月別アーカイブ: 2009年8月

ポット出版社長・沢辺均の日記-31[2009.08.28-08.31]

●2009.08.28金
午前中はポット会議。その後、H社プレゼンで和田と佐藤と打ち合わせ。さらに「チームビラセレーナ」=イタレリとも。
夕方、国会図書館でちょっと打ち合わせ。
そのまま、中野のNPOげんきな図書館研修「8月28日柳与志夫さん「指定管理者制度を選んだ理由」研修」へ。
帰りは、柳さんふくめ、5人で和民で飲み会。
この日は、「35ブックス」の暑気払いもあったのだけど、僕だけ欠席。残念でした。
先日手続きを終えた、政府の緊急保証融資、口座に入金がすんでいた。おとといだ。
口座残高は、ポット史上最高の金額だ(笑)

●2009.08.29土
WOWOW録画の井上陽水ドキュメント(4話あり。合計4時間)や映画、読書でのんびり。
夕方、鉄とすすをつれて代々木公園のドックランに。
そろそろ本を読みながら寝ようかかと思っていたら、「朝まで生テレビ」環境問題で、
久しぶりに全部みちゃった。ポット出版から、
「低炭素革命と地球の未来 環境、資源、そして格差の問題に立ち向かう哲学と行動 」
竹田 青嗣, 橋爪 大三郎・著

を出すもんでね。

●2009.08.30日
午後から、一緒にバンド遊びをしてるヒノッチ(ベース)の、別なバンドのライブで飯田橋へ。
ヒノッチバンド(UMA)でジャニスの祈りを聞いたりして、帰ろうとしたら雨。
久しぶりに自転車でいったので、ぬれた。
戻ってきて投票へ。今回は民主党にいれたのだ(わが選挙区は、年金のながつま候補)。
民主党の年金案より、おいらの案のほうがいいと思ってるんだけどね。
夕方、雑用をかたづけに事務所にでて、7時半からテレビのまえで開票速報。
チョットした知り合いの辻/本多候補は当選。ポットから本をだした保坂候補は落選でした。
辻候補はポスターのデザインとかやったことがあるんだけど、その人柄がいやで降りた。
第三書館/北川さんに連れて行ってもらった麻布の飲み屋で紹介された辻元清美は当選。

●2009.08.31月
今日、10分遅刻してしまう。
日本出版学会6月にやった講演の、報告記事を書き、
H社プレゼンにむけた最後の打ち合わせ。
夜、古い友人の新妻/加藤くんが事務所によってくれる、。

溜息に似た言葉「見本出し」

今日は新刊『溜息に似た言葉』の見本出しに行ってきました。

見本出しというのは、取次さんにこんな本が出るんだよ、と見本を渡しにいくことです。目的としては、
1.商品登録のため
2.商品説明のため
に取次に直接、新刊見本を持っていくわけなのです。

本が書店さんの店頭に並ぶまでにはどういう経路を辿るかと言いますと、一般的には出版社→取次→書店という順番にリレーしていきます。取次というのは耳慣れない方もいるでしょうが、簡単に言えば本の問屋さんです。1日200点の新刊が生まれ、それを全国20,000店と言われる書店のどこででも購入・注文が出来るのは取次の機能によっています。

取次は自社と取引口座のある出版社の本ならば、自社と取引口座のある書店のどこからでも注文に対応できます。(割愛しますが、厳密に言うと口座のない出版社の本でも可能な場合があります。)それが可能なのは、口座のある出版社の本を在庫、もしくは把握しているからです。在庫があれば注文をもらったところですぐに出荷できますし、なくても把握していれば出版社に注文できます。逆に言えば、本が出たら教えてもらわないことには「この本は何だ?」となってしまいます。

なので、出版社は新しく本を出す時に取次に見本を出します。この本はウチの本である、という登録をお願いするのが「見本出し」の目的の一つです。

とはいえ、本の登録だけならばわざわざ人を出すことはありません。わざわざ人が持っていくのはもう一つの目的、新刊配本の希望を出すためです。

出版社は営業部員を何百人も持ってはいませんので、全国津々浦々の書店に新刊案内に行くには限界があります。そのためにFAXやメール、webを活用しますが、それでも書店さんに案内が届いているのかどうか、というとポットの場合は全国のうちの10%程度です。

