たり前に利用されている。
JPOの近刊情報センター(出版情報登録センターに改組)は何年も前から「発売前情報」を出版社から収集して書店・取次に提供している。いまや70%近い情報を集めて配信している。POSデータは多くの出版社にとって身近に利用できるものになっている(当時はスリップを集めてデータ入力してた!)。
とはいえ、出版販売と流通は厳しい現実のただなか。古典をひもといて、この20年の業界インフラを見返してみることも改革に必要だと思う。
現在JPO専務理事の著者・永井は、本書で説くオープンで、大小かかわりなく開かれた業界インフラづくりにますます邁進することだろう。解釈するだけでなく、変革することに向かって。

データが変える出版販売
ISBN 978-4-88888-216-3
発行 日本エディタースクール出版部
発行年 1994年
本体 1,456円 B6変 160ページ
電子書籍版(フィックス)はポット出版から発売されている。

新しく発行した本の情報がネットに反映される調査をしてみた。

群像の時代_書誌情報反映調査群像の時代書誌情報反映調査のPDFはコチラから

本は存在を知ってもらわなければ、そもそも売れない。
たぶん、一番大きな「陳列」は書店。そのなかでも入り口近いところに平積みされと、とかされるのがいい。
広告ってこともある。新聞によく載ってるでしょ。ポット出版もぼちぼち新聞に広告載せてる。
そのほかここ十数年に存在感を増やしているのがネットだ。
ネットには大きく3種類ある。
・ポット出版や版元ドットコムのサイト →自分で発信できるところ。
 この延長に、Twitterやfacebookもあると思う。
・本の存在を「勝手に」広めてくれる媒体や、無数の人たち。→他社が発信してくれるところ。
 新聞・雑誌・テレビなんかのメディアで本を取り上げてくれたり、書評してくれたいるする。
 あるいは自分のブログで紹介してくれたり、Twitterやfacebookにかいてくれたりする。
・本を売ってくれる書店 →ネット書店が中心だけど、リアル書店がお店への誘導としてネットを利用している
 紀伊國屋や丸善・ジュンク堂やアマゾンや楽天や、ヨドバシカメラとか。

で、こうしたネットでいろいろ紹介してくれる、すべての出発点は、その本に関する情報がテキストなどのデータになっていて、ネットに存在していることなわけ。最近は書影も本の情報のデータのひとつとしてゼツヒツ。

ということで、2000年に30数社の出版社としてはじめたのが版元ドットコムで、
・本の情報を、テキストなどのデータで、ネットに存在させる
・その情報を業界各所をはじめ、すべての「本の情報を欲している」ところに提供する
ことをしている。
上記のことで言えば、3つ目の「ネット書店への配信」に取り組み始めたということだ。

というこなんだけで、実際に本の情報を、版元ドットコムに登録して発信すると、ネット書店などにどのように反映していくのかを調査してみた。

テストに使った本は『群像の時代 動きはじめたメディアコンテンツ』というポと出版の本

04/24金 夕方に版元ドットコムの書誌情報DBに登録する
 すると版元ドットコムのサーバから、JPOの近刊情報センター(07/01から出版情報登録センターに改組)に、一日二回自動的にデータがONIX形式のxmlで送られる。ネット書店もそのデータを毎日取りに来る。
04/27月 まず、hontoに書誌情報が掲載された。しかし事前予約は取っていない。
04/28火 アマゾンが書誌情報とともに予約を開始する
以降05/11月までに、エルパカbooksとTRCブックポータルでも予約ははじまったが、他のネット書店では予約できない状態がつづく。
05/13水に、ポット出版に印刷屋から見本が100部程とどき、翌日の0514木に日販・トーハン・大阪屋などの取次に「今度こんな本だしますんでよろしく」と見本を出す。
実際に本屋に並べてもらうための本は、05/20水に取次に搬入する。
その間の、05/19火から、23金あたりで、ほとんどのネット書店で書誌情報が掲載されて、予約も始まっている。
だから、05/13水に取次に完成した本を渡したことがスタータになって、情報掲載・予約開始などにうごいたのだろうと思われる。
逆に言えば04/24金に書誌情報のデータ【だけ】を知らせても、実際の情報掲載・予約開始をはじめてくれるネット書店は少数だってわけだ。
05/25月にほぼ一斉にネット書店が注文できるようにした。そのご「在庫あり」になるのにも数日かかっては、いる。

