2009-02-11

第59回ベルリナーレ 2月10日

映画祭6日目です。
だんだん行き帰りの電車にも慣れ、
上映時間の合間に、近くのショッピングセンターで
買い物をする余裕も出てきました。

さて、今日もしっかり3本見ました。
これぞ金熊賞という作品に巡り会えるでしょうか。

これはかなり金熊賞に近いかも?と思った
テロによる爆破事件を扱った「London River」

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涙があふれるというより、心の奥底で静かに泣いてしまう映画でした。

2005年にロンドンで起こったテロリストによる爆破事件。
これにより、バスと地下鉄に乗っていた50人以上の
乗客が犠牲になりました。

「秘密と嘘」のブレンダ・ブレシン演じるエリザベスは、
ロンドンで暮らす娘と連絡が取れなくなり、
爆破事件に巻き込まれたのではないかと心配になって、
娘の住まいへと駆けつけます。娘がどんな暮らしをしていたのか
全く知らなかった彼女は、そこで、アフリカ出身で、
今はフランスに住むイスラム教徒のOusmaneに出会います。
娘がアラビア語を習い、Ousmaneの息子と同棲していたことを知り、
動揺するエリザベス。
この映画には、親と子の絆や、ジェネレーションギャップ、
人種問題や偏見、グローバル社会の現状など、
さまざまな問題が含まれています。
それらについて、押しつけがましいメッセージを送るのではなく、
人と人との感情のやり取りをていねいに描くことで、
胸に迫る映像を作り出していて、上映後もしばらくは
心が泣けるなぁという状態でした。
今まで見た中では、テーマも、映像も、演技も
一番質が高かったように思います。

アルジェリア、フランス、イギリスの合作。
監督は、フランス出身で、アルジェリア系の
ラシッド・ブシャール(写真下右)。
ブレンダ・ブレシンはこの作品で、
オスカーにノミネートされているようです。

年上の女と年下の男の
ラブアフェアを描いた「Cheri」

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フランスのColetteという人が書いた小説が原作。
1920年代を舞台に、上流階級のボンボン息子を相手にしている
高級娼婦と、若くてハンサムなCheriの出会いと愛を描いています。

まあ、テイストはまったく違いますが、
言ってみれば、社会的な部分を除いた
「The Reader」のような話とも言えます。
タッチはずっとずっと軽いですが、
年齢差のある愛はいつも残酷です。

監督は、「ザ・クイーン」「堕天使のパスポート」の
スティーヴン・フリアーズ(写真下右)。
高級娼婦を演じるのがミッシェル・ファイファーで、
とにかくスレンダーで、美しいです。
衣装も帽子も豪華で、話の内容はさておき、
そういうのを見るだけでも楽しめるかもしれません。
Cheriの母親を演じたキャシー・ベイツも
やり過ぎなくらい、笑いを誘う演技で、
いつもながら存在感がすごいです。

でも、いまなぜこの映画?という感想を抱いてしまいました。

安藤政信が軍人役で出ている
チェン・カイコーの「Forever Enthralled(梅蘭芳)」

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「さらば、わが愛/覇王別姫」のチェン・カイコー(写真下右)が
再び、京劇を題材にした映画を撮りました。
実在の京劇俳優メイランファン(梅蘭芳)の生涯を描いています。

しかし、なぜ今この題材?という違和感が拭えません。
「さらば、わが愛/覇王別姫」がヒットしたのは1993年です。
これは、カンヌでパルムドールを受賞したようですが、
あの当時には目新しかったであろうテーマが、
今は驚きでも何でもありません。
実際、上映中は途中退席する人が今までになく
多かったように感じます。

とはいえ、「北京ヴァイオリン」のときに感じた、
情に流れて甘過ぎ!という感じはなく、
押さえた演出で、芸術家の内面やその周りの人々の
生き様を描いていました。

主演は、レオン・ライ。チャン・ツイィーも
出ています。そして、ちょうど第二次世界大戦の時代なので、
軍人役で安藤政信が重要な役どころを演じています。
久々に見た安藤くんは、端正な顔立ちで、良かったです。

今日はこれから、ヴィム・ヴェンダースがDJをするという
ライブに出かけてきます。この様子は、後日また紹介しますね。