ですが、ポットの本が売れる可能性のある書店は、案内をして事前に注文してくれた書店の他にもあるかもしれません。全ての書店を把握しているわけではありませんし、全国の全ての書店員さんがどういう考えで本を展開するのかということを個別的に把握するのは不可能です。

そこで、「新刊配本」というシステムがあります。取次は書店さんの本の入り口ですから、自社が取引している書店の売上はある程度把握しています。そのデータに従ってジャンル別に配本パターンを作っており、各書店に重みを付けて適正数を決め、新刊が出たらパターンに従って送品します。

書店さんは忙しいですし、山のように毎日新刊がでますから全ての新刊を把握するのは難しい。なので、データに従って仕入を代行してくれているわけです。出版社からすれば自社で把握できない売れる可能性のある書店に本を送ってくれるわけですから大助かり、書店さんもお店で売れる本が勝手に入って来るということで大助かり、というわけです。

できるだけ取次に適正な配本を希望する数で送品してもらうために、見本出しの際に商品説明や周辺情報の提供、事前にもらった注文を伝える必要があるわけです。(事前にもらった注文はその分だけこの書店には出して下さいなとリスト化して渡し、その分を送品してもらいます。)

それを元に取次がこのくらいは行けるという数を決め(「部決」といいます)、配本パターンを決めます。出版社は約束した期日に決まった数を納品します。そうすると、取次から事前注文をくれた書店、配本パターンに入った書店に新刊が入荷するわけです。めでたしめでたし。

以上、小学生の工場見学的な建前の並んだ「出版流通のお話〜見本出しとその理由」のお話でした。これでみんな満足パーフェクト、なれば素晴らしい話ですが、実際にはこのプロセスの中に細かいものから大きなものまでいろいろと問題があったりします。

ひとつ具体例を出せば、配本パターンといっても、あくまで取次が判断したものであり、書店は本を勝手に決められたパターンの元で勝手に送られてくるわけで、「こんな本売れねーよ」ということは頻繁におきます。というより毎日おきている書店が大半でしょう。きりがないのでその他の問題点は他の機会に譲りますが、問題は様々ありありな訳です。

まあとはいえよく出来たシステムという見方が出来るのも事実。現状はこのシステムにポットも含め大半の出版社が立場は違えど頼っているわけです。長々してしまうと、きりがないのでとりあえずこの項終わり!

さてさて、話は戻って新刊『溜息に似た言葉』
今日見本出しに行ったわけですが、このあとは
9/2(水)部決確認(取次がいくつ仕入れてくれるか確認する)
9/4(金)新刊搬入(確認した部数を取次へ入れる)
というスケジュールを辿ります。上述のような流通ストーリーを辿って、都内の大きな書店であれば当日に本が並びます。翌日であれば地域にもよりますがほとんどの書店に並びます。(だいたい本州内→本州外→北海道、沖縄というように遠くなるほど1日ずつくらい差が出てきます。)

編集も様々な過程でつくりあげた本が、営業や流通の過程を経て書店へ並びます。何の気なしに書店さんで本を手に取った時に、膨大な数の人の間でリレーされ、多くの過程を踏んできたことを感じていただけたら嬉しいです。それでその本が『溜息に似た言葉』だったらもっと嬉しいです。

名作にある言葉のイメージから脚本家が語り、名作にある言葉のイメージから写真家が写す。名作のイメージをより膨らませてくれるいい本です。9/4(金)以降に全国書店、オンライン書店でぜひお買い求めください。

未来型音楽レーベルって何だろう

突然ですが、9月2日(水)から始まる「未来型音楽レーベルを立ち上げよう!」という講義に参加します。

世田谷ものづくり学校を教室にした、誰でも参加出来る「自由大学」の授業のひとつです。

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未来型音楽レーベルを立ち上げよう!