一番右側の「国立国会図書館」のデータがどうなっているのか。
04/28火に仮データとして、書誌情報が公開されている。
これは、JPO近刊情報センターのデータを国会図書館も利用しているので、情報入手してすぐに「仮情報」として公開してるってことだ。
で、仮情報が06/03水になくなっているのだけど、出版社は取次への見本を出すときに同時に国会図書館へも納本しているので、近刊情報センターから得たデータにもとづいた仮情報を一旦取り下げて、国会図書館が独自に書誌情報を作り始めた、ということのようだ。
06/23火に、正式に書誌情報が公開されているので、昔、数ヶ月かかると言われていた国会図書館の書誌情報づくりもそれなりに早くなっているということなんだろう。

この表をみると、「アマゾンはさすがに少しでも多く売るために予約とか熱心だな」と思ってしまうかもしれないけど、アマゾンのこの行動はある種の「思い切」なんだとおもう。出版社が発行するよといっているのだから、どんどん予約活動すればいい、という考えじゃないだろうか?
逆に、他のネット書店は元々リアル書店がはじめたところが多く、数十年の出版業界の「常識」を踏まえた行動なんだろう。
「出版社に注文しても、書店に納品されるかどうかわからない」という「常識」からすれば、現物の確認をしないで予約などとっても、万一納品されなかったらお客に迷惑かけるので、慎重になるということのような気がする。

で、アマゾンの予約活動はそんなことが考えないでやっている風だ。
ポット出版から見ると、予約が(例えば)100冊あっても、アマゾンからの注文が50冊、なんてこともよくある。
残りの50人のお客には配送がおくれることになってるんだろうな、と思えることがあるのだ。
残念ながらアマゾンの担当者と直接連絡をとれるチャンネルは(大手には当然あるのだろうが)ポット出版にはないので、そんな事態をすぐに解決することはむずかしいのだ。

 

アマゾンの安売り=再販制の危機、栗田という取次の民事再生 出版流通のほころびのなかで考える今後の方向

●再販制はこんなふうに説明されている
再販制というのは、日本書籍出版協会(書協)のサイト(http://www。jbpa。or。jp/resale/#q1)によれば、
出版社(メーカー)が個々の出版物の小売価格(定価)を決めて、書店(販売業者)で定価販売できる制度です。この制度は、独占禁止法で認められています。
といことになっている。
さらに、
再販制度がなくなればどうなるのでしょうか?
読者の皆さんが不利益を受けることになります。
①本の種類が少なくなり、
②本の内容が偏り、
③価格が高くなり、
④遠隔地は都市部より本の価格が上昇し、
⑤町の本屋さんが減る、という事態になります。
再販制度がなくなって安売り競争が行なわれるようになると、書店が仕入れる出版物は売行き予測の立てやすいベストセラーものに偏りがちになり、みせかけの価格が高くなります。
また、専門書や個性的な出版物を仕入れることのできる書店が今よりも大幅に減少します。
と、再販制の必要な理由が書かれている

●再販制のもとでおこったこと
こうした再販制のもとで、さまざまな事象が起こったのだろうけれど、僕が一番のポイントだと思っているのは、小売店である書店の仕入れ原価率の高さ。再販制を前提として今の本の値段の相場ができていると思うのだ。

