2009-02-17

第59回ベルリナーレ 2月15日(最終日)

コンペ部門の受賞作は14日に発表されましたが、
映画祭は15日の日曜日が最終日となります。
ベルリン映画祭の大きな特徴は、一般市民の人々が列に並んで
チケットを求め、普段見られない世界中の映画を楽しむということです。
今回コンペ部門の映画は26本でしたが、
プレス向け以外に、一般向けとして3、4回は上映されることになっていて、
15日はそういった上映(いろいろな部門の)がまだ残っているんです。
日曜日ですし、家族やカップルで見に来る人がたくさんいるんですね。

また、コンペ部門以外にも、フォーラム部門、パノラマ部門、
ジェネレーション部門、ベルリナーレスペシャル部門、
レトロスペクティブ部門などがあり、
メイン会場以外に、シネマックスなどのシネコンや、離れた駅の劇場など、
全部で10くらいの映画館で招待作品が上映されます。
今回は、この不況にもかかわらず、
昨年より多い24万枚以上のチケットが売れたそうです。

青木さんと私は、最終日のこの日は、
一般向けの上映チケットを事前にプレスセンターで入手し、
2本の日本映画を見ました。
その紹介をしますね。

ドキュメンタリー&ドラマの合体が新鮮な
舩橋淳監督の「谷中暮色

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物語の舞台は東京・谷中です。
ここには昔、五重塔が建っていたそうですが、
ホームレスの人の放火により、消失してしまったそうです。
そのフィルムを求めて谷中に住むお年寄りやお寺の住職、
を訪ねるかおり。
かおりに心惹かれて手伝うようになる町のチンピラの久喜。
この二人が訪ね歩いて、お年寄りの話を聞くのですが、
そこに、幸田露伴の五重塔を再現したドラマが、
かおりと久喜の夫婦役で再現されます。
さらに、監督がお寺の住職や目が不自由ながらも
墓守を務める女性などに話を聞くドキュメンタリー部分が加わって、
何とも不思議な映画でした。
映像はかなりの部分がセピア色で味わいがあります。

こういう静かな映画を、外国の人はどう受け止めるのだろう?と
思っていたら、結構みんな引き込まれていて、
終映後は大きな拍手に包まれていました。
監督(写真右)が登場して観客の質問に答えていましたが、
達者な英語でピックリ。
何でも、ニューヨークで10年ほど活動していたそうで、
最近日本に戻り、谷中に住んだことで、
今回のテーマに出会ったそうです。
異国に住んでいたからこそ気づける「日本」、
それがここには描かれていたと思います。

妻の妊娠をきっかけに撮ったという
市井昌秀監督の「無防備」

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監督(写真右)は、お笑い芸人の髭男爵の元メンバーだったらしいです。
この映画は、妻の妊娠がきっかけになっているそうで、
その妻が出演し、準主役を堂々と演じています。

交通事故で流産してしまった女性と、
大きなおなかを抱えて工場に働きにきた女性が出会うことで起きる
反発や共感、ねたみ、いたわり、支え合いなど、さまざまな感情が
静かな映像でリアルに描かれます。

ラストシーンは、実際の妊婦さんが演じているということで、
途中で予想ができましたが、それでもやっぱり涙が出ました。
予想できなかっただろう男性陣は、かなりの衝撃だったのでは?と
思いますが、神々しい思いに包まれたのではないでしょうか。
終映後はとっても大きな拍手でした。

監督の妻をはじめ、監督の両親も協力したようで、
舞台となる工場は、クレジットに市井製作所と書いてありましたし、
ご協力いただいたみなさんの中に、
「市井家」というテロップもありました。
そんなこんなにも感動してしまいます。

この映画は、第30回ぴあフィルムフェスティバルでグランプリ、
第13回釜山国際映画祭でも賞を受賞しているそうです。

女性だけで演じる「チェ・ゲバラ」を制作中の
FUMIKO MATSUYAMAさんについて

ベルリナーレのプレス上映会場では、
青木さんのお知り合いの日本人の方々によく会います。
松山さんもそんなお一人なのですが、
ドイツに長く住んでいて、映画制作も行っています。

今、「チェ・ゲバラ」をテーマした映画を撮っているとのこと。
何でも、ダンスホールを舞台に、女優さんが男装して、
チェ・ゲバラなどを演じているということです。
ほぼ撮り終えているとのことですが、完成までにはもう少し資金が
必要とのこと。
以下のサイトで、松山さんのこれまでの映像が見られるので、
興味のある方は見てみてください。

http://www.poetryvisualized.com/media/2903/Everyday_Occurrences/

過酷ながらも映画を満喫した11日間!

今回は、見逃しませんでした「金熊賞」!
期間中は過酷でしたが、1つ1つをじっくり見た満足感があります。

おまけの写真を紹介しますね。
左から、ソニーセンターの中庭というか、吹き抜け。
メインスポンサー・ロレアルのキャンペーンガールの方々(不況なのに、
口紅を配っていて、とても太っ腹なスポンサーですね)。
期間中、何度も食べたアジアン料理。助かりました〜。

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ところで、今回たくさんの海外の映画を見て、
逆に、日本映画への愛が深まったような気もします。
今回ベルリンに来ていた日本の映画は、
テーマがとっても独創的で、作り方も斬新で新鮮で、
登場人物の感情をとてもていねいに描いていたと思います。
どんなにすばらしい社会的メッセージが込められていても、
その映像の中に生きている人物に共感できなければ、
何も伝わりません。そういう意味では、
日本の映画は、文化を飛び越えて、
海外の人の心を動かしたのではないかなぁと思います。

それでは、ブログを読んでくださったみなさん、
ご協力いただいた方々、ありがとうございました!