[ 講義内容]
2010年音楽の旅

「インターネットでデビューも楽々!」・・・ところが現実は甘くない。アーティストを抱えてその音楽をどう動かし、認知させていくのか? 今までに ない、新しい音楽レーベルの作り方、運営ノウハウをお教えします。契約書の読み解き法、収支見込の立て方など目からウロコのヒジョーに実践的な講義です。

教授:牧村憲一、津田大介
キュレーター:森和夫

[ 講義計画 ]
第1回 “小さいレコード会社作り”はもうやめよう
メジャーレーベルが軒並み収益で苦戦している中、見よう見まねで小型レコード会社を作っても意味がない。ここでは経営面での収益支出を考えながら「形にとらわれない」レーベル作りを考えて行きます。
第2回 上手なネットとの付き合い方1~管理
パソコン、インターネットはなにもアーティストや音楽のプロモーションや販売ツールだけではない。事務的な管理、そしてファン管理にもいろいろと役立てることが出来るのだ。ここは日本有数のTwitterの使い手でもあり、「仕事で差がつくすごいグーグル術」の著者でもある津田氏が目からウロコのネット 活用術を直伝します。
第3回 権利、契約の落とし穴
肝心な物事を進める時には必ず目の前に表れる権利問題、そして契約書。
権利は果たして守り抜くだけでいいのか?契約はすぐに判を押してしまっていいのか? 実際に使われる契約書文例やケースワークを用いながら実践的な対応手段や観点を伝授します。
第4回 上手なネットとの付き合い方2~プロモーション、販売
音楽配信やSNSでアーティストのプロモーションやセールスもバッチリ!・・・だったら誰も苦労はしない。この時間では普段注目されがちなツールや手段ではなく、その有効的な活用法やリアル展開との共存についてレクチャーします。
第5回 未来型音楽レーベルは荒野をめざす
遂に講座も最終回。4回の講義を受講して学んだノウハウで果たしてこの音楽業界の荒波を渡りきれるのか!? 特別ゲストにビクターエンタテインメント (株)FLYINGSTAR RECORDS エグゼクティブ・プロデューサー 高垣 健氏を迎えながら実際の運営の問題点やビジョンを講師と共に考えていきます。

注)内容は予告なく変更される場合があります

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出版社の新入社員がなんで音楽レーベルについて勉強しに行くのかというと、
社長の「行け!」というメールに「行きます!」と返事をしたからなのですが、
社長の「行け!」と僕の「行きます!」にはズレがあって、
社長が何を考えているかは、よくわかりません。

社長は
何か面白そうだから、とか
担当していた本2冊を入稿して時間余らせようとしてないかアイツ、ふざけんな、とか
スパイ、とか
企画を作り悩んでいるペーペーにチャンスをやろう、とか
ほかにももっと一杯、色々なことを考えているのだと思います、多分。

僕は、早い時間に堂々と退社して会社の外にいる色んな人に会える機会に飛びついた、というのが一番。
あとは、未だ出版の「出」の字も、社会人の「社」の字もわからないボンクラながら、「“小さいレコード会社作り”はもうやめよう」「上手なネットとの付き合い方1~管理」「権利、契約の落とし穴」「上手なネットとの付き合い方2~プロモーション、販売」「未来型音楽レーベルは荒野をめざす」という全5回の講義のテーマが、すべて出版社のこととして考えられそうだと感じたから。

5秒で「行きます」と書きました。

ちなみに、「行きます」と返事をした後「行くにあたってお金がないので、貸していただけますか?」とお願いしたところ、ポットの研修システム(2005-07-05 ポットの研修システムってこうよ)が適用されることになりました。

ポットの研修システムとは、社内的にレポートを提出することで、学費の半分が支給される、というものです。バンザイ。

で、あっという間に、もう明後日から開講です。

やや心配ですが、張り切って参加していこうと思っています。

吹越満の舞台

友人のぶんちゃんがポットにきて、吹越満の舞台のチラシをくれた。

ぶんちゃんは私の約30年来の友人で、舞台の制作をしている。

吹越満の舞台も彼女の仕事だ。

私は肉体を酷使する系の芝居も好きなので、吹越さんの芝居は結構好きだ。

吹越さんって何となく色っぽいし。

あの色気は、酷使している肉体から醸し出されていると思う。

だらけた体から沁みでる色気もあるけど、吹越さんのは土方系色気。

広田レオナと結婚してたんだよね。知ったときはびっくりした。意外な組み合わせで。

この前、大田に吉田豪の本(タイトル忘れた)を借りたら、広田レオナがインタビューされていた。

こんなにへんな人だとは知らなかった。

今回の舞台は、どのくらい色気を感じさせてくれるか?