業界噂話しではよく、仕入れ原価率は78%だと言われている。千円の本の仕入れ金額は780円だと言うわけ。
220円が書店の取り分で、ここから店の家賃光熱水費・人件費などなどが支払われるということだろう。
大手書店チェーンやアマゾンなどのネット書店は取次という問屋と交渉してもう少し安く仕入れていると思うけどね。
なので、書店は定価販売しなければならない再販制(出版社の言うとおりの定価でうる)は助かるはずだ。
書店同士で価格競争してはならない→しなくて良いことになるからだ。

最近は書店でポイントがつく場合も多くなっているけど、1%とか2%とかショボイのは、出版社の価格拘束があることと、220円の粗利から10%(100円相当)とかのポイントつけるのは無理だ、ってわけのようだ。

●出版流通制度の今後の方向
で、栗田(取次)が民事再生を申請したことで、出版の流通システムの崩壊とか言われていて、その原因に再販制があるといった論調も見られるし、アマゾンがいくつかの出版社と本の安売りをはじめたというニュースも流れて、再販制の崩壊の事象だといった論調もあるので、流通システムの今後の方向を、僕なりに書いておこうと思う。

ただ以下のことは雑誌流通のこととをヨコに置いておいている。『文化通信』という業界紙の星野さんが、よく、書籍流通は雑誌流通に依存してるって前からいっているけど、そのことに踏み込むと大変なことになるので、ね。

今後、大切だと僕が思う第一は、書店の仕入率を下げることだ。
22%の粗利じゃ、「売れ残った本は安くしても売り尽くそう」とかできないでしょう。
本棚のなかにカフェやらビールバーとか(最近のはやりのようです)置くとかいった工夫もやりようがない。書店が活性化するためには、いくらなんでももう少し粗利率が必要だと思う。

第二に、書店が仕入れる本は、書店がちゃんと選ぶように(選べるように)することが必要だと思う。
現在おこなわれている、新刊委託制度は、書店が注文しなくとも取次が見計らって本屋に新刊を送るシステム。だから、書店では送られたダンボールを開けてすぐに「いーらない」といって返品することもあるらしい。こうした状況は小売店としてどんなもんだだろうか?
もちろん、本によっては見計らいでいろんな本屋に並べることが有効な本もあるのだろうから、新刊委託で多くの書店に自動的に送られるシステムもあったほうがいいのだろう。

この点で、よく出版社が不安がるのは、売れると思ってたくさん注文が来て、結果的に売れなくて返品ばかり帰ってくることが心配で、書店の注文どおりに出荷できない、といったことで、こうした課題をクリアできないと、書店の注文にもとづいた流通というのは、実現むずかしいのだろうけどね。

第三に、やっぱり基本的に書店が返品できるというのは、大切なんだと思う。
千円の本を10冊仕入れてうまく8冊売っても、粗利は1760円(220円×8冊)で、売れ残った本の仕入れ代金は1560円(780円×2冊)で、トントンにしかならない。売れ残った2冊を返品して仕入れ金額を取り返せば粗利1760円はそのまま粗利になるのだという。
もっとも、出版業界の返品率は40%あたりだから、8冊売れたらよく売れたということになるのだろう。
でに、この「返品可能」は再販制とは関係ないことだと思うけどね。

本のような少額で、代替性の低い商品だと返品がないと小売が成り立たないと思うからだ。

第四に、取引条件を簡素化するのがいいと考えている。
現状の取引条件は、
新刊委託=6ヶ月以内の返品は自由で、納入した冊数から6ヶ月間の返品を毎月マイナスして6ヶ月後に締める(請求書を起こす)
注文=書店の注文にもとづいて出荷する。返品がないことになっているけど、実際は「返品条件月注文」などという言葉が生まれていて、かなり自由に返品されている印象が出版社側からみるとある。
他に常備委託・長期委託・延勘(繰り延べ勘定の略?)、、といったように取引条件がいくつもある。
たとえば、注文に条件を一本化して、替わりに支払いを翌月末払いから翌々月末払いにするなど簡素化が必要だと思う。

最後に、出版流通の効率化が必要だと思う。
最も効率化できるのは、出版社在庫の集中だ。
多くの出版社の在庫を持つ倉庫をもち、どの取次・書店へもここから出荷する、というイメージ。
現状は、出版社が倉庫を持ちそこから取次へ本を入れる、取次は出版社別に納品された本を書店別に分けなおして出荷している。
出版社倉庫の費用は出版社、取次の倉庫=配送センターの費用は取次、というような重複が生まれている。
これってかなりの無駄なんじゃないかな?