季刊/大学出版/(出版社は)いかにしてITを利用するか

そういえば、季刊の「大学出版 78号」(発行・大学出版部協会)に原稿を書かせてもらった。たぶん2009年の6月発行だったと思う。

ネットにも公開されている。
http://www.ajup-net.com/web_ajup/078/78web.shtml
以下もくじです
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《 特 集 》
ネットノムコウの学術出版
学術情報の流通を紙の書籍がほぼ独占していた時代は過ぎ去ろうとしているのか。いま学術出版は、ITの活用を求められ、新たな流通経路への対応を追られ、電子化するユーザを目のあたりにする、「ネットノムコウ」には明日が待っているのだろうか。

《 INDEX 》
〈初版本、ナンセンスなフェティシズム〉
*里見●著『八疊記』:酒井道夫 (●=弓+享)
〈 特 集 1〉
*インターネットの現在と未来、そして学術書の現在と未来:岡本 真
〈 特 集 2〉
*いかにしてITを利用するか:沢辺 均
〈 特 集 3〉
*学術電子出版の新しいモデル—OCLC NetLibrary:新元公寛
〈 特 集 4〉
*大学図書館で電子ブックを導入した意外な理由:矢崎省三
*社会の記憶を紡ぐ——「納本」の意義:田屋裕之
*大学出版部ニュース
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いかにしてITを利用するか

沢辺 均

 パーソナルコンピュータとインターネットが社会を大きく変化させたこと(「IT化」と呼んでおく)は多くの人と合意できると思います。これを[出版]というポイントから眺めるなら、2つの視点で切り分けるべきだと思います。
 第1の視点は、現状の本の作り方や流通に「いかにしてITを利用するか」、第2の視点は、「ITそのものが出版を変える」ということです。「ITそのものが出版を変える」というのは、本そのものの電子化やデータでの販売、販売ではない収益モデルを作り出すことなどが課題として立ち現れていると思います。版元ドットコムの活動は、主に第1の「いかにしてITを利用するか」がその中心です。そしてその目的は、
(1)書誌情報を版元自身がつくって、読者に、出版業界に広く公開する。
(2)書誌情報をできるだけ詳細なものにする。
(3)出版事業にかんする情報の交換、ノウハウの共同した獲得。
です。要するに、自分たちの作った本を1冊でも多く売るための、共同してやるべき取り組みをやっていこう、というのが最大の目的です。

 なぜ書誌(+在庫)情報なのか?

 第1に、インターネット上に本の紹介ページがないことが、その本そのものもないことになってしまうと思うからです。ネットワークを使う人が確実に、そしてものすごい勢いで増えていて、あたりまえの道具になっているからです。
 第2に、豊富な書誌情報は、その本を購入に向かわせるために有効なものであるということです。逆に言えば、書誌情報が薄ければ薄いほど、購入動機が減ってしまうと思います。
 アマゾンの渡部一文氏(書籍事業本部統括事業本部長)は「きめ細かく内容を充実させたあるアメリカの商材で、詳細ページに来た顧客の購入率が15%から 26%に上がった事例があります。」(『文化通信BB』2009年3月2日)と言っています。これが全てに当てはまるかどうかは別にして、購入意欲を高めることは間違いないと思います。
 第3は、在庫情報のことです。在庫の有無が明確なことが、書店やネット書店が販売する/しないを決める大前提になるということです。
 かって書店は、在庫の有無を調べる手だてをもたなかったので、やむを得ず注文短冊を「取次→出版社」へと回していて、出版社も「返品がくるまで保留しておくか」といったことが、私の周りにはありふれていました。しかしネットワークの発達により、新出版ネットワーク(出版VAN)や大阪屋へのメールでの在庫情報提供をとおしてアマゾンの在庫情報がかなり信用できるものになってきました。書店も手軽に出版社在庫の有無を調べることができるようになって、出版社の在庫情報提供が本の購入に直結するようになりました。さらに、提供の有無だけでなく、その正確性も購入に直結します。在庫があるのに在庫がないことになっていれば、その時点で購入意欲が大きく低下するのではないでしょうか?

 どうして書誌(+在庫)情報なのか?

 しかし、こうした書誌情報・在庫情報の整備は、それなりに手間のかかるものでもあります。特に中小零細規模の出版社にとっては、書誌情報を作ること、その情報をTRCのストックブック、JPO商品基本情報センター、取次の週報、ネット書店への情報転送など多岐にわたる情報転送先、さらには、品切れや重版・返品による在庫状況の変化に対応した情報発信を間違いなく行うためには、業界知識からこまかな作業までのノウハウが求められます。
 版元ドットコムを始めた動機には、これらの煩雑な一連の作業を簡単にすることがありました。
 第1に、さまざまな相手に求められる煩雑で多様なフォーマットに煩わされずに、その対応をコンピュータに対処してもらうこと。
 第2に、送り先とそのタイミングを間違いなく網羅して、送付の記録までをコンピュータに管理させること。
 第3に、送り先などのメンテナンスに事務局が集中して取り組む事で(あるいは各社からの情報提供を受けて)簡単にすること、として実現しようとしてきたのです。
 いわば、出版活動のインフラ構築をめざしたのです。

 出版活動のノウハウの共有

 ポット出版では、新刊発行時の営業としてファックスダイレクトメールを書店に送っていて、それを重視しています。ポット出版そのものと発行したタイトルを認知してもらうことが大きな目的ですが、それだけではないと思っています。
 ポット出版のような少部数出版では、並べてもらう書店にそのタイトルがフィットしていることが重要だと考えています。いわゆる「町の書店」にやみくもに並べてもらっても、ただ返品されるだけだと思っています。でも、ポット出版サイドでは、そのタイトルを並べるべき書店を認識することが非常に難しいので、書店の側に選んでもらいたいと思っています。逆に言えば、選んでくれた書店をキチッと認知して、情報提供などのフォローをしていく事が必要だと思っています。
 そのキッカケがファックスによる告知です。
 現在2000店ほどに(多いとは思っています)送っています。ポット出版の本を並べる意味のある書店は、せいぜい数百店だと思いますが、それをセグメントできないので対象を拡大して送っています。さて、この2000店ほどの書店ファックスリストの管理も、実はほとんどできないでいました。開店・廃業の情報を業界新聞から切り抜き、その書店に電話をかけてファックス番号を教えてもらい……ということを年単位でさぼっていました。3年前から、版元ドットコムで共同して、このリスト管理を開始、ファックス送信代行を始めました。共同化することで、それぞれの手間が省けると同時に、各社よりすぐりの営業担当者たちの「おすすめ書店パック」への絞り込みや、営業まわりから得た情報をフィードバックしています。
 この他にも「オンライン書店とのつきあい方(講師=文化通信社浴野氏)」「書店データ活用法ジュンク堂の「うれ太」を中心に(講師=ジュンク堂書店営業本部木戸秀俊)」といった勉強会(版元ドットコム入門と言っています)やメーリングリストでQ&Aなどを行って、多くのノウハウ共有をしています。

 出版社のWebサイトが持つべき機能

 さて、「いかにしてITを利用するか」という視点から、出版社、特に小零細出版社のWebサイトは、どのような機能を持つのがよいか、ということについてです。
 小零細出版社では、サイト運営に多くの人力を裂くべきではないと思います。あくまで本道は、良いと思う本を精一杯つくることだと思うからです。しかし一方では、Webサイトを持たないと信用すらされない、というくらいの状況になっていると思います。さらにそのサイトは、生きて発信を続けていなければまた大きく信用を低下させる、というくらいの状況になっていると思います。
 具体的に必要なことは、(1)新刊を発行したら即、サイトにその本の情報が掲載されていること。(2)メールマガジンのような形式で、新刊発行・書評掲載などの情報を発信すること。(3)出版社スタッフの実像を想像できるようなコンテンツがあること。この3つだと思います。
 第1に、出版社サイトを見たときに、半年も1年も前に発行された本が一番最近に出た本の位置にあると、なんだかいい加減な出版社だとか、あやしい感じがしませんか? また、その本の著者は不信を抱かないでしょうか? でも、日常の雑事に追われてついつい先延ばしにしてしまうことが、正直私にはあります。しかし、これは決定的にまずい。
 第2に、メールマガジン(新刊案内メールといってもいいと思います)を出すべきです。サイトは見に来てもらう待ちの媒体です。これに対して、メールでの発信はこちらから能動的に働き掛けられる道具です。
 私が今、Webサイトを見るのは、ある必要から検索をしてサイトを見るのと、ある種のメールマガジンがトリガーになって、クリックしてサイトを見るのとがほぼ半々、もしくは2対1です。
 第3に、スタッフの書いたものです。これからのメディアはGoogleやYahoo!のように巨大な集客をするものと、学術出版のように特定少数の人を引きつけるものに大きく分岐していくと思っています(理由は省きます)。小零細出版社は、後者のメディア発信が中心となるので、特定少数の人との濃い関係性を作り出す事が必要です。その役割は著者に求められると当時に出版社もまた担い、特定少数の「ファン」を1人ずつ獲得しなければならないと思います。具体的にはメールマガジンの読者として獲得することに結びつけていくのですが、その入口にはスタッフの発信が必要だと思うのです。
 詳細は省きますが、この3点は、版元ドットコムデータベースの利用と、メールマガジン配信システムを準備することと、HTMLを書けなくても(サイトを作れなくても)ただちょっとした文章を書ければだれもが更新できるブログ的なシステムを入れればよいのです。できれば、この3点を日常業務に組み込むようなワークフローにすることがとても重要です。
 さて最後に、「ITそのものが出版を変える」ということです。これもまた詳細を省きますが、いきなり電子出版だ、ダウンロード販売だ、という取り組みもまた意義があるかも知れません。しかし、これまでに書いたように「いかにしてITを利用するか」にキチッと取り組むことが、電子出版などの意味やシステムの理解に近づくことであって、「いかにしてITを利用するか」についての真剣な取り組みなしに、ただ電子出版に取り組めばなにか新しい地平が見えてくるものではないと思うのは、暴論でしょうか?
(ポット出版)