●出版社が今できること
出版流通全体の効率化などは、ポット出版が大声で叫んでも実現できそうもない。
とは言ってもポット出版だけで実現できることもある。

第一に、新刊委託配本(見計らい)をやめて新刊の配本も書店からの注文にもとづいて行うことだ。
取次との取引条件も出荷側で簡素化してしまうのだ。

第二に価格拘束をやめる(非再販)。
現状で非再販にしても書店店頭での値引きは実現されない。書店の粗利が22%しかない現状では、売れ残りを安売りするって言ったってたいした値引きはできない。でも将来の書店での価格政策の自由化に備えることはできる。

先のアマゾンの安売りの例では、再販制を崩したことが大切なのではなく、出版社が通常より安くアマゾンに納品したとおもわれることのほうがよっぽど大変な事態なのだ

第三に、書店からの注文に必要な書誌情報の発信を行うことだ。

第四に、不幸にして予想に反して売れ残ってしまった本の販売促進策を、生み出していくことだ。

こうしたことは「インフレ」になってきた今こそ、実現の可能性があるのではないかと考えている。

本来なら、現状について・それぞれの方針の理由とかを丁寧に書くのがいいのだけど、そこまでの気力なく、項目だけ列記したレジュメのような内容にとどまってしまったけど、まあ問題意識の一旦でも伝えられたらとおもってこのまんま失礼。

中公新書の『ベーシック・インカム』を読んで、ますますBIに惹かれた


中公新書の『ベーシック・インカム』を読んだ。
前からベーシック・インカムには惹かれていたんだけど、ずいぶん頭が整理できた気がする。
ベーシック・インカムの目的は、所得の再配分で、経済的な格差を一定程度減らそうってことなんで、生活保護や失業保険や母子手当てなどと目的がかぶるんだろうと思う。
で、その再配分をシンプルにして、効率的に合理的にやろうってこと。
「自由」ってことも大切で、生活保護のような審査やチェック(コストも掛かる)を減らしす。
・資格があるかとか審査せずに、全員に一律にくばることで運営コストを最小限に
・所得税との組み合わせて、生活保護のように働くと保護費がその分減っちゃんじゃなくて、働いた分の実入りの多くが増える
・社会保障を運営するためのコストを減らしたりなくしたりできる
 国民年金=基礎年々の掛け金の集金の仕事、支払いの仕事
 生活保護の審査、「監督」(ケースワーカーの仕事?)をなくせる
 税金もシンプルにできる

この著者は、アーティスト志望のような夢見る人が増えないか?、なんていうBIへの疑問をタテて、それもまたいいんじゃない?的に答えたりして、茶目っ気感じた

BIを考えるときに、基本的なことをしるのにいい本だって思った。

ちょっとなーってのは、やや論文調なところ、出典みたいなのもカッコ書きで、やたら長かったりして、級下げも少なくて、読み飛ばすのにまよったとか、表ももうちょっと工夫しろよみたいなことだな。

自分のアタマせいりするために、図を書いてみた。

ポット出版が地元を遊ぶ『神宮前二丁目新聞』を発行したぜい


去年の夏過ぎあたりから計画していた地元の新聞がやっと完成した。
渋谷区神宮前二丁目にポスティングする、約2,000〜2,500世帯くらいで、印刷部数は6,000部。他にも、このあたりのお店においてもらっている。
地元の「神宮前二丁目商和会」という商店街、「グッド・エイジング・エールズ」というNPOに協力してもらったり、一緒につくったものだ。

なぜ地元の新聞をつくるのか、うまく説明できないんだけど、これからはご近所・地元に弱いつながりがあるといいんじゃないか、っていう予感みたいなものだ。もちろんこの『神宮前二丁目新聞』をめぐって小さなお金の流れ[も]うまれるといいんだけど、いったいどうなるのかまったく想定できていないまま、まずは出発。

で、『神宮前二丁目新聞』を実際につくってしまおう、と踏ん切った理由がいくつかある。

なによりも、ポット社内から「もの」を生み出せるようにしたいというのが第一の目的だ。
ポット出版として本を企画制作して、販売・流通を行っているんだけど、本っていうのは著者がいて、その著者のエネルギー・パトスをベースにつくられるもの、ということがある。したがって、編集もデザインも流通も、どっかに著者の随伴者といった感覚がどこかにあるんで、一から十までこちらから発信するものを、社内からつくれるようにしたかった。
そのことがスタッフたちの本づくりや、編集デザインの請負仕事のなかにも生きてくるとおもったからだ。

第二に、地元に的をしぼれることで新しく見えてくることがありそうだとおもったこと。
スタッフたちはよく取材などにでかける。下調べをしたりするけど、山のようなテーマをあつかうことになるので、どうしても一過性のものになってしまうことがある。
地元に的をしぼれば、そこを継続して取材し続けることができる。それどころか、日常の買物や飲食、お付き合いをとうして、すでに豊富な「取材」をしているのだ。なにか蓄積型の取材という力が必要なんじゃないかと思うのだ。

第三に予算的な環境が巡ってきたこと。DTP技術の普及で印刷コストは驚くほど安くなった。25年前に初めて本を出版した時の印刷コストは200万円を超えていた。今、おなじような体裁でつくってもたぶん1/3ですむ。
それに、ポットは毎日この「印刷物をつくる仕事をしてる」わけで、つくることには慣れているんだ。みんなのスキルも高まってきているので、そんなに大きな手間をかけないでもつくれるだろうってわけだ。

最後に、グッド・エイジング・エールズのゴンちゃんと知り合ったことがおおきいな。
グットは「LGBTと、いろんな人が、いっしょに楽しめる未来へ」ってことで立ち上げられたNPO。
この神宮前二丁目をもう一つの「二丁目」になどと、おちょくった目論見がゴンちゃんにはあるらしい。
irodoriという店を仲間とはじめたりしてる。その拠点開設の際には「神宮前二丁目商和会」という商店街に加盟して、LGBTとはなんだ、てな「説明会?」を商店街の会議でやったりしたそうだ。
そんな地元志向のゴンちゃんに、前々から考えていた二丁目の新聞の話をしたら、大いにノッてくれて、一緒にやろうってことになったわけ。

ということで、この先どうなっていくのか我々にもわからないけど、まずは出発してしまった。

『神宮前二丁目新聞』2015/3/15 PDF版のダウンロード

●関連記事
ポットの日誌「神宮前二丁目新聞、完成!」松村 小悠夏

【ポット出版のお知らせ】『神宮前二丁目新聞』を地元(約2,500世帯)で発行

プラス電書でつけた電書を電子図書館にいれられるか?

ポット出版で「プラス電書」というサービスの実験をはじめた。
紙の書籍を買ってくれると、対応する電子書店で[無料]で電子書籍をダウンロードしてもらえる、というサービスだ。
『アーカイブ立国宣言 日本の文化資源を活かすために必要なこと』
『電子図書館・電子書籍貸出サービス 調査報告2014』
ちなみに、試し読み版は、DRMをかけてないEPUBで、ダウンロードできますぜw。
(ちょっと横道。無料といっても、今後サービスを別な本でする場合無料にすかどうかはきめてません。50%の値引きをするとか、いろいろ値段のバリエーションはあると思ってる)
このサービスに電子図書館を熱心にすすめる図書館員から質問メールが来た。
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さて、アーカイブ立国宣言も、電流協の本も、電子書籍がついてますよね。
もし、この紙の本を図書館が買ったら、この電子書籍って●●市の電子図書館にも入れられるってことになるのでしょうか。