イシノマキで逢った人たち [下関マグロ 第7回]

僕の原稿が少し時間的に先に進みすぎてしまった。これでは、読者も少しわかりにくいかもしれないので、僕の原稿も少し時計の針を戻そうと思う。

イシノマキでは、本当に多くの人に出逢った。ただ、僕自身はイシノマキにおいて特異な存在であったため、どの人がどういうことで、ここにいるのかというのがよくわからなかったのだ。伊藤秀樹(北尾トロ)も同じことで、最初の頃はよく夕方になると会社にきていた男くらいの印象しかなかった。彼はいつもマイペースで、オフィスの片隅にいる僕に向かって「お前、いっつも暗いなぁ」などと声をかけてくれた。いったいどんな人なんだろうかと思っていたら、ある夜、会社に置いてあるエレキギターを取り出して、ステレオセットにつないで音を出していた。どうやら、この人の私物のようだ。会社にギターを置いている人だということがわかったが、どういう人かということはますますわからなくなった。というのも、そのギターの腕はお世辞にもうまいとは言えなかったからだ。

イシノマキは編集プロダクションといいながら、いろいろなことをしている会社で、岡林信康のコンサートなんかもプロデュースしていた。僕は部外者ということもあり、こういったことからはまったくの仲間はずれであったが、伊藤秀樹ほか、ほとんどの社員がこれに関わっていたと思う。北関東のどこの街かは忘れたが、伊藤秀樹もPAとして参加していたようだ。彼はPAもやるんだ。彼はきっと音楽畑の人なんだろうと思ったりもした。 続きを読む

『エロスの原風景』ができるまで/松沢呉一インタビュー05/エロ本を集めることの悲哀

前回まではこちら

01・国会図書館を抜き去るまで(ただし、エロ本のみ)

02・エロ本を捨てるな

03・松沢呉一が語る『エロスの原風景』の読みどころ

04・『エロスの原風景2』に向けて

江戸時代〜昭和50年代後半のエロ出版史を概観する『エロスの原風景』
遠からず消えるであろうエロ本だからこそ、残しておかなくてはならないのだ。

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松沢呉一『エロスの原風景』に関する記事一覧

●エロ本を集めることの悲哀

──それだけの数があっても、けっこう中を読んでますよね。

「コレクター気質だから集めているということもあるんですけど、ライターにとっての資料という意識も強いので、ただ集めたいってだけではないですから。全部は読んでられないので、もちろん、ものにもよりますけどね。『変態資料』は、前々から断片的には読んでいたんですが、原稿を書くにあたって全冊読んだら、今まで読んでいなかったものの中にも、たくさん発見があった。『エロスの原風景』にも書いてますけど、その時見つけたのが、老け専の人が実体験を書いた私小説的な連載で、その人は男も女もいける口で、どっちも老け専。この時代に、堂々とこんな文章を書いている人がいたのかと驚きましたね」

──それは読んでみたいです。

絵はがき

『エロスの原風景』「絵はがき」の項より

「『変態資料』は、戦前の軟派本の中ではポピュラーなんで、安い店だと、一冊2000円から3000円で買えます。80年くらい前のものですよ。戦争を超えて残ったものがそんな値段で買えるのは、公的機関が買わないから。大学の図書館だったら収蔵しているところもあるだろうけど、一般の図書館や資料館ではそんなものを集めない。いろんな地方公共団体が、一時、なんだら文学館、なんだら資料館をやたら創設して、古本の値段が高騰したこともありましたが、高騰したのはもっぱら文学書です。どこも同じようなものしか買わないですから。エロ本資料館はどこも作らない。大衆的な資料を集めるところはあっても、エロには至らない。おかげで安くて助かります。ものによっては万単位しますけど、おおむねエロは安い」

──高いものはいくらぐらい?

「伊藤晴雨のもののように、石版画で作られているものは、美術品として高いし、SM関係者でも集めている人が多いので、十万、二十万とするものがあります。あと、全般的に高いのは遊廓関連の資料ですね。遊廓は江戸研究者にとっては避けて通れないテーマで、その流れから、近代になってからのものでも集めている研究者がいます。また、花柳界とのつながりがあって、踊りや歌舞伎との関係もあるので、探している人が多いんですよ。もともと貸座敷組合(遊廓の組合)が出しているものは部数が少ないってこともあって、値段が張る。今回の本の冒頭に出てくる細見も、ものによっては十万を超えます。そういったものを避ければ、さほどの金がなくてもエロのコレクションは可能です。高度成長期に出たセックスのハウトゥものだったら、1冊500円も出せば買える。5万円もあれば100冊買えますから、立派なコレクションですよ。戦後、歓楽街で売られたエロの生写真も一枚百円かそんなもんで買えます。ただ、数が多いので、完璧なコレクションをしようと思うと、ひとつのジャンルでもそれなりの資金が必要です。裏本だけでも数百万はかかる。万単位するものもあるので、今から集めようとすると、一千万円以上かかるかな。困難なのは、値段の問題だけじゃなくて、モロ出しのものは古本屋も扱わないし、ネットオークションにも出せないから、入手自体が難しい。カストリ雑誌もだいたいのものは2千円から3千円程度で買えるんですけど、ある特定の雑誌の特定の号を探すとなると、とてつもない時間がかかります。誇張じゃなくて10年かかりかねない。10年かけても入手できないかもしれない」

──最初は入れ食い状態で買えるけど、集まるとともに買えなくなってくる。

「その分、時間が経つと、お金はかからなくなりますけど。この話も単行本の続編にたぶん入ると思いますが、カストリ雑誌は全国で出てたんですよ。特にそういうものは探せない。カストリではないですが、戦前、『越佐春秋』という雑誌が新潟で発行されていて、地元政財界の暴露記事やカフェーの記事が出ている。現在はソープ街になっている昭和新道という通りが新潟市にあって、そこがカフェー街だった。たまたま何冊か入手して、カフェーの記事を読みたくて、全部集めようとしたんだけど、新潟の古本屋でさえ、聞いたことはあっても見たことがないって言う。『改造』のような雑誌であれば、図書館や大学が保存しているし、個人で保存している人も全国にたくさんいるだろうけど、大衆雑誌は残らない。特に地方の少部数のものは残らない。だから、値段はたいしたことがなくても入手は難しくて、時間や手間がかかる。それが面白かったりするんだけど」