や。すみません、そんなに簡単じゃないことは分かっております…。
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●まず「プラス電書」というサービスについて
この本は、どこで買った本にも「プラス電書」というサービスがついている。
本のなかに、電子書店で無料ダウンロードできるクーポンコードをいれてあるからだ。
たとえば、ジュンク堂池袋本店でかった本、アマゾンでポチっとした本、近所の本屋に注文して買った本でも、本の中にクーポンコードがあるのだから。
電子書店は、このサービスに対応してくれている所に限られるが、自分が会員になっているところか、会員になるかすればよい。
この本のプラス電書に対応してくれた電子書店は、honto、紀伊國屋書店、BOOKSMART、BookLive!の4店舗。
楽天KOBOに営業に行った時にはすでに時間切れギリギリで対応してもらえなかったが、好感触で、次回は対応してもらえるんじゃないかと想像してる。

だから、アマゾンの通販で買って、honto電子書店でダウンロードするみたいなこともできるわけ。
このサービスをはじめた時に一番やりたかったことは、どこの本屋でかっても電子書籍がついてくるってこと。
このサービスを考えている時に、「空飛ぶ本棚」ってサービスの雑誌を買いにいったのだけど、「空飛ぶ本棚」をやっている本屋で買わなくてはならなかった。
渋谷の文教堂に行ってその雑誌を何冊か買ったのだけど、表紙とウラ表紙のバーコードのところにシールが貼ってあって、レジに持って行くと、店員さんが後ろの棚からカードを探しだして渡してくれるってしくみ。
店員さんも、限られた雑誌だけのサービスだからそうしたこともできるんだろうけど、対応商品が増えれば無理でしょ。本についていなきゃ、と思った次第。また、本屋が限定されるってもの客から見たら面倒だし、やだな。特定の本屋に行くほどのサービスとも思えない。

●電子図書館に入れられるのか?
さて、この「無料」の電子書籍は、電子図書館で貸し出しできるのか?

二つの意味でできないとおもっている。

このサービスは、対応する電子書店で無料ダウンロードするってサービス。
図書館が、電子書店で会員になるなら、まあ無料ダウンロードできるだろうけど、それってDRM付きのEPUBなわけで、その書店のビュアでしかよめない。
・そもそも電子書店会員に法人会員ってあるのかな? ないでしょう。また別の問題がおこるからね。
・仮に法人会員になったとして、その書店のビュアでしか読めないのですよ。物理的に。図書館での貸出に対応するとすれば、そのビュアから吸い出して、電子図書館システムにいれなきゃいけないのだけど、まあ、それはDRM外すわけで、それ違法ですよね。
・さらに仮に、DRM外したEPUBを吸い出すことができたって、電子図書館システムにいれることは、そのシステム提供者に頼まなけりゃならないわけで、やらないですよね、まともな会社なら。
このあたりがひとつめ。

ふたつめは、記憶の範囲で書くので間違えがあるかもしれないのですけど(図書館学や著作権に詳しい人に突っ込まれたい)、図書館の本の貸出の法的な根拠のこと。
紙の本を物体として図書館に売っている、図書館は図書館法の
「「図書館資料」という。)を収集し、一般公衆の利用に供すること。」が根拠なんじゃないかな? 細かいことをはぶくけど、電子書籍は物体の販売じゃなくて、公衆送信権に属することになるわけで、公衆送信されたものの図書館の貸出って法的な根拠じゃなくって、図書館ー事業者ー出版社の間の契約で行われているものなんだと思う。
とすれば、このプラス電書サービスは、そうした契約はしていないので、図書館からの貸出に含むことができない、って考えているのだ。

いやー、実はこのあたりのこと、電子図書館を考える上で、きちっと考えていなければならんと、思っていたところなのですよ。今後の課題だw。

友達からのメールに返事を書くつもりで、ポットの日誌にかいてみました。

スタッフの募集に際して

今日、スタッフ募集を公開します。
募集の内容は、「スタッフ募集」のページを見てください。
この募集要項はいつも悩みます。その悩みについて書いておこうと思います。

なぜ、アルバイト採用としたのかというと、会社の一員になるのに、もって「いい加減」なきっかけでいいとおもっているからです。なので、今回のようなアルバイト採用という方法を選んでみました。

ポットの50代のスタッフは、僕をはじめみんないい加減な経過で、今のポットの仕事にたどり着いています。
大学を卒業してまあ普通と言われる会社に就職。突然弱小編集プロダクションに転職して、その後フリーやバイト的な働き方を、声かけられるままふらふらとさまよって、今、ポットにいるものとかみたいにです。僕自身も、デザインや編集の仕事をしたくてはじめたわけでもなく、出版をやりたかったわけでもなく、目の前にある選択肢を、その都度選んでたら今にいきついた、って感じです。
だから、なんか今の就職の話をきくと、そりゃやり過ぎだろう、と思ってしまいます。夢とかやりたい仕事とか大仰なもんじゃなく、なんとなくこんなことならやってみようかな?くらいでもいいとおもう。
まして、ポットのような零細企業なんて終身雇用を展望してもらえるわけ無いでしょ。
今回の募集を「アルバイト募集(社員採用制あり)」としたのは、すこしいい加減に仕事を体験するほうがいいと思ったからです。

ポットは基本的に「正社員主義」です。現在アルバイトは一人もいません。
ただ、アルバイトやパートタイムという働き方はありだとおもってます。今回、アルバイト募集としたのは、「まあそれでも縁ができればいいかな?」と考えたからです。

本当にアルバイトがいいのだ、という理由があればアリだと思う。
たとえば学生だからとか、腰掛け的に仕事したいとかという理由。
今回の応募では、そういう人でもいいです。
また途中で考えが替わるかもしれないので、そんときに本人と会社の意思が合えば社員になってもらえばいいのです。

ポットという会社の、社員とアルバイトへの「対応の違い」は、社員は責任をもってもらうということです。
締切を守るためには残業を「しなければならい」ことがあります。そうせざる得なかった責任も含めて、社員であれば残業してやり終えてもらいます。
アルバイトなら協力の要請はしますが、自分の意思や都合を優先して当然だと思っています。
だから、ポットもアルバイトの雇用の責任を社員よりは少なくしか持ちません。

どんな仕事をやるかも、ポットにある仕事をやる、というしかありません。
とはいっても、あまりに漠然としてるし、すべてのことを一人でやれるともおもってません。

だから一応、編集・デザイン・プログラム、としましたが、これもまた便宜的。

あーあ、とってもちゃらんぽらんな文章になってしまいました。
スタッフ募集というのは、僕のアタマのなかにぐあん・ぐあんといろんな考えが巡っていて、整理できていません。
整理するためには、もっともっと多くの時間が必要です。ところが、募集は早く始めたい。
ならば、とりとめくとも、少しポットというものを仕事場として考えてもらう時のヒントになるほうがいい、と思ってこのとりとめないまま公開することにしました。

恥かいても、理解の巾が少しひろがるほうがいい、と思いました、というのはいいわけです、ゴメン。

スタッフ募集 http://www.pot.co.jp/company/recruit/

電子書籍とアクセシビリティ・音声化

もう2週間くらいで発売する『電子図書館・電子書籍貸し出しサービス 調査報告2014』について、目の不自由な読者がいるんで音声化できないか?という問い合わせをもらったので、考えてきたことをまとめておこう。

読み上げや音声化についての基本的な沢辺の考え
(ポット出版全体では、まだ議論してません)
・デバイスの読み上げ機能を使いたい
・EPUBリフローであれば特別な制作は不要
です。

もちろん、リフローEPUBであっても図表は、絵なので読み上げない、altタグなどを丁寧にいれないとならない。
表組みは、テキストでEPUBに使おうとすると、表示が乱れる可能性、ビュアアプリで不具合が出る可能性、があり、現在充分検証できていません。

目が不自由なひとには、人間が読み上げたものが最も適しているかもしれないし、DAISYが適しているかもしれないですが、この2つはいずれにしても、電子書籍制作とはまた別の工程がなければならず、それを出版社にもとめても、それが常態化するまでには、とても多大な時間がかかると思っています。

・すでに実現している、EPUBリフローの電子書籍を
 デバイスとビュアアプリの機能で読み上げする
であれば、すでに実現できています。
目の不自由な人からみたら、図表が読めないなど不足があって80点の出来かもしれないけど、別なコストを製作時にかけるのではなく、その分をデバイスとアプリの発展につかうほうがいいと思います。
逆に、目の不自由な人にも、100点でなければ×=0点ではなく、80点を90点95点にすることに理解と協力を求めたい。

DAISYへのEPUBからの自動変換は、可能性があるのかもしれないし、すでに実現できてるかもしれない。

ということで、今度の新刊『電子図書館・電子書籍貸し出しサービス 調査報告2014』は、表組みをテキストにしたEPUB、を試してます。

興味のあるひとは、もちろん買ってくださいw

ポットの日誌に復帰します。出版権について

2011年10月から出版デジタル機構の準備室に出向、そのまま2年間、発足したての機構に出向。その間ポットの日誌を書かずにいた(はず)んだけど、今日から復帰することにしました。
「復帰させて」社内にメールしたらさっそく2日も間をあけてしまった。ごめん。
今日の午前中は、JPO近刊情報センター管理委員会があって、そこで出版権への対応ってのが議題になったので、今日は出版権について、だす。
事実関係についていちいち確認せずに、アタマのなかにある記憶だけでかいているので、以下すべて信用しないように、ね。

著作物を本にして出版する契約、いまポットは「紙の本にして独占して販売する権利」を得てる。
(出版権設定契約はしていない、出版権設定契約についての説明は省略だい、今日はこれから飲み会なので、長文書くと大きく遅刻するです)
電子にして販売する権利の交渉もするけど、著者が嫌なら、電子は販売する権利をえないで、紙だけで発行することがある。
同時に二次利用についても、ポットにその交渉する権利を委託するかしないかを決める。

たとえば、海外から翻訳して出版したいと連絡がきた場合。二次利用の交渉する権利を得てるなら、ポットで交渉して、契約して、集金して、マージンをもらって、著者に振り込む。
ポットに交渉する権利を委託したくないって著者の場合、どうぞ直接著者に連絡して交渉してみてください。
ポットはなにもしないよ、という考え方。

で、これで充分じゃないか?って思ってる。

出版権を契約する、よく海賊版対策とか言われてるようだけど、そもそも海賊版を作られてしまうような売れる本は、まあないかな−、って感じだし。海賊版を入手する人が、海賊版がなければ、本を買ってくれるともおもえない。
(図書館で借りられると、その分売上減るってことにはならないでしょう、てのとおんな)
で、海賊版が出回ってすごくやばくなったら、そんとき、著者と別な契約をして、弁護士やとって(ポットには顧問弁護士がいるんだぜい、村瀬弁護士)著者と共闘してガンガンやればいいんだよなー、てのが今の考え。

これって間違えてるのかな−、ホントによくわからないんだ。

なお、出版界が出版権に電子も対象にするってのをもとめたことに、積極的に批判はないよ。
あったほうがいい人が使えばいいし、うーん今はいらない、ということなら使わなければいい。
ほかにもっとやりたいことがあるもんで、、ね。