──そういうものを松沢さんが保存しているわけですね。

「ですね。妙な使命に取り憑かれて。見返りがあればいいんだけど、何もない。バカにする人はいくらでもいるけど、感心してくれる人はほとんどいない。こんなものを集めて調べても原稿依頼をしてくれる雑誌もほとんどない。20年かけて集めてきても、それが本になったのは今回が初めて。それもそのはずで、誰も読みたがらない(笑)。もとはと言えば、高橋鐵にきっかけがあって、その頃は、まだエロライターとさえ名乗ってなかったんですよ。他のテーマもやっていたし。高橋鐵のものだけじゃなくて、性学関係のものを片っ端から買って読んでいくうちに生まれたのが『魔羅の肖像』。だから、エロ本を集めることと、書くテーマがエロに傾いていく軌跡とはリンクしている。現実にはエロライターに求められる仕事は、生々しい今の時代のエロであって、資料を駆使した原稿を書ける機会は数えるほどしかない。エロ本より、一般誌の方がまだしも需要があるかもしれないけど、エロライターだの風俗ライターだのと名乗り出すと、今度は一般誌に敬遠されるから、結果、書ける機会はどんどん減っていく。このジャンルは本腰を入れて取り組めば取り組むほど、評価が落ちて需要が減る。だから、エロ本の収集も、それを読む作業も、ほぼ趣味でしかないです。メルマガではそういった連載を400回くらいやって、今は休んでますけど、そのうち復活しようと思ってます。でも、ここ数年は金も尽きて、新規では買ってない。そろそろ維持するのも限界。だからここまで書いた分だけでも本にしておきたかったんです」

──ありがとうございました。是非、消え去りつつあるエロ本の収集にご協力いただくためにも、『エロスの原風景』をお買い上げ下さい。(終わり)

(このインタビューは2009年7月12日東京国際ブックフェアで行なわれた公開インタビュー『「戦前、戦後のエロ本」〜日本のエロ表現史』に大幅な加筆・訂正を加えています。聞き手:沢辺均)

『エロスの原風景 江戸時代〜昭和50年代後半のエロ出版史 』

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著者●松沢呉一
定価●2800円+税
ISBN978-4-7808-0126-2 C0095
A5判 / 168ページ / 上製・函入
[2009年07月 刊行]
印刷・製本●シナノ印刷株式会社
ブックデザイン●小久保由美

内容紹介

エロ本は遠からず消えると言っていい。そんな時代だからこそ、こんな本を出す意義もあるだろう──
(「はじめに」より)

●『実話ナックルズ』(ミリオン出版)で2004年より現在も続く、日本エロ出版史を網羅する長期連載の単行本第1巻。
●稀代のエロ本蒐集家である著者所蔵の膨大な資料の中から、エロ本173冊、図版354点をフルカラーで掲載。
●読み物としてだけでなく、顧みられることのなかったエロ表現史の概観を辿る、資料性の高い一冊。
●大幅加筆に、連載時には掲載されなかった資料も掲載。

本のご購入はこちらでお願いします。

「国立国会図書館の資料デジタル化に関する説明会の開催について」の文書

国立国会図書館の資料デジタル化に関する説明会の出版社への連絡文書があったので、
下記に張っておきますね。
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国立国会図書館の資料デジタル化に関する説明会の開催について

日ごろ、納本をはじめ、当館の事業に御協力いただきどうもありがとうございます。
平成21年6月に、当館が原資料の保存を目的として行う資料のデジタル化に関する
著作権法改正がありました。当館では、この改正を視野に入れて、保存のための
資料のデジタル化及びその利用に関し、平成20年度から出版者団体、著作者団体
等と関係者協議会を行い、平成21年3月に第一次合意(添付)を取りまとめました。
また、平成21年5月には、当館の資料を大規模にデジタル化する補正予算が成立
しております。
当館では、こうした状況を踏まえて、資料デジタル化を関係各位の御理解のもとに
進めてまいりたいと考えております。そこで、出版社各位の御理解、御協力を賜る
ため、下記の要領で説明会を開催いたします。御多用中とは存じますが、御参加の
ほどよろしくお願いいたします。

1 日時・場所
平成21年9月17日(木) 15時〜16時30分
国立国会図書館新館講堂(東京都千代田区永田町1−10−1)
2 内容
・ 関係者協議会第一次合意について
・ 補正予算によるデジタル化について
・ デジタル化候補雑誌リストの公表及び照会について
※ 資料デジタル化の御説明及び関連資料は、以下のURLでも公表しております。
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization.html
3 参加申込方法
資料準備の都合上、9月14日(月)までに、「説明会参加」という件名で
御所属及びお名前を記載した電子メールを ●●●@ndl.go.jp 宛に

お送りください。なお、会場の関係上、参加希望の方が300人を超えた
場合は調整させて頂くことがあります。

(担当)国立国会図書館
総務部企画課 ●●、●●
●●●@ndl.go.jp
電話03-3581-2331(内線●